問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!?   作:天崎

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一閃の決着

「刀を変えたくらいで状況が変わるとでも思っているのか?」

 

「知るかよ」

 

合図も無しに茨と大嶽丸は同時に踏み込んで刀を打ち付け合う。

初めて手にする刀ではあるが、”騒速(ソハヤノツルギ)”は茨の手にしっくり馴染んでいた。

茨は問題無く使えることを確かめると改めて得た力の真価を試し始める。

 

「百」

 

大嶽丸はいきなり重くなった一撃に多少驚きながらも難無く受け止める。

 

「三百」

 

更に一撃は重くなり威力の差が想定を越えて後方に少し下げられる。

 

「五百」

 

凄まじい衝撃音が響く。

今度は大嶽丸も本気で受け止めている為に余波は無い。

茨は気にせずに次々と打ち込んでいく。

その度に一撃はどんどん重くなって行く。

 

「三千」

 

「ぬぐ……………」

 

「五千」

 

「ぐぅぅぅぅぅ!?」

 

遂に受け止め切れずに大嶽丸は吹き飛ばされる。

吹き飛ばされながらも体勢は崩さずに茨を正面に見据えながら地に足を付ける。

睨みながらも大嶽丸は奇妙な光景を目にしていた。

今の茨はまるで数多もの死体や刀剣の残骸で築かれた山を背負っているかの様だった。

そんな事を思わせる様な気配を放っていた。

 

「これなら行けるか」

 

騒速(ソハヤノツルギ)”を見ながら呟く。

失われた物を己の血肉に変える恩恵の真価。

今まで振るい砕けてきた刀達、今まで放ってきた斬撃。

それらを一つの刃に重ねるという形で顕現させているのだ。

幾ら重ねているとはいえ負荷は重ねた分だけ重くなる。

ゆえに今まではそれほどの数を重ねられなかった。

重ねれば刀が耐えられないゆえに。

だが、それも”騒速(ソハヤノツルギ)”によって解決した。

それを確かめ終えた茨は切っ先を大嶽丸に向ける。

 

「次で終わりだ」

 

「そうか………………………ならば、俺様の…………俺の(``)最大の一撃を持って迎えてやろう」

 

両者共に妖力を刀に注ぎ始める。

本当に次の一撃で終わらせるつもりのようだ。

 

「人が歩むは人の道、鬼が歩むは鬼の道………半鬼半人、人鬼一体、両道混じりし俺が駆けるは茨道!!」

 

声と共に”騒速(ソハヤノツルギ)”に妖力が収束していく。

普段は口数が少ない茨がわざわざ技を放つ度に名を言うのには多少理由がある。

 

「構えるは一刀、束ねるは万刀。”子の型”、万刀一刃…………………」

 

ただ戦いを求めるだけだった茨に剣を教えた者がいた。

人と鬼の姿の使い分け、妖力の制御、刀での戦いの基礎。

それらと共に教育された物があった。

最高の一撃を放つに必要なのは集中だ。

その集中を高める為の技名なのだ。

本能すら束ねて技に集中させる術の一つとして学んだのだった。

 

「我が刃は山を裂き、地に谷を生む。鬼神の一撃を身に刻め!!」

 

地にヒビが入る勢いで大嶽丸が踏み込み、上段から大太刀を振り下ろす。

それだけで大気が歪み、通った跡には真空が生じる。

鬼の長、鬼神に匹敵する濃度と質を持った妖力が濃縮された一撃だ。

それに対して茨は正面から迎え撃つ。

 

「牙束一閃!!」

 

大嶽丸とは逆な軽い踏み込み。

そこから繰り出される神速の刃。

大嶽丸の一撃が破壊を重視した物であるとするなら、茨の一閃は”斬る”事に全てを集中させた物だ。

過剰な力は必要無い。

濃縮された妖力が恐ろしいまでの切味を生み出す。

それは一閃であって一閃では無い。

その一閃は万の一閃が重ねられた一撃だ。

そして、刀に乗せられる想いも重ねられる。

”斬る”、その一点にのみ集中させられた想い。

それは即時発動の呪いに匹敵する。

重ねられた数は一万。

重ねられた呪いは蠱毒の如く質を高める。

一万も重ねられし呪いは最早”祟り”の域に達していた。

 

「テメェ如きなんざ、鬼神にはまだまだ程遠いんだよ」

 

衝突は一瞬だった。

擦れ違い様に決着は付いていた。

互いに振り抜いた姿で背中合わせになっている。

茨は刀を握った右腕をダラリと下げながら呟く。

直後に大嶽丸の体が左右に裂けて倒れ始める。

数瞬遅れて吹き飛んでいた大太刀の破片が地に突き刺さる。

一刀両断。

大嶽丸は右太腿から頭部まで斬り上げによって真っ二つにされたのだった。

刀も同様に衝突部分から綺麗に両断されている。

切断面は行き過ぎな程に綺麗だった。

切断されたというのに血は吹き出さず、地に倒れてようやく滲み出るレベルであった。

断末魔も無く、見方によってはあっけなく茨と大嶽丸の決着は付くのであった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「まさか本当に大嶽丸倒すまで成長するとはね」

 

「おいおい、予想してたからぶつけ合わせたんじゃないのか?」

 

「高丸を倒せるくらいは行くかな、とは思ってたわ。でも、大嶽丸はさすがに無理と考えていたのよ」

 

「じゃあ、どうするつもりだったんだ?」

 

「そりゃ、最後は二人で力を合わせて愛を深めるのよ」

 

「…………行き当たりばったり過ぎだ。あいつの好感度をそんな簡単に稼げるわけが無いだろう」

 

