問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!? 作:天崎
「よう、帰ったぜ!!」
「ん?」
「あぁ?」
悟が本拠に帰り、玄関を開けると目の前には茨がいた。
同時に互いを見るなり顔を歪める。
互いに見たく無い顔を真っ先に見る羽目になったのだから当たり前だろう。
「帰ってたのか、茨」
「テメェこそどっか行ってたのか。どうでもいいが」
「俺もテメェが何処に行ってたかはどうでもいいな。まぁ……………多少は強くなったようだが」
「そういうお前は弱くなったな」
「あぁ!?」
茨は主に眼帯や黒手袋を見ながら言ったのだが悟はストレートに受け取った様だ。
茨としては余計な呪いを抱えた様にしか見えないが悟は気にはしない。
たとえどんな代償があろうが力になるのなら手にするタイプだ。
「ったく、人が珍しくテメェを認めてやったのに煽るか普通?」
「何でテメェに認められる必要がある」
「さぁな。しかし、強くなったはいいが腑抜けたか?」
「んだと?」
「執念が薄まったというか焦りが無くなって落ち着いたって感じか。何にせよ、以前ほどの物を感じはしないな」
「余分な物をほいほい抱えるテメェにだけには言われたくねぇな」
「余分な物だと?」
「そうだろうが」
「はっ、じゃあお前は何を得たという?」
「試してみるか?」
「返り討ちになるに決まってるがな」
「テメェがな」
段々至近距離で睨み合いながら言い合う。
悟の背ではその様子を紅葉がクスクスと笑うのだった。
二人は道場へと向かっていく。
物陰でそんな二人を眺める者がいた。
「うーん?アレが茨のライバル君かな」
「だろうな」
「ぬらりひょんとサトリさんの息子って言うからどんなかと思ったら割と普通ね。意外性はそう無いというか」
「お前にはそう見えるか」
「
「そうじゃねぇ。ただの勘だがあの野郎は内に闇を抱えてるぜ」
「そりゃ、あの立場なら抱える物でしょ」
「そういうタイプじゃねぇよ。もっと深くて狂気を孕んだ物だ」
「へぇ、それなら茨のついでに視ても
罪牙の話を聞きながら鈴姫も道場へと向かうのだった。
その口元は盛大に歪んでいたという。
◆◆◆◆◆
「強くなったっていうのは錯覚だったかもなぁ、茨ァ!!」
「テメェこそ手を抜いてると死ぬぞ、悟ッ!!」
普通の品とは真剣で斬り合う。
互いの身には幾多物傷が既に刻まれていた。
全て浅い傷だが互いに互いの刀を捌き切れていない証でもあった。
幾度と打ち合っている内に互いの刀が同時に砕ける。
すると、ほぼ同時に後方に下がり、新たな刀を取り出す。
それと合わせて悟は小刀を取り出して茨に向けて投げ付ける。
茨は二刀を構えて投げ付けられた小刀を気にせずに踏み込む。
投げ付けらた内の一本を左の刀で弾き、弾いた刀で他の一刀を弾く。
最後の一本は頬を掠めながらも首を傾けるだけで回避する。
そのまま右の刀で斬り付けるが、上着を掠めるだけだった。
距離的に直撃のはずだったゆえにタイミングを外されて茨の体が一瞬固まる。
投げ付けた小刀で視界を狭めた上で天狗歩法を使って距離感を大幅に狂わせたのだ。
悟が一瞬の膠着の内に踏み込んで斬り掛かる。
左右の刀共に防御には間に合わない。
だから、一瞬で鬼化すると刀の側面に頭突きすることで刀を砕く。
「マジか。馬鹿力が無駄に強化されてやがるな」
「テメェこそ芸が上手くなってやがるな」
純粋に強化された茨は膂力で既に悟を圧倒的に上回っているのだった。
悟は油取りから投擲術と視界誘導の技術を見て奪っており、見様見真似での再現とはいえぬらりひょんとしての力無しで大きく距離感などを狂わすことを可能にしていた。
互いの成長を確認しながら互いを全力で叩き潰す為に向かっていく。
「そろそろ本気出して構わねぇよな」
「あぁ?強がりか?」
「それはテメェの方だろうが」
言い合いながらも互いに新たに得た力を開放しようとする。
