問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!? 作:天崎
「無様ですねぇ、茨さん」
気絶している茨を見下す様に”影”覗きこんでいた。
それは”影”としか言いようが無かった。
決まった形は無くただ不定形で蠢く黒い”何か”。
嘲笑混じりに茨を観察する。
「ちょっとは強くなってるみたいですね。でも、まだまだ精神性が詰まらないですね。彼女との出会いがそれを変えてくれると思ったのですが……………」
表面に眼球の様な物を浮かばせながら影は形を変えていく。
茨を囲むようにしていると、中心から刀が生えてくる。
「人の周りでうろちょろすんな、クソ女が」
「おや?この姿を見せたのは初めてのはずですが」
「テメェの気持ち悪い気配はすぐに分かるんだよ」
「気持ち悪いとは失礼ですね」
文句を言いながらも否定はしない。
”影”…………
ある意味本体に等しいこの”影”は伏目の意志で好きなように形を変えるのだ。
茨はそれを対して気にせず立ち上がる。
その様子はまるで
左腕が無い事を確認しつつ傷口を適当に縛り上げる。
既に何故か血は止まっているが気分の問題なのだろう。
「起きて早々何処かに行かれるおつもりで?」
「分かり切った事を聞くな」
「なら、単刀直入に聞きますが先程の一戦で実力差は理解したと思いますが」
「だから、どうした。負けっぱなしは気にくわねぇ。だから戦って戦って戦って勝つまで殺し合いを続けるんだよ」
「では、そんな茨さんに私から素晴らしい提案が?」
「…………………」
茨は興味無さそうに無視して歩き出す。
その隣を蠢きながら伏目が付いていく。
「実力不足を補いたいでしょう?そのサポートとして私の魔眼を一つ貸しd「失せろ」
横一閃。
無造作に振るわれた刀が”影”を斬り裂く。
とはいえ、そんな事でどうにかなる”影”でも無い。
即座に修復は済まされる。
「最後まで話を聞いてくださいよ。人生を私に鑑賞させるだけで魔眼が手に入るのですよ?」
「どうでもいいんだよ。俺は俺の力で殺すだけだ」
「………………そうですか。まぁそういうならあまり干渉はしませんよ。私は視れればどうでもいいですし」
そうして伏目は茨の背を見送るのだった。
茨の姿が完全に消えた後に先程の一閃の事を思い出す。
あの一瞬、地面で何かに破片のような物が茨を中心に吸い上げられる様な物を視た。
加えてあの謎の生命力もあった。
「鈴姫さんが目を付けたのはそこらへんなんですかね。何にせよ、茨さんも多少は面白くなってきましたね」
”影”の口と言える様な部分を大きく歪ませる。
そうして、何時の間にか”影”は何処かに消え去っているだろう。
◆◆◆◆◆
「おい、何処へ行く気だ」
「………………」
一人で歩く茨に何処からともなく話し掛ける声が聞こえてくる。
とはいえ、茨は特に気にせず歩き続ける。
一切の興味も関心も示さずに歩き続ける。
「おい、無視をするな!!」
「………………なんだ」
茨はしつこい声に顔を顰めながら手に握っていた物を、鈴姫が立ち去る前に置いていった物を顔の前に出す。
それは鈴姫がしていた指輪、罪牙だった。
罪牙はバイザーを上げて文句を言い続ける。
「ったく、此方が幾ら話し掛けても無視しやがって」
「…………………用がねぇなら捨てるぞ」
「待て。俺の案内無しで大嶽丸の住処に辿り着けるのか?」
「何でアレの住処に俺が行かなければならねぇんだよ」
「あぁん?テメェ、大嶽丸にリベンジするんじゃねぇのか?」
「するに決まってるだろうが。それより先に腕だろうが」
「一緒だろうが」
「そもそもお前は何なんだ?どうでもいいが」
「今更な上にどうでもいいのか。名乗る気失せるが一応教えてやろう。俺は罪牙。姫の一族に受け継がれし妖具だ」
「そうか」
それだけ聞くと興味を無くした様に再び歩き出す。
罪牙はただただ相手をするのを面倒だと思う。
「だから、腕取り戻すにせよ、リベンジするにせよ。奴の居場所をしる必要があるんじゃねぇのか」
暗に自分が案内役だという意味も込めて言う。
罪牙としては乗り気では無いのだが我儘娘に付き合う形で渋々と引き受けている。
だが、茨は予想外の答えを返す。
「必要ねぇ。腕の場所くらい
「なんだと?」
「たとえ切り離されようと感覚的に
「……………………」
しばし黙る罪牙。
そして、茨が
その上で鈴姫の思惑も察する。
加えて大嶽丸自身も気付いていないだろうが、既に大きな流れが始まっている事を予感させた。
妖怪とは存在そのものがギフトゲームに近い者いる。
