問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!? 作:天崎
まさか茨木童子イベントがもう来るとは思わなかったよ
様子見してたけど特に問題無さそうだから茨編はこのまま進みます
「此処か」
茨は大嶽丸の根城まで辿り着いていた。
忍びこむことなどせずに正面から堂々と入り込んでいた。
奪われた左腕の気配を感じるとはいえさすがに道までは分からないので罪牙に案内させている。
道中当然ながら大嶽丸の配下が襲い掛かって来るがその悉くは斬り倒していた。
通った後には夥しい量の肉塊が転がっている。
門まで辿り着いたところで大男が立ちはだかった。
「止まれ。此処が何処か分かっての蛮行だろうがただで済むとは思ってねぇよな?」
「知るか、どけ」
「はっ、俺には用が無いってか?まさかお前が姐さんの………………」
「そのまさかさ、高丸」
「罪牙さん……………じゃあ、確定だな。俺は悪路の高丸。通称悪路王って奴だ」
「知るか……………邪魔だからどけ!!」
茨は一切話を聞かずに右手に握った刀を振るう。
正確に首を目掛けて放たれた斬撃を高丸は慌てて防ぐ。
罪牙は道中で見慣れた光景だからか呆れた様に溜息を吐くだけであった。
「おいおい、狂犬か?」
「まぁ間違ってはいないな」
「そんな奴を姐さんが好きますかね?」
「今は単純にお前が眼中に無いからこその対応だろう」
「マジですか。何処まで一途なのやら」
茨が斬撃を放つ中で罪牙と高丸は世間話をする。
首、眼球、腹、関節などを狙い放たれる斬撃を最小限の動きで弾いていくが徐々に速度が増していく。
大剣では小回りが利かないのもあるが、徐々に茨の対応の精度が上がっているのだ。
まるで急速に成長している様に、まるで高丸の動きを即座に記憶してるかの様に。
「確かに姐さんが気に入りそうな才は持ってるな」
「さっきからごちゃごちゃとうるせぇんだよ!!さっさと死ね!!」
三十撃目を打ち込んだところで茨の刀が砕ける。
茨の刀より高丸の大剣のが遥かに硬度は高い。
その上で正確に受け止め、正確に弾いてダメージを蓄積させていたのだ。
刀の方が砕けるのも無理は無い。
茨は一旦距離を取り、新たな刀を手に取る。
一方、高丸の方も自身の大剣を見て怪訝に思っていた。
(刃毀れしているだと?)
確かに幾度と斬撃を受け止めてはいるがそこまでの数を受けたわけでは無い。
にも関わらず刃毀れが起きている。
何かタネがありそうな状況ではあった。
高丸は口元を歪めて真っ直ぐと茨を見る。
「何があろうと関係無いか。この程度なら許容範囲だ」
「いいからさっさろ消えろ」
再び衝突が始まる。
首を狙った左から右への横薙ぎを柄頭を下から突き上げる事で弾く。
茨は突き上げられた瞬間に刀を手放す。
結果として刀が高く打ち上げられるだけとなる。
衝撃を全て刀に押し付けた上で新たな刀を掴み左上から右下へ斜めに斬り下げる。
逆手持ちにした大剣で流す様に受ける。
受け流された勢いのままに体を回転させて回し斬りの要領で相手の右側に斬り込む。
左手で峰を掴んで押し込むように防御に間に合わせる。
そこから裏拳のごとく拳を放つ。
茨は後ろに跳んでギリギリのところで拳を回避する。
間合いが離れた隙に高丸は大剣を持ち直す。
「少し、本気を出すか。全力で防げよ。一撃で終わるなんて詰まらない結末は御免だからな!!」
「ッ!?」
強烈な圧力を感じて警戒する茨。
高丸は両腕で柄を掴み、一瞬で間合いを詰めると上段から一気に振り下ろした。
落雷の様な轟音と共に放たれた斬撃を茨は咄嗟に受け止めるが、片腕が無い現状では軽々と弾き飛ばされる。
幸運にも斬撃の軌道のど真ん中では無かったので右側へと転がされる形で済んだ。
高丸の斬撃は地に深々と溝を刻み付けていた。
もし直撃していたら茨も真っ二つになっていただろう。
その光景を見ても茨は動揺もせずに立ち上がる。
受け止めたことでヒビだらけになった刀を投げ捨てると新たな刀を握り直す。
「なぁ、聞いていいか?」
「あぁ?」
「何で姐さんを、鈴鹿御前を助けようとする?」
「してねぇよ」
「は?」
予想外の答えにキョトンとする高丸。
茨は面倒そうにするだけで特に何も言おうとはしない。
その様子で誤魔化しですら無いのを確信する。
「じゃあ、お前は何の為に此処に来た?」
「言う必要がねぇだろ」
「俺にはあるのさ」
