問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!?   作:天崎

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交渉

座敷に招かれた四人は“サウザンドアイズ”の幹部二人と向かい合う形で座る。

長机の対岸に座るルイオスは舐め回すような視線で黒ウサギを見続けていた。

黒ウサギは悪寒を感じるも、ルイオスを無視して白夜叉に事情を説明する。

 

「___“ペルセウス”が私達に対する無礼を働いたのは以上の内容です。ご理解いただけたでしょうか?」

 

「う、うむ。“ペルセウス”の所有物・ヴァンパイアが身勝手に“ノーネーム”の敷地を踏み込んで荒らした事。それらを捕獲する際における数々の暴挙と暴言。確かに受け取った。謝罪を望むのであれば後日」

 

「結構です。あれだけの暴挙と無礼の数々、我々の怒りはそれだけでは済みません。“ペルセウス”に受けた屈辱は両コミュニティの決闘をもって決着をつけるべきかと」

 

両コミュニティの直接対決。

それが黒ウサギの狙いだった。

レティシアが敷地内で暴れ回ったというのは勿論、捏造だ。

しかし彼女を取り戻すためにはなりふり構っていられる状況にはない。

使える手段は全て使う必要があった。

 

『黒ウサギちゃんの狙いはうまくいくと思うかい?』

 

「さあ、どうだろうね。相手次第ではあるね」

 

黒ウサギとペルセウスの幹部が喋っている後ろで球磨川と安心院が話し合っている。

 

「外道は外道でも低脳ではないみたいだからね」

 

『……黒ウサギちゃんの交渉次第でもあるけど彼女はちょっと危なっかしいからね』

 

「君もそう思うかい?恐らくだけど彼女は……

 

「あ、貴方という人は……!!」

 

安心院が言い切る前に黒ウサギの叫びが聞こえ、二人はそちらに意識を向ける。

 

「しっかし可哀想な奴だよねーアイツも。箱庭から売り払われるだけじゃなく、恥知らずな仲間の所為でギフトまでも魔王に譲り渡す事になっちゃったんだもの」

 

黒ウサギは声をあげなかったがその表情には動揺が浮かんでいる。

 

(これは少しまずいかな?)

 

安心院は心の中で呟く。

 

「取引をしよう。吸血鬼を“ノーネーム”に戻してやる。代わりに、僕は君が欲しい。君は生涯、僕に隷属するんだ」

 

「なっ、」

 

「一種の一目惚れって奴?それに“箱庭の貴族”という箔も惜しいし、君は“月の兎”だろ?仲間の為、煉獄の炎に焼かれるのが本望だろ?君達にとって自己犠s

 

『黙れ』

 

ルイオスが言い切る前に球磨川の投げた螺子がルイオスの頬を掠める。

 

『君が不快なのは分かったよ。君は僕の嫌いなタイプのエリートだ』

 

更に数本投げ付けるがギフトカードから光と共に現れた鎌に払われる。

 

「お前が黙れよ!!」

 

球磨川は振り下ろされる刃を受け止めようとするが横から十六夜が柄を掴んで止めた。

 

「なんだお前?」

 

「十六夜様だよ色男。喧嘩なら利子付けても買うぜ?勿論トイチだけどな」

 

軽薄そうに笑うと、握った柄を蹴って押し返す。

ルイオスは堪らず跳び退いた。

 

『必要なかったけど一応ありがとうね』

 

「気にするな。あいつを試しただけだ」

 

追撃の為に距離を取ろうとするルイオス。

螺子を取り出す球磨川。

しかし白夜叉の扇が割って入る。

 

「ええい、やめんか戯け共!!話し合いで解決出来ぬなら門前に放り出すぞ!!」

 

「……。ちっ。けどそいつが先に手を出したんだけどね?」

 

尚も殺気立つルイオス。

黒ウサギが間に入って仲裁した。

 

「ええ、分かっています。これで今日の一件は互いに不問という事にしましょう。……後、先ほどの話ですが……少しだけお時間をください」

 

『おいおい、駄目だぜ黒ウサギちゃん?』

 

「………仲間に相談する為にも、どうかお時間を」

 

「オッケーオッケー。こっちの取引ギリギリの日程……一週間だけ待ってあげる」

 

にこやかに笑うルイオス。

黒ウサギはそれだけ口にして足早に座敷を出た。

 

「白夜叉は恵まれているな。気難しい友人とゲスい部下に挟まれるなんてそう経験出来ないぞ」

 

『同感だよ』

 

「全くだの。羨ましいなら代わってやるぞ」

 

「今はいいや。……ところで、“ペルセウス”のリーダーってお前か?」

 

「あぁ?そうだけど、今さら何聞いてんの?」

 

先ほどの事もあり、不機嫌な声を上げるルイオス。

十六夜と安心院は落胆したようにため息を吐く。

 

「___ちょっと待てよ。今のため息はなに?」

 

「本格的に先祖が可哀想に思えただけだよ」

 

「名前負けしすぎ。期待した俺が馬鹿だった。……そういう意味さ」

 

各々が言う。

 

「はっ。今なら安い喧嘩でも安く買うぜ?」

 

鎌を構える。

彼とて“ペルセウス”を率いている男。

数多の修羅神仏を押しのけて五桁の外門に本拠を構えているのだ。

その実力は並の人間とは一線を画す実力がある。

先ほどは力負けしたかもしれないが、いざ戦えば自分が勝つと疑っていない。

安心院は落胆をそのままに座敷に背を向けて球磨川と黒ウサギの後を追う。

十六夜は片眉を上げて見つめ直す。

だがやはり興味なさそうに座敷に背を向けた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

スタスタと足早に歩く黒ウサギの後頭部に何かが投げ付けられた。

 

「痛っ!?」

 

「僕達を召喚した張本人があんな取引に乗ろうとするなんてどういうことかな?」

 

投げ付けた犯人、安心院は笑顔で話しかける。

表情は笑顔だが目が笑ってはいない。

 

「そういうつもりは……」

 

『そういうのは顔に出るものだよ黒ウサギちゃん。嘘だね』

 

「自己犠牲程、無駄で意味のないことはないよ?」

 

「仲間の為の犠牲が無意味なはずない!!」

 

「夜中に叫ぶな喧しい」

 

黒ウサギの頭に強烈なチョップが落とされる。

 

「~~~~~っ!!」

 

「言い分は理解した。それを踏まえると黒ウサギ。お前が悪い」

 

「ど、どうしてですか!?」

 

頭を押さえながら涙目で抗議をする黒ウサギ。

十六夜は冷めたような目で責める。

 

「レティシアは本拠に来た時、もう覚悟はしていたはずだ。あの目が、お前に助けを求めている目だったか?」

 

「そ、それは……いえ、助けを求めていないから助けないというのは詭弁でございます!!」

 

「そりゃそうだ。だけど場合による。レティシアがギフトの事を黙っていたのは、お前に身代わりになって欲しくないからじゃねぇのか?」

 

ぐっ、と思い出したように言葉を詰まらせる。

確かにレティシアは、ギフトを失った事を知られたくない様子だった。

それはつまり、レティシアの想いが黒ウサギ達の重荷になる事を避けたかったからだ。

 

「少し落ち着くといいよ」

 

「そうですね。申し訳ありません。冷静さを失っていました」

 

少し落ち着いてきた黒ウサギが言う。

今後どうするにしても、ジン達と話さねばならない。

四人は一度“ノーネーム”の本拠に戻る事にするのだった。




一巻も終わりが近付いてきましたね。

ゴールデンウィーク中にはvsペルセウスまではいきたいと思います。
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