茨は妖力を高め、悟は妖力の制御に集中しながら左手の黒手袋を外そうとする。
◆◆◆◆◆
そんな二人を見物するのが数名。
濡鴉、がしゃ、紅葉だった。
「あの二人は相変わらず無茶をして」
「まぁ馬鹿だから仕方ないでしょ」
「違いない。それにしても若頭も茨の奴も強くなってるな」
濡鴉は頭を抱え、紅葉は愉快そうに笑い、がしゃは楽しそうに笑う。
がしゃは成長を素直に喜んでいるが、濡鴉としては現状が気が気でない。
鴉天狗である彼女は本能的に悟が左手に抱えている物が悍ましい物だと分かっていた。
悟なら呑まれることは無いと思っているが心配なのは拭えない。
がしゃも怨念をその身に宿らせる存在ゆえに正体を察してはいるが悟なら大丈夫と言う確信と信頼を持っているがゆえに言及はしない。
「とはいえ、そろそろ止めるか」
「そうですね」
濡鴉とがしゃが立ち上がる。
元々二人は悟と茨の対決が行き過ぎない為に待機していた。
あの二人は誰かが止めなければ互いに致命傷を受けて体が止まるまで戦いを止めない。
ゆえに止める為に待機しているのだ。
「もう少しいいんじゃない?面白くなりそうだし」
「そうなったら俺らじゃ止めるの難しいしな」
「横入り関係無く続けるのが悟様ですし」
「なら、
そこに鈴姫が割り込んで来る。
意外な客に濡鴉とがしゃは眼を見開く。
紅葉は興味深そうな眼で見詰める。
「鈴鹿嬢、何時此方に?」
「最初から」
「いや、立烏帽子様が手出しするほどの問題でも…………」
「濡鴉ちゃんもがしゃさんも
「そうですか」
「いえ、そう言われましても」
がしゃと濡鴉が対照的な反応を返す。
それをクスリと笑いながら鈴姫は紅葉に視線を向ける。
視線が重なり互いを見つめる。
「貴女、
「ふふ、無理に口調を保たなくてもいいのよ?」
「貴女も別に気を使う事は無いですよ?」
「気を使ってなんか無いわ。それより、貴女の目的は?」
「
「なら、混ざればいいじゃない」
「嫌に煽るわね」
「別にそんなことは無いわよ?私はただ悟がボコられればいいと思ってるだけよ」
「性格の悪い座敷童子がいたものね」
「お前も鈴鹿御前としては異端だろ」
「失礼ね、まともな方ではあるわよ」
罪牙に言い返しながら鈴姫は悟と茨の方へと歩いていく。
紅葉の真意は読めなかったが鈴姫としては自分が楽しめれば良しなので関係無いのであった。
◆◆◆◆◆
「さて、見せて
悟が黒手袋を捨て去ろうとした瞬間だった。
悟と茨に向けて日本の刀が遅い掛かった。
「うおっ!?」
「ッ!?」
二人は咄嗟に後方に跳ぶ。
同時に一瞬前まで二人がいた座標に刀が突き刺さる。
二人は驚くと同時に刀が飛んできた方に視界を向ける。
その間に刀は自然に抜けて宙を浮いて主の元へと帰る。
「やっぱ四刀でいいわね。本気出し過ぎることも無いし」
視線の先には鈴姫が立っていた。
片手には顕明連、もう片手には罪牙が出した
これが茨にすらみせていない彼女の本来の戦闘スタイルに近い変則四刀流だった。
本来は変則六刀流なのだが、本気を出し過ぎない為に四刀にしている。
「何のつもりだ?」
「貴方達が楽しそうにしてるから
「そもそもお前は何者だ?」
「
「あぁ!?テメェ、茨!!何時の間に女作ってやがった!?」
「まだ答えは出してねぇよ!!」
「嫁宣言する女の時点で大概だ、クソが!!」
自分も結構人のことを言え無いのだが棚に上げて掴み掛かる悟。
茨は鬱陶しそうな顔をしながら余計なことを口走った鈴姫を睨み付ける。
鈴姫は楽しそうに笑みを浮かべながら名乗りを上げる。
「
「「別にライバルじゃねぇ!!」」
声を揃えて否定する悟と茨。
鈴姫はそんなことより茨が旦那様の方を否定してないのを地味に喜んでいるのだった。
何はともあれ悟も茨も因縁は感じているがライバルとだけは頑なに認めない。
「さて、それじゃあ始めましょう」
二刀を構え、大通連と小通連を激しく動かしながら鈴姫は笑みを浮かべながら二人に飛び掛かる。
