問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!?   作:天崎

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憤怒の睨み合い

「なあ、ぬらりひょん。お前はどう思う?」

 

釈天はいもしない男に語り掛ける。

その言葉にクロアが目を見開く。

ラプ子は特に驚きはしなかった。

彼ら三人は先程までアジ=ダカーハの正体やディストピアについて話していた。

それが一段落付いた所で唐突に言ったのだ。

けれど、その言葉には明確な答えが返ってきた。

 

「知るか、そんなもん。儂にとってはどうでもいいことじゃ」

 

「つまらん答えだな」

 

ぬらりひょんがいること自体には疑問は無かった。

この男なら盗み聞きしているだろうと釈天は確信していたのだ。

とはいえ、ぬらりひょんにとっては目当ての話が聞けなくてどうでもいい雰囲気であった。

 

「儂はもっと面白味のある話が聞きたかったんじゃよ。そう、それこそ太陽主権戦争とかのな」

 

「お前は何でそれを

 

「うぃーす。釈天はまだ起きてるか?」

 

その声と共に部屋にいた一同は障子に目を向ける。

ラプ子は即座に姿を消し、クロアは箪笥の陰に擬態する。

ぬらりひょんは屋根の上から姿を消す。

釈天はすぐに顔をだらしないオヤジに変えた。

 

「来たか。入っていいぞ!!」

 

「Y、YES!!そ、それではお邪魔いたします!!」

 

「同じく、失礼いたします」

 

「失礼するわよ~」

 

「…………失礼します」

 

御門釈天の部屋に入って来たのは十六夜だけでは無かった。

湯上りの浴衣を着ながら十六夜に引っ付こうとする不知火狐川。

何か思考が此処を離れているような様子の女王騎士フェイスレス。

何故か疲れた様子の阿良々木暦とその影の中にいる忍野忍。

そして、かなり緊張している黒ウサギが同伴しているのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

数分前。

 

(ペストを救うには、既に手遅れなのだけどな。相変わらず詰めの甘い奴らだ)

 

盗み聞きしていた詩人(ノイズ)が御門釈天達を内心で嘲笑いながら席を外そうとした時だった。

その人外が目の前に現れた。

 

「やぁやぁ、奇遇だね。こんなところで出会うのも何かの縁だ。どうせだから少し話さないかい?」

 

人外は詩人(ノイズ)をはっきり認識しながら言う。

その笑みは本能的に詩人(ノイズ)の神経を逆撫でする。

だが、詩人(ノイズ)は小さく息を吐いてうんざりしながら言う。

 

「なんで、お前と話さなきゃならない?」

 

「どうせ何か仕掛けるつもりなんだろ?それなら盤面を眺める者同士少しは協力しないかい?」

 

「お前を信用出来ると思っているのか?」

 

「そんな物は必要かい?」

 

「………必要は無いな。どの道利用するだけだからな」

 

「そうだろう?なら、上辺くらいは情報交換しようぜ」

 

「だが、お断りだね」

 

「それは残念」

 

「お前はどうせ今の話も盗み聞いてたんだろうし、その先すらも視えてる(´´´´)だろう?」

 

視て(´´)は無いよ。そんなことをする意味は無いからね」

 

「そうかよ。何はともあれ俺達は俺達なりのやり方がある。わざわざそれをお前と共同でやる必要は無いだろ?」

 

「本当にそう(´´)かな?」

 

人外は怪しく笑って言う。

だが、詩人(ノイズ)はつまらなさそうに息を吐く。

 

「その手にはのらねぇよ」

 

「ま、僕達は別に利害が一致してるわけでも無いしね」

 

「お前の目的に利害も何も無いだろう?」

 

「意外とそうでも無いかもしれないぜ?」

 

「全部平等ってのがお前ら(悪平等)だろ?」

 

「懐かしい呼び方をしてくれるじゃないか」

 

「ともかく、俺は話す気は無い」

 

「だろうね。僕としてもそうだろうとは思ってたよ」

 

「なら、今までの会話が丸っと無駄だろうが」

 

「無駄では無いさ。ただ話すだけでも分かる物はあるのさ」

 

