問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!?   作:天崎

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今回は茨サイドオンリーです


無謀な挑戦

 

「弱いわね。そんな程度じゃ私には届かないわよ?」

 

女性の前に血塗れの茨が立っていた。

全身血に濡れていない場所が無いような有様だった。

本来だったら刀を持っているどころか立っている事すら出来ていないだろう。

それほどまでに茨はやられていた。

周囲には刀の破片が無数に散らばっている。

全て茨が使っていた刀だった。

女性は腰の刀を抜くことすらせずに茨を圧倒した。

触れるだけで肉を抉り、刀を砕いたのだ。

何度も吹き飛ばされ、何度刀を折られようとも茨は倒れなかった。

そこまでする理由はただ一つ意地だった。

負けられないという意地が茨を立たせていた。

けれど、女性としては進展も無く何の面白味も感じていなかった。

 

「詰まらないし、そろそろ終わらせて貰うわよ」

 

間合いを一瞬で詰めて茨の目の前に現れる。

そのまま掌底を茨の胸に目掛けて放とうとする。

何度も繰り返されて来た光景だった。

この後、茨が血を吐きながら吹き飛ばされるのがお決まりだった。

だが、茨はそこまで潔くも無かった。

 

「へぇ」

 

放たれた掌底を避ける事はしなかった。

回避は無理だと分かっていた。

だから耐えた。

意地に意地を重ねて耐えた。

血が口から溢れるがそれすら気にしない。

女性はこの日初めて殺気に振るえた。

 

「あああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

吼えながら刀を振るう。

さすがにこの展開は女性にも予想外だった。

耐えるとは思っていなかった。

つまりは甘く見ていた。

ゆえに回避も遅れた。

女性の頬から血が垂れる。

そこで止まる茨では無い。

今度は右の刃を振るう。

女性はそれを見越して後方に下がろうとする。

だが、またしても茨は女性の予想を超えて動く。

茨は踏み込んで刀を振るうのではなく、柄頭を突き出す。

 

「あはっ、いいわね。少し貴方に興味が出たわ」

 

女性は笑った。

僅かにだが楽しそうに口元を歪めた。

そして、瞳を紅に染めて額に日本の鬼角を出現させた。

女性から感じる妖力が桁違いに跳ね上がる。

身体能力も同等に跳ね上がったのか、あっさりと柄頭を茨の右手ごと掴んだ。

凄まじい握力によって掴まれた事で腕はピクリとも動かない。

茨は長髪に隠れた眼を見開く。

 

「此処で殺すのは約束通り止めにしておく。つまり、生かしてあげるわ」

 

「ふざけんな!!女に見逃される程落ちてはいねぇんだよ!!」

 

「じゃあ、それを屈辱とするのね。文句があるならまた此処に来なさい。相手してあげるわ」

 

それだけ言うと女性は軽く茨を持ち上げ、地面に叩き付ける。

地面はヒビが大きく広がり、骨が砕けるような音が響いた。

 

「そうそう名乗り忘れたわね。(わらわ)は鈴姫よ」

 

名乗りながら茨を宙に浮かせると蹴り飛ばす。

茨は文句を言う間も無く地平の果てまで吹き飛んでいった。

鈴姫はその様子を眺めながら鬼角を引っ込める。

 

「生かしておくとは珍しいな」

 

何処からともなく三本の刀とは別の声が響く。

鈴姫は右手を上げると中指に付けている指輪のバイザーの様な物を上げる。

バイザーの内側には人の顔の様な造型があった。

それの口が動いて喋っているのだ。

 

「あんたが口を出す方が珍しいんじゃないの、罪牙」

 

「そうは言っても姫様が敵対する者を生かして返すなんて予想外にも程があったんでな」

 

「その呼び方やめてくれない?」

 

「鈴姫と名乗ったのはお前だろう?」

 

(わたし)の本名を明かしたら明かしたで面倒なだけでしょう?」

 

「それもそうだな。だが、生かしておいてどうするのだ?」

 

(わたし)()()()何もしないわよ。去るなら詰まんない奴だっただけ」

 

「再度向かって来たら?」

 

「その時は相手してあげるわよ」

 

「何でわざわざ」

 

「何となくよ。(わたし)に傷を付けれる奴なんて久々だし、何よりアレは今殺すには惜しいと思ったのよ」

 

[物好きめ][奇怪な][理解不能]

 

「少しは黙ってなさい」

 

余計な口出しをする刀をコツンと叩く鈴姫。

自身でもらしく無いのは自覚していた。

何を思ってアレを生かしたのかは本当のところは自分にもよく分からないというのが本音だ。

そんな鈴姫を見て、罪牙は苦笑するのだった。

何はともあれ答えはアレが来るかどうかで分かるだろう。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

翌日、鈴姫は茨に言った通り同じ場所で待っていた。

来るとは思っていなかった。

自身がどれほどの傷を与えたかは鈴姫が一番よく分かっている。

普通ならば翌日にまともに動ける傷では無い。

だが、茨は来た。

全身に包帯を巻いた状態だが鈴姫の前に現れた。

 

「これは驚いた。まさか翌日に来るとは思っても無かったわ」

 

「屈辱を受けたまま黙っていられるかよ」

 

包帯を巻いているという事は完治はしていないのだろう。

それでも茨の動きはおかしかった。

明らかに砕けたはずの骨が治っていた。

 

「どうやって傷を治したのかしら?」

 

「知るか。寝たら治っただけだ」

 

[馬鹿な][不可解][異常だ]

「はいはい、余計な事は言わないの」

 

「それで、もういいか?」

 

「その前に一つだけ聞いていいかしら?」

 

「何だ?」

 

顔を顰めながらも律儀に待つ茨。

正面から勝たなければ勝った事にならないと本能から認識しているのだ。

鈴姫はそれはそれで面白いと思いながら問う。

 

「あんたの名前教えてくれる?」

 

「茨木童子の茨だ。もういいよなぁ!!」

 

答えると同時に刀を構えて鈴姫に向かっていく。

角を生やし、二刀を地面にかすらせながら駆ける。

 

「”鬼道”」

 

地面に掠る刀が何時の間にか淡く光り始める。

鈴姫は片眼をつぶって残った眼で霊視する。

それによって茨の足元に龍脈に近い物が奔っているのに気付く。

 

「”兎歩輝閃”!!」

 

「へぇ、割と多芸よね」

 

龍脈の力を乗せて淡く光る刀を振るう茨に対して余裕に構える鈴姫。

軽く踏み込んで振るわれた刀を回避しながら喉に向けて指を振るう。

触れれば抉れるのは昨日体験していた。

学習していないのか、と鈴姫が落胆しそうになったところで茨は勢いを落としてタイミングをズラしに掛かる。

紙一重で指を回避して空振った状態の鈴姫に対して刀を振り下ろす。

 

「飲み込みは速いわね」

 

軽く、本当に軽く鈴姫は刀を掴み取った。

そのまま指に力を込めて刀を砕く。

もう片方の刀も軽く蹴り砕く。

茨が折れた刀を投げ捨てて新たな刀を取り出す前に鈴姫の蹴りが深く突き刺さる。

地を何度も跳ねる形で茨が吹き飛ぶ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

そうしている内に時間は経ち、昨日と似たような光景が出来上がる。

瀕死の茨に余裕の鈴姫。

状況的にはほとんど変わりはしない。

だが、進歩はあった。

茨の傷は相変わらずではあるが、鈴姫は多少汚れていた。

 

「一日でも多少の成長はあるのね」

 

「うるせぇ、勝負はまだ此処からだ…………」

 

茨は睨みながら刀を鈴姫に向ける。

ヒタリヒタリと流血が地面に垂れる。

それでも手足を振るわせる事は無かった。

まるで、肉体そのものが戦いにしか気を向けていない様な有様だった。

その様子に鈴姫は呆れた様に息を吐く。

 

「貴方がやる気でも(わらわ)は今日これ以上続ける気は無いのよ」

 

「あぁ!?」

 

「貴方も帰って休みなさい」

 

一気に間合いを詰めると昨日同様妖力を一気に高める。

そのまま蹴りを放つ。

けれど、それが茨に当たる事は無かった。

茨は近付かれるなり、全力で妖力を開放して回避に全ての力を集中させた。

それが功を制して何とか回避に成功する。

 

「俺はまだ終わる気はねぇんだよ!!」

 

「いや、今のは本当に驚きよ。でも終わりよ」

 

今度こそ回避は無理だった。

顔を掴まれ、振りほどけもせずに投げ飛ばされる。

鈴姫は妖力を霧散させると気を取り直す様に首を振る。

 

「また甘く見ていたか?」

 

「今のは本当に驚いたわよ」

 

バイザーを開けて罪牙と話す。

罪牙には気を許して話せるのだった。

罪牙もやれやれと言った感じで呟く。

 

「あの小僧、確かに色々と秘めた物はありそうだな」

 

「やっぱりそう思う?でも、具体的に何かは分からないのよね」

 

「下手したらお前の首に奴の刃が届く日もそう遠く無いかもな?」

 

「本気で言ってる?」

 

「冗談だ。力をセーブしてる状態の足元にも及ばない奴がそこまで急激に成長するとは思って無いさ」

 

「まぁそこそこ成長しそうとは思っているけどね」

 

「あの様子では明日も来るぞ。どうするつもりだ?」

 

「今日と同じく相手してあげるわよ。ちょっと興味が出てきたからね」

 

ニヤリと笑いながら鈴姫は明日を思う。

明日はどれだけ予想外を見せてくれるのだろうと期待をしながら住処へと帰って行くのだった。

 

 





ひたすら茨vs鈴姫でした
結構カットしてますがそうでも無いとひたすら茨がボコられる絵面になるので

鈴姫に関しては単純に鬼というわけでは無いです

それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!
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