睨み合っていた悟と茨もいざ戦いが始まれば真剣に構える。
◆◆◆◆◆
数十分後、息を切らして道場の床に転がされている悟と茨がいた。
実力の差は圧倒的だった。
その証拠に鈴姫は傷一つ無く息さえ切らしていなかった。
戦闘はほとんど一方的だった。
宙に浮く大通連と小通連による縦横無尽の攻撃に鋭い二刀による剣戟や足技を合わせられて対応し切れずに圧倒されたのだった。
どれか一つに集中すれば致命的。
全体的に気を回せば隙が広がる。
どちらにせよ生まれる隙を正確に突くのが鈴姫だった。
これでまだ神通力などの鈴鹿御前としての力は一切使っておらず、戦闘スタイルも本来の物とは違うのだった。
圧倒的な実力差を感じながらも二人は立ち上がる。
その姿に鈴姫は笑みを浮かべる。
弟子を育てている様な感覚が鈴姫の中ではかなり愉快な物になっているのであった。
若頭派の中では古参組の土丸を除けばツートップの二人を軽々と圧倒する鈴姫にがしゃと濡鴉は唖然とする。
紅葉は何時の間にか悟の傍に転移していた。
「無様ね」
「いや、まだまだだ」
「実力差は分かっているのでしょう?」
「それがどうした。せめて一太刀は入れる。そうだろ、茨ッ!!」
「うるせぇ。俺は俺のやり方でやる!!」
「いいわよ。来なさい、
立ち上がってきた二人を煽る鈴姫。
ボロボロになりながらも悟と茨はまだまだやる気だった。
その時、妙な臭いが漂い始める。
「ほら、そこまでだ」
その言葉と共に道場内の空気がガラッと変わる。
先程まで場を支配していた鈴姫の物を遥かに上回る高濃度の妖力が場を支配する。
そして、鈴姫、茨、悟が三人纏めて倒れる。
ダメージを受けて倒れたのでは無い。
何かしらの方法で並行感覚を狂わされたのだ。
動かない体をどうにかしながら三人は視線を道場の入り口に向ける。
「酒典さん」
「酒典のおやっさんじゃない」
「親父か」
三者三様の反応を見せる。
現れたのは”百鬼夜行”においてぬらりひょんに次ぐ戦力である酒典童子だった。
霊格的に双子に近い酒天童子に近い外見である。
三人が動けなくなったのは酒典の力だった。
酒典が酒を漂わせて三人に吸わせた結果である。
「ハハッ、若い奴らで遊ぶのはいいがそこまでにしとけ。あと、初めて親父と呼んでくれたな。茨」
「うるせぇ」
酒典が指を鳴らすと途端に三人の体が軽くなる。
茨は一応は酒典の養子扱いになっている。
一目見て霊格的に惹かれる物を感じてほぼ強引に息子扱いしているのだった。
水を差された形となってさすがに続ける気は失せる三人。
それぞれ刀を納めるのを見て酒典も盃を懐にしまう。
「それで若頭と息子が道場にいるのはともかく鈴鹿の嬢ちゃんがいるのは何でだい?」
「あぁ、おやっさんにはまだ報告していませんでしたね。まだ返事は返して貰ってませんが息子さんの嫁です」
「よし、やった!!」
「ありがとう!!おやっさん!!」
「ちょっと待て!!勝手に話を進めるんじゃねぇ!!」
「冗談だ」
「冗談よ」
茶化す様に二人は答える。
茨はイライラを床にぶつけるのであった。
「それで酒典さんがわざわざ道場まで来たのは何でだ?」
「ん?あぁ、忘れるところだった。若頭と息子が久々に揃ってると聞いて修行付けてやる為に来たんだ」
「技術なら散々教え込まれたつもりですけど?」
「今度は新技だ。しかも、妖怪としての根本に関わるな。特に若頭で言えばもしかしたら親父さん以上の素養がある技だ」
「ぜひ教えてくれ!!」
「いいぜ、ちょうどいいし鈴鹿の嬢ちゃんにも教えておくとしよう」
飛び付く様に食いつく悟。
茨は面倒そうにしながらも何だかんだ従う。
鈴姫は未来の義父に良い面を見せる為に大人しくしている。
若き妖怪たちは自らの手で力を掴み取り、先人の技術を受け継ぎ強くなっていく。
あと、一話くらいは続くかもです
むしろ次回はプロローグに近いかもです
妖怪サイドは一段落と言う感じです!
それでは質問があれば聞いてください
感想待ってます