問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!?   作:天崎

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開戦→決着

崩れた宮殿は最奥を残し完全に瓦礫の山になっていた。

中にいたペルセウスの騎士達は瓦礫の下敷きになり気絶していた。

 

「それじゃあ行くか」

 

瓦礫の山の上を最奥に向かって進む。

先を進む、五人にジンはおずおずと話しかける。

 

「い、一応言っておきますが彼が持つギフトは……」

 

「隷属させた元・魔王だろ?」

 

「知っているのですか?」

 

「あいつらはゴーゴンの生首がないのに石化のギフトを使っている。___星座として招かれたのが、箱庭の“ペルセウス”ならさしずめ、奴の首にぶら下がっているのは、アルゴルの悪魔ってところだろ」

 

「何にせよ、元・魔王が相手なら楽しめそうだね」

 

そんなことを話しつつ一行は最奥へと歩く。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

そして一行は最奥に着いた。

最奥には天井はなく、まるで闘技場のように簡素な造りだった。

眼前にはロングブーツから翼を生やしたルイオスが立っていた。

 

「ようこそ白亜の宮殿・最奥へ。ゲームマスターとして相手をしましょう。……この台詞を言うのははじめてかもね」

 

顔をひきつらせながら言う。

それもそうだろう誰もいきなり宮殿を壊されるとは思わないだろう。

ルイオスの翼が羽ばたく。

彼はギフトカードから光と共に燃え盛る炎の弓を取り出した。

そのギフトを見て黒ウサギの顔色が変わった。

 

「当然。空が飛べるのになんで同じ土俵でt

 

ルイオスが小馬鹿にするように天へ舞い上がるが、直後に忍が跳躍し、ルイオスを蹴り落とした。

 

「隙だらけじゃ」

 

「目覚めろ__“アルゴールの魔王”!!」

 

土煙の中からルイオスと体中に拘束具と捕縛用のベルトを巻き、乱れた灰色の髪の女が現れる。

そして女は褐色の光を放つ。

 

「ra、GYAAAAAaaaaaaa!!」

 

「これで終わりだ」

 

光が収まると空から巨大な岩塊が山のように落下してきた。

雲が石化して降ってきているのだ。

さっきの光は石化の効果を持っていた。

 

「何が終わりだって?」

 

しかし十六夜、安心院、忍は何事もなかったように立っていた。

球磨川と暦の二人は黒ウサギとジンを守るようにして石化していた。

 

「黒ウサギ、あれが元魔王かい?」

 

「そ、そうです。星霊・アルゴール……白夜叉様と同じく、星霊の悪魔です」

 

「何でお前らは石になっていない!?」

 

「さあ、何でじゃろうな?」

 

忍がからかうように言う。

ルイオスは歯ぎしりをして、アルゴールに叫ぶ。

 

「アルゴール、もう一度だ!!」

 

アルゴールは不協和音と共に、褐色の光を放つ。

十六夜は褐色の光を踏み潰し、安心院は軽く手を振るだけで払い、忍は【心渡】で光を斬り裂いた。

比喩も無く、他に表現しようもなく三人は褐色の光を砕け散らし、影も形もなく吹き飛ばした。

 

「ば、馬鹿な!?」

 

ルイオスが叫ぶ。

叫びたくもなるだろう。

 

「さて、小細工はこれくらいにして戦いを初めようぜ?君達もいつまでそうやってるつもりだい?」

 

安心院がそう言うと、石化していた球磨川にヒビが入り、石化が解ける。

 

『時間が掛かるんだよ』

 

呟いた後に暦の肩を触り、暦の石化を解く。

 

「さあ、ゲームの始まりじゃ!!」

 

忍の声を合図に各々向かっていく。

忍と十六夜はアルゴールに、球磨川と暦はルイオスへと。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

(クソツ!!こんなはずじゃ!!)

