問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!? 作:天崎
「なぁ、一つ聞いていいか?」
「なんじゃ、ワシに聞くようなことでもあるのか?」
油取りは怪訝そうに聞き返す。
悟の目的は先程からの言動からしても油取りを素材にすることでしかない。
その素材に何か訪ねることがあるのか疑問なのだろう。
「いや、単純に興味があるだけなんだが……………お前は何で人を襲う?」
「それがワシだからじゃ」
即答だった。
一切の間すら無い即答だった。
それほどまでに油取りにとっては当然の答えだったのだ。
「ワシは、油取りは人を襲う妖怪じゃ。そこに理由など無い。だがまぁ、強いて言うなら
「そうかい。大体想像通りだったよ」
露骨にがっかりした様子の悟。
顔には、はっきりと期待外れと書かれていた。
溜息を吐きながら刀を構え直す。
「何じゃその反応は」
「いやいや、勝手に期待してたとはいえあまりにも残念だったもんでな。何か一つでも、一つでも俺の琴線に触れる様な物があれば良かったのにな」
「何が言いたい」
「ガッカリだって言ってんだよ。結局妖怪としての本能に縛られてる程度の奴なんて残念にも程がある。テメェの力があるなら、もうちょいマシな自我があれば面白味が出たっていうのに」
「貴様の期待なんざ、知った事か」
「だろうな。だから、終わりだ」
「なっ、ガバゲブゥ!?」
軽く刀を振り下ろす。
それと同時に油取りが縦に斬り裂かれた。
右腕は斬り落とされ、右肩から真下にはっきり分かるレベルの斬り傷が刻まれる。
だが、その結果に悟は舌打ちする。
「チッ、まだ制御が利いてないか。……………いや、咄嗟に後方に避けたのか」
「ガキが……………………一体何を……………………」
右肩に傷を付けられた時点で油取りは反射的に後方に跳んでいた。
それでも、咄嗟の座標移動では跳べる距離もそこまででは無い。
ゆえに右手は斬り飛ばされた。
油取りは即座に自身に鉄串を刺して呪詛を抜く。
残しておけば追撃が来るだけなのは先程ので分かっている。
「よっ」
「ッ!?」
再び刀が振るわれる。
今度こそ油取りは全力で警戒して刀の軌道上とその延長線上から逃げる。
すると、刀の軌道上の先の民家が斬り裂かれる。
斬撃を遠方に飛ばすタイプなのはこれで確定的であった。
更に振るわれる刀を回避しながら油取りは鉄串を投げ放つ。
当然として鉄串も斬り裂かれるが、
更に軌道上へと鉄串数本を投げ放つ。
そのどれもが別口の斬られ方をしている。
そして、重なる様に投げ放った鉄串は後方の鉄串は斬られずに済み、悟が直接弾いていた。
「どうやらその見えぬ斬撃は刀の軌道延長線上しか斬り裂けず、それも最初に触れた物しか斬れないと見た」
斬り口が違うのも、後方の鉄串が無事だったのもそれならば理屈が通る。
刀の軌道延長線上の最初に触れた物しか斬れない為に、似たような軌道を通った鉄串は別の斬られ方をする。
先行した鉄串を壁にした鉄串が無事なのもそういうわけである。
あぶらとり性を見抜かれたと思われる悟はそれでも余裕を崩さない。
「あっさり見抜かれてるじゃない」
「こんなもの初見殺しでしかねぇよ。それに射程から出られたら斬れねぇし」
最初の一撃で油取りが一刀両断されずに済んだのは距離の問題だったのだ。
呪詛を利用にしたこの斬撃は意外に射程領域が狭いのだ。
振るった刀の軌道延長線上、特定距離内などの縛りを加えることで精度を上げているのだ。
常時刃を出さずに触れた瞬間のみ刃を具現化させ、瞬間的な斬れ味のみに特化させた斬撃でもある。
見えないのでは無く触れた瞬間のみ具現化するというわけだ。
とはいえ、種を見抜かれればそう効果は無い。
刀の軌道上を避けるか、壁を用意するか、距離を取るなりすればいいのだから。
あくまで不意討ちで輝く技である。
それを分かったからこそ油取りは即座に距離を詰めて来る。
射程距離があるとはいえ距離を取るのは相手に誘われていると察してのことだろう。
だから、逆に距離を詰める。
軌道の延長線上に入らなければいいだけなので、座標移動が出来る油取りにとっては容易くはあった。
「一度斬られたのを忘れてねぇか?」
「呪詛なら抜き取ったが」
「一回祓ったぐらいで終わるなら怨念とは呼ばねぇよ。ましてや、祟り神級となればなぁ!!」
悟は刀を振り上げると、そのまま鞘へと納刀する。
油取りは怪訝に思いながら隙を逃さず、鉄串を放とうとする。
だが、それは叶わなかった。
完全に刀が納まると同時に先程の傷口と全く同じ軌道で斬り上げるような斬撃が油取りを襲ったのだ。
右半身から血を溢れさせながら油取りは崩れ落ちる。
「”呪爪・返し重”」
「なぜ、呪詛は一片残さず……………………」
「そんな物は関係ねぇんだよ。
けれど、それで止まる油取りでは無い。
既に右半身の感覚は無いが、それでも動けはするし、戦えもする。
座標移動を繰り返した上で悟の死角から鉄串を放っていく。
