問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!?   作:天崎

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元怪異の王vs業火と不死の幽鬼

ジャックと忍がぶつかりあう中、暦は迷路をさまよっていた。

忍に足止めして貰うまではよかったのだがそれ以降が問題だった。

 

「一応、印は付けてるから迷ってることはないけど出口が見付からないな」

 

溜め息混じりに呟く暦だった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「中々やるのう」

 

「そちらもですね」

 

ジャックと忍の戦いは硬直していた。

忍が斬りかかろうと距離を詰めようとすると炎に阻まれ、ジャックが炎を放っても避けられるか、かするだけだった。

 

「「(埒があかないの)」ですね)」

 

二人は同時に思った。

お互い目的は先に行かせたアーシャと暦の邪魔をさせないことだが、もう一つの勝利条件が目の前にあり、隙あらば達成しようと思っているのだ。

忍はジャックを壊せば、ジャックは忍の手にある【心渡】を壊せば勝利条件を満たせる。

【心渡】は暦の手にもあるがどちらを壊しても変わりはない。

 

「(さて、どうしますかね。あれを使ってもいいのですが……)」

 

普通に放っただけでは避けられるか当たったところで再生されるだけとジャックは考えていた。

 

「(このまま続けるのも悪くないんじゃが主様が先にゴール出来るとは限らんしの……)」

 

忍は少々考え【心渡】を構えた。

そしてジャックに向かい走り出した。

 

「ヤホホ!!正面突破ですか!!」

 

「これが一番手っ取り早いじゃろ!!」

 

言って忍は物質創造能力により作った大きめの布を前に広げた。

 

「視界を塞ぐつもりですか?」

 

ジャックは布を燃やすがその後ろに忍はいなかった。

ジャックが辺りを見渡すと、

 

「儂の必殺技パート2じゃ!!」

 

背後からそんな声がした。

ジャックが振り向くと少し離れた場所から忍が跳躍するのが見えた。

それは一回の跳躍で終わらず、床や天井で次々と跳躍し加速していく。

ジャックはとっさに【業火(ゲヘナ)】の宿るランタンを召喚し、蓋を開く。

そして荒ぶる炎が零れ落ち膨れ上がる。

【心渡】の刃がジャックに届く一瞬前、地獄の炎が忍に届く一瞬前、ゲームの終了が告げられた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

会場は、まるで夢から覚めたような静けさだった。

ゲームの決着が付いた瞬間、会場の舞台はガラス細工のように砕け散り、円状の舞台に戻ってきていた。

それと同時にジャックと忍の攻撃も中断された。

呆然とする観客達。

その中で一人、黒ウサギは何事もなかったように終了を宣言する。

 

「勝者、アーシャ=イグニファトゥス!!」

 

どうやら忍とジャックが戦っている間にアーシャがゴールして決着となったようだ。

ゴール付近で何か一悶着あったようでアーシャの服は乱れ、暦は全身に踏み跡があった。

ハッと観客席から声が上がる。

次に割れんばかりの歓声が会場を包んだ。

 

「そちらの勝ちのようじゃな」

 

「そうですね。ですが私達の決着は中途半端になりましたね」

 

「今度はちゃんとした戦いで決着を着けてやるわ」

 

「ヤホホ!!楽しみにしていますよ!!」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

『暦君、負けちゃったね』

 

「ま、こういう事もあるさ」

 

「暦君はともかく忍ちゃんとジャックのバトルは面白かったね」

 

軽快に笑う十六夜。

楽しめたというかんじに笑う安心院。

中央に控えていたサンドラと白夜叉が声を掛ける。

 

「シンプルなゲーム盤なのに、とても見応えのあるゲーム。貴方達が恥じる事は何も無い」

 

「うむ。“ウィル・オ・ウィスプ”は六桁でも最上位の一角だからの。主力のジャックは業火と不死の烙印を持つ幽鬼。それと互角の勝負をしたんじゃ誇ってよいぞ」

 

白夜叉は慰めるように十六夜達に眼を向ける。

 

「…………?」

 

しかし、十六夜の思考は既にゲームの舞台から離れていた。

彼の視線は遥か彼方、箱庭の空に向けられている。

十六夜は怪訝な表情で白夜叉に問う。

 

「……白夜叉。アレはなんだ?」

 

「何?」

 

白夜叉も上空へ目を向ける。

観客の中にも、異変を感じた者達が声を上げていた。

遥か上空から、雨のようにばら撒かれる黒い封書。

黒ウサギはすかさず手に取って開ける。

 

「黒く輝く“契約書類”………ま、まさか!?」

 

笛を吹く道化師の印が入った封蝋を開封すると、“契約書類”にはこう書かれていた。

 

{ギフトゲーム名“The PIED PIPER of HAMELIN”

 

 ・プレイヤー一覧

  ・現時点で三九九九九九九外門・四〇〇〇〇〇〇外門・境界壁の舞台区画に存在する参加者・主催者の全コミュニティ。

 

 ・プレイヤー側・ホスト指定ゲームマスター

  ・太陽の運行者・星霊 白夜叉。

 

 ・ホストマスター側 勝利条件

  ・全プレイヤーの屈服・及び殺害。

 

 ・プレイヤー側 勝利条件

  一、ゲームマスターを打倒。

  二、偽りの伝承を砕き、真実の伝承を掲げよ。

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

    “グリムグリモワール・ハーメルン”印}

 

数多の黒い封書が舞い落ちる中、静まり返る舞台会場。

観客席の中で一人、膨張した空気が弾けるように叫びを上げた。

 

「魔王が………魔王が現れたぞオオオオォォォォーー!!」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

____境界壁・上空2000m地点。

遥か上空、境界壁の突起に四つの人影があった。

一人は露出が多く、布の少ない白装束を纏う女。

白髪の二十代半ば程に見える女は二の腕程の長さのフルートを右手で弄びながら、舞台会場を見下ろす。

 

「プレイヤー側で相手になるのは………“サラマンドラ”のお嬢ちゃんを含めて四人ってところかしらね、ヴェーザー?」

 

「三人……いや、やっぱり四人だな。カボチャは参加資格はないがそれと互角の戦いをした奴がいるしな。特にヤバイのはそいつと吸血鬼と火龍のフロアマスター。____あと事のついでに、偽りの“ラッテンフェンガー”も潰さねえと」

 

白装束の女に答えたのは、対照的に黒い軍服を着た、短髪黒髪のヴェーザーと呼ばれた男。

その手に握られた笛は白装束の女のものとは違い、長身の男と同等の長さである。

楽器としては明らかに常軌を逸した長さだ。

そして三人目は、外見が既に人ではない。

陶器の様な材質で造られた滑らかなフォルムと、全身に空いた風穴。全長五十尺はあろうという巨兵のその姿を安易に例えるならば、擬人化した笛というところだろう。

顔面に空いた特に巨大な風穴は、絶えず不気味な鳴動を周囲に放っていた。

その三体に挟まれる形で佇む、白黒の斑模様のワンピースを着た少女。

斑模様の少女は三体の顔を一度ずつ見比べ、無機質な声で宣言する。

 

「____ギフトゲームを始めるわ。貴方達は手筈通り御願い」

 

「おう、邪魔する奴は?」

 

「殺していいよ」

 

「イエス、マイマスター♪」




今回はアンダーウッドの迷路決着そして魔王襲来でした。

忍vsジャックは決着、着かずという形で終わりました。

さて、次からは魔王のゲームスタートです!!
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