問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!?   作:天崎

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骨を絶って肉を得る

 

(ヤベェ…………思いっきり外れ引いた)

 

悟は全力で冷や汗流しながら極力気配を消して物陰に隠れていた。

その視線の先には忍野忍がいた。

忍はただ歩いているだけである。

それでも、その気配だけで圧倒的に気圧されていた。

”金剛の鉄火場”が開幕した直後に悟は洞窟内を駆けた。

悟の狙いは決まっていた。

それを果たすには急ぐしか無かった。

だが、最初に見付けた参加者(プレイヤー)が忍だったのだ。

混血とはいえ妖怪である悟は忍の危険度を肌で感じ取っていた。

怪異の王、吸血鬼、今は存在として弱体化してるとはいえその存在の大きさは悟より遥かに上だ。

その上今では終末論に近い存在ですらある。

怪異殺しである妖刀・心渡も合わせれ悟にとってこのゲームでもっとも出会いたくない相手であった。

その忍が目の前にいるのだ。

汗も滝のように流れるだろう。

 

(戦ったら死ねる…………それだけは絶対に避けねぇと)

 

足音を消して慎重に離れようとずる。

だが、それも全て無駄に終わる。

一気に距離を取ろうとした時だった。

 

「おい、混血の小僧」

 

「ッ!?」

 

その一言だけで血の気がかなり引いた。

はっきり言えば状況はかなり絶望的になった。

 

「返事をしないなら消し飛ばすぞ」

 

「分かったよ!!姿見せればいいんだろッ!?」

 

「そこまでビビる事も無いじゃろう。儂はただ、金髪の小僧に伝言を頼みたかっただけじゃからな」

 

「見逃すってことか?」

 

「この場は、な」

 

どんな伝言かは知らないがこれは悟にとっても好都合であった。

悟は伝言を請け負うとそそくさとその場から逃げるように駆けていくのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

十六夜はルイオスとそれに使役されているアルゴールに追われていた。

鍾乳洞そのものがアルゴールとなり、牙が、爪が十六夜へと襲い掛かる。

 

「ハッ…………!!ペルセウス座が消滅したときにアルゴールも消滅したものだと思ってたんだがな!!どういうことだルイルイ!!」

 

「アジ=ダカーハ戦で得た功績が評価されて、三分の一だけ戻って来たんだよッ!!召喚は出来ないが、アルゴールの権能を行使するくらいは出来る!!何時かの雪辱、此処で晴らさせてもらうからな!!あとルイルイ言うなッ!!」

 

飛翔する具足で縦横無尽に飛び回りながら機会を窺うルイオス。

しかし、十六夜と戦っているのは彼だけでは無かった。

大嵐を纏って大気を踏みしめる鷲獅子(グリフォン)が十六夜を強襲した。

飛び上がって悪魔の牙を避けていた十六夜はそれを真正面から受ける。

 

「まだ起こってんのか。いいじゃねぇか、帝釈天から神格付きの翼を貰えたんだから。何の不満があるんだよ」

 

〈誰がそんなことをしてくれと頼んだッ!!私に取ってあの傷は誉れであっても恥では無いッ!!お前の命と”アンダーウッド”の勝利に奉じたと思えば、尊いとさえ感じていた!!________それを何だ、人の了承も得ずに勝手に直しおってッ!!〉

 

「だーかーらー、それだと俺の重荷だって言ってんだろうがッ!!何時までも人生に負債抱えるのは趣味じゃねぇんだよ!!そもそも傷を負ったときに”この借りは何時か返す”とも言ったよな!?」

 

〈だが返せとは言って無いッ!!〉

 

「うるせぇよブラック高利貸しッ!!」

 

何時になく感情的になる二人。

ルイオスは両者の言葉を理解出来ていないが、何やら本気で怒鳴り合っている雰囲気だけは理解出来た。

とりあえず収まるまで待つことにして腕を組む。

その背後から雰囲気など一切関係無く我を通す男が完全に気配を消して現れる。

 

「楽しそうにしてんな、俺も混ぜろよ!!」

 

それは完全な意識外からの奇襲だった。

まずはルイオスがグリーに向けて投げ飛ばされる。

完全に予想外、この場に三人しかいないと思っていたルイオスは驚きながらも目の前に迫る鷲獅子(グリフォン)への対処を迫られる。

 

「うわッ!?」

 

〈ぬッ!?〉

 

大嵐と悪魔化した鍾乳洞がぶつかり合う。

互いに咄嗟ゆえに力加減が出来ず、周囲へ余波が飛んでいく。

もちろん一瞬前までグリーと交戦していた十六夜の方にも余波の衝撃波飛んでいく。

跳ねて回避した十六夜へと不可視の蹴りが入る。

蹴られたことは認識出来ていた。

しかし、誰からまでは分からなかった。

空中ゆえに回避も出来ず吹っ飛ばされる。

背後にあった通路へと転がり込んで勢いをどうにか殺した。

上半身を起き上らせた所で寒気を感じ、それを殺気だと判断する。

ほとんど勘任せで右腕を振り上げる。

金属が砕ける音と共に襲撃者の姿が見える。

 

