問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!? 作:天崎
レティシアの受難はむしろそれからだった。
所有権が“ノーネーム”に移ったまでは本当に良かったのだ。
“ペルセウス”に勝利した七人はレティシアを大広間に運び、球磨川が殴り飛ばされ、石化を解いた途端、十六夜、安心院、暦は口を揃えて、
「「「じゃあこれからよろしく、メイドさん」」」
「え?」
「え?」
「……え?」
『全開p
よろよろと立ち上がりかけた球磨川は再び殴られる。
「え?じゃないよね。今回のゲームはほぼ僕達で片付けて、君達はついてきただけだよね?」
「僕と球磨川なんて何回矢に刺されたと思う?」
「それはお前様達が悪いじゃろ」
「つーか挑戦権を持ってきたの俺と忍だろ。所有権は俺達で等分、2:2:2:2:2でもう話は付いた!!」
「何を言っちゃてんでございますかこの人達!?」
もはやツッコミが追い付かないなんてものじゃない。
黒ウサギとジンは完全に混乱していた。
唯一、当事者であるレティシアだけが冷静だった。
「んっ………ふ、む。そうだな。今回の件で、私は皆に恩義を感じている。コミュニティに帰れた事に、この上なく感動している。だが親しき仲にも礼儀あり、コミュニティの同士にもそれを忘れてはならない。君達が家政婦をしろというのなら、喜んでやろうじゃないか」
「レ、レティシア様!?」
黒ウサギの声は今までにないくらい焦っていた。
まさか尊敬していた先輩をメイドとして扱わなければならないとは……と困惑しているうちに、安心院は球磨川を踏み潰しながら服を用意し始めていた。
「さて、どんなタイプがいいかな?フリフリか正統かどれがレティシアちゃんにはちょうどいいかな?まぁこれからよろしくね、レティシアちゃん」
「よろしく……いや、主従なのだから[よろしくお願いします]のほうがいいかな?」
「使い勝手がいいのでいいよ」
「そ、そうか。……いや、そうですか?んん、そうでございますか?」
「黒ウサギの真似はやめとけ」
ヤハハと笑う十六夜。
意外と和やかな六人を見て、黒ウサギは力なく肩を落とすのだった。
◆◆◆◆◆
___“ペルセウス”との決闘から三日後の夜。
子供達を含めた“ノーネーム”一同は貯水池付近に集まっていた。
「えーそれでは!!新たな同士を迎えた“ノーネーム”の歓迎会を始めます!!」
ワッと子供達の歓声が上がる。
本当に子供だらけの歓迎会だったが、それでも五人は悪い気はしなかった。
『だけどどうして屋外なのかな?』
「僕も思っ
「お前様あっちにドーナッツがあるぞ!!」
暦は台詞を切られ、忍に引っ張られていった。
「黒ウサギなりに精一杯のサプライズってところじゃねぇか?」
実を言えば、“ノーネーム”の財政は想像以上に悪い。
こうして敷地内で騒ぎながらお腹いっぱいに飲み食いをする、というのもちょっとした贅沢になるほどに。
『無理しなくてもいいのに』
「でも嬉しいには嬉しいだろ球磨川君?」
二人がそんな風に話していると、黒ウサギが大きな声を上げて注目を促す。
「それでは本日の大イベントが始まります!!みなさん、箱庭の天幕に注目してください!!」
ドーナッツに夢中な忍を除き、コミュニティの全員が箱庭の天幕に注目する。
その夜も満点の星空だった。
異変が起きたのは、注目を促してから数秒後の事だった。
「……あっ」
星を見上げているコミュニティの誰かが、声を上げた。
それから連続して星が流れた。
すぐに全員が流星群だと気が付き、口々に歓声を上げる。
「この流星群を起こしたのは他でもありません。我々の新たなる同士、異世界からの五人がこの流星群のきっかけを作ったのです」
「え?」
子供達の歓声の裏で、十六夜達が驚きの声を上げる。
黒ウサギは構わず話を続ける。
「箱庭の世界は天動説のように、全てのルールが此処、箱庭の都市を中心に回っております。先日、同士の倒した“ペルセウス”のコミュニティは、敗北の為に“サウザンドアイズ”を追放されたのです。そして彼らは、あの星々からも旗を降ろすことになりました」
十六夜、暦、球磨川は驚愕し、絶句して、安心院と忍は特に驚くこともなく眺める。
「へぇ……星空から星座をなくすのかい」
刹那、一際大きな光が星空を満たした。
ペルセウス座は、流星群と共に跡形もなく消滅した。
言葉を失った三人とは裏腹に、黒ウサギは進行を続ける。
「今夜の流星群は“サウザンドアイズ”から“ノーネーム”への、コミュニティ再出発に対する祝福も兼ねております。星に願いをかけるもよし、皆で鑑賞するもよし、今日は一杯騒ぎましょう♪」
嬉々として杯を掲げる黒ウサギと子供達。
十六夜は流星群を見ながら感慨深くため息を吐いていた。
「まさかこの星空の全てが箱庭の為だけに作られているとは思わなかったぜ……」
感動を補充するように眼を細めると、元気な声が十六夜を訪ねる。
「ふっふーん。驚きました?」
黒ウサギがピョンと跳んで十六夜の元に来る。
十六夜は両手を広げて頷いた。
「やられた、とは思っている。おかげ様、いい個人的な目標もできた」
「おや、なんでございます?」
コミュニティの目標ではなく、十六夜個人の目標。
黒ウサギでなくとも興味があるに違いない。
十六夜は消えたペルセウス座の位置を指さし、
「あそこに、俺達の旗を飾る。……どうだ?面白そうだろ?」
今度は黒ウサギが絶句する。
しかし途端に弾けるような笑い声を上げた。
「それは………とてもロマンが御座います」
「だろ?」
「はい♪」
満面の笑みで返すが、その道はまだまだ険しい。
奪われた物を全て奪い返し、その上でコミュニティを更に盛り上げなければならないのだから。
だが他の四人も反対はしないだろう。
そんな予感が十六夜にはあった。
“家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨てて箱庭に来い”
それだけの対価を支払った彼らの新しい生活は、まだ始まったばかりなのだから。
一巻分終了です!!
次回は[後日談というより、これで安心、舞台裏次回予告]です。
番外編に近いです。
二巻分の詳細は上記のでやりますが少々オリジナル要素入ります。
簡単に言えば魔王のゲームに○○○○○が乱入します。
どういうタイミングで誰がかはお楽しみに!!