問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!?   作:天崎

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与えられし物は意志を揺らがす

 

「覚えておけ………次は…………次は、必ず僕が勝つ。”ペルセウス”の名誉は、いつか必ず返してもらうからな…………!!」

 

決着は付いた。

しかし、十六夜は自身の今のあり方を無様に思い、語る事が見付からずに無言で去ろうとしていた。

そこにルイオスの方から声を掛けてきたのだ。

滾る様な闘志を背中に受けて、首だけで振り返る。

其処にはもうボンボン坊ちゃんなどは居はしない。

己の目標を見定めた一人の戦士が、万感の思いを込めて十六夜を睨み付けていた。

 

「………ハッ!!いいぜ、何時でも来い。好きなだけ相手をしてやるよ、星座の騎士」

 

言葉は自然に零れていた。

口元には愉しさを堪えられない笑みがあった。

随分久し振りに本心から笑った気がした。

あと、少しで何か大事な物を取り返せそうな気がする。

そんな確信にも似た予感が胸にあった。

傷としては右肩を激しく斬り付けられたがまだ動ける範囲ではあった。

崩れ掛けている鍾乳洞を歩き進んでいると、激しい音と共に正面の壁に衝突した。

ガラガラと崩れ落ちる壁の中から金髪の少女が現れる。

 

「さて、そちらも終わったようじゃな。それなら始めるとするかの」

 

「いきなりやる気満々だな」

 

「安心せい。殺しはしないからの」

 

笑えない言葉ではあった。

目の前に現れた者は十六夜から見ても化物に見えた。

何しろあの三頭龍(アジ=ダカーハ)と対抗しうる程の力を持ちうるのだから。

 

「最近ふぬけて見えたからの。気合いを入れ直してやるわ」

 

「そりゃ、ありがたいね」

 

十六夜は覚悟を決めて構える。

忍は構えすらしなかった。

どちらからでも無く言い始める。

 

「_____”ノーネーム”所属、逆廻十六夜だ。始めるか!!」

 

「_____”ノーネーム”所属、忍野忍じゃ。始めるとするかの!!」

 

名乗りを終えた途端に互いに向けて駆け始める。

最早言葉は必要無い。

互いの力を出し合うだけであった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

______フェイスレスは、朦朧とする意識の中で鍾乳洞を歩いていた。

”天叢雲剣”のリスクはあれだけではない。

使用時間が長ければ長い程、ゴーストナイトである彼女が箱庭にいられる時間が擦り減ってしまうからだ。

先程のやり取りで決められなかったのは本当に痛手だ。

あのタイミングであの振動が来る不知火狐川の悪運は予想外にも程があった。

 

「私は本当に何の為に彼女を探しているのでしょうね」

 

独り言のように呟く。

フェイスレスに狐川を探す理由など実のところほとんど無いに等しい。

このゲームに負けようが、狐川に勝利しようがフェイスレスを囲む環境にはほとんど何も影響しないのだから。

確かに挑発に乗りはしたが冷静になれば意味などそう無い。

そう考えると何処からともなく声が聞こえてきた。

 

「そりゃ、あんた自体が決着ぐらいは付けたいって思ってるからじゃねぇのか?」

 

内容に関係無くほとんど反射的に連接剣を振るった。

背後に振り返りながら放ったそれは正確に声を発した者、緋御 悟を斬り裂いた。

しかし、それは即座に霞の如く散る。

音も無く(````)連接剣から弓に持ち替えると四発同時に矢を放つ。

それも悟の身を貫く。

予想通りにその姿も散る。

けれど、放った矢の内一つが何も無いところで斬り裂かれる。

そこに悟の居場所が分かる。

正しい悟の居場所をフェイスレスの瞳が捉える。

認識操作の座標誤認は連続でやれるのは二度までだ。

なので、今見えているのは正真正銘本体だ。

見えている事に気付き、悟が舌打ちしている間にフェイスレスは音も無く(````)間合いを縮めた。

何時の間にか両手に槍を持っており、それによって悟を薙ぎ払う。

 

「ッ!?」

 

見えれば(````)簡単に殺れるとでも思っていたか?」

 

悟を吹き飛ばすはずだった槍は何故か悟の羽織を千切るだけに終わっていた。

フェイスレスが虚に付かれている間に間合いを開こうとバックステップする。

フェイスレスは一瞬で我に返って間合いを維持しようとする。

 

「なッ!?」

 

だが、その目の前に突如短刀が出現していた。

このままでは直撃する。

そう認識したフェイスレスはまるで足を滑らせた様に後方に体を倒した。

当然、足が宙に浮くが急制動で足が痛むよりはマシである。

両手に槍を持っている事もありそれでバランスを取ると完全に倒れる前に起き上がる。

 

