問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!?   作:天崎

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未練残る決着

 

「待たせたな、茨」

 

「遅ぇんだよ」

 

悟と茨は正面から向き合っていた。

茨は他の面々になど一切興味が無かった。

今、この場で決着を付ける。

その為だけにこの場にいるのだった。

ゆえにただ悟が現れるのを待っていた。

互いに刀は抜いていた。

悟は飄々と刀を肩に担ぎながら笑う。

茨は殺意全開の視線を悟に向けながら二刀を静かに構える。

 

「”人道”」

 

先に動いたのは茨であった。

素早く間合いを詰めると右の刀を左から右へと横薙ぎに振るう。

悟は即座に防ぐが衝撃が十六夜の時に受けた腕のヒビに響いて顔をしかめる。

そこに左の刀が下から斬り上げてくる。

悟は慌てて後方に跳んで距離を取る。

 

「”子走乱刃(鼠走りの乱れ刃)”」

 

その間合いも即座に埋められて次々に斬撃が放たれる。

間合いの詰め方は不規則であり、刀を打ち込む角度も調整して来ている。

受け止める悟は冷や汗を掻きながらも笑いを崩さない。

 

「”人道・丑角一突”」

 

「なぁ!?」

 

いきなり悟が吹き飛ばされる。

茨が放った突きを受け止めた瞬間に衝撃に耐えれず吹き飛ばされたのだ。

力を溜めた様子は無かった。

先程までの連撃と同じ要領、踏み込みで吹き飛ぶ程の威力の突きを放ってきたのだ。

 

「そういや、お前も天狗歩法は修得してたな」

 

ボソリと呟く。

天狗歩法の肝は体重移動だ。

悟はそれを利用して距離感を狂わせる使い方をしている。

茨はそれを剣戟に利用しているのだ。

体重移動を調整する事で柔の太刀と剛の太刀をほぼ同じ踏み込みで使い分けているのだ。

先程までの連撃は柔の太刀であり、受け止めること自体は負担が少なかった。

それがいきなり剛へと変わったがゆえに悟は吹き飛ばされたのだ。

それでも悟は笑みを消さない。

それどころか更に笑みを深める。

土煙が晴れた時には悟の姿は何処にも無かった。

 

「チッ」

 

茨は己の失策に気付く。

悟は現在ぬらりひょんの血が濃い状態だ。

ならば、視界から消えればどうなるかは見えている。

茨は目を閉じて感覚を極限までに研ぎ澄ませる。

悟の攻撃してくる瞬間放つ殺気を見逃さない為に研ぎ澄ませる。

普通ならば殺気すらも遮断してくるが茨の執念がそれを掴み取る。

 

「ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

叫びながら左腕を全力で振るう。

二つ、何かを弾く手応えを感じた。

だが、一つは弾き損ねていたようで左肩に小刀が突き刺さる。

それすら気にせずに右腕を振るう。

 

「“鬼道・丑斬剛閃”」

 

空間にヒビが入ったように見えた。

しかし、それは空間のヒビでは無い。

はかば強引に、鬼と姿を変えて振るう刀に注ぎ込まれた妖力が悟の認識操作を叩き切ったのだ。

 

「いいねぇ!!やっぱ、お前はいいよ!!こういう無茶苦茶を見せてくれるからなぁ!!」

 

現れた悟は何時の間にか犬神を纏っていた。

それでも先程の突きでヒビの入っていた刀では受け切れずに砕け散る。

だが、茨の刀の方も何か(``)に噛み砕かれたかのように砕け散る。

互いに即座にギフトカードから代用の刀を取り出す。

互いに待ちはせずに即座に斬り合う。

何度も、何度も、何度も刀が刀とぶつかり合って削れていく。

やがて再び刀は砕けるがその度に代用の刀を取り出して即座に続きを始める。

茨は二刀であるが決して手数で上回ってはいない。

何故なら犬神を装備した悟には”呪爪”がある。

犬神の怨念の塊でもある爪が刀代わりに斬撃を放ってくるのだ。

 

「”鬼道・寅牙双閃”」

 

「”(かさね)呪爪”」

 

茨は妖力を二刀に集中させる。

悟は呪爪を刀に纏わせる。

黒く禍々しく変化した刀を鞘に納める。

収束した妖力で内から砕け掛けている二刀を下段に構える。

どちらが合図したわけでも無く二人は同時に互いに向かって駆けて行く。

振るわれた二刀は妖力を輝かせ、抜き放たれた一刀は漆黒を放つ。

轟音と共に衝突し、一瞬の後に互いに背を向け合う形になる。

 

「「ガハッ」」

 

同時に二人の体から血が噴き出す。

口からも血を吐き、息を荒げる。

二人の刀、合わせて三刀はどれも砕け散っていた。

それが衝突によって砕けたのか、自壊した結果なのかは当人達しか分からない。

それらどれもが二人にとってはどうでも良かった。

まだ互いに倒れていない。

それだけ分かれば十分であった。

二人は即座に刀を抜き放って、振り返りざまに斬り合いを始める。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