 

心の中で毒付きながらルイオスは矢を放つ。

放たれた三本の炎の矢は球磨川に突き刺さる。

 

「球磨川!?」

 

『大丈夫だよ』

 

球磨川は矢が刺さったまま、倒れかけの姿勢からユラリと立ち上がる。

その動作自体が気持ち悪さを感じさせる。

 

『駄目だよルイオス君。当たればいいってもんじゃない。ちゃんと急所に刺さなきゃ。』

 

言いながら球磨川は細長い螺子を取りだし、

 

『こんな風に』

 

自らの頭に突き刺した。

ルイオスはその動作に悪寒を感じ動きが止まる。

その隙に暦は悪寒を感じつつ、ルイオスに向かって跳躍して【心渡】で斬り掛かる。

忍に血を吸わせた事により吸血鬼性が上がり、身体能力も上がっているのだ。

 

「クッ……」

 

ギリギリ気付いたルイオスはギフトカードから“星霊殺し”のギフトを新たに付与された鎌のギフト・ハルパーを取り出して防ぐ。

空中は飛べる分、ルイオスが優位であり暦を弾き飛ばす。

そこに球磨川は螺子を投げ付けるが避けられる。

 

「当たるかよ、そんなもの!!」

 

『それならこれはどうだい?』

 

球磨川が螺子を宙に投げると、十六夜が次々と殴り飛ばした。

第三宇宙速度で飛ばされた螺子は空気摩擦により表面から溶け始めていた。

しかし溶けるより速くルイオスへと飛んでいく。

ルイオスはギリギリ避けるが最後の一発を避けきれず掠める。

掠めた脇腹からは血が溢れる。

 

「クソッ………」

 

ルイオスは矢を放っていくがほとんど弾かれる。

当たったとしてもすぐに治される。

 

(なんで名無し風情にこんな目に……)

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「RaAAaaaGYAAAAAAaaaaaa!!」

 

そんな叫びと共に球磨川の背後にアルゴールが襲いかかる。

しかしその前に安心院が立ち塞がる。

 

「これが星霊か。まぁ隷属させられてる時点でたかが知れてるけどね」

 

呟きながら安心院はスキルを発動する。

 

火を司るスキル【間違いなく放火(エキシビジョンマッチ)】

 

必殺技のスキル【灰儘の一撃(キラーアタック)】

 

分身のスキル【心分身(ニーズペーパー)】

 

【二重火炎飛び蹴り(バーニングディバイド)】

 

安心院は足に焔を纏わせ跳び、宙返りをしながら二人に分身し、二発の蹴りをアルゴールに叩き込む。

蹴りを叩き込まれたアルゴールは吹き飛ぶ。

 

『ありがとうね、安心院さん』

 

「僕は君から離れられないからね。こんな風にしか闘えないんだよ」

 

吹き飛ばされたアルゴールの前に忍が立つ。

忍は【心渡】の側面を手でなぞった後に構える。

 

「行くぞ、儂の必殺技パート1じゃ!!」

 

そう言いながらアルゴールを斬り刻む。

 

「いや、お前に必殺技はないだろ!?」

 

「お前様、戦いはノリがいい方が勝つんじゃよ!!」

 

アルゴールを蹴り飛ばしながら言う。

ノリと言うよりスペックで完全に圧倒している。

 

「なるほど、それは一理あるな。ならノリよく決めるとしようぜ」

 

「そうじゃな」

 

そう言って十六夜と忍は同時にアルゴールに蹴りを叩き込んだ。

アルゴールは吹っ飛び、壁にめり込む。

 

「アルゴール!?」

 

その様子を見たルイオスが叫ぶ。

そこに螺子が投げ込まれる。

 

「ちょこまかとウザイんだよ!!」

 

避けながら炎の矢を放つ。

矢は球磨川を貫くがすぐさまなかったことにされる。

 

『そろそろだね』

 

球磨川がそう呟くとドスリ、という音が響く。

 

「な…に………?」

 

ルイオスの髪が白くなっていた。

その背にはマイナスのヘッドの螺子が突き刺さっていた。

 

『【却本作り】、これで君と僕は同じになった』

 

「な、なんでこんなものが上から……」

 

