問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!? 作:天崎
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山岳に出来た天然の地下牢。
そこに殿下は幽閉されていた。
その地下牢に混世魔王が現れ、殿下に自身の話をした。
その上で真の魔王連盟を作る提案をした。
殿下は自身で考え、真の自由を得る為にその提案に乗った。
リンやジンなどもその場に現れて話が纏まり掛けたところだった。
殿下と混世魔王は何かに気付いたように暗闇を見る。
そこには何も無くリンが首を傾げる。
それでも、殿下は言う。
「そこにいるんだろ?出てきたらどうだ?」
「おや?本当に気付いていましたか」
暗闇から声が返ってきた。
否、暗闇では無くそれは”
影は蠢き、形を変えていく。
女性のような形になると、その表面に十数個の眼球が浮かび上がる。
「お前、何者だ?」
「しがない見物人ですよ。あえて、名乗るのであれば百鬼夜行の若様に仕えている百目の伏目です」
「わざわざ名乗るのか」
「私はただの見物人でしかありませんからね。そこは素直になりますよ。ただ、百鬼夜行に所属しているとはいえ私のこの動きは独断というより私用に近いので安心してください」
「私用だと?」
「えぇ、貴方達の計画を他人に話す気も無ければぬらりひょん様に密告する気も無いから安心してください」
などと言われたところで安心出来るはずも無い。
殿下や混世魔王が拳に力を込めようとする。
それに先手を打つように伏目は言う。
「言っておきますが此処で私の”眼”を潰したところで無駄ですよ。此処にいるのは私の一部でしかありませんので」
「チッ」
混世魔王が舌打ちする。
思惑は分からないが面倒な臭いしかしない相手ではあった。
伏目はそんな殿下達の様子を気にする事も無く一人ブツブツと呟く。
「それにしてもやはり貴方達もいいですね。意志が籠った野望は
その姿は不気味であった。
殿下達の事は眼中に無いかのようだった。
完全に一人の世界に入っていた。
その様子に混世魔王は何かに気付く。
それを問う前に殿下が言った。
「お前、気持ち悪いな」
その一言が何かを貫き引き剥がし、中身を覗かせた。
影がビクリと揺れると首に当たる箇所が九十度折れ曲がる。
「私が?私が気持ち悪い?」
「あぁそうだよ。視ることに固執して他人にしか目を向けない。まるで自分が無いような、空っぽの箱のような気持ち悪さだよ」
先程までの自分も似たような物だったかもしれないが違うと断言できると殿下は思っていた。
似ていると同一はかなり差があるのだ。
伏目は、その意思を宿した影が歪んでいく。
「私は、私は、私は…………何だ?何?何?何?そうだ、百目だ。私の目的は生き様を視ること。そうだ、そのはずだ。そうでなければ……………」
「いきなりなんだ?」
「自我が揺らいでるんだろ。
「
「あぁ、
「なんなんだ、それは?あの姿は百目という妖怪の能力の一つじゃ無いのか?」
「ある意味ではそうだ。妖怪の根底には人間の想像があるのは分かるよな?」
「夜道で足に何かが触れる恐怖からすねこすりが生まれたような物か?」
「そんな感じだな。信仰の薄れた神が妖怪となる場合もあるが多くは恐怖や教訓などが元だ」
文明が発達していない時代によくある事ではあった。
理解出来ない現象を超常の存在が原因とするのだ。
描かれた目的が分からない絵に神秘性を見出し、物語が与えられて妖怪となる時もある。
妖怪が生まれる時は何かしらの畏怖や恐怖が元となる。
「一部の妖怪はその身を元となった概念に近付ける事で霊格以上の力を発揮する。だが、目の前のこいつは完全に概念に成り果てているのさ」
「そういう事か。それで
殿下も納得する。
妖怪から概念となり存在としての格が上がったと考える者もいるだろう。
だが、それは個体から
故に混世魔王は伏目の事を
実際”概念昇華”した妖怪は段々と自我が消えると言われている。
「何はともあれ、視たい物は視れました。今日のところは立ち去るとします」
それだけ言うと
浮き出ていた眼球が見開くようにして砕け散って
「で、どうする?」
「放っておけばいいだろ。アレじゃ俺達の事も興味が続くかどうか」
「不安要素といえば不安要素だが危険度は低いか」
「問題は俺達の動きに対して
同意するように一同は苦笑いをするのだった。
◆◆◆◆◆
_____此れは、その後の話。
殿下が投獄されていた牢屋が破られていた事が知られたのは、半刻ほど経った後のこと。
此れより数年間、彼らが表立ってコミュニティを襲ったという記録は存在しない。
だが不可解なことに、此れよりすぐ旧” ”が封印していたと思われる魔王の封印塚が次々と破壊されるという事件が発生した。
激しく争った跡もあれば、封印塚が壊されただけというものもあったが、これらの事件には共通の出来事が重なっていた。
封印を解かれたはずの魔王は、何処のコミュニティを襲うこともなく人知れず姿を消していたのだった。
この封印塚が壊されるという珍事件は目立った被害も無かったことで調査は一年ほどで打ち切られ、それから半年後には誰の記憶にも残らなかったという。
◆◆◆◆◆
ハァハァ、と伏目は激しく息を吐きながら立っていた。
誰かに視られるという概念から暗闇から誰かに視られるという形に特化して”概念昇華”した伏目はもはや”影”と”百の眼”だけが本体であった。
眼は潰されても時間を掛ければ復活する。
ほぼ不死身と言ってもいい存在と化していたが依代としての体は必要だった。
その体は何でもいいのだが伏目はこの体に、
今更何か変わるわけでも無いがそれでも依代を変える事は出来無いのであった。
それゆえに殿下達の前では動揺したがこの体に意識が戻れば一定の落ち着きだけは戻るのだった。
「無様な姿ね、伏目」
「何故此処にいる、座敷童子!!」
突然の声を掛けられ、動揺していたがゆえに素で声を上げてしまった。
しまった、というように口を手で塞ぐ伏目。
その様子に紅葉はクスクスと笑う。
「あら。素を出すとは珍しいじゃない、
「何をしに来たんですか、
どうにか何時もの調子に戻って対応する伏目。
紅葉はその様子すら面白そうにクスクス笑う。
「ちょっと警告しに来ただけよ」
「私と貴女の目的は交わらないはずですが?私は若様の生き様を視たくて、貴女は若様の末路を視たい」
「そこは分かってるわ。だから、こう言うのよ。あまり美味しいとこだけを摘まもうとすると身を滅ぼすわよ」
「何のことでしょうか?」
「生き様を面白くする為なら裏切りすらするでしょう?あいつはそれを
「なら、いいのでは?」
「あまりやり過ぎると
誰に、とは言わなかった。
だが、それは悟ではないことは分かった。
ようは見物人が盤面に手を出し過ぎれば駒を動かしている”誰か”が消しにくるということだろう。
「警告感謝しますよ」
「黒幕気取りも程々にすることね」
それだけ言って紅葉は姿を消した。
伏目は壁に背を付けながら額に手を置く。
「黒幕なんて気取っていませんよ。私はただの見物人ですから」
皮肉気に呟くと口元を歪ませるのだった。
緩んでいたネクタイを締め直すと伏目は何処かに歩き出すのだった。
ある意味伏目回でした!
概念昇華は書いた通り、妖怪が生まれる元となった概念に成り果てることです
天狗や山姥の場合は山の神秘性、雪女の場合は凍死などです
割と大雑把な枠になる物あるかもです
それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます