問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!?   作:天崎

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油取り

 

「よう、探したぜ。油取り(```)

 

老人は唐突に名を呼ばれて振り返る。

不意討ちで声を掛けられるなど老人にとってかなり久し振りであった。

それこそ封印される前にぬらりひょんに不意討ちを入れられた時以来であった。

 

「ワシに会いに来れるとは珍しいのう」

 

「いやはや、一カ月近く探す羽目になったぜ」

 

「探して見付けれる方が異常なんじゃが」

 

「それはどうかな」

 

老人は声を掛けてきた少年の背に少女が張り付いている事に気付く。

同時に少女が座敷童子だと気付く。

それで納得がいったように頷く。

 

「なるほど。運とは恐ろしいのう」

 

「ん?あぁ、そう解釈したか(``````)

 

「それにしても憎たらしい顔を連想させるのう」

 

「そりゃそうだろ。俺はぬらりひょんの息子だからな」

 

「そうか。ならば、殺されても(`````)文句は無いな(``````)

 

何時の間にか老人こと油取りは少年の背後にいた。

動いた気配すら無かった。

ただ気付いた時にはそこにいた。

振り向くより速く無数の鉄串が投げ放たれる。

土煙が舞うと共に金属が衝突し、弾かれるような音が響く。

 

「あぁ、名乗り忘れていたな。俺は緋御 悟だ。テメェを狩りに来た」

 

鉄串をほぼ全て弾き飛ばした上で悟は名乗る。

何本かは左手で掴んでいた。

油取りはその姿に首を傾げる。

鉄串を弾かれたのはまだ良かった。

油断してるところを狙ったのでほとんど遊び同然に放ったのだから。

だが、素手で触れて(``````)何も無いのは疑問だった。

触れた時点で本来なら死んで無くてはおかしいのだから。

 

「小僧、貴様何者じゃ」

 

「だから、名乗っただろ?」

 

「何故ワシの鉄串に触れておるのに平然としていられる?」

 

「この串に何か意味でもあったのか?」

 

悟は何を言っているか分からないという様に首を傾げる。

実際悟自身も油取りが何を言っているか理解してなかった。

それを理解しているのは悟の背でクスクスと笑っている紅葉だけだった。

 

「ふふっ、簡単な事よ。油取りと接触出来たのと同じ理屈よ」

 

「あぁ、そういう事か」

 

悟はその一言で納得する。

だが、油取りの疑問は大きくなる。

自身の恩恵は座敷童子ごときに無効化されるような物では。

幸運でどうにか出来る類では無いと思っているが故に理解出来なかった。

因果を利用する(```````)程の力を座敷童子が持っているとは考え付いてもいなかった。

 

「種明かししてあげましょうか?」

 

「いらぬよ」

 

言って油取りは再び姿を消した。

即ち別の座標へと跳んだ。

悟は刀を構えると、紅葉が指差した方向へ振るう。

すると、空間そのものが斬り裂かれたかのごとく開いていく。

その切れ目の向こう側に油取りは立っていた。

 

「なるほどのう。認めたくは無いが、貴様ら因果に干渉する力を持っておるな」

 

「ふふっ、半分正解ね」

 

「そもそも俺はそんな大仰な力は持ってねぇしな!!」

 

斬り掛かって来る悟をヒラリヒラリと回避しながら油取りは距離を取り、鉄串を投げ付ける。

悟は即座に弾いていくが何本かは撃ち漏らす。

身を捻って躱し、最後の一本は咥える事で止めた。

吐き出しながらも距離を詰めていく。

 

「貴様らはどうやってるかは知らぬがワシの因果干渉を無効化してるのは確かじゃ」

 

「無効化なんて大層な物じゃないわよ。ただ、悟の因果は(`````)私が管理する(```````)事になっているだけよ」

 

悟の天運は紅葉に憑かれた時点で紅葉の物となっている。

とはいえ、具体的にどう使うかは両者の同意の上でしか決められないので実質的には普段のままである。

それでも、悟の因果の流れが紅葉の手中にある事には違いない。

それゆえに悟の因果に干渉しようとしても悟自身が所持していない為に手を出せないのだ。

別の見方をすれば悟の人生そのものが紅葉の掌の上という事になりかねないのだが、悟自身はそれはそれで良しとしており。

紅葉も末路が歪みかねないのでそういう干渉はしない。

油取りという妖怪は誰の目にも映らずに、何時の間にか子供を攫う存在だ。

周囲の者の因果に干渉して、”油取りを見付ける”という因果を発生しない様になっている。

加えて臓物を取り出して油を取る存在でもある。

この臓物を取り出して油を取る方法は諸説はあるが明確な物は無い。

ゆえにこの”油取り”は因果を歪めて結果だけを残す恩恵を持っている。

発動の鍵は鉄串であり、鉄串に触れた時点で内臓が抜かれているというわけだ。

それらの恩恵を悟は紅葉に因果を管理されてるが故に影響を受けずに済んでいるのだ。

だから、探せば見付かるし、触れても問題は無い。

 

