問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!?   作:天崎

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活動報告にてアンケート実施中です!!


被りし物

「うう…………憂鬱なのです。十六夜さんに何と言われるか…………」

 

「まぁ主様なら大丈夫でしょ」

 

「マスターがそれを言う資格は無いですけどね」

 

「というより、ほぼ狐川さんのせいじゃないですか!!」

 

「え~?人のせいにするのは最低よ?」

 

「いや、100%狐川のせいですよね!?」

 

「冗談よ、じょーだん」

 

狐川とアルマ、黒ウサギは温泉街の旅館を歩いていた。

初めて仕事をサボタージュしてしまった黒ウサギは狐川を恨めしそうに睨むのだが、狐川は涼しい顔でスルーする。

そんなこんなで一行は温泉に向かっているのだった。

途中で忍と暦がいたので忍も温泉に行くことになった。

 

「忍さんは暦さんから離れられないのでは?」

 

「今は大丈夫じゃよ。ゲーム用に血を飲んで吸血鬼度を上げておるからの」

 

「それなら温泉も問題ありませんね」

 

忍も加えた一行はそのまま温泉へと歩を進めるのであった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

一方で暦は忍と別れた後、適当に温泉街を歩いていた。

土産をチラチラと見ながら考え事もしている。

そんな時、前方に球磨川と皐がいた。

 

「おーい、球磨川!!」

 

『暦くんじゃないか、どうしたんだい?』

 

「忍が黒ウサギちゃん達と一緒に温泉に行ってな。暇だから土産を見ながら歩いてたんだ」

 

「覗かないのか?」

 

「お前は僕にどんなイメージを持ってんだ、反坂!!」

 

「変態?」

 

「直球だな、おい!!」

 

「少なくともそのイメージを晴らせる行動をしてないだろ普段から」

 

「いや、違うからな?僕は健全だからな?」

 

『僕達の年頃を考えたら多少性欲が活性化してた方が健全な場合もあるけどね』

 

「少なくともお前らには健全の欠片すらねぇよ」

 

冷えた目線で二人を貫く皐。

球磨川は訳が分からないと言った様子で首を傾げるが暦は気まずそうに視線を逸らすのだった。

暦としては勘違いしないで欲しいと深く思っているのだが、今いるメンバーでは覆すことは難しいだろう。

そこで暦は一つ気付く。

 

「そういや、十六夜の奴は何処だ?お前達一緒にいたんじゃないのか?」

 

『十六夜くんなら接待に行ったよ』

 

「接待?」

 

「六本傷と交渉に行っただろ?そこにそれなりの大物が来てな。十六夜はゲームが終わった後にそいつの相手をしにどっか行ったわけだ」

 

「お前らは行かなくていいのか?一応コミュニティのトップと補佐だろ?」

 

『仮の、だけどね』(「仮の、だけどな」)

 

『何はともあれ僕達も接待しようかポロロくんに聞いたんだけどね』

 

「絶対にやめてくれ、と正面から言われてたぞ」

 

皐が他人事のように言う。

実際面倒だからやる気の無かった皐からすれば他人事である。

球磨川は何でだろうね?とでも言いたそうな顔で首を傾げる。

おそらく本当に理由が分かっていないのだろう。

暦としてはそんな球磨川を見てある意味納得するのだった。

そこで暦は話すべき事があるのを思い出す。

 

「十六夜にも聞いて貰いたかったんだが今はまぁいいか。球磨川、少し話があるんだ」

 

『なんだい?』

 

「僕と忍は_______

 

そうして、話を始める。

それを聞き終える頃には球磨川も皐も驚いたような顔をしているのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

温泉宿に入り、いざ女湯の入口に来てみるとそこには”本日貸切”の札が出ていた。

 

「あやや?どなたかが貸し切っているご様子なのですよ?」

 

「向こうのついでに貸し切ってんじゃない?」

 

狐川が指差す方には男湯があった。

そちらからは騒がしい声が響いていた。

 

「な~んか、主様達が接待に使うとかなんとかあったような気がするし」

 

「えぇ、十六夜殿から直接の連絡では無いですがそういう話と聞いております」

 

なら、問題は無いだろうと一同は入っていく。

脱衣所に入るが服を脱ぐ前にアルマが人の気配が無いかサーチする。

身内に覗き魔が多い影響で一々警戒するようになっていたのだった。

アルマが問題無いことを告げると各々脱ぎ始める。

そこで狐川は女物の浴衣が脱衣籠の中にある事に気が付く。

 

(誰か入ってる?でも、この匂いは何処かで嗅いだ気がするし問題は無さそうね)

 

天狐の力を引き出す努力を始めたからか、最近狐川の嗅覚は鋭くなってきていた。

一応、念の為と更に詳しく丹念に徹底的に嗅いで見ようとした時だった。

アルマが狐川の頭上に手刀を落とすのだった。

 

「アイタッ!?」

 

「何をしようとしているのですか、貴女は………………」

 

凍える様な絶対零度な視線をアルマが向けてくる。

頭を押さえて涙目になりながらも狐川は文句を言う。

 

「念の為に誰か判別出来る程度に嗅いでやろうとしただけじゃない!!」

 

「その時点で十分問題ですよ」

 

全く反省はしてないが狐川は渋々嗅ぐのをやめるのだった。

脱ぎ終えると布も撒かずに風呂場に突撃しようとするが、またアルマに止められるのだった。

渋々と布を胴に巻く。

黒ウサギも忍も準備を整え終える。

四人が湯殿に入ると、同時に感嘆の声をあげる。

 

「これは素晴らしい………!!」

 

一番に声を上げたアルマが速足で進み出る。

西欧出身の彼女に取って露天風呂という文化は物珍しいのだろう。

物静かな彼女にしては珍しく熱の籠った声だった。

 

