問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!?   作:天崎

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FAIRYTALE in PERUSEUS

黒ウサギはジンに謹慎処分を受けていた。

自室の窓に滴る雫を指でなぞりながら、雨の降る箱庭の都市を見る。

 

(そういえばレティシア様は雨が苦手でしたっけ。血の臭いが湿気と共に立ち籠めるのは宜しくない、とか何とか)

 

吸血鬼のくせに何を言ってるのやら。

思い出して黒ウサギは苦笑した。

憂鬱そうに窓の外を見ていると、コンコンとノックが響く。

 

「はーい、鍵もかかってますし中には誰もいませんよー」

 

『どうする?』

 

「入ればいいんじゃないかな?」

 

声は球磨川と安心院のものだ。

しかし[誰もいない]と主張しているのに[入ればいい]と判断するのはどうだろうか?

 

『本当に鍵がかかってるね』

 

「そうだね」

 

『僕がなかったことにしようか?』

 

「いいや、壊した方が速いよ」

 

「え?御二人共少しお待ちを!?」

 

バキンッ!!

黒ウサギの制止の声も虚しく壊される。

 

「お待ちをって言いましたよね!?」

 

『僕は悪くない』

 

「別にいいだろ?」

 

二人の勝手な物言いに項垂れる黒ウサギ。

稀代の問題児に木製の扉はあまりに無力だった。

黒ウサギはウサ耳を垂れさせ、破壊されたドアノブを片手にしくしくと泣いた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

流した涙もそのままに、自前の湯沸かし器でお茶を淹れる。

その間に二人は持ち込んだ布袋を小皿に広げる。

中には手作りと思われるお菓子が入っていた。

 

「………まさか御二人が?」

 

「いいや。コミュニティの子供達だよ」

 

『僕達が黒ウサギちゃんのとこに行くと聞いたら渡されたんだ。駄目だよ、子供達に心配させたら?』

 

「そうですね」

 

頷く黒ウサギ。

 

「それで御二人はどうして私のところに?」

 

「そろそろ暦君と忍ちゃんや十六夜君が来るころだと思ってね」

 

「御二人は十六夜さん達の居場所を知っているんですか!?」

 

暦&忍と十六夜はどこかに行ったまま帰ってきてなかった。

もしかしたら“ノーネーム”に愛想を尽かしたのかもと思われていた。

 

『十六夜君はともかく、暦君が君を見捨てるわけないだろ?』

 

「僕達は黒ウサギを炎に飛び込ませるつもりはないからね」

 

炎に飛び込むというのは月の兎の話のことだ。

 

「皆さんには考えがあるのですか?」

 

「旗印を奪えば交渉材料にはなるだろ?」

 

「そうですがその為には厳しい試練が……」

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!?」

 

黒ウサギが言いかけた時、窓の外から男の悲鳴が聞こえてきた。

黒ウサギが窓に近付こうとすると球磨川が止めた。

直後、窓を突き破り何かが部屋に入ってきた。

 

「着いたぞ、お前様」

 

「着いたぞ、じゃねぇよ!!なんであそこから一気に跳躍したんだ!?」

 

「その方が速いじゃろ」

 

「そういう問題じゃないだろ!?」

 

窓から入ってきたのは中学生くらいの姿の忍とそれに抱えられた暦だった。

その手には袋があった。

 

「御二人ともどこから入ってるのですか!?」

 

「「窓から」」

 

「そういうk

 

「邪魔するぞ」

 

ドガァン!!と十六夜がドアを蹴り破った。

 

「い、十六夜さん!!というか皆さんは黒ウサギの部屋を破壊せずに入れないのですか!?」

 

部屋の惨状に黒ウサギは悲鳴をあげる。

安心院は忍と十六夜が持つ袋を見て問う。

 

「二人が持っているのは例の物かな?」

 

「そうじゃ」

 

「なんだよ、気付いてたのかよ」

 

「袋の中身は何なのですか?」

 

「「逆転のカードじゃ」だ」

 

言って二人は黒ウサギに袋を突き出す。

だが黒ウサギは中身を確認しようとしない。

 

「まさか……短時間で、本当に?」

 

「ゲームより時間が問題だったけどな」

 

「ありがとう……ございます。これで胸を張って“ペルセウス”に戦いを挑めます」

 

「礼はまだ速いぞ」

 

「そうじゃな。むしろ、ここからじゃ」

 

礼はいいと言う。

誰に言われるまでもなく、コミュニティの為に戦ってくれた、それだけで黒ウサギの胸は感謝でいっぱいだった。

 

(コミュニティに来てくれたのが皆さんで……黒ウサギは本当によかったと思ってます)

 

