問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!? 作:天崎
活動報告にてアンケート実施中
______”金剛の鉄火場”・本戦当日。
舞台を映し出す巨大な壁と観客席。
黒ウサギは舞台の壇上に上がると、観客席に向けて笑顔で手を振った。
〈いよいよ”金剛の鉄火場”の本戦開始まで半刻となりました!!今回の審判役は”ノーネーム”所属の黒ウサギと!!第三桁”忉利天”よりゲスト審判で来ていただいた、御門釈天様の実況で進行させていただきます!!〉
________雄々オオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
黒ウサギが壇上に上がると、鉱山全体を揺らす歓声が起きた。
◆◆◆◆◆
「若頭、参加するのはいいけどやるからには
「ん?どういうことだ?」
護衛として付いてきていたがしゃに言われて目を反らす悟。
がしゃはその様子に重々しく息を吐く。
「若頭も一応百鬼夜行のメンバーなんですから多少はそういうのを気にしてくださいって事ですよ」
「言っても無駄よ。コレにそんな脳があるなら貴方達が苦労するはずが無いでしょう?」
「そうは言ってもな」
「ま、まぁいいや。俺は控室に行くから」
悟は隙を見てがしゃと紅葉の前から走り去るのだった。
「逃げたわね」
「逃げたな」
さすがに紅葉はゲームに参加しないので残っているのだ。
そして、二人同時に呆れたように言うのだった。
紅葉は何処かに行こうとするがその前に呼び止められた。
「お前はゲームの間どうするんだ?」
「私は私で席を取って観戦するわよ」
そう答えて紅葉は姿を消す。
神出鬼没が生態みたいな物である紅葉は文字通り消えるように姿を消した。
がしゃは息を吐きながら自身で取っておいた席へと歩いていく。
「そういや、伏目の奴はどこいったのやら………」
適当に呟きながらももう一人の護衛担当を思い浮かべるのだった。
◆◆◆◆◆
「皐ならもうちょっといい席取れたんじゃないの?」
隣の席に座る夏歩がそんな事を言うと酒瓶を傾けていた皐が頭を掻きながら答える。
「そういうのは職権濫用だろ?」
「それはそうだけどね」
「それに、俺も球磨川もあんまり立場の力を雑に使っていいポジションじゃないだろうしな」
「何で?」
「いや、なんとなくな」
答えを濁しながら皐は酒瓶を傾ける。
心中でこの後に行われる開幕の言葉がまともに終わるか若干不安だと考えていると唐突に夏歩がこんな事を言い始めるのだった。
「あのね、皐」
「なんだ?」
「私も近い内に”ノーネーム”に移籍するから」
口に含んでいた酒を思いっきり吹き出す。
これは皐が想像すらしていない言葉だった想定外にも程があると内心思いながら夏歩の目を見る。
夏歩は微かに頬を赤めながら見つめ返している。
「えーと、何がどうしてそうなった?」
「私が皐の傍にいたいからだよ」
直球ストレートを放り込まれた。
困り果てて片手で額を押さえる。
夏歩は答えを待つようにじっと黙っている。
(あー・・・・どうすんだ、これ。いや、別に夏歩の事は嫌いじゃねぇしむしろ好きだが。いきなり過ぎだろ。あの馬鹿ならやすやす答えを…………出さねぇな。あの野郎はむしろこういうのだけは避けるヘタレだ。今はあの馬鹿はどうでもいいとして本気でどうすんだよ、これ!!)