心の奥底に何を抱えてるか分からない瞳で不気味に笑う。

それでも詩人(ノイズ)は気にする事もしない。

互いに手の内を見せずに互いの思惑を読み合いながらも彼らは手を取り合う事すらせずに自身の目的の為に動く。

どちらかが何を言うまでも無く彼らはほぼ同時に姿を消すのだった。

彼らが御門釈天達の話を聞いていた事で後の大局を大きく左右することになるのは、これより数年後の話である。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「なぁ、球磨川。お前は本当に頭首をやる気か?」

 

『突然なんだい?』

 

球磨川と皐は現在酒場で悟と話していた。

酒場と言っても球磨川は一杯でも飲めば即倒れかねないのでミルクだ。

悟はグラスを呷りながら言う。

 

「いや、ただ単に聞きたくてな。お前は頭首を素直にやるイメージが無かったから」

 

『僕としてはやるにしてもやらないにしてもどちらでもいいんだけどね。けれど、暦君は色々とやる事あるみたいだし、十六夜君も柄じゃ無さそうだしね。そういうのを置いといても女の子達が困ってるからにはやらないとだろ?』

 

「らしく無い言葉に聞こえるな。まぁ俺が勝手な印象抱えてるだけかもしれねぇが」

 

『それに僕としても安心院さんに振り回されてばかりはいられないからね。彼女に対抗する為にもちょっと頑張ろうかと思ってるんだよね』

 

「そうか、それならお前らしくはあるな。とはいえ、お前は頭首の仕事出来るのか?」

 

『皐君が補佐をしてくれるから大丈夫だよ』

 

「そう言って俺にほぼ丸投げする気だろ?」

 

『悟君の近くにいたんだし、そういう事にも慣れてるだろ?』

 

「慣れてるとやるとじゃ大分違うんだよ」

 

苦笑いで答える皐。

その様子をクスクス笑いながら何時の間にか悟の隣に座っていた紅葉が一言投げ込む。

 

「組織的な意味じゃ若頭とはいえ何の権限も無い悟と大連盟頭首補佐の皐とかなり差が出たわね」

 

「それは言うなよ!?」

 

「事実じゃない」

 

『紅葉ちゃんは何時も通りだね』

 

「俺らも立場的な意味じゃそこまで権限無いだろうけどな」

 

沈み込む悟を他所に紅葉は皐の方に顔を向ける。

その顔は珍しく意外そうな顔をしていた。

 

「貴方達自分たちがどうしてその立場を押し付けられてるか理解してるわけ?」

 

『一応はね』

 

「こいつの巻き添えくらったに近い事は」

 

「なるほど。貴方達も案外馬鹿では無いのね」

 

「それを直接言うか」

 

「気を使う必要があるかしら?」

 

『無いね』

 

頷く二人。

紅葉は変わらずクスクス笑う。

悟はようやく立ち直る。

 

「まぁ立場はそろそろ親父に直談判していい頃合いだとは思うが」

 

「またボコられに行くのか」

 

「今度こそ一撃は当ててやるさ」

 

『目標小さく無い?』

 

「これが果てしなく大きいから越えるのも苦労してるんだよ」

 

そんなこんな四人は話しながら酒を進めるのだった。

何だかんだ言って遠慮無く接せる者というのは少ない。

ゆえに彼らは笑い合う。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

十六夜、暦、フェイスレスは座敷の中に足を運んで下座に座る。

黒ウサギと狐川は御門釈天の隣に座る。

黒ウサギは緊張しながら酌をして、狐川は懇切丁寧に酌をする。

どうもどうやら女性に感謝されるのには慣れていないらしい釈天はバツが悪そうな顔をして礼を言うくらいなら酌をしろといったのだ。

とはいえ、狐川としては結構気まずい状況なので黙って酌してた方が楽なようだ。

 

「暦と言ったな?お前は本当にコミュニティを離れるんだな?」

 

「そうです。殆ど個人的な事情ですけど”ノーネーム”として戦うよりも先に片付けないといけない事が出来てしまったんです。僕達としてはそれを片付けた上で”ノーネーム”の力になりたいんです」

 

忍野メメが残していた手紙と伝言、それを読み解いた結果だった。

阿良々木暦と忍野忍は外界に行ってとある問題を片付けなければならないのだ。

 

「それは同士の納得の上でか?」

 

「一応皆には話して納得してもらったつもりではあります」

 

「黒ウサギ。お前は納得してるんだな?」

 

「…………YES。勿論寂しいですが、これは暦さんと忍さんが自分で考え決断した結果です。ならば、その背中を応援するのが黒ウサギです」

 