「やっぱりお前か」

 

「見えてない状況で刀を叩き折るとかやっぱ凄いな」

 

「どの道、今はそういう刃物は効かないけどな」

 

アジ=ダカーハ戦の時に殿下から譲渡された獅子座の太陽主権の力で刃物は効かないのだ。

姿を見せたのは悟だった。

十六夜としては予想通りではあった。

あのメンバーに対して気配を完全に消して奇襲出来るのは参加者の中では悟だけであった。

 

「わざわざルイルイとグリーから遠ざけたって事は何かあるのか?」

 

「伝言が一つな。忍野忍からだ。出会うまでに他の相手は片付けておけだとさ」

 

「一対一でやろうってことか。それで、お前はただ伝言を言いに来ただけじゃ無いだろ?」

 

「そりゃな。提案なんだがしばらく共闘しないか?二対一より同数のがやりやすいだろ?」

 

「ブラフだな。お前の狙いはそんなもんじゃ無いだろ?」

 

「さぁ、どうだか」

 

「大方共闘の振りして俺のギフトカード奪うつもりだろ?」

 

「………チッ、やっぱお前相手に騙しは無理か」

 

「いや、今のは狙いスケスケだったろ」

 

「かもな」

 

「交渉決裂したからには分かってるよな?」

 

「あぁ」

 

十六夜が拳を構えると同時に悟はギフトカードから新たな刀を取り出す。

刀を峰を向けた上で下段に構える。

刃を十六夜に向けても意味が無いからこその構えだった。

互いに攻撃のタイミングを計る。

下手に動けばやられる状況である。

 

「あぁ、俺からも伝言なんだが」

 

「何だよ」

 

「俺は少しコミュニティを離れて旅に出る」

 

「…………そうかい」

 

「意外そうな顔だな」

 

「いや、最近のお前を見てたらな。何かあったか?」

 

「ちょっと釈天と話したくらいさ」

 

「なるほど」

 

実際何があったかは分からないが吹っ切れるような事があったのは察した。

なので、あとは遠慮無しにやるだけだと刀に力を込める。

それとほぼ同時に鉱山が揺れる。

それによって天井から石ころが落ちる。

石ころが床に落ちると同時に二人は動いた。

十六夜はただまっすぐに右拳を放つ。

ただの拳でも十六夜クラスの身体能力が放つとなるとレベルが違う。

悟はそれに対して合わせるように刀を振るう。

十六夜の腕をなぞるようにして刀を擦り付ける。

悟の狙いは十六夜には読めていた。

だから、拳の軌道を微妙にズラしていく。

 

(ん?)

 

そこで十六夜は違和感を覚える。

悟の刀に合わせて拳の軌道をズラしたはずだが、まるでタイミングが(``````)早まったかのように(`````````)刀は拳に触れる。

直後に悟の左腕に凄まじい衝撃が走る。

覚悟していたとはいえ相当の衝撃であった。

左腕の骨にヒビが入ったと感じた。

それでも、拳の軌道自体はズラせた。

そして、すれ違うようにして二人は背中を向け合う形になる。

直後に、刀が砕け散る。

それでも、目的は達成した。

 

「今の受ける必要あったか?」

 

「あったぜ。何故ならコレを手に入れるには至近距離でやり過ごす必要があったからな」

 

言いながら悟は十六夜の懐から掏ったギフトカードを見せる。

わざわざ受け止めたのはこの為だったのだ。

回避やカウンターではどうしても体が離れる。

なので、受け止めて拳の軌道をズラし十六夜の体ギリギリを擦り抜ける形にしてようやく掏ったのだ。

 

「そんじゃ、あとは好きにやってくれ」

 

口元を歪めながら悟は姿を霞のように消すのだった。

その直前に悟が見せつける様にギフトカードを三枚持っているのが見えた。

どうやらルイオスとグリーの分も回収していたようだ。

直後に十六夜の背後にグリーとルイオスが現れる。

 

「あいつ…………やりたい放題やってから消えやがった」

 

「何やってたか知らないけど、そろそろ始めてもいいか?制限時間あるんだし」

 

〈うむ。バトルロワイヤルということでいいのだな?〉

 

「あぁ、いいぜ!!俺もあいつとお前らの言い掛かりに盛大にイラッと来たところなんでな!!二人纏めて相手にしてやるよ__!!」

 

拳を握りしめてルイオスとグリーへと向かっていく。

三人の激しいぶつかり合いが始まる中で悟は次なる標的を探しに鍾乳洞内を駆ける。

”金剛の鉄火場”は、中盤戦に差し掛かろうとしていた。

 

 





ある意味で悟回でした!
まともにバトル気は無い悟でした
悟としては今回はバトルより優勝のが優先なので


それでは、質問があれば聞いてください
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