問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!? 作:天崎
フェイスレスは本戦が始まる前に安心院と会っていた。
いや、目の前に唐突に安心院が現れたのだ。
「何でしょうか?」
「答えを聞きに来たんだよ」
「もちろんお断りしますよ」
「へぇ?いいのかい?」
「貴女のような者に魂を売る程堕ちてはいませんよ」
「その割には僕が提示した条件を満たす気があるように見えるけど?」
安心院が提示した条件、それはノーネームの面々か悟達百鬼夜行組の誰でもいいから倒すことだ。
下手すれば殺しても構わないという条件である。
意図が読めない条件だがフェイスレスは意図など無くてただこの人外が楽しみたいだけだと結論付けていた。
もしくは、自分を彼らが成長する為の糧に使おうとしているだけかもしれないが。
「それは偶然ですよ。アレは個人的な決闘です」
「まぁそれでも条件を満たせば僕は願いを叶えて上げるんだけどね」
「貴女は何処までも勝手ですね」
「僕は平等なだけさ。それから、僕があげたスキルはただのサービスだから気にせず使っていいよ」
言うだけ言って安心院は姿を消した。
断ったことに後悔が無いわけでは無い。
もしかしたら本当に最後の希望だったかもしれない。
それでも、あの人外に魂を売る事だけはプライドが許さないのだった。
◆◆◆◆◆
大銅鑼の音が鉱山中に響き渡る。
フェイスレスは既に連接剣を構えて臨戦態勢に入っている。
足音には細心の注意を払い、周辺を警戒し、狐火による奇襲にもそなえる。
だけど、相手は更なる予想外の手を使ってくる。
頭上で何か破壊音が響いたと思った時には遅かった。
「先手必勝!!」
天井が崩れると同時に狐川が瓦礫と共にフェイスレスの頭上に降ってくるのだった。
◆◆◆◆◆
狐川は考えた。
勢いに任せて喧嘩を売ったはいいが実力的に敵うかどうかは微妙だった。
なので、正面から戦うことは避ける事にした。
ついでに賭けに出た。
戦いは初撃が肝心でもある。
そこを予想外のやり方で奇襲出来たら多少は優位になるかもしれない。
だから、慣れない神通力を駆使してフェイスレスの居場所を探り、彼女の頭上に出れる通路を探し当てるのだった。
探し当てる前に出会ってしまったら不味かったがそこは上手くいった。
あとは勢いのままだった。
予選と同じ要領で床に狐火を潜り込ませ、破壊し、一気に崩落させた。
そして、フェイスレスの頭上へと飛び出た。
既に狐面を被り、焔の尾を纏わせている。
狐火を右足に集中させ、瓦礫を盾にしつつフェイスレスに向けて蹴りを放つ。
「先手必勝!!」
とはいえ、全てが上手く行くわけでは無い。
障害物である瓦礫をすり抜けて連接剣による蛇蝎の剣閃が狐川へと向かってくる。
体を捻るが躱せるタイミングでは無かった。
だが、相手も奇襲に完全に対処出来て無いがゆえにか狙いが多少は甘くなっていた。
そのおかげで左肩を抉っていくに留まった。
返す刀に真下にある瓦礫を砕いて焔の蹴りを叩き込んだ。
体を捻った影響で座標はズレたがフェイスレスの左腕に傷を付けるのは成功した。
着地すると同時に足元を爆発させて距離を取る。
そのままフェイスレスに向けて炎槍を放つ。
ダメージは期待していなかった。
狙いは既にフェイスレスが構えていた弓で追撃をさせない事だった。
フェイスレスは一発だけ矢を放つと同時に身を捻る。
紙一重で炎槍を回避する。
咄嗟に放たれた炎槍だけにサイズはそこまででは無い。
だから、回避は難しくは無かった。
狐川が放たれた矢を焼くのとフェイスレスの背後の通路に着弾した炎槍が爆発するのはほぼ同時だった。
背後から来る爆風に揺さぶられながらフェイスレスは連接剣を構える。
狐川も両手に炎剣を出現させて構える。
「奇襲の成果はそこそこかしら?」
「この程度で支障が出るとでも?」
「でしょうね!!」
叫びながら狐川はフェイスレスに飛び掛かる。
フェイスレスは神速の剣閃で迎え撃つ。
だが、剣閃は狐川の体をすり抜けていく。
「蜃気楼ですか」
「当たりよ!!」
狐川は天井に足を付け、足元を爆破させて更に加速する。
一気に間合いを詰めて炎剣で斬り掛かるが紙一重で避けられた上で返す刀で剛槍の突きが放たれる。
その前に片手の炎剣を地面に突き刺していた。
炎剣から焔の根を広げ、フェイスレスの足元を崩す。
突きの軌道がズレたところで上へと飛び上がり、剛槍を足場にもう一度跳ねて蹴りを放つ。
顔面に蹴りが入る前にフェイスレスは狐川の足を掴み取り、壁へと叩き付ける。
「かはっ」
背中に走る激痛に耐えながら目の前で火球を爆裂させる。