自身のルールに引き込むという点ではかなり近い。
その理不尽さは半端では無いが。
特に何もせずとも命を奪える個体がいるレベルである。
箱庭では格上も多いので完全に効くとも言え無いのだが脅威になるのは確かだった。
更に一部の妖怪では霊格に物語そのものが刻まれている者もいる。
特定の流れに沿った運命を辿る程にそれに準じて霊格が強化される。
そんな存在もいるにはいるのだ。
「なるほどな…………狙いはそれか」
「何を言ってやがる?」
「気にするな。俺が納得しただけの話だ」
罪牙は笑いながら答える。
この流れを作った黒幕と言える者はきっと存在しない。
今の状況は出会いが生んだ運命に近い物であった。
それが罪牙にとっておかしくてたまらなかった。
茨は首を傾げながらも自身の腕の方角へと歩を進める。
◆◆◆◆◆
(奇妙な奴よのう。余の怨念をその身に抱えて発狂どころか平常心を保つとは)
憑いてる当人すら怪訝に思うレベルで悟の状態は異常だった。
平然としているがその内側では怨嗟の声が叫び回っている。
常人では耐え切れず、耐性があっても人格が歪みかねない物がだ。
加えて侵食は肉体だけでは無く精神や魂にも作用している。
契約が何故かしら複雑に絡み合っている魂は中々侵食出来ていないが、精神の方は緩やかにだが進んでいる。
憤怒を誘発し、怨みを増幅し、内から響く怨嗟の声に同調するかの様な影響が出るはずだった。
それら全てを受けているにも関わらず、悟は平然としていた。
その姿からは強さは感じられない。
ただただ異常な有様だった。
「さて、そろそろ終わらせて素材を回収するか」
「素材じゃと?ワシを素材扱いするか」
「元よりそれが目的なんでね。まぁ今から実験台にする目的もあるにはあるが」
「何やら妙な力に目覚めたからと言って舐めるでは無い!!」
再び鉄串が投げ放たれる。
悟は刀を左手の人差し指と中指で挟みなぞり上げる。
それによって刀には禍々しい”何か”が纏われる。
「”妖力開放・呪式”」
禍々しい力を纏わせた刀で鉄串を弾きながら自身の有り余った妖力を憑いている”モノ”に喰わせる。
持て余している妖力を一旦喰わせて別物へと変換する。
そして、変換した妖力を憑いている”モノ”を通して出力する。
肉体に直接憑き、ほぼ一体化しているからこそ別物に変換された妖力も拒絶反応も無しに取り込み、扱える。
自身では扱えないゆえに他の物にして御しやすくしているのだ。
「此処かな」
「ぬぅ!?」
油取りが座標移動してくるポイントを直感で読んだ上で上がった出力による認識操作を加える。
移動してきた直後に油取りの目の前には刀が現れる。
油取りは本来正面から蹴りを入れる為に移動した。
だが、認識操作によって場所をズラされた。
ゆえに罠に飛び込む形となる。
とはいえ、経験はさすがに油取りの方が上である。
振り抜かれた刀は油取りを掠めはしたが深手を負わせるまでには至らなかった。
「チッ、惜しいな」
「小僧に仕留められる程安くはないわ!!」
刀を掠らせた腕から血を流しながらも座標移動を続ける。
潰れた左眼側を中心に死角となって視界から外れる様な位置に向けて鉄串が放たれる。
よく見れば先程までの鉄串と違い、赤熱している鉄串も混じっていた。
ただの熱せられた鉄串で無い事は察せられた。
それをわざわざ受け止めようという気は無かった。
”呪爪”は今まで通り使える。
出力が増している分、一度に放てる数と大きさも増している。
周囲に範囲を絞って出来る限り全方位に向けて放つ。
鉄串を悉く弾きながら刀を指で弾く。
「”呪爪・置斬”」
瞬間、油取りの先程掠めた傷口から呪詛が広がる。
妖力を纏った刀は同時に傷口に呪詛を潜伏させていたのだ。
それを起動させた事で腕を侵食する。
更に重ねる様に呪詛を媒介にして”呪爪”を送り込む。
回避しようが無い一撃が放たれ、鮮血が舞うのであった。
茨は決戦の地へ向かい
悟は新たなる力を振るうのでした
妖怪の生態はまさしくゲームみたいな物で
自身のルール上に引きずり込めば無敵に近いのがそれなりにいたりします
悟の強化に関してはまだ詳しく描写してませんが
例えるならば大きいけど出口が小さいのが悟です
幾ら膨大な力を抱えていても一度に発揮できる出力が小さいわけです
それで今は回路に別ルートを作って新たなる出口に抱えていたものを誘導している感じです
その手綱を握っている内は自身の力を十全使えるというわけです
それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!