狐川は直線一本道でフェイスレスを待ち構えていた。

フェイスレスが来ると少し驚いたような顔をする。

 

「あんた仮面はどうしたのよ」

 

「どこかのちゃらんぽんに壊されましたよ」

 

「なるほど。でも、最後に素顔で対面するという状況作り出してくれたのには感謝ね」

 

「何故ですか」

 

「決着だって言うのに顔も知らないのは後味悪いでしょう?」

 

「そうですか」

 

会話はそこまでだった。

後は戦あるのみ。

フェイスレスが踏み込もうという直前に狐川が口を開く。

 

「”ノーネーム”所属、不知火狐川よ。貴女は?」

 

「…………”女王騎士”所属、久遠彩鳥。尋常に参ります」

 

最後の名乗りを終え、フェイスレスは直線を駆けて行く。

直線で仕掛けてくるには何かあるのだろう。

それでも、駆けていく。

対して狐川は地に手を付けて叫ぶ。

 

「行くわよ!!天狐ッ!!アルマッ!!”さんこんどうちょぉぉぉぉぉぉ!!(三魂同調)きゅぅぅぅぅぅぅび!!(九火)らいじゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!(雷獣)”」

 

アルマは全身を金剛鉄の流動体と化すと、狐川を包み込む。

狐川を包んだまま、まるで心臓の様な形に変貌すると、雷と狐火を脈打つ様に溢れ出させる。

雷と狐火はそのまままるで固体の様に姿を変える。

完全に姿を変貌させ、雄叫びを上げる。

 

「[[GAAAARRAAAaaaaaa!!]]」

 

その姿はまるで巨大な九尾の狐だった。

だが、頭部には山羊の様な角が生えている。

そして、その身は焔と雷で構成されていた。

 

「いきなりごり押しですか」

 

開き直った策にフェイスレスは苦笑する。

しかし、そのごり押しは現状かなり有効な手でもあった。

ここは鍾乳洞であり、一本道だ。

変貌した狐川の姿は通路を塞ぐサイズだ。

もし、あのまま焔を吐かれれば逃げ場など無いのだ。

矢を放っても高エネルギーが濃縮されたその身は矢を消し飛ばす。

最早打てる手は一つだけ。

誘われているようにも思えたが仕方がない。

 

「彼女達の神秘を断ち切れ、”天叢雲剣”!!」

 

ギフトカードから再び引き抜かれる神剣。

途端に九尾の狐の姿も掻き消される。

だが、現れたのはアルマだけだった。

狐川の姿は無かった。

そこは想定内(```)だった。

先程までの戦いでそれは嫌と言う程理解していた。

 

「いかにも貴女のやりそうな手ですよ!!」

 

振り返る様にして背後を斬り裂こうとする。

背後にはフェイスレスの予想通り狐川がいた。

ただ一つ予想外だったのは狐川が丸腰では無かったことだった。

 

「なッ………」

 

「あいつの手を借りるみたいで嫌だけど………まぁ仕方がないわね!!」

 

狐川の手には何処かで見覚えがある短刀があった。

フェイスレスが知る余地も無いがその短刀は悟が渡した物であった。

狐川としては気に入らなかったが素手で天叢雲剣と戦うという無謀な真似をするよりはマシということで受け取ってたのだった。

フェイスレスが見覚えあるのも悟があの時使った短刀と同じものだったからなのだ。

その短刀によって天叢雲剣が受け止められる。

だが、すぐにヒビが入り始める。

その短い間で十分だった。

 

「歯を食いしばりなさい!!」

 

短刀で受け止めている間に左拳をフェイスレスの顔面に叩き込んだ。

短刀が折れて、天叢雲剣が肩口に食い込んだがそこで止まる。

たとえ、神秘を封じられていようがトドメには関係無い。

それでも技量はフェイスレスの方が上だ。

フェイスレスはふらつきながらも二撃目を振るおうとするが直前に視界が紅く染まる。

 

「ッ!?」

 

悟の一閃は仮面だけを斬り裂いたとフェイスレスは思っていた。

けれど、それは正確では無かったのだ。

仮面と一緒に浅くフェイスレスの額も斬れていたのだ。

浅くて傷口が綺麗なゆえに出血する前に癒着していた。

だが、狐川に殴られたことにより傷口が開いて血が溢れ出したのだ。

その血が視界を塞いだのだ。

 

「悪いわね」

 

血を拭って視界を取り戻した瞬間、刺されていた。

視界を下に向けると血塗れの手に握りしめられた刃がフェイスレスを貫いていた。

普段ならともかく今はただの少女程度の身体能力である。

最早何をする暇も無く刃は捻った上で抜かれた。

ドバドバと血が溢れていく。

そして、フェイスレスはあぁ、負けたんだなと自覚するのだった。

カラン、と音を立てて血塗れの刃が落ちる。

フェイスレスが視界を塞がれた瞬間、狐川は折れた方の刃を傷付く事を恐れずに握りしめ、フェイスレスを刺し貫いたのだ。

肩と掌から血が溢れ、此方は此方で衰弱し始めていた。

 

「………私の負け、ですね」

 

「えぇ、私の勝ちよ」

 

