問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!?   作:天崎

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らってんふぇんがー!!

___境界壁・舞台区画・暁の麓。

美術展、出展会場。

走りつかれたとんがり帽子の精霊を肩にのせ、安心院は境界壁の麓の街道を散策。

球磨川も隣を歩いている。

 

「別に取って食おう、というわけじゃないよ」

 

「……………」

 

精霊は肩の上で寝そべり、「ひゃ~」と疲れ切った声を上げている。

安心院はクッキーを割って、とんがり帽子の精霊に分け与えた。

 

「ほら、あげるよ」

 

「___!?」

 

ガバ!!と甘い匂いに釣られて起き上がるとんがり帽子の精霊。

自分の背丈ほどのクッキーをシャリシャリとかじったとんがり帽子の精霊は「キャッキャッ♪」と愛らしい声を上げて安心院の頭の上まで登る。

その様子を見て、球磨川は『餌付けは成功かい?』と耳打ちをした。

直後に横腹に肘を入れられたが。

 

「それじゃあ、自己紹介をしようか。僕は安心院なじみ」

 

『僕は球磨川禊だよ』

 

「なじみ?みそぎ?」

 

「そうだよ。君の名前は?」

 

とんがり帽子の精霊は安心院の頭上で立ち上がり、元気よく答えた。

 

「らってんふぇんがー!!」

 

『らってんふぇんがー?』

 

意味が分からず首を傾げる球磨川。

一方、安心院は、

 

「(らってんふぇんがー……ラッテンフェンガーのことかな?それなら意味は鼠捕りの男だね。でも……)」

 

そんなことを考えていた。

とんがり帽子の精霊をつまみあげ、両手の上に載せる。

 

「それは君の名前かな?」

 

「んー、こみゅ!!」

 

「コミュニティの名前?なら君の名前は?」

 

「?」

 

意味が分からない、という感じで首を傾げる精霊。

安心院はレティシアが彼女を“郡体精霊”と呼んでいたことを思い出す。

 

「(個別の名前を持ってないのかな?)」

 

考え込むように頬に指を当てると、背後から強烈な寒気を感じると同時に腹あたりから鈍い痛みを感じさせた。

安心院が振り返ると、先程も見て、先程も寒気を感じさせた骨がそこに運ばれていた。

 

「(あの骨、何かあるのかな?)」

 

鈍い痛みを感じた腹は、かつてとある怪物に真っ二つにされた部分だ。

そして骨にはどこか見覚えがあるような気もしていた。

 

「(………まさかね)」

 

ある筈がないと結論付け、ため息を吐く。

 

『どうかしたのかい、安心院さん?』

 

「なじみ?」

 

「なんでもないよ」

 

そう言って、気分を変え、展覧会を見て回ることにした。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

その後、展示会場を進んだ三人は大きな空洞に出る。

会場の中心に当たる場所だろう。

 

『紅い鋼の巨人?』

 

「おっき!!」

 

安心院の隣で球磨川が呟く。

大空洞の中心に飾られていた、紅い鋼作られた巨人。

その全身はとにかくド派手で馬鹿デカかった。

紅と金の華美の装飾に加え、目測でも身の丈三十尺はあろう体驅

加えて人間の倍はあろうかという巨大な拳と足。

 

『凄いね。何処のコミュニティが作ったのかな?』

 

「らってんふぇんがー!!」

 

とんがり帽子の精霊は瞳を輝かせ、安心院の肩から飛び降りる。

展示品の看板には確かに{制作・ラッテンフェンガー 作名・ディーン}と記されていた。

 

「へぇ、君のコミュニティが作ったのかい?」

 

えっへん!!と胸を張るとんがり帽子の精霊。

どうやらそのようだ。

 

安心院は{ディーン}と名付けられた鉄人形を見上げる。

 

「凄いんだね、“ラッテンフェンガー”のコミュニティは」

 

にはは、とはにかんで笑うとんがり帽子の精霊。

よほど嬉しかったのだろう。

はしゃぎながら「らってんふぇんがー!!」と叫び続けるとんがり帽子の精霊。

呆れながら摘まみ上げた安心院は精霊を肩に載せ、他の展示品を見て回ろうと足を運ぶ。

 

 

___異変はその直後に起きた。

 

 

ヒュゥ、と。

大空洞に一陣の風が吹く。

その風は数多の灯火を一吹きで消し去ってしまう。

客人達が声を上げ、混乱が波紋のように浸透する。

 

「どうした!?急に灯りが消えたぞ!!」

「気をつけろ、悪鬼の類かもしれない!!」

「身近にある灯りを点けるんだ!!」

 

灯火の消えた大空洞は闇に閉ざされる。

内部の人間の叫び声だけが不気味に反響した。

安心院は傍にあった燭台を球磨川に渡し、火を司るスキル【間違いなく放火(エキシビジョンマッチ)】で火を点ける。

大空洞の最奥に不気味な光が宿ったのは、その瞬間だった。

 