小規模とはいえ至近距離の爆発によってフェイスレスは吹き飛ばされて壁に叩き付けられる。
焔の防壁で爆風をカットしていた狐川は起き上って追撃をしようとするがその前に蛇蝎の剣閃が放たれる。
ほとんど反射的にしゃがんで回避すると転がるように距離を取る。
「やっぱ隙無いわね」
「…………」
「一つ聞いていい?」
「何ですか?」
互いに間合いを測りながら話す。
連接剣の間合いからは出ているが矢は十分に届く。
狐火も十分に届く距離である。
様子見を兼ねて話す。
「私達と関わるのは最後見たい事を言っていたけどどういう意味?」
「そのままの意味ですよ。期限までに女王とのゲームをクリア出来なければ女王の尖兵として外界に送られる。人格を剥いだ転生という形でしょう。その期限はもうすぐそこなんですよ」
「なるほど、なるほど。だけど、ゲームクリアの材料は見付からずに諦めかけていたわけ。なんだ、
挑発混じりに言う。
だけど、歯軋りするような音が響くだけで動きはしなかった。
「貴女には分からないでしょうね。貴女は私を知らないのだから」
「えぇ、知らないわよ。でも、人格を剥がれる云々は別なのよね」
かつての事を思い浮かべながら言う狐川。
とはいえ、フェイスレスもうかつに動いたりはしない。
この場にはいない存在が一つある。
アルマティアだ。
狐川がまだそのカードを切っていないのだからフェイスレスはそれを警戒し続ける。
「やっぱ挑発には乗らないか。なら、もう押し切る方向で行こうかしら」
小声で呟きながら狐川は一歩踏み出した。
同時にフェイスレスも身構える。
「行くわよ!!」
両手に炎剣を構えてフェイスレスに向けて駆けて行く。
フェイスレスは弓を構えて迎え撃つ。
それらとほぼ同時にフェイスレスの周囲の岩盤のヒビから焔の刃が放たれた。
「そう何度も引っ掛かると思いますか」
しかし、それを読んでいたフェイスレスは後ろに飛び退く。
飛び退きながらも矢を放つ。
狐川はフェイスレスを追うように刃を発生させながら自身も向かっていく。
矢はほぼ勘と本能で回避と防御をしていく。
飛び退きながらでは放てる矢にも限界があるのだ。
「行け!!アルマァァァァァァァァァァ!!」
その叫びと共にフェイスレスは足場が揺れるのを感じた。
剛槍に装備を変えてあえて前へ出る。
焔の刃を剛槍で弾き飛ばしながら前へ出る。
同時に先程までフェイスレスがいた場所が膨大なエネルギーの奔流に飲み込まれる。
フェイスレスは振り向かずに前へと進む。
「上の次は下からの奇襲ですか。芸が無いですね」
「いや、そうでも無いわよ?」
言いながら間合いを詰められ掛けている狐川は足元を爆破して煙幕を張る。
フェイスレスは構わず土煙を剛槍で払い飛ばす。
だが、目の前には誰もいなかった。
「え?」
「上手いこと掛かってくれたわね」
背後から狐川の声が響く。
何が起きたか把握出来なかった。
横を通って背後に回れる程でも無かったはずだ。
それでも、狐川の声は背後から聞こえた。
そこでフェイスレスは前方に大きめの穴があり、その先で稲光が走るのを見た。
それで状況を把握する。
「先程のはアルマの突進では無かったという事ですか!?」
「そういうこと!!」
種は簡単ではあった。
狐川はアルマと別行動する前に圧縮した炎球をアルマに預けていた。
狐川とリンクしているアルマなら自身の力を纏わせた上で発動させる事も可能だ。
炎球を開放して膨大なエネルギーを上方へと打ち上げたのだ。
その間にアルマは予め掘っておいた通路を通って狐川の背後に出現。
通路作成の音は爆音が掻き消してくれていた。
アルマは後方へと下がり突進の為の溜めをし、狐川は煙幕を張る。
そして、フェイスレスが消えた事に困惑している隙にアルマが来た道と炎球で開けた穴を通りフェイスレスの背後へと回り込んだのだ。
「これで終わりね!!」
前方からはアルマの突進、後方からは炎を纏いし狐川、更には周囲の岩盤から先程同様焔の刃。
逃げ場は無かった。
普通ならばここで万策尽きただろう。
だが、フェイスレスは並の相手では無い。
彼女はギフトカードに連接剣をしまう。
それにどういう意図があるかは狐川には分からない。
だが、何かをする前に倒す。
その為に動きは緩めない。
フェイスレスは静かに呟いた。
「見せて上げますよ、私の権能の根元を………」
開戦でした!
しょっぱなから女の戦い!
ごり押し出来る相手でも、正面から勝てる相手でも無いので策を使うのでした
それはそれでごり押しに近いですが
それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!!