呆れた様に溜息を吐く罪牙。

鈴姫は拗ねた様に口を尖らせる。

実際茨の面倒くさい点は鈴姫も分かってはいる。

大嶽丸のとこに乗り込んできた時も期待はしていたが違った。

そもそも茨の思考回路には色恋関連が一切含まれていないのは明白であった。

ただ戦いと強さを求める戦闘狂。

それを落すのは並大抵の手では無理である。

 

「しょうがないわね。褒美も兼ねて奥の手と行くとしましょう」

 

「何する気だ?」

 

「ああいうタイプには直球勝負あるのみよ」

 

そう言って鈴姫は茨の方へと歩いていく。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「チッ、完全に逝ってるか」

 

ダラリと下がったままの右腕を見て小さく息を吐く。

一万回分の負荷を一気に掛けたのだ。

壊れて当然である。

それでも刀を離していないのは意地なのだろう。

加えて体の節々が悲鳴を上げて何時倒れてもおかしく無い状態でもあった。

片腕を取り戻し、全体的に性能が上がったとはいえ慣れてはいない。

ゆえに全身に限界が来ているのだった。

慣らす為にも更に体を鍛える必要があると内心で思っていると近付いてくる足音を聞いて振り返る。

 

「こいつは返すぞ」

 

「おう」

 

右手に握っていた”騒速(ソハヤノツルギ)”を近付いてきた鈴姫に投げる。

鈴姫は罪牙を投げられた刀の方に向ける。

罪牙が口を開くと”騒速(ソハヤノツルギ)”は呑み込まれて消えるのだった。

 

「お疲れ様とでも言っておこうかしら。(わらわ)の為に頑張ってくれてありがと」

 

「お前の為じゃねぇ。俺の為だ」

 

本心による心の底からの本音であった。

茨は本当に自身の為だけに戦った。

そこを好ましく思いつつも内心多少イラッとするのは乙女心ゆえにだろう。

とはいえ、それを表には出さずに距離を詰める。

 

「何はともあれ褒美を与えましょう。これは(わたし)の心の底からの想いよ」

 

「あぁ?別に褒美なんていら、むぐぅ」

 

距離を詰めて褒美と称して唇を重ねた。

いきなりの事に茨は目を見開く。

突き離そうとするが片腕が完全に動かないのに加えてまだまだ格上である鈴姫の膂力ゆえに振り切れないのだった。

数分間たっぷりと味わった上で口を離す。

唇と唇の間には唾液の糸が繋がっているのだった。

茨は困惑して鈴姫を睨み付けながら問う。

 

「…………………何のつもりだ」

 

「言ったでしょう?これは(わたし)の心の底からの想いだって」

 

対する鈴姫は頬を多少紅く染めながら唇に指を添える。

茨はそれでもまだ意図を察せないようだった。

鈴姫は呆れ半分の溜息を吐きながら言葉を続ける。

 

(わたし)は貴方が愛おしい。何処までも強さ求め、折れずに一直線の姿が好ましい。それこそ(わたし)の全てを貴方に捧げてもいい程に」

 

真っ正面から心の底から愛を語る。

それを受けた茨は硬直していた。

完全に予想外で思考外の事だった。

今までそんな事を一切考えてこなかったゆえに対処の仕方も分からずに硬直していた。

その姿を見て鈴姫はしてやったりとニヤリと笑う。

散々察しが悪かった相手への意趣返しとしてはちょうど良かったのだろう。

けれど、そこで終わらない。

あえて踏み込んで更に問う。

 

「貴方は(わたし)をどう思っている?」

 

「…………………………」

 

問いを受けても茨は無言だった。

けれど、目は困惑から考えている物へと変わった。

鈴姫はそれに満足して答えを待つ。

数分してようやく口を開く。

 

「俺に取ってのお前は越えるべき壁だ。それは間違いない。間違い無いはずだ。だが、他の奴と違う感情も混じってはいる。それが何なのかは知らねぇがな」

 

不器用に伝える茨。

とはいえ、言えるのはそれだけであった。

茨は愛も恋も知らない。

ゆえに何か他の者とは別種の感情を抱いていても定義付けが出来ないのであった。

鈴姫としても他者に向けるとは別の感情を自身に向けてくれると分かっただけで満足だった。

 

「よし、答えも聞けた事だしお楽しみタイムと行きますか」

 

「「は?」」

 

茨と罪牙の声が重なる。

その時には茨は足払いを掛けられていた。

その上で茨の上に鈴姫が乗っていた。

茨が現状を理解するより速く鈴姫は己の服に手を掛けようとしていた。

その前に罪牙が叫ぶ。

 

「待てぇぇぇぇぇぇぇい!!」

 

「何よ」

 

「何よ、じゃねぇよ!!何をしようとしてやがる!!」

 

「何ってお楽しみタイムだけど?」

 

「いきなり始めてんじゃねぇよ!!まだ互いの気持ちを確認し合った段階だろうが!!」

 

「え~?だって、母様が好きな男性が出来たなら先手必勝で速攻で攻略しろって言ってたし」

 

「先代の入れ知恵か!!でも、あいつにそこまでの度胸無かったぞ!!娘に何吹き込んでだ!!」

 

「あと、(わたし)的に一気にやった方が逃さないと思うし」

 

「面倒臭いな!!まだ速いから止めとけ!!ついでに茨の奴ものびてるし!!」

 

色々と限界な時に足払いに加えて圧し掛かりまでされて意識を持って行かれたのだった。

この後罪牙こと初代坂上田村麻呂による必死の説得によって茨の貞操は守られたのであった。

 

 




はい、大嶽丸戦決着でした!

茨と鈴姫の関係は進展あるにはあったけど決定的では無い感じです
茨が自覚したら一気に進展するかも?

次回はエピローグになると思われます


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