「そうか。十六夜は?」

 

「阿良々木はともかくロリ吸血鬼の方は止まらねぇのが分かってるからな。それにこいつらの事をこいつらが解決するのに文句は無い」

 

二人の言葉を聞いて納得したように頷く釈天。

その上で暦は釈天にこう頼んだ。

 

「それで外界に行く手段として、もし可能であれば御門さんに女王への謁見を取り成して欲しいんですが…………」

 

外界に行く手段は幾つかあるのだが目的の世界の目的の年代に行くには女王の手を借りるしか無いらしい。

けれど、それを聞いた釈天は うげ、と悲鳴のような声を上げた。

 

「女王………女王かあ。悪いけど、”クイーン・ハロウィン”とは面識がねぇな」

 

「そうなんですか?」

 

「かなりの美人とも聞いてるし是非ともお近づきになりたいところだが、俺は昔っから太陽神とは相性が悪いんだよ。仲介人がいれば話も通せるかもしれないが…………ああ、そうか。だから女王騎士が居るのか」

 

フェイスレスに視線が集まる。

此処に彼女を連れてきたのは仲介人の役をお願いしたかったからだろう。

視線が集まった瞬間、フェイスレスが仮面の下の顔に少々陰りを見せ、小さく息を吐いたことには誰も触れない。

黒ウサギは酌をしながら、御門釈天に懇願する。

 

「無理は承知でございます。如何に女王が大魔王といえども帝しゃ」

 

「ん?」

 

「御門釈天様の申し出であれば無下に出来ないはず。我らが同士の為、そのご威光に縋らせていただけないでしょうか………………?」

 

ふむ、と御門釈天は考える素振りを見せる。

 

「他ならぬ英雄たちの頼みだ。それぐらいなら引き受けても問題は無い。女王騎士も仲介役を引き受けてくれるか?」

 

「えぇ、構いませんよ。私もそれくらいは引き受けますよ。これで皆さんと関わるのも最後でしょうし」

 

魂の抜けたような声で淡々というフェイスレスに一同は違和感を覚える。

そして、それに一番の反応を示したのは狐川だった。

何かが割れる音と共に狐川は立ち上がった。

よく見ればその手からは血が垂れていた。

どうやら酒瓶を握り潰したようだ。

 

「あぁ………駄目ね、全然駄目。ちょっとイラつくってレベルじゃないわ」

 

「何がですか?」

 

立ち上がった狐川は憤怒の表情でフェイスレスを睨み付け、フェイスレスは仮面の奥の瞳で見つめ返す。

狐川は睨み付けながら歩き、フェイスレスに近付いていく。

 

「何があったのか、否、何があるのかは知らないけど。その声はイラつく。まるで自分に(´´´)対する(´´´)全てを(´´´)諦めた(´´´)ような(´´´)その声が気にくわない。何でそんな諦めた感じになれるのかしら?」

 

「貴女に………貴女に何が分かるというんですか?」

 

微かな憤怒がフェイスレスの声に混じる。

狐川はそれでも止まらない。

自分を諦める、それは不知火の里で言彦候補にされ逃げた狐川としては許せない事だった。

フェイスレスとしても自分の事情を知りもしないくせに軽々とそういう事を言う狐川にイラつく。

 

「知らないわよ。そんな物は」

 

「なら、口出ししないでくらますか?これ(´´)は私個人の問題です」

 

「それでも気に入らない物は気に入らないのよ」

 

事情などは関係無い。

ただ諦めている、それだけが気に入らない。

だから、この場に和解の方法は無い。

ゆえに狐川はこういう。

 

「手っ取り早く喧嘩で片付けましょう?互いが互いを気に入らないのだからちょうどいいでしょう?」

 

「今この場で、ですか?」

 

「いや、ちょうどいいゲームがあるじゃない。”金剛の鉄火場”を舞台に争うとしましょう」

 

「いいでしょう。その喧嘩(´´)受けて立ちますよ」

 

互いの憤怒をぶつけて睨み合う。

女王騎士と狐憑きの少女はこうして喧嘩(決闘)を互いに誓うのだった。

勝利報酬も敗北による損害も無い。

ただの意地のぶつかり合いが双方に火を付けるのだった。

 

 





決戦前夜終了!
黒幕達の腹の探り合いに、女性の意地のぶつかり合いでした!

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