かなり混乱したがやがて一つの結論に辿り着く。
自分にやりたいことなど無い、そう思ってたし今でもそれには変わりない。
球磨川や悟を見ていると、どうも自分がくすんで見えた。
だけど、何かを面倒と思わずに怠惰に逃げたりせずに此処まで真剣に悩むのは初めてな気がしたのだ。
だから、答えは決まった。
「俺のやりたいことって案外こういう方向なのかもな」
「?」
「こっちの話だ。まぁ何はともあれ皆、歓迎すると思うぞ。…………もちろん俺も」
それを言う時、皐の頬は珍しく微かに赤くなるのだった。
夏歩はとびきりの笑顔を見せると頭を皐の方に乗せてくるのだった。
皐は自身の心が多少温まるのを感じて微かに口元を緩めるのだった。
◆◆◆◆◆
______そして、開幕の時間になった。
観客席は一つの空きも無く満席だった。
千客万来とはまさにこの事だろう。
(十六夜様達の戦いを見て、将来的に
ひょコン!! と狐耳を立てて握り拳を握るリリ。
彼女達も売り子として会場を走り回っていた。
ちょうど品物が半分ほど捌けたその時。
開幕の銅鑼が一つ鳴り響いた。
〈大変お待たせいたしました!!”金剛の鉄火場”の本選を始めさせていただく前に、我ら”ノーネーム”の新しい頭首________球磨川禊から開幕の言葉を頂きます!!〉
________雄々オオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
割れんばかりの喝采の中、球磨川禊が進み出る。
壇上に立った球磨川禊は、マイクを渡されると何時ものような調子で第一声を口にした。
『あははは。正直言うと僕なんかがこんな大役を任されるなんて荷が重いなんてレベルじゃないんだけどね。いや、本当に僕なんか”ノーネーム”でも最弱と言っていい程だよ?アジ=ダカーハとの決戦の時なんて現場にいなかったしね。本来ならこういう役は善吉ちゃん辺りが適任なんだけどね。僕が前に出たってきっと士気が下がるだけだろうし。君達、本当にこんな僕を頭首にする気かい?』
第一声からどんどん下がっていくテンションに観客席がどよめき始める。
「球磨川さん!?」
予想外の内容にさすがの黒ウサギも小声で叫ぶ。
とはいえ、球磨川を、球磨川禊を知っている者達は呆れた顔や苦笑したりしている。
『とはいえ、荷が重くても向いて無くても投げ出しはしないけどね。彼女も彼も変われたんだ。僕だって変わっていかなきゃいけない。それに一回勝ったくらいじゃ僕は満足出来ないしね。ああ、これだけ言っても分からないよね。実のところ僕はとある一回を除いて勝負に勝てたと思った事が無いんだ。生涯の中でね。だけど、それでも僕は勝負には勝ちたいと思っている。負け続きだからって僕は諦めたりはしない。でも、僕だけが勝ったところ今は意味が無い。だから、僕は頭首として
球磨川は観客に、そして仲間に向けて言い切った。
それに対して帰ってきたのは盛大な拍手と歓声だった。
球磨川禊の声は、言葉は確かに届いたようだ。
〈素晴らしいスピーチありがとうございました!!それでは、これより”金剛の鉄火場”本選を開始します!!〉
黒ウサギの声と共に大銅鑼の音が、洞穴全域に響き渡る。
◆◆◆◆◆
球磨川が舞台裏に来ると、そこには安心院がいた。
『本当に神出鬼没だね、君は』
「さっきのスピーチは中々良かったよ。君も言うようになれたじゃないか。僕としても嬉しい限りだぜ」
『そう言って貰えるとあるがたいよ』
「さて」
何時も通りの笑顔を浮かべながらも安心院さんの声の雰囲気が変わる。
球磨川は特に身構えることもせずに聞く。
「ああ言ったからには僕にも勝つって事でいいのかな?」
『そうだね』
そこで一旦言葉を切る。
そして、安心院を正面から見た上で口を開く。
「君にもいつか勝って見せるよ、安心院さん」
括弧付けずに格好付けずに正面から言い切った。
それを聞いた安心院さんは何処か嬉しそうに笑う。
「そうかい。じゃあ、その時を楽しみにしてるぜ。球磨川くん」
楽しそうに言いながら姿を消すのだった。
球磨川も笑みを浮かべながら自分の観客席へと歩いていくのだった。
はい、ゲーム開幕でした!!
球磨川さん自体はゲームに参加してないのでスピーチだけになりました
それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!!