ぎゅっと袋を抱き締める。

中を確かめる必要などない。

戦利品そのものよりも、彼らの好意の方が何倍も胸に響いた。

黒ウサギは溢れそうな涙を拭き、勢い良く立ち上がる。

五人の顔を見回した黒ウサギは、高らかに宣言する。

 

「ペルセウスに宣戦布告します。我らの同士・レティシア様を取り返しましょう」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

____二六四五外門・“ペルセウス”本拠。

白亜の宮殿の門を叩いた“ノーネーム”一同を迎え、謁見の間で両者は向かい合う。

 

「我々“ノーネーム”は、“ペルセウス”に決闘を申し込みます」

 

「何?」

 

ルイオスの表情が変わる。

予想していなかった返答に眉をひそめるが、黒ウサギは続ける。

 

「決闘の方式は“ペルセウス”の所持するゲームの中で最も高難度のもので構いません」

 

「……はぁ?何?そんなつまらない事を言いに来たの?決闘なら……

 

ルイオスが言い終わる前に黒ウサギは眼前に袋を広げる。

中身は“ゴーゴンの首”の印のある紅と蒼の宝玉だ。

 

「こ、これは!?」

 

「ペルセウスへの挑戦権を示すギフト!?まさか名無し風情が、クラーケンとグライアイを打倒したというのか!?」

 

困惑するペルセウス一同。

本来ならば、挑戦権を得たコミュニティが出た場合、本拠に通達が行くのだが、気が付いてなかったらしい。

 

「ハッ……いいさ、相手にしてやるよ。元々このゲームは思い上がったコミュニティに身の程を知らせてやる為のもの。二度と逆らう気がなくなるぐらい徹底的に……徹底的に潰してやる」

 

華美な外套を翻して憤るルイオス。

それを睨み、黒ウサギは宣戦布告する。

 

「我々のコミュニティを踏みにじった数々の無礼。最早言葉は不要でしょう。“ノーネーム”と“ペルセウス”。ギフトゲームにて決着をつけさせていただきます」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

“契約書類”文面

 

{ギフトゲーム名“FAIRYTALE in PERSEUS”

 

 ・プレイヤー一覧 逆廻十六夜

          球磨川禊

          安心院なじみ

          阿良々木暦

          忍野忍

 ・“ノーネーム”ゲームマスター ジン=ラッセル

 ・“ペルセウス”ゲームマスター ルイオス=ペルセウス

 

 ・クリア条件 ホスト側のゲームマスターを打倒

 ・敗北条件 プレイヤー側のゲームマスターによる降伏

       プレイヤー側のゲームマスターの失格

       プレイヤー側が上記の勝利条件を満たせなくなった場合

 

 ・舞台詳細・ルール

  *ホスト側のゲームマスターは最奥から出てはならない

  *ホスト側の参加者は最奥に入ってはいけない

  *プレイヤー達は姿を見られてはいけない(ゲームマスターを除く)

  *見られたら失格、挑戦権を失う

  *失格となっても挑戦権を失うだけでゲームを続行可能

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、“ノーネーム”はギフトゲームに参加します

     “ペルセウス”印}

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

契約書類に承諾した直後、七人の視界は間を置かずに光へと呑まれた。

次元の歪みは七人をギフトゲームの入口へ誘う。

 

「姿を見られれば失格、か。つまりペルセウスを暗殺しろってことか?」

 

「それならルイオスも伝説に倣って睡眠中という事になりますよ。流石にそこまで甘くは無いと思いますが」

 

「YES。まずは宮殿の攻略が先でございます。不可視のギフトをもたない黒ウサギ達には綿密な作戦が必要です」

 

黒ウサギが人指し指を立てて説明する。

その時、安心院が言う。

 

「僕に作戦があるよ」

 

「どんな作戦ですか?」

 

黒ウサギには言わず安心院は十六夜と、暦の血を吸い高校生くらいになった忍に耳打ちをする。

 

「面白そうじゃねぇか」

 

「確かにいい作戦じゃな」

 

作戦を聞いた二人はニヤニヤと笑う。

その笑みは嫌な予感を感じさせる。

 

『僕も教えて欲しいな安心院さん』

 

「まぁ見てな。全員で最奥まで行くのを保証するぜ」

 

そう言いながら三人は門の前に立つ。

 

「十六夜さん」

「忍」

『安心院さん』

 

「「『何をするつもり?』」」

 

「ボスに行くまでダンジョンを攻略するのは面倒だろ?だからダンジョンを壊してしまえば一気に行けるよね?」

 

その言葉を合図に三人は宮殿に攻撃する。

轟音が響き、宮殿にヒビが入り、一気に崩れる。

最奥の部屋を残し全てを壊したのだ。

強引で無茶苦茶な攻略の仕方に唖然とする四人であった。




ペルセウス戦開始です。

次からvsルイオスです。
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