「悪いが、この場で試せることは試したしもう飽きた。だから、今度こそ終われよ」
「ガキがワシを/
/下に見て……………」
声がブレる。
純粋に上がった出力を身体能力に変え、悟は踏み込んだ。
あえて正面から踏み込む。
首を捻り、頬を掠める数ミリのところで鉄串を避け。
鞘に手を重ね、柄を握り込む。
正面に壁の様に放たれる鉄串を刀に重ねた”呪爪”で払い飛ばし。
斜めに振り上げた刀を手首を捻った上で向きを変え。
両手で刀を握り。
斜めに振り下ろす。
「”呪爪・千閃”」
斜めに一刀両断された油取り。
その両断された切断面全てを傷口として、呪詛を侵食させる。
それを触媒に”呪爪”を放つ。
切断面に向けられた軽く万を超す無数の斬撃によって油取りは細切れとされる。
肉片どころか塵にまで斬り裂かれ、水風船のごとく弾け飛ぶのだった。
刀を納め、一息吐く。
だが、侵食した紋様は消える様子は無い。
潰れた左眼もそのままである。
けれど、悟は対して気にもせずに座り込む。
「で、これどうするの?」
「とりあえず蛍辺りに相談すればどうにかなるだろ」
「この紋様はどうでもいいわよ。どうせ侵食抑える気も無いんでしょうし」
「まぁ特には無いな。じゃあ、何が言いたいんだ?」
「油取りよ。素材が欲しかったんじゃないの?」
「それなら、手首は残ってるから大丈夫だ」
「あぁ、そうだったわね」
妖怪は死体にも神秘が残る。
人魚の肉を食えば不死が手に入るなど、妖怪は死体にも逸話はあるのだ。
なので、手首でも素材的には問題無い。
悟は手首と鉄串を回収すると帰路に付くのだった。
◆◆◆◆◆
「はい、これで良し」
「ありがとうな、蛍」
悟の腕には何かが書かれている包帯の様な物が巻かれていた。
”百鬼夜行”本拠に着くなり、心配していた蛍が飛び込んできたのでついでに処置して貰っていたのだった。
陰陽師の力も物語として取り込んでいる蛍だからこその対処法でもあった。
悟と蛍の周囲には真っ黒になった人型の紙が散乱していた。
撫で物である。
邪気、怨念、悪病に侵食された物に使う品だ。
患部に当てる事で罪穢れや災いを紙に移す事で除去するのだ。
とはいえ、質が質な為に結構な数が消費されていた。
それでも根本を抜く事は出来ない為に侵食が酷かった左手に呪いを集中させる形にしたのだ。
悪鬼を厭つ、禍害の鬼を厭ち除く、凶悪の鬼を厭ち鎮めるなどの意味を持つ霊符を刻んだ本体を応急処置として巻き付けたのだ。
これで外さなければ侵食されることは無い。
憑かれている事に変わりは無いが。
「私は礼は言葉より行動で示して欲しいのよ」
「妖力はさっき補充しただろ?」
「まだ治療してないところあるわよね?」
「あぁ…………好きにしろ」
「あはっ、悟愛してる!!」
蛍はそういうと空っぽの左眼に口を近付けて行く。
まだ治療していないので血が溜まっている。
その溜まり、半端に固まっている血を舐めすする」
「やっぱり悟の血は美味ね」
「っ…………さすがに気持ち悪いな」
「でも、目の内側を舐められる感覚って新鮮でしょ?」
「出来れば体験したくは無かったな」
微妙に悟も体を震わせる。
一応治癒系の物語で止血も兼ねてるとはいえ舐められるのは気持ち悪い。
さっさと終われと悟は内心思うのだった。
五分程して蛍は満足したのか、悟から離れる。
「なぁ、蛍」
「なぁに?悟」
「心臓と角をくれ」
「喜んで!!」
一切の躊躇も無かった。
蛍は即答と同時に角をへし折り、心臓に手を突っ込んだ。
そのまま心臓を引っこ抜いて悟へと差し出す。
同時に胸から血が噴き出るが、すぐに止まり再生する。
残機があるとはいえあまりにも狂った一幕ではあった。
悟も蛍も動じはしない。
両者共にそれを気にする様な精神は持ち合わせてはいなかったのだ。
「さて、これで材料は揃ったか」
「あは、あははははは!!私は悟の為なら幾らでも身を差し出すわ。なんなら、抱いてくれてもいいのよ?」
「今は遠慮しておく。材料はこれで十分だしな」
何時もより控えめとはいえ直球な要求をスルーした。
「相変わらず馬鹿な事やってるわね」
「割り込んでこないでくれる?」
「呼ばれもしなかった蜘蛛女が何を言ってるのかしら?」
クスクスと煽る為だけに嫌味を呟く紅葉。
別に優越感から来る嫌味と言うわけでは無い。
蛍がくやしがるのを見るのが愉悦なのである。
そんな二人を置いといて悟は立ち上がる。
悟は油取りの手首と鉄串、青行燈に心臓と角という素材を持ち、刀を加工して貰う為に”ノーネーム”へと向かうのだった。
油取り戦決着でした
荒魂の力はまだ把握し切れて無いので呪爪の延長線上の能力を試すのでした
集まった素材は油取りと青行燈の霊格を宿す物
それを加工した武具はどんな霊格を持つのやら
それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます
何となくヤンデレ分が足りない気はする