静かに呟くフェイスレスと疲れ切ったように言う狐川。

最早、会話をするだけの時間もそんなに無いだろう。

とはいえ、因縁があるわけでも無い二人だ。

気の利いた言葉などそう出てこない。

 

「これで私の夢は破れました。まさか全くの部外者である貴女のような人に無駄にされるとは思いませんでしたよ」

 

「心残りは?」

 

「あるに決まってるでしょう。むしろ未練ばかりですよ、こんな終わり方では」

 

「そう」

 

「それでも、何故でしょうね。これでもマシな結末ではあったと思えてしまうんですよね………」

 

「ただ何も出来ずに諦めたまま消えるよりはそりゃマシでしょうよ」

 

「………そういう物なんですかね」

 

フェイスレスはふと悟の決着を付けたがってるんだろという言葉を思い出す。

そのままとは言えないが確かに決着を付けて心の靄が多少は晴れた気はするのだった。

 

「あぁ…………本当に残念で未練ばかりが残ってしまいますね」

 

「最後の最期だってのに此方に重荷が残るような言葉残してんじゃないわよ」

 

その言葉を聞く前にフェイスレスの姿は消えていくのだった。

戦った事に後悔は無くても多少の引っ掛かりは残る。

最後に面倒な物を残されたことに苦笑しながら狐川は意識を手放す。

その隣には白銀のギフトカードが残っているのだった。

そして、閉幕を知らせる銅鑼が鳴り響くのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

______後日談というより今回のオチ。

オチと言うほど大層でも無ければサプライズがあるわけでも無い。

ゲームの優勝者は当然ながら緋御 悟だった。

当たり前である。

ゲーム参加者のほぼ全員からギフトカードを掠め取ったのだ、優勝で当然である。

やり方がやり方ゆえにブーイングは多少あった。

それでも、「多少」であったのは茨との対決が原因であろう。

アレによってブーイングする気が失せた客が相当数いたという。

決着について語るのであれば引き分けである。

両者ともに互いに倒れずに斬り合いを続けたが閉幕の銅鑼がなった瞬間ゲームから私闘に扱いが変わった瞬間に護衛として付いてきていた面々に強引に止められた。

両者ともに出血多量だったゆえに乱入されて吹き飛ばされた途端に互いの気絶したのだった。

十六夜と忍の対決もゲーム終了を無視して続けられたが忍の方が時間切れした為に十六夜の暫定勝利。

とはいえ、意地で続けていたようで忍が幼女になり決着が付くなりぶっ倒れた。

半数以上が血塗れの重傷で終わったゲームになったが”ノーネーム”新頭首である球磨川はヘラヘラと何時も通りに閉幕の挨拶をした。

 

『結果はどうあれ皆楽しんでくれたようで何よりだよ。僕は参加してないけど。今後も盟主として頑張っていくつもりだからよろしくね』

 

暦と忍は予定通り準備を済ませると旅立って行くのだった。

 

「やるべきことを終わらせたら必ず戻ってくるよ。その為にもまずは女王(クイーン)に会ってくる」

 

「儂としても中途半端に放り出すの引っ掛かるからの」

 

やるべきことが何なのかは本人たちしか知らないがその為の予定は山ほどのようだ。

狐川は天叢雲剣で斬られた影響で大嘘憑き(オールフィクション)による治療も出来なかったのでしばらく治療に専念するのだった。

フェイスレスが遺したギフトカードは暦達に女王に渡す様に言って託すのだった。

治療を終えると何を思ったのか荷物を纏め始めるのだった。

 

「今の私じゃ主様に付いていくには力不足だと自覚したわ。というわけで、ちょっと修行してくる」

 

そう言うなりアルマと共に旅立って行くのだった。

そして、十六夜も鞄一つ持って旅立って行くのだった。

どうもどうやらふらりと帰り、ふらりと旅立つを繰り返していくつもりのようだ。

しかし、その後を追うように黒ウサギとグリーが重装備して追い掛けていった。

それを見る限りおそらく三人で長旅を続けることになるだろう。

 

『さて、僕らはどうしようか皐君』

 

「お前には仕事があるだろう」

 

ドサリと書類の山が置かれる。

球磨川は露骨に嫌な顔をするが皐も同様にげんなりした顔をしている。

ようは片方の仕事というわけでも無く両者共通の物なので逃げ場など無いのだった。

たとえ逃げてもクロア&レティシア辺りに連れ戻されるのがオチである。

 

「お茶入れたよ~」

 

つい最近移籍してきた夏歩が明るい声で入ってくる。

球磨川と皐は溜息を吐き、諦めたように仕事を始めるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

時の果て、世界の果て、異世界の果てまで彼らの手は届くに違いない。

彼ら問題児たちの綴る神話は_____まだ始まったばかりなのだから。






第一部完です!
俺達の戦いはまだこれからだぁ!的な
もうちょっとだけ続くんじゃよ的な感じです

今後の予定ですが、全体的に言うならばライダーの方を進めることになります
この作品的にいうならば次章は悟メインと茨メインが並列進行するオリ章になります

それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!


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