<ミツケタ……ヨウヤクミツケタ……!!>

 

怨嗟と妄執を交えた怪異的な声が大空洞で反響する。

安心院は犯人の居場所に大体の目安をつけて、爆発を司るスキル【発破六重死(アハトアハトデッサン)】で爆発させる。

 

「どうかな?」

 

直後に五感を刺激する笛の音色と、怪異的な声が響き渡った。

 

<___嗚呼、見ツケタ……!!“ラッテンフェンガー”ノ名ヲ騙ル不埒者ツ!!>

 

爆煙の中から何千何万匹という紅い瞳の、大量の群れが襲い掛かってきた。

途端、誰かの絶叫が響く。

 

「ね、ねず………ネズミだ!?一面全てが、ネズミの群れだ!!」

 

そう。

大空洞の一面を埋め尽くすうごめく影。

その見渡す限り全てがネズミだ。

地面を覆い尽くして波打つネズミの大行進。

これにより衆人はパニックに陥る。

 

「しょうがないね」

 

パニックを見た安心院は座標操作のスキル【王の座標(キングマッピング)】により衆人を一人ずつ外へと転送した。

一分も掛からずにその作業は終わった。

 

『僕らは転送出来ないのかい?』

 

「定員は一人でね。僕達は離れられないから送れないんだよ」

 

『なら、僕達は自分達で脱出するしかないってことだね』

 

「そういうことだよ」

 

言って、安心院は左手に、水を司るスキル【水肢体(ウォーターボディスラム)】で水を生み出し、右手に、雷を司るスキル【千脚万雷(ボルトレッグ)】で雷を発生させる。

 

「これで一網打……じ…ん……痛ッ……」

 

ネズミ達にスキルを放とうとした瞬間、安心院は頭痛に襲われふらつきスキルが不発になる。

そこにネズミ達が押し寄せる。

球磨川が立ち塞がり、壁になるように地面に大量の螺子を突き刺すが乗り越えられる。

 

『うわっ………』

 

そして球磨川はネズミの群れに呑まれていく。

そこに大量の水が放たれ、直後に雷が通る。

球磨川ごとネズミ達は焼かれていく。

 

「あーゴメンね、球磨川君。うっかり巻き込んじゃったよ」

 

ほとんど棒読みで言う安心院。

 

『絶対わざとだよね』

 

【大嘘憑き】で傷をなかったことにした球磨川は安心院の方に近寄る。

そうしてる間にもネズミ達に囲まれていっている。

 

『さっきはどうしたの?』

 

「ちょっと頭痛がしてね」

 

そんなことを話していると、

 

「___鼠風情が、我が同胞に牙を突き立てるとは何事だ!?分際をしれこの畜生共ッ!!」

 

レティシアが駆け付け、状況は一転した。

レティシアは一瞬で展示物の一切を破壊することなく敵を粉微塵にしたのだ。

 

『凄いね、レティシアちゃん』

 

呟いた後に気が付く、レティシアは何時もの姿ではなかった。

愛らしい少女の顔は、妖艶な香りを纏う女性へと激変し、美麗な金髪は輝きを放つ。

メイド服は深紅のレザージャケットに変わり、拘束具を彷彿させる奇形のスカートを穿いている。

レティシアは美麗な顔を怒りで歪ませ、吸血鬼の証である牙を獰猛に剥いて叫ぶ。

 

「術者は何処にいるッ!?姿を見せろッ!!このような従来の場で強襲した以上、相応の覚悟あってのものだろう!?ならば我らが御旗の威光、私の牙と爪で刻んでやる!!コミュニティの名を晒し、姿を見せて口上を述べよ!!」

 

激昂したレティシアの一喝が響く。

しかし返事もなければ気配もない。

どうやら術者は逃げ去ったらしい。

一方、安心院は考え事をしていた。

 

「(あのネズミの群れはこの精霊を狙ったのかな?それよりさっきの頭痛は……“前兆”かな?今、“限界”がくると面倒なんだけどね……)」

 

「なじみっ!!」

 

そんな安心院にとんがり帽子の精霊が、半泣きになりながら安心院の首筋に抱き付いて歓喜の声を上げている。

 

『随分と懐かれたみたいだね』

 

球磨川がからかうように言う。

レティシアは呆れながらその様子を見ている。

 

「何はともあれ、無事でよかった。日も暮れて危ないし、今日のところは連れて帰ろう」

 

「そうだね」

 

安心院は頷きながら、精霊を摘まみ肩に移動させる。

これ以上の襲撃が無いとも言い切れない。

三人と一匹の精霊は朱色のランプが照らす街を進み、“サウザンドアイズ”の店舗に戻るのだった。




相変わらず話がすs(ry

今回は精霊と安心院さん達の絡みでした。

今回の安心院さんのスキルは全部コミック十七巻にあるものです。

安心院さんの寒気と頭痛の原因は別です。
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