問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!? 作:天崎
『いくらなんでも遠すぎるんじゃないかな?』
祭典に行く為、ジンから北側の境界線までの距離を聞いた球磨川は顔をひきつらせながら言う。
「ええ、遠いですよ!!箱庭の都市は、中央を見上げた時の遠近感を狂わせるように出来ているため、肉眼で見た縮尺との差異が非常に大きいんです。今なら笑い話ですみますから……皆さんも、もう戻りませんか?」
「「「断固拒否」」」
『僕も同じく』
「儂もじゃ」
ガクリと肩を落とすジン。
あんな挑発的な手紙を残してきた以上、彼らも引くに引けないのだ。
「あんな手紙を残して引くわけないだろう?」
「こうなったら駄目で元々!!“サウザンドアイズ”に交渉に行くぞゴラァ!!」
『そうだね行こうか』
「そうだな」
「儂も同意じゃ」
ジンはダボダボのローブに首を絞められながら、三人に連れ回されるのだった。
◆◆◆◆◆
六人は“サウザンドアイズ”の支店の前で止まる。
「お帰りください」
「いきなり!?まだ何も言ってないだろ!?」
門前払いに突っ込む暦。
どうもこの女性店員には嫌われている節がある。
『そこそこ常連なのだから愛想よくしてくれてもいいんじゃないかな?』
「常連客というのは……
「とりあえず入るよ」
話を切って、そのまま侵入。
大の字になって立ち塞がる女性店員。
「だからうちのみs……
「やっふぉおおおおおお!!ようやく来おったか小僧どもおおおおおおお!!」
何処から叫んだのか、和装で銀髪の少女が空の彼方から降ってきた。
嬉しそうな声を上げ、空中でスーパーアクセルを見せつけつつ荒々しく着地。
「ぶっ飛んで現れなきゃ気が済まねぇのか、此処のオーナーは」
「……………」
痛烈に頭が痛そうな女性店員は、言い返せずに頭を抱えた。
『招待ありがとうね。でも北側への行き方が分からなくてね』
「よいよい、全部分かっておる。ますは店の中に入れ。条件次第で路銀は私が支払ってやる。……秘密裏に話しておきたい事もあるしな」
スッと目を細める白夜叉。
最後の言葉だけ真剣な声音が宿る。
五人は顔を見合わせ、悪戯っぽく笑った。
「それは楽しい事かな?」
「さて、どうかの。まぁおんしら次第だな」
意味深に話す白夜叉。
五人はジンを引きずりつつ、嬉々として暖簾をくぐった。
六人は店内を通らず、中庭から白夜叉の座敷に招かれた。
白夜叉は幼い顔に厳しい表情を浮かべ、カン!と煙管で紅塗りの灰吹きを叩いて問う。
「本題の前にまず、一つ問いたい。“フォレス・ガロ”の一件以降、おんしらが魔王に関するトラブルを引き受けるとの噂があるそうだが……真か?」
「その話なら本当だよ」
安心院が首肯する。
白夜叉が小さく頷くと、視線をジンに移す。
「ジンよ。それはコミュニティのトップとしての方針か?」
「はい。名と旗印を奪われたコミュニティの存在を手早く広めるには、これが一番いい方法だと思いました」
ジンの返答に、白夜叉は鋭い視線を返す。
「リスクは承知の上なのだな?そのような噂は、同時に魔王を引き付けることにもなるぞ」
「覚悟の上です。それに仇の魔王からシンボルを取り戻そうにも、今の組織力では上層には行けません。決闘に出向く事が出来ないなら、誘き出して迎え撃つしかありません」
「無関係な魔王と敵対するやもしれん。それでもか?」
上座から前傾に身を乗り出し、更に切り込む白夜叉。
その問いに、傍で控えていた十六夜が不敵な笑みで答える。
「それこそ望むところだ。倒した魔王を隷属させ、より強力な魔王に挑む“打倒魔王”を掲げたコミュニティ___どうだ?修羅神仏の集う箱庭の世界でも、こんなカッコいいコミュニティは他に無いだろ?」
「……ふむ」
茶化して笑う十六夜だが、その瞳は相も変わらず笑っていない。
この男は一見して何も考えてないようだが、リスクを天秤に掛けて考えられるという程度には、白夜叉は評価していた。
白夜叉は二人の言い分を噛み砕く様に瞳を閉じる。
しばし瞑想した後、呆れた笑みを唇に浮かべた。
「そこまで考えてのことならば良い。これ以上の世話は老婆心というものだろう」
「ま、そういうことだな____で?本題はなんだ?」
「うむ。実はその“打倒魔王”を掲げたコミュニティに、東のフロアマスターから正式に頼みたい事がある。此度の共同祭典についてだ。よろしいかな、ジン殿?」
「は、はい!!謹んで承ります!!」
子供を愛でるような物言いではなく、組織の長として言い改める白夜叉。
ジンは少しでも認められた事にパッと表情を明るくして応えた。
今回はここまでです。
導入部なのに中々進まないという……
電話レンジ(仮)が欲しいくらいです
土日は更新出来るか怪しいです
それからここから二週間程忙しくなるのでペースが落ちるかもです