問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!?   作:天崎

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刃の通らぬ肉体

 

「誰だ、テメェは?俺はそこの女と戦うだけだ」

 

「俺様を前にその態度か。意外に大物なのか、ただの無知な馬鹿なのか」

 

「ただの馬鹿よ。それで何か用でもあるの、大嶽丸(```)(わらわ)はあんたの女になったつもりは無いのだけど」

 

突然割って入って来た男に茨は雑に問う。

対して鈴姫は面倒そうな様子を顔に前面に出して睨み付ける。

大嶽丸と呼ばれた男は鈴姫の方に顔を向けると視線を返す。

 

「お前が俺様の物になるのは確定事項だろうが。それより何だこの男は?」

 

「ただの下僕よ」

 

「誰が、下僕だ?」

 

「はっ、下僕だと?それにしては妙に親しくしているようだが?」

 

「何?嫉妬してんの?ダサいわねぇ……………」

 

「嫉妬などするか。だが、俺様の物に手を出す不届き者は排除せねばならんだろう」

 

「だから、(わらわ)が何時あんたの女になった?」

 

「最初からだろう。お前は俺様の物になる運命だ」

 

(わらわ)とその旦那候補にぶっ殺される運命の間違いであろう?」

 

「やはり、そこのゴミがそう(``)なのか?」

 

「気にし過ぎ。ただの下僕と言ってる」

 

「おい、いい加減下僕呼ばわりやめろ」

 

鈴姫と大嶽丸は茨を無視して話を続ける。

知り合いの様だが二人の間に流れる空気は親しさとは程遠かった。

特に鈴姫からはうんざりした空気を感じさせていた。

対して大嶽丸は思い通りにいかない事にイラついている様だった。

 

「というより、何処で(わらわ)の事を聞いてんのよ」

 

「俺様の物の事を俺様が知っている事の何がおかしい?」

 

「ストーカー思考そのものね。鬱陶しいにも程があるわね」

 

「お前が何時まで経っても俺様の元へ来ないのが悪いのだ」

 

(わらわ)より遥かに弱いくせに上から目線ね~」

 

「何時の話をしている?それに強さはどうあれお前は俺様に(``````)手を出せない(``````)だろう(```)?」

 

あんたもね(`````)

 

「テメェら………………………いい加減にしやがれ!!」

 

無視され続けていた茨が割り込むように刀を振り下ろす。

鈴姫は軽いステップで、大獄丸は巨体に似合わない俊敏な動きで躱す。

茨は苛立ちの籠った眼で両者を睨み付ける。

 

「ちょっと今大事な話をしてるんだから待ってなさいよ」

 

「俺様の話の邪魔をするとは無礼だな」

 

「知るかよ。テメェらがどんな関係だろうが、どんな因縁があろうがどうでもいいんだよ。俺はただその女と斬らなきゃ気が済まねぇんだよ」

 

「俺様の前で俺様の物を傷付けると宣言か。いい度胸をしているな」

 

(ちょっとは気にしてくれると嬉しいんだけどな~)

 

「テメェが何者なんて知らねぇが邪魔するならテメェから斬るぞ」

 

「俺様としてもちょうどいい。身の程を知らない蠅を叩き潰すとしようか!!」

 

鈴姫が残念そうにしている間に茨と大嶽丸は臨戦態勢に入る。

茨は二刀を構え、大獄丸は腰に下げている自身とほぼ同じ大きさの大太刀を無造作に抜く。

大嶽丸は大太刀を片手で軽々しく持ち上げて肩に担ぐように構える。

先に動いたのは茨だった。

巨体の死角に回り込むようにして斬り込んでいく。

 

「”人道・丑角一突”」

 

天狗歩法も合わせて完全な死角から背の左脇腹に突きを放つ。

大嶽丸は振り向きもせずにただ受けた。

腕すら動かさず、一切の防御もしなかった。

だが、その表情を歪めたのは茨だった。

 

「……………………どうなっている?」

 

刃は大嶽丸の肌にすら弾かれ、傷一つ付いていなかった。

大獄丸はまるで何事も無かったかのように肩を鳴らしてゆっくりと振り向く。

茨は首を傾げながらも後方に跳んで間合いを広げる。

 

「何だ………………俺様の皮膚すら貫けない程度なのか」

 

「あぁん?」

 

「いや、何レベルの違いを把握しただけだ」

 

「その上から目線もイラつくんだよ!!」

 

嘲笑う様に言う大嶽丸に茨は再び斬り込んでいく。

今度は正面から向かっていく。

大嶽丸は茨を見もしなければ防御の構えすら取らない。

先程の一撃で茨では自身の体に傷一つ付けられないと確信したのだ。

そして、自身より実力がかなり下だという事を。

故に警戒すらしない。

茨は姿を鬼へと変えると右の刃と左の刃を擦り付けるように構える。

 

「”鬼道”」

 

振り抜く際に両の刃が激しく擦り付けられ、摩擦により赤熱し、焔を纏う。

更に凸ピンの要領で振り抜かれる左の刃に勢いが増す。

 

「”火辰熱閃(かしんねっせん)”」

 

横薙ぎに炎の刃を振るう。

更にその勢いのまま右の刃で斬り上げを放つ。

 

「”巳尾昇閃”」

 

辰の尾の如く振り上げられた刀は蛇の動きの如く大嶽丸の体を下から上に這う。

更に足へ妖力を集中し、天狗歩法を応用し助走無しで高く跳躍する。

 

「”人道”」

 

