問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!? 作:天崎
「さて、ではどこから話そうかの」
カン。と煙管で紅塗りの灰吹きを軽く叩き、一息つく白夜叉。
「ああ、そうだ。北のフロアマスターの一角が世代交代をしたのを知っておるかの?」
「え?」
「急病で引退だとか。まあ亜龍にしては高齢だったからのう。寄る年波には勝てなかったと見える。此度の大祭は新たなフロアマスターである、火龍の誕生祭でな」
「「『龍?』」」
キラリと光る期待の眼差しを十六夜と球磨川と安心院が見せる。
白夜叉は苦笑しつつ説明を続ける。
「五桁・五四五四五外門に本拠を構える、“サラマンドラ”のコミュニティ___それが北のマスターの一角だ。ところでおんしら、フロアマスターについてはどの程度知っておる?」
『僕は全く知らないよ』
「僕も全く知らない」
「儂も知らないの」
「僕は結構知ってはいるよ」
「俺はそこそこ知ってる。要するに、下層の秩序と成長を見守る連中だろ?」
十六夜と安心院が軽く説明する。
球磨川と暦は説明を清聴した。
「しかし、北は複数のマスター達が存在しています。精霊に鬼種、それに悪魔と呼ばれる力ある種が混在した土地なので、それだけ治安も良くないですから……」
ジンはそれだけ説明すると、悲しげに目を伏せた。
「けど、そうですか。“サラマンドラ”とは親交があったのですけど……まさか頭首が替わっていたとは知りませんでした。それで、今はどなたが頭首を?やっぱり長女のサラ様か、次男のマンドラ様が」
「いや、頭首は末の娘___おんしと同い年のサンドラが火龍を襲名した」
は?とジンが小首を傾げて一泊。
二度ほど眼を瞬く。
しかし次の刹那、驚嘆の声をあげたジンは驚きのあまり身を乗り出した。
「サ、サンドラが!?え、ちょ、ちょっと待ってください!!彼女はまだ十一歳ですよ!?」
「ジン君だって十一歳で僕達のリーダーをしてるだろ?」
「そ、それはそうですけど……!!いえ、だけど、」
「なんだ?まさか御チビの恋人か?」
「ち、違っ、違います!!失礼な事を言うのは止めてください!!」
ヤハハと茶化す十六夜と安心院。
怒鳴り返すジン。
全く関心の無い忍が続きを促す。
「それで儂らに何をして欲しいのじゃ?」
「そう急かすな。実は今回の誕生祭だが、北の次代マスターであるサンドラのお披露目も兼ねておる。しかしその幼さ故、東のマスターである私に共同の主催者を依頼してきたのだ」
「北には他にもマスターがいるんじゃなかったのか?」
『そのコミュニティに頼めばいいよね?』
「……うむ。まあ、そうなのだがの」
急に歯切れが悪くなる白夜叉。
ポリポリと頭を掻いて言いにくそうにしていると、十六夜が隣から助け船を出した。
「幼い権力者を良く思わない組織がある。___とか、在り来たりにそんなところだろ?」
「んー・・・ま、そんなところだ」
途端に安心院の眼に落胆が浮かぶ。
「神仏の集う箱庭の長達でもその程度なんだね……」
「うう、手厳しい。だが全く持ってその通りだ。だが実は東のマスターである私に共同開催の話を持ち掛けてきたのも、様々な事情があってのことなのだ」
申し訳なさそうな苦々しい顔で項垂れる白夜叉。
『その話って長くなるかい?』
「ん?んん、そうだな短くともあと一時間はかかるかの?」
「それはまずいね」
「黒ウサギに追いつかれるの」
ハッ、と他の問題児とジンも気が付く。
「し、白夜叉様!!どうかこのまま、」
「ジン君、黙りな」
ガチン!!とジンの下顎が勢いよく閉じる。
安心院がスキルを使ったのだ。
その隙を逃さず十六夜が白夜叉を促す。
「白夜叉!!今すぐ北に向かってくれ!!」
「む、むぅ?別に構わんが、何か急用か?というか、内容を聞かず受諾してよいのか?」
「構わねぇから早く!!事情は追々話すし何より___その方が面白い!!俺が保証する!!」
十六夜の言い分に白夜叉は瞳を丸くし、哄笑を上げて頷いた。
「そうか。面白いか。いやいや、それは大事だ!!娯楽こそ我々神仏の生きる糧なのだからな。ジンには悪いが、面白いならば仕方がないのぅ?」
「………!?…………!?」
暴れるジンを嬉々として取り押さえる十六夜達。
彼らを余所目に、白夜叉は両手を前に出し、パンパンと柏手を打つ。
「ふむ。これでよし。これで望み通り、北側に着いたぞ」
「「「「『………は?』」」」」
ジンを縛りあげながらも、素っ頓狂な声を上げる五人。
それもそのはずだろう。北側までの980000kmというお馬鹿な距離を、今の僅かな時間で?
………という疑問は一瞬で過ぎ去り、次の瞬間、五人は期待を胸に店外へ走り出した。
◆◆◆◆◆
某所
「北で新しい祭りか……儂も楽しみに行くとしよう!!」
今回はここまでです。
次回は追いかけっこです。