問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!? 作:天崎
「悪路王が死んだようね」
「………………何故お前がそれを知っている。そもそも何故牢から出て枷も解けている」
「
鈴姫は大嶽丸を煽る様に手を軽く振る。
大嶽丸は露骨に顔を歪ませると大太刀を持って立ち上がる。
大太刀に手を掛けながら鈴姫を睨み付ける。
「お前は自分の立場が分かっているのか?あの男を即座に始末しに行ってもいいんだがな」
「あら、行く必要は無いわよ?
鈴姫が言った瞬間に扉が吹き飛ぶ。
扉の残骸と共に大嶽丸の配下の死体が乱雑に転がる。
足音共に扉を吹き飛ばした者が室内へと入ってくる。
「おいおい、何の冗談だ?」
大嶽丸は入って来た者の顔を見て不愉快そうに顔を顰める。
今一番見たく無い顔が入って来たのである。
鈴姫の心を乱した男が部屋に飛び込んで来たのである。
「茨、遅いわよ」
鈴姫が楽しそうに言葉を投げ掛けるが茨は無視して歩を進める。
その手に持つ指輪を見て大嶽丸は頭を抱える。
憎々しそうに指輪を睨み付けて叫ぶ。
「罪牙ァァァァァァァ!!テメェか、そいつを手引きしたのはぁ!!」
「ふん、喚くな。俺の手引きじゃねぇ。こいつは自分自身の力で此処に辿り着いたんだからな」
「そうかよ。だが、どんな手品を使いやがった?そいつは俺様に傷一つ付けられねぇ雑魚だ。それが高丸の野郎を倒せるはずがねぇだろうが」
「それが倒したんだよ、こいつは」
「あり得ねぇ!!」
「あり得るんだよ、それが」
「随分とそいつが気に入ってるようじゃねぇか、
「ハハッ、こんな姿に成り果てた俺をその名で呼ぶなよ、大嶽。俺はただテメェに娘を渡すよりはマシって思ってるだけだ」
坂上田村麻呂、それは鈴鹿御前の物語に登場する鬼殺しのプロだ。
鈴鹿御前と愛し合った男でもある。
罪牙となっているのは初代の坂上田村麻呂である。
そう、初代だ。
鈴鹿御前側は血筋によって霊格が移るが、坂上田村麻呂は固定では無い。
それゆえに娘達を見守る為に指輪に魂を封じ、歴代鈴鹿御前に受け継がれる者と成り果てたのだ。
ゆえに新たな鈴鹿御前が生まれる度に発生する大嶽丸とは腐れ縁に近い者があるのだ。
大嶽丸は罪牙と言い合っても不毛と感じ、視線を茨に移す。
「どんな手を使ったが知らねぇが高丸を倒すとは大したもんだ。そんなにあの女を助けたいのか?」
「なわけがねぇだろうが」
「あ?」
即答であった。
茨は即答で否定した。
予想外の答えに大嶽丸も一瞬動きを止める。
察していた鈴姫も分かった上で残念そうにしていた。
「あの女は助ける必要なんてねぇだろうが。俺はただ勝ち逃げされる事が許せねぇだけだ。俺は勝つ。どれだけ時間が掛かろうが勝つ。じゃないと、気が済まねぇんだよ」
「なら、テメェは此処に……………」
「腕を取り戻す為とあいつと戦う為だけだ。テメェは次いでだ。もう一度戦い勝って斬る。それで終わりだ」
「舐めた口を聞いてくれるじゃねぇか。俺様を誰だと思っている?傷一つ付けられずに圧倒されたのを忘れたか!!」
「何時の話をしてやがる。何時までも俺が負けっぱなしなわけがねぇだろうが!!」
大嶽丸の大太刀が抜き放たれ、茨が刀を持ち振るう。
横薙ぎの一閃を下から押し上げる様に払い、懐に踏み込む。
だが、即座に第二撃が振るわれ、踏み込むにも踏み込めない。
片腕が無い分不利なのは茨であった。
まず、手数が足りず、入れれる力も不足し、踏ん張りも利かない。
一撃一撃に対処は出来てもそれ以上は無かった。
それでも戦いになってはいた。
遠く離れていた実力の差が目に見える程度の差に変わっているかのようだった。
大嶽丸は大太刀を振るいながら違和感を振り払えずにいた。
「思った以上に差が縮まっていて驚いたかしら?」
「お前、何か知っているな………………」
「考えれば分かるでしょ?茨は
鈴鹿御前に選ばれる。
その意味を大嶽丸はよく知っていた。
何度も何度も繰り返し、同じ体験をしているこそ分かっている。
けれど、認められはしなかった。
認めれば自分が選ばれなかったという事になるのだから。
「認めるか………認めるか認めるか!!俺様が、俺様が貴様の様なゴミに劣るなど!!」
大太刀に込められた力が増す。
流石に受け止め切れず後方に弾き飛ばされる。