「…………………俺はただ________」
茨の目的を聞いて高丸は今度こそ本気で唖然とする。
その上で頭を押さえ、盛大に笑い出す。
「ハハハハハハハハハハハッ!!マジかよ!!そんな事の為に此処まで来たのかよ!!そりゃ、確かに姐さんも気にいるはずだ!!」
「何が可笑しい」
「いやいや、悪い悪い。お前にとっては当たり前の目的だよなぁ。けどまぁ、俺みたいなのからすれば笑えるんだよ。お前の様な奴は」
「何の事だか知らねぇが俺には関係無い話だ。そろそろ道を開けろ」
「通りたければ俺を斬ってからにしろ。俺にも義理があるんでね」
「そうか…………なら、死ね」
それを合図に再び衝突する。
高丸が横薙ぎに大剣を振るい、茨は大剣の上に跳び乗って回避する。
そのまま振り払われるより速く距離を詰めて突きを放つ。
高丸は突きが当たる直前に勢い良く頭を振るう。
鬼角で刀を横から叩くことで軌道をズラしたのだ。
そこから大剣を即座に振り上げて茨を打ち上げる。
落下地点に合わせて斬撃を放つが茨は刀で受け止めつつ足で刀を押さえ、大剣を滑る様にして衝撃を逃がす。
当然刀は使い物にならなくなるが、先程打ち上げられてから落下し放置されていた刀を掴み取って即座に斬り上げを放つ。
同時に高丸も両手で大剣を掴み、振り下ろす。
今度こそ軌道の中心、回避の仕様が無い状況のはずだった。
膂力の差は歴然。
一方的に茨が両断されるはずだった。
だが、結果はそうならなかった。
「オラァ!!」
「ぬぅ!?」
ぶつかり合った刀と大剣は互いを弾き飛ばし、衝撃は相殺された。
とはいえ、さすがに刀は砕けたが。
それでも、高丸の一撃を弾き返せはしたのだった。
高丸は先程までの状況ならあり得ない結果に驚きながらも更に攻撃を加える。
茨も新たな刀を即座に握り、振るう。
再び互いの斬撃が衝突する。
また互いの得物が弾かれる。
けれど、今度は茨の刀も全体にヒビが広がっているが原型は留めていた。
その衝突で高丸は感じていた違和感の正体に気付く。
(こいつ、一撃ごとに攻撃が重くなっているだと!?)
結果としてはそう変わり無い。
だが、手応えは着実に変化していた。
一撃ごとに茨の斬撃は重くなっている。
それが結果の差異の原因だ。
が、ただ重くなっているわけでは無い。
まるで
「いいね、面白い!!何処まで続くかトコトンやり合ってやるよ!!」
「うるせぇよ!!」
至近距離で何度も何度も斬撃が衝突し合う。
その度に茨の刀が散って行く。
残骸が積み重なっていく。
それに合わせるかのように茨の一撃は重くなって行く。
「やっと、折れたか」
「まさか俺の剣を砕くとはな」
幾度となく繰り返された結果、高丸の大剣は中央から真っ二つに折れた。
繰り返しぶつかりあった結果蓄積されたダメージが大剣を砕いたのだ。
同時にそれは茨の一撃が高丸の一撃を完全に上回った結果でもあった。
ヒビが入っているがあと一撃は耐えうる刀。
完全に折れた大剣。
勝負は付いていた。
だから、茨が最後の一撃を振るう直前に高丸は聞いた。
「そういや、お前の名は何なんだ」
「茨木童子の茨だ。邪魔ではあったが久々に愉しくはあったぞ」
「そうかい、そりゃ良かった」
それが最期の言葉だった。
茨の横薙ぎの一撃が高丸の首を斬り落とした。
傷口から血が噴水の溢れ出す。
(本当に姐さんを頼むぜ。不幸にしたら呪うぞ)
死の間際にそんな事を想いながら悪路の高丸は逝った。
未練はあったが満足して逝きはした。
霊格のなぞりに縛られながらもその上で満足はしているのだった。
◆◆◆◆◆
「この先があいつらの城なんだな?」
「あぁそうだ。門の先があいつの居城だ」
門番を打ち破り、茨は目的を果たすべく門を越え城へと続く階段を上っていく。
高丸での戦闘の疲れすら無視して真っ直ぐと。
茨も、罪牙も真っ直ぐ大嶽丸の根城を見据えていたがゆえに気付かなかった。
散々砕けたはずの刀の残骸が何処かに消えていることを。
高丸の血が明らかに少ないことを。
悪路王vs茨でした
高丸的には勝っても負けてもどっちでも良かったけど姐さん任せるなら自分より強い相手が良いということで本気は出してます
多少嫉妬も混じっていますが
とはいえ、割り切ってはいるから散る時は無駄に足掻かないのでした
それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!