問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!?   作:天崎

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小さな精霊

『ほら、買ってきたよ』

 

球磨川は両手に持っていたクレープを安心院とレティシアに渡す。

 

「ありがとう、球磨川くん」

 

「本来なら私が買いに行くのだけどな」

 

『いいよ、レティシアちゃん。女の子を働かせるのは気が進まないから』

 

三人は走り回って小腹がすいたので出店でクレープを買って休んでいた。

最初はレティシアが買いに行くと言ったが球磨川が自分が買ってくると言い、二人は近くに座っていた。

 

『それにしてもさっきから建物が崩れるような音が響いてるけど何かな?』

 

「どこかで血気盛んなのが暴れてるんじゃないかな?」

 

クレープを食べながら受け答えをする安心院。

その音を響かせてるのが十六夜と黒ウサギということは彼らは気付いてない。

そんな時、安心院の視界の隅に小さな影が映った。

鮮やかな切子細工のグラスを売る出店の棚の下に、尖った帽子の___

 

「レティシアちゃん。あれは何かな?」

 

ん?と指さす方向に首を傾けるレティシア。

その彼女も眼を丸くして驚いた。

指の先には___手の平サイズしかない身長の、とんがり帽子を被った小人の女の子が、切子細工のグラスをキラキラとした瞳で眺めていたのだ。

 

「あれは、精霊か?あのサイズが一人でいるのは珍しいな。“はぐれ”かな?」

 

『“はぐれ”?』

 

「ああ。あの類の小精霊は群体精霊だからな。単体で行動している事は滅多にないんだ」

 

相槌を打つ安心院。

とんがり帽子の精霊に近付く。

背後からの影がかかったのか、とんがり帽子の精霊は驚いて安心院に振りかえる。

二人の視線は、自然に交差した。

 

「「…………」」

 

途端、「ひゃっ!!」と愛らしい声を立てて逃げるとんがり帽子の精霊。

 

『逃げられたね。どうする?』

 

「追いかけるよ。球磨川君」

 

言うと安心院は残りのクレープを口に入れる。

 

「それじゃあ少し追いかけてくるね」

 

レティシアにそう言うと走り出す安心院。

そして球磨川もその後に続く。

今の安心院は球磨川から5m以上は離れられないので球磨川も着いていくのだ。

レティシアは困ったように笑いながらその背中を見送るのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

___境界壁・舞台区画。

“火龍誕生祭”運営本陣営。

巨大で真っ赤な境界壁を削り出すように造られた宮殿はゲーム会場と直結している。

ゲーム会場は輪郭を円状に造られており、それを取り囲む形で客席が設けられている。

現在は白夜叉が持っていたチラシのギフトゲームが開催されており、その舞台上では最後の決勝枠が争われていた。

 

「お前様、そこじゃ!!」

 

中学生くらいの姿になっている忍がセコンドで叫ぶ。

舞台で戦っているのは“ノーネーム”の阿良々木暦と、“ロックイーター”のコミュニティに属する自動人形、石垣の巨人だった。

 

「これでとどめだ!!」

 

忍に血を吸わせて、吸血鬼性を上げた暦は、吸血鬼の身体能力で石垣の巨人の攻撃を潜り抜け、背後に回る。

そして背後から【心渡】で斬り付けた。

【心渡】は別名【怪異殺し】、怪異を斬る妖刀である。

そしてそれをギフトとすると[ギフトを斬るギフト]として機能する。

心渡で斬られた石垣の巨人は、駆動に関するギフトを傷付けられたのか動きが鈍り、最終的に倒れた。

それと同時に、割れるような観衆の声が起こった。

宮殿の上から見ていた白夜叉が柏手を打つと、観衆の声がピタリと止む。

白夜叉はバルコニーから朗らかに笑いかけ、暦と一般参加者に声を掛けた。

 

「最後の勝者は“ノーネーム”出身の阿良々木暦に決定した。これにて最後の決勝枠が用意されたかの?決勝のゲームは明日以降の日取りとなっておる。明日以降のゲームルールは……ふむ。ルールはもう一人の“主催者”にして、今回の祭典の主賓から説明願おう」

 

白夜叉が振り返り、宮殿のバルコニーの中心を譲る。

テラスに現れたのは、深紅の髪を頭上で結い、色彩鮮やかな衣装を幾重にも纏った幼い少女。

龍の純血種___星海龍王の龍角を継承した、新たな“階層支配者”。

炎の龍紋を掲げる“サラマンドラ”の幼き頭首・サンドラが玉座から立ち上がる。

華美装飾を身に纏い、緊張した面持ちの彼女に、白夜叉は促すように優しく笑いかける。

 

「ふふ。華の御披露目だからの。緊張するのは分かるが、皆の前では笑顔を見せねばならぬぞ。我々フロアマスターは下層コミュニティの心の拠り所なのだからな。私の送った衣装も、その様な硬い表情では色褪せてしまうというもの。此処は凜然とした態度での」

 

「は、はい」

 

サンドラは大きく深呼吸し、鈴の音の様な凜とした声音で挨拶した。

 

「ご紹介に与りました、北のマスター・サンドラ=ドルトレイクです。東と北の共同祭典・火龍誕生祭の日程も、今日で中日を迎える事が出来ました。然したる事故もなく、進行に協力くださった東のコミュニティと北のコミュニティの皆様にはこの場を借りて御礼の言葉を申し上げます。以降のゲームにつきましては御手持ちの招待状をご覧ください」

 

観衆が招待状を手に取る。

書き記されたインクは直線と曲線に分解され、別の文章を紡ぎ始めた。

 

{ギフトゲーム名“造物主達の決闘”

 ・決勝参加コミュニティ

  ・ゲームマスター“サラマンドラ”

  ・プレイヤー“ウィル・オ・ウィプス”

  ・プレイヤー“ラッテンフェンガー”

  ・プレイヤー“ノーネーム”

 ・決勝ゲームルール

  ・お互いのコミュニティが創造したギフトを比べ合う。

  ・ギフトを十全に扱うため、一人まで補佐が許される。

  ・ゲームのクリアは登録されたギフト保持者の手で行う事。

  ・総当たり戦を行い勝ち星が多いコミュニティが優勝。

  ・優勝者はゲームマスターと対峙。

 ・授与される恩恵に関して

  ・“階層支配者”の火龍にプレイヤーが希望する恩恵を進言できる。

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、両コミュニティはギフトゲームに参加します。

    “サウザンドアイズ”印

      “サラマンドラ”印}

 

此れにて本日の大祭は御開きとなった。

日も傾き始め、巨大な境界壁の影が街を包み始める。

黄昏時を彷彿させる街の装いは宵闇に覆われ、昼の煌めきとは別の姿を見せ始める。

月明かりを遮る赤壁の街は、巨大なペンダントランプだけが唯一の標としてゆらゆらと灯りを燈している。

悪鬼羅刹が魍魎跋扈する北との境界線は、夜の街に姿を変えて目覚め始めるのだった。




相変わらず話が(ry
まぁいつも通りのことは置いといて今回はあの精霊登場でした

クレープ買いに行くところに関して球磨川さんと安心院が5m以上離れてないか?と疑問に思う方がいるかもしれませんが、それは安心院さんとレティシアを座らせ、その近くにあった出店で買ったので離れてはいません
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