「なに、もしかして露天風呂初めて?」

 

日本出身、しかも山奥の日本屋敷の集まりに近い不知火の里出身で言彦候補な事もあってそこそこの地位にあった狐川としては慣れた物なのでテンションに差が出ていた。

それを踏まえた上でも感嘆する程に素晴らしい露天風呂だとは思えるが声を出す程では無かったらしい。

とはいえ、温泉は温泉である楽しんでも損は無い。

それに狐川としては天狐の力を休めるには温泉と言う環境はそれなりにちょうどよい物であった。

そこまで考えた時だった。

 

「マスター下がって!!」

 

突如としてアルマが声を上げて三人を庇った。

忍は気付いているが気付いた上でスルーしているので結果的に守られる形になる。

右手に稲光を纏わせてアルマは湯煙の向こうから襲い来る蛇蝎の剣閃を弾き飛ばす。

視界が不明瞭故に何者の攻撃か判別できないが、その剣の冴えに瞳を尖らせる。

今の剣閃は直接彼女達を狙った物では無い。

恐らくは、彼女達の肢体を隠している布だけを斬り裂こうとしたのだ。

 

「連接剣……………!!此れだけの剣技を持ちながら婦女子の素肌を晒そうとするとはなんという破廉恥な!!一体何者です!?大衆浴場とはいえ許されぬ行為があります!!……………ありますよね、マスター?」

 

「一旦落ち着いてくれる?」

 

アルマの言葉には興味が無さそうにしながら狐川は湯煙の向こうを見る。

今の連接剣が何処かで見覚えがあるような気がしたのだ。

一方、忍は今の剣閃に見覚えを感じていた。

 

「どっかで見た気がするんじゃよな」

 

狐川としてはその忍の反応と匂いと剣閃で相手を確信する。

湯煙の向こうを睨みながら問う。

 

「もしかして、仮面の騎士(フェイスレス)?こんなとこで何をしてんの?」

 

「___________チッ。それは此方の台詞です。この時間帯は私が貸し切っていたはずですが?」

 

小さい舌打ちが聞こえた気がするがあえてスルーする。

それより、狐川はフェイスレスの声に何処か違和感があった。

しかし、それが何かまでは思い付かないのであった。

何はともあれ、どうもどうやら狐川達は勘違いして入ってきてしまった側らしい。

まずは入浴していいか聞く為に湯煙の向こうへと進んでいくのだった。

 

「_______ッ!?待ちなさい!!貸切だと言っているのに何故此方に来るのです!!」

 

「別にいいじゃない。いい機会だし、ちょっと話しましょーよ」

 

さっきの今で冷静さを取り戻し切っていないフェイスレスは慌てて叫ぶ。

だが、それは狐川の悪戯心に火を付けた。

湯水を掻き分け、離れていく音から相当焦っているのを察する。

 

「あら~?あら~?もしかして珍しいんじゃない、そんなに焦るのって」

 

「ちょ、狐川さん!?フェイスレス様にはコミュニティとしてもお世話になってるのであまり失礼な態度は………」

 

「もう遅いですよ、黒ウサギ殿」

 

黒ウサギの静止も無視して狐川の悪戯心は膨れ上がる。

相手が焦る状況を考えに考えて一つの結論に至る。

 

「もしかして、仮面を外してる(´´´´´´´)?」

 

「_____ッ!?」

 

湯殿に居合わせた全員に衝撃が走る。

ようは彼女が貸切にしていた理由はこれだ。

彼女は今は素顔を晒している。

こんなレアな状況に対して狐川の好奇心が膨れ上がる。

身の危険を感じるフェイスレス。

先程の一件から考えが纏まる前にこの事態。

焦りに焦ったがゆえにフェイスレスは一つの事実を忘れた。

今の状況において、素顔を晒すのを抵抗する意味が無い事を(´´´´´´´´´´´´´´´´´´)

狐川は忍に目を付けて頼む。

 

「吸血鬼さん、湯煙吹き飛ばしてくれない?」

 

「よかろう、儂も多少興味があるからの。手伝ってやろう、狐娘」

 

「そこまでやりますか!?」

 

女王騎士の焦燥、此処に極まる。

フェイスレスの身体能力なら顔を隠したまま外に逃げることは出来るだろう。

だが、今は布一枚である。

流石に全裸で飛び出すわけにもいかない。

騎士号は確実に剥奪されるだろう。

だからと言って身を隠す場所も無い。

湯煙は忍が軽く腕を振るっただけで消し飛んだ。

______これは、完全に詰んだ。

 

「ハハハハハハハハ八ッ!!あんたの素顔をこの大浴場に晒して貰いましょうか!!」

 

高笑いをする狐川。

視界が晴れる。

一同は息を呑む。

万策が尽きたフェイスレスの姿が湯煙の向こうで遂に_________

 

______________________________湯桶を被っていた。

 

「…………何よ、それ!?」

 

”仮面の騎士”改め、”湯桶の騎士”此処に爆誕。

混乱此処に極まり、フェイスレスは意地でも素顔を隠す手段に出るのだった。

そして、ある程度落ち着くとフェイスレスはふと思うのだった。

 

(何を必死になっているのやら。たとえ顔を晒しても不都合も(´´´´)なければ、意味も(´´´)無いというのに)

 

虚しさを感じるように心中で呟くのだった。

その声は誰に届く事も無い。

 

 

 





温泉回パート2でした!
赤い人がいない時点でフェイスレスの素顔は意味を持たないのである
とはいえ、そんな事を知らない狐川は好奇心と悪戯心のままに素顔を暴きに来るのでした


それでは、質問があれば聞いてください
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