ルイオスは困惑していた。

戦っていたらいきなり何もない空間から螺子が降ってきたのである。

誰だって混乱するだろう。

 

『【安心大嘘憑き】で【却本作り】の螺子を消しておいたのさ』

 

「あの時のか……」

 

球磨川はルイオスに投げ付けていた螺子に【却本作り】を混ぜていたのだ。

避けられた直後に【安心大嘘憑き】で消したのである。

【安心大嘘憑き】はなかったことにしたものが三分後に元に戻る。

それを利用して罠を設置したのである。

 

「クソッ……何で……こんな……」

 

「隙ありだ!!」

 

フラフラしなから飛ぶルイオスの翼を暦が切り裂く。

自由落下するルイオスを十六夜は地面に着く前に殴り飛ばす。

 

「ぐぼぉぁ!?」

 

殴り飛ばされたルイオスはちょうどアルゴールがめり込んでいる所に叩きつけられた。

それと同時に【却本作り】の螺子が砕ける。

【正体不明】が破壊したのだ。

 

「「「これで終わりか?」かい?」かの?」

 

「アルゴール!!宮殿の悪魔化を許可する!!」

 

不協和音が響く。

途端に闘技場は黒く染まり、壁は生き物のように脈を打つ。

 

「もう生きて帰s…

 

「なんだこの程度か」

「なんだこの程度かい」

「なんじゃこの程度か」

 

三人はガッカリしたように言うと十六夜と忍は床を殴り付け、安心院は軽く手を振る。

宮殿で残っていた闘技場もこれにより崩壊した。

 

「なんだ……なんなんだお前達は!?」

 

「“ノーネーム”だ!!覚えておけ!!」

 

勝敗は決した。

黒ウサギが宣言しようとした、その時___問題児達はルイオスを追い立てた。

 

「そうだ。もしこのままゲームで負けたら君達の旗印。どうなるか分かっているかな?」

 

「な、何?」

 

不意を疲れたような声を上げるルイオス。

それもそうだろう。

彼らはレティシアを取り戻す為に旗印を手に入れるのではなかったのか。

 

『そんなものは後でも出来るだろ?旗印を盾にもう一度ゲームを挑もうかな。次は何がいいと思う?』

 

「コミュニティの名前とかどうだ?」

 

『そうだね暦君、それがいいね』

 

ルイオスの顔から一気に血の気が引く。

十六夜は一片の慈悲もなく凶悪な笑顔で続ける。

 

「その二つを手に入れた後“ペルセウス”が箱庭で永遠に活動できないように名も、旗印も、徹底的に貶め続けてやる。たとえお前達が怒ろうが泣こうが喚こうが、コミュニティの存続そのものが出来ないくらい徹底的に。徹底的にだ。………まぁ、それでも必死にすがりついちまうのがコミュニティってものらしいけど?だからこそ貶めがいがあるってもんだよな?」

 

「や、やめろ………」

 

ここで敗北すれば旗印を奪われる。

そうなれば“ペルセウス”は決闘を断ることは出来ない。

ルイオスは……今になってようやく気が付く。

自分達のコミュニティは今まさに、崩壊の危機に立っているのだと。

 

「そうか。嫌か。___ならもう方法は一つしかないよな?」

 

今度はにこやかに笑う十六夜。

指先で誘うようにルイオスを挑発し、

 

「来いよ、ペルセウス。命懸けで___俺達を楽しませろ」

 

快楽主義者が、両手を広げてゲームの続行を促す。

十六夜も、忍も、安心院も、遊び足らなかった。

自らが招いた組織の危機に直面したルイオスは、覚悟を決めて叫んだ。

 

「負けない……負けられない。負けてたまるか!!奴等を倒すぞ、アルゴオォォォル!!」

 

コミュニティの為、敗北覚悟で二人は駆けるのだった。




ルイオス戦、決着です。

圧倒的なボコりでした。

安心院さんのキックの元ネタはファイヤ、ドロップ、ジェミニのあれです。

次回で一巻分は終了です。
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