刀にはヒビが入り、破片が零れ落ちていった。
茨は無言で刀を投げ捨てると新たな刀を取り出した。
しかし、その間に大嶽丸は間合いを詰めていた。
柄を両手で握り、全力での横一閃。
「何故生きている」
「知るかよ」
防げるはずもなく、回避も完全では無かった。
それでも茨は生きていた。
刀は叩き折られ、胸には横薙ぎの傷口。
けっして浅くは無いが致命傷では無かった。
多少後方に跳んだが確かに致命的な距離ではあった。
けれど、傷口は見ての通りである。
「何を仕掛けた。何を足掻く。ゴミが一丁前に抵抗してんじゃねぇぞ。ゴミはゴミらしく俺様の前で惨めに死ねよ!!」
手応えに違和感はあった。
結果的に叩き折られた刀だが、手応えは明らかに一本分の物では無かった。
とはいえ、それをじっくりと考える様な精神状態では無かった。
何はともあれ傷自体はあるのだ。
完全に防げないなら死ぬまで押せばいい。
追撃の為に大太刀が振るわれた時だった。
「さすがに未完成の霊格で勝てる相手じゃないわよね」
[無謀][無駄][無意味]
「でも、
宙に浮く二本の刀が大嶽丸の大太刀を受け止めていた。
刀と茨の間に鈴姫が降り立つ。
鈴姫は笑みを浮かべながら茨の方を見る。
「何だ」
「いや~良妻アピールチャンスだと思ってね」
「口に出したら意味が無いぞ」
「罪牙は黙って。大通連、小通連。任せたわよ」
[[了解]]
「何処までも………………何処までも俺を拒絶するのか、鈴鹿ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
叫びながら大太刀を振るう大嶽丸。
宙に浮く二本の刀、大通連と小通連は器用に動いて大嶽丸の斬撃を受け止める。
大嶽丸の叫びを完全に無視して鈴姫はギフトカードから包帯に巻かれた塊を取り出す。
「受け取りなさい、あなたの腕よ」
「テメェが持ってたのか」
「いや、さっき盗んできたのよ」
サラッと言いつつ舌を出して可愛さをアピールする鈴姫。
茨としては一切目を向けて無いが。
そこを密かにイラッとしつつ鈴姫は腕を投げ渡す。
受け取った瞬間、何かが脈打つのを感じた。
まるで磁石の様に切断面同士が惹かれ合っていた。
「さて、これで茨木童子の霊格が。そして、
「初めからこれが狙いだったのだろう?」
「まぁ行き当たりばったりだけどね」
茨から罪牙を受け取ってその場を離れる。
此処まで状況を持って行くのが鈴姫の企みだった。
企みとはいえ思い付いたのは大嶽丸が茨を追い詰めた時だったが。
「やっと、戻ったか」
言いながら切断面同士を触れ合わさせる。
途端に肉と肉が混じり合う様に繋がっていた。
更に、最初に部屋に投げ込まれた大嶽丸の配下の死体の肉片や血が茨に吸い寄せられる。
同時に内側で何かが脈打つ感覚と共に体そのものが変わって行くのを感じていた。
「………………何だったんだ、今のは」
その変化の全てが終わるが外見的な変化は無かった。
強いて言うならば傷が再生した程度であった。
疑問に思いながらも茨は立ち上がり、大嶽丸の方を向く。
大嶽丸は大通連と小通連をようやく振り払ったとこだった。
「チッ、何が起きたかは知らねぇが仕切り直しか」
「仕切り直しじゃねぇよ。テメェが斬られて終わる話だ」
「ゴミが調子に乗るんじゃねぇよ」
上段から縦に大太刀が振り下ろされる。
茨は久々に両手に刀を握り、前方に踏み込む。
左の刀で振り下ろされる刀を側面から叩き軌道をズラし、右の刀で斬り込む。
斬り込んだところで傷一つ付けられない。
そのはずだった。
「なっ」
けれど、刀は薄くとはいえ大嶽丸の皮膚を斬り裂いて血を垂らさせるのだった。
大嶽丸は驚き、思わず距離を取る。
一方、茨も怪訝な顔をしていた。
大太刀を受け止めた左の刀はともかく一度振るっただけの右の刀が明らかにおかしかったのだ。
まるで数千回振るったあとの様な傷み方をしていた。
両者共に怪訝に思う中で鈴姫はただ楽しそうに笑みを浮かべているのだった。
茨vs大嶽丸開幕でした
割と鈴姫の思惑通りに進んでいる様で
実際のところ行き当たりばったりなので偶然の要素が強かったり
高丸には勝てると思っていたが大嶽丸はまだ早いと思っているので助け船を出すのでした
茨の変化はいかに
それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!