「隙ありってな」

 

起き上った直後に間合いを詰めてきた悟が振り被っていた刀を振り下ろそうとしていた。

体を支え起き上るのに使った槍では防御は間に合わない。

なので、起き上った勢いをそのままに槍の動きを微調整して後方に跳んだ。

これでギリギリ刀の間合いよりは外になったはずだった。

大振りを外した悟を仕留める為に腕を振るう直前に悟の姿がブレた。

ギリギリ届かない筈の刀が目の前に近付いていた。

咄嗟に防御しようとするが、そもそも防御が間に合わないから背後に跳んだのだ。

防御など間に合うはずも無かった。

 

「やっぱ素顔も綺麗だな」

 

「何をしたいんですか、貴方は」

 

悟の刀はフェイスレスの仮面を斬り、顔から落ちる仮面に一瞬視界を塞がれた隙に背後に回られていた。

傷がつけられていない事を疑問に思い、振り向きながら呆れた様に言う。

対して悟はもう用は済んだとばかりに短刀を拾っていた。

拾った短刀を袖の下に投げ入れているのを見て、突然出現した短刀の正体に気付く。

ようは武装は刀だけと思わせて意識を向けさせ、左腕で隠し持っていた短刀を投げ付けたのだろう。

右腕だけで刀を振るっているにも関わらず構えは何時も通り両手持ちにしているのも気をそらす策の一環なのだろう。

しかし、それでも距離がいきなり縮まったタネは分からなかった。

 

「歩法だよ。鞍馬天狗のおっさんに天狗歩法を習ったんでね。距離感をぬらりひょんの力無しに誤魔化す程度は出来るようになったのさ」

 

「それを何故教えるんですか?」

 

「いや、無駄な体力使わせた代価とこれ(``)の礼かな」

 

そう言ってギフトカードを見せると悟はさっさと姿を消すのだった。

対してフェイスレスは慌てて懐をあさくる。

そして、悟の目的を察するのだった。

悟の目的はフェイスレスのギフトカードを奪っていく事だったのだ。

フェイスレスはギフトカードを二枚持っていたが丁寧に鉱石が入っていた方だけを盗んでいくのだった。

 

「してやられましたか」

 

「そういや、言い忘れたが安心院さんのスキルは渡されても無闇に使わない方がいいぜ」

 

「ッ!!」

 

耳元で囁かれて思わず反射的に拳を振るうが手応えは無かった。

だが、それ以上にフェイスレスは頭を抱えたくなるのだった。

今まで意識的に使わないようにしていた安心院なじみから渡されたスキルを突然の襲撃だったとはいえ使ってしまった事を激しく後悔していた。

忍び体(サイレントニンジャ)は動作音を消すスキルだ。

動作音を消せるとなれば戦闘においてアドバンテージは大きい。

だが、何より安心院なじみから、あの人外から渡されたスキルである。

使えば後でどんな要求をされるか分かった物では無い。

それにプライドが使うことを止めていた。

だからこその後悔だった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

開幕直後に十六夜は頭を掴まれ、岩盤に擦り付けられながら投げ飛ばされた。

何個もの岩壁を貫いてようやく止まる。

頭部から血を溢れさせながら即座に瓦礫を吹き飛ばし、起き上って忍に向けて拳を放つ。

忍は平然とそれを受け止める。

忍の防御力はそこまででは無い。

なので、受け止めた腕は当然骨から粉砕した。

が、粉砕した直後には元通りに再生していた。

そのまま十六夜の腕を掴み、逃げられる前に蹴り飛ばした。

再び岩壁を突き破りながら吹き飛んでいく十六夜。

けれど、今度はある程度勢いを殺すと岩壁に足を付けて着地する。

そのまま壁を蹴り、天井を蹴って右肩から血を吹き出させながら忍の背後に回って殴り飛ばす。

忍はそのまま耐えようとするが足場の方が持たずに吹っ飛んでいく。

内臓破裂などを即座に回復させて忍は戻ってくる。

根本的にダメージを受けているのは十六夜だけで、圧倒しているのは忍ではあった。

それでも十六夜は笑っていた。

二人の決戦は延々と続いていく。

 

 

 





金剛の鉄火場も終盤になってまいりました!
悟は今章冒頭でやっていた特訓の成果で天狗歩法を修得しました
短刀暗器に関しては鞍馬天狗の仕込みもあります

それでは、質問があれば聞いてください
感想待っています!

次回、第一部完!
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