「妖怪って奴は存在そのものがギフトゲームみたいになってる奴がいる。お前はその極め付けだ。単純明快でそれ故に対策が施しようが無い面倒なタイプだ。だが、俺には通じねぇ」

 

「本当にそうかのう?」

 

「なっ」

 

何時の間にか悟の左腕に何本かの鉄串が刺さっていた。

油取りは周囲にいる。

それだけは認識出来るが何処にいるかまでは分からなくなっていた。

 

「通じないなら少し本気を出すだけじゃ。まさかとは思うが、ワシがただ恩恵だけで名を轟かせたとでも考えていたか?」

 

「覚悟はしてたが此処までか」

 

左腕に刺さっていた鉄串抜きながら苦笑いをする。

ぬらりひょんが直々に相手をして封印したという話を聞いた時点で実力がヤバいのは分かっていた。

それでも、挑んだのは自分を試す為でもあった。

加えて妖刀を創る為にも必要なのだ。

だから、退くという選択肢は無い。

 

「来いよ、油臭いクソ爺。俺が遊んでやるぜ」

 

「ほざくか、小僧め」

 

何処からともなく音も無く放たれる鉄串を悟は眼を向けずに首を振るだけで回避する。

油取りが視認出来ない理由は分かっていた。

油取りが何処にいるかは分からない。

そういう存在である。

霊格を強めて自身が何処にいるという因果に干渉してノーモーションノータイムで座標移動を繰り返しているのだ。

それだけでも無い。

油取りは純粋に強いのだ。

視線誘導や気配の浮き沈みなどを駆使して死角と言える場所を狙い鉄串を放ってきているのだ。

けれど、そういう類ならば悟も多少は読めはする。

 

(たまに足元を狙ってるのは牽制もあるんだろうが、視線を足元に割かせたいのと移動範囲を狭めたいって感じか?)

 

鉄串弾きながら周囲に視線を巡らす。

座標を転移しているとはいえ常に転移しているわけでは無い。

さすがにそこまで因果に干渉し続けるのは無理である。

おそらくぬらりひょん程では無いが認識操作系の恩恵もあるのだろう。

 

(あえて、鉄串が刺さってる方向に踏み込めば……………なるほど、死角がズレて見やすくなるわけか)

 

常に前後左右上下全方向に警戒を向けるのは不可能だ。

どうしても警戒に向ける意識の差が出て来る。

油取りは放つ串で警戒の強弱を調整し、弾幕の濃さと薄さを調節して相手の動きを誘導し、自身に対する死角を広げていたのだ。

なので、悟はあえて弾幕が濃い方へと踏み込んでいく。

 

「悪いがそういうのはテメェの専売特許ってわけじゃねぇんだよ」

 

天狗歩法で距離感をズラしていく。

多少の誤差ではあるが投げ放たれる鉄串相手ならば十分に効果はある。

徐々に距離を詰めていく悟を見た油取りは小さく息を吐くと目を見開いた。

 

「ふむ。遊びは終わりじゃな」

 

「はっ」

 

視線を向けるより速く蹴りを入れられた。

何時の間にか懐へと入り込まれ、蹴りを入れられていた。

血を転がりながら勢いを殺して起き上る。

同時に目の前に鉄串が迫る。

頬に掠らせながら紙一重で回避する。

続けて放たれた鉄串を刀で弾いていくが、五本目で唐突に刀が折れる。

 

「チッ、嘘だろ」

 

「狙えば折れるもんじゃぞ」

 

「振るわれてる刀の狙った場所を撃つとかふざけ過ぎじゃね」

 

折れた刀で弾くのにも限界があり、左肩と右太腿を貫かれる。

折れた刀を放り投げると悟は小瓶を取り出して蓋を開ける。

同時に溢れ出た瘴気で投げ付けらていた全ての鉄串を弾き飛ばす。

 

「やっぱ、まだ素じゃ届かないか」

 

息を切らしながら”憑武装・犬神”を纏う。

ギフトカードから新たな刀を取り出し、構え直す。

一先ず仕切り直して戦いは再開される。





悟vs油取りでした

油取りに関しては本来の伝承よりかなり拡大解釈入っています
そこらへんは霊格が強化されてるがゆえです

それでは、質問があれば聞いてください
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