姿を人型に戻して体勢を変えて落下の勢いに身を任せながら左の刃を収めて両手で刀を握る。

そのまま宙を蹴る。

 

「”舞兎重斬(舞い兎の重ね斬り)”」

 

先程の斬り上げをなぞる様に斬り降ろす。

そこから更に跳躍して横薙ぎに今までの斬撃に重ねる様に振るう。

だが、それでも欠けるのは刃の方だった。

刀にはヒビが入り、破片がポロポロと落ちていく。

 

「気は済んだか、小僧?」

 

「知るか」

 

それでも、茨は刀を振るうのをやめない。

自身の力では傷付けれないのは理解している。

それが分からない程馬鹿では無い。

それでも、止まらないのが茨なのだ。

斬れるまで斬る、それだけなのだ。

刀が砕けようがまた新たな刀を取り出して振るう。

それを繰り返す。

 

「だが、終わりだ」

 

一閃。

肩に担いでいた大太刀を上から下に無造作に振り下ろす。

それだけだった。

それだけで決定的な一撃となった。

その一閃は力強く速かった。

当然茨は刀で防ごうとした。

しかし、それごと大嶽丸の一閃は砕き斬った。

刀は一瞬で粉々に散り、同時に茨の左腕も(`````)斬り落とされた(```````)

千切れた左腕は宙を舞い、偶然か運命か(```)鈴姫の前に落ちるのだった。

 

「…………………」

 

左肩から血が溢れる。

激痛が全身を走る。

それでも、茨の眼は死んでいなかった。

膝も付かずに右腕には既に新たな刀が握られていた。

たとえ片腕を失おうと茨は止まらない。

先程までと変わらずに大嶽丸に斬り掛かる。

 

「………………………………へぇ」

 

自身の前に落ちた茨の左腕を前に鈴姫は一瞬口元を歪めた。

それに気付いた者は罪牙だけだった。

それでもその意味までは察し切れなかった。

 

「その根性だけは褒めてやろう」

 

一方、大嶽丸は片腕を斬り落とされてなお向かってくる茨に驚いていた。

そして、その精神だけは認める。

だが、それはそれとして鬱陶しいのもまた事実だった。

なので、無造作に蹴り飛ばした。

 

「ガグ………………ッ」

 

意地で刀を振るっていたとはいえ片腕を吹き飛ばされたダメージを抱えた身で回避は無理だった。

体格差もあってほぼ上半身を丸ごと殴り付けられるかの様な形で蹴り飛ばされる。

地面を数度跳ねた上で地を転がる。

左肩から溢れる血によって倒れる茨は血溜まりに沈む形になる。

 

「蠅にしては頑張ったな。だが、死ね」

 

トドメを刺すべく、その身を肉片に変えるべく大嶽丸が大太刀を振り下ろそうとしたその時だった。

茨の左腕を肩に担いだ鈴姫が割って入った。

その姿を意外そうに見ながら大嶽丸は大太刀を止める。

 

「邪魔をする気か?」

 

「別にそんな気は無いわよ。あんたの目的は(わらわ)だろう?見せしめとしても片腕捥げば十分のはず」

 

「何が言いたい?」

 

(わらわ)があんたの元に行くからコレは見逃せって言ってんのよ」

 

真顔で言う鈴姫をキョトンとした顔で見る大嶽丸。

だが、即座に顔を押さえて大笑いしだす。

 

「ハハッ……………ハハハハハハハハハハハッ!!そうか、そうか!!ハハハハハハハハハハハハハハハッ!!お前がそういうならば俺様は喜んでそこのゴミを見逃そう。なんせようやくお前がその気になったのだからな!!そこのゴミも此処まで力の差を見せてやればもう歯向かいはしないだろうしなァ!!」

 

「馬鹿笑いし過ぎなのよ」

 

うんざりした調子で吐き捨てる鈴姫。

大嶽丸はそんな鈴姫を無視して大笑いを続ける。

それ程までに待ち望んだ事だったのだろう。

そんな中で茨は全身血に濡らしながらも立ち上がろうとしていた。

 

「何だ、ゴミ?せっかく見逃してやろうというのに続けるつもりか?」

 

「まだ、…………………………まだ俺は負けてねぇんだよ!!」

 

「ッ!?」

 

茨が放ったのはただの殺気だった。

だが、それでも、その殺気は大嶽丸を一瞬怯ませる程の濃度だった。

得体の知れない”何か”を感じさせるような濃厚な殺気であった。

それを感じて鈴姫は大きく口元を歪める。

大嶽丸に口元を見せない為に茨の方を向いて笑いながら拳を構える。

 

「何だ?」

 

「うん、ちょっと空気読んで寝てろ!!」

 

顔面に拳をめり込ませ、地面に叩き付ける。

意地で意識を保っていた茨もさすがに意識を吹っ飛ばされる。

完全に気絶した事を確認すると表情を戻して大嶽丸の方に向き直る。

その瞬間に何かを落としたのを大嶽丸は気が付かなかった。

 

「さて、行きましょうか」

 

まるで攫われるヒロインの様な空気を醸し出しながら鈴姫は大嶽丸に付いていく。

けれど、内に秘めたる思惑は完全に隠し切れてはいなかった。

 

 






大嶽丸登場でした!

鈴姫の正体はほぼお分かりだと思います
鈴姫は別に最初からこういう展開にするつもりでは無いです
ただ行き当たりばったりに動いているだけだったり
ゆえに茨にとある事を言うのを邪魔されて内心イラついてもいます

それでは、質問があれば聞いてください
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