問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!? 作:天崎
「ご安心を!!今から魔王と此処にいる主力___纏めて、月までご案内します♪」
は?という疑問の声は、刹那に消えた。
白黒のギフトカードの輝きと共に急転直下、周囲の光は暗転して星が巡る。
激しい力の奔流が収まり、瞳を開けて天を仰ぐ。
天には箱庭の世界が逆様になって浮いていた。
石碑の様な白い彫像が数多に散乱する月の神殿を見て、ぺストは蒼白になって叫ぶ。
「【月界神殿(チャンドラ・マハール)】!?軍神ではなく、月神の神格を持つギフト……」
「YES!!このギフトこそ、我々“月の兎”が招かれた神殿!!帝釈天様と月神様より譲り受けた、“月界神殿”でございます!!」
一帯見渡す限りの灰色の荒野。
生物が住まう余地などない死の大地。
彫像の結界の外に出れば、月面の過酷な環境があらゆる生物を死滅させるだろう。
「け、けど……!!ルールではゲーム盤から出る事は禁じられているはず、」
「ちゃんとゲーム盤の枠内に居りますよ?ただ、高度が物凄く高いだけでございます」
「っ……!?」
では何か。
ハーメルンの街の頭上にまで、天体を移動させたということか。
「これで参加者側の人間の心配はなくなりました!!サンドラ様と十六夜さん達はしばし魔王の相手を押さえつけてください!!黒ウサギもすぐに参戦します!!安心院さん達は此方へ!!」
言うや否や、サンドラと十六夜がぺストに突撃する。
ぺストは隔離されたことに焦りながらも、黒い風を放出させて迎え撃つ。
「構わないわ。全てのステンドグラスが発見される前に終わらせる……!!」
「ハッ、やれるもんならやってみな!!」
衝撃波を全身に食らいながらも突進する十六夜。
先程と同じように蹴りを入れるが、今度は軽く避けられる。
言彦との連戦で想像以上に疲労が蓄積しているのだろう。
サンドラは十六夜が切り裂いた死の風の隙間を轟炎で縫う。
全身を炎に包まれるぺストだが、瞬時に傷が癒えていく。
八〇〇〇万の群体神霊である彼女を一撃で倒すには、サンドラでは火力が足りないのだ。
「ハッ、なるほど!!さっきの言葉を比喩でも何でもないってことか!!」
「そうよ。私を打倒するというなら、星を砕くに値する一撃を用意しなさい___!!」
怨嗟と衝撃の渦を双掌で高めるぺストだが、飛び込んできた暦がそれを【心渡】で突き霧散させる。
「なっ!?」
動揺し、隙が出来たところに忍が蹴りを入れる。
「それなら死ぬまで殺すだけじゃ!!」
更に忍とは反対方向から十六夜が蹴りを入れる。
二人の蹴りを受け、ほとんど潰されるような形になるぺスト。
十六夜達が奮闘する中、黒ウサギはギフトカードから三叉の槍が描かれた紙片を取り出して安心院に手渡す。
「これはインドラの槍かい?」
「YES!!この紙片からインドラに縁のある武具を召喚します。しかし気を付けて下さいまし。この槍は強力な半面、ギフトゲーム中に一度しか使えないのです」
「つまり僕に使えということかな?」
「YES!!安心院さんならこのギフトの力を十全に発揮出来るはずです。黒ウサギが隙を作るので、その槍を直撃させてください!!それでこのギフトゲームは勝利です!!」
紙片は雷鳴と共に槍に変わった。
安心院の手に投擲用の槍が現れる。
これこそ、帝釈天の神格が宿る槍。
「任せな」
瞳を向ける安心院。
黒ウサギも頷いて返す。
踵を返した黒ウサギはもう一枚の紙片をギフトカードから取り出して、死の風の渦に飛び込んでいく。
安心院はその間に、ディーンへインドラの槍を手渡す。
『自分でやらないのかい?』
「やろうと思えばやれるけど、適材適所ってものがあるだろ?」
答えた後、とんがり帽子の精霊を見る。
「この戦いが終われば君も消える。……本当にいいんだね?」
「うん」
小さな頭を振って首肯する精霊。
「分かったよ。必ず魔王を討ち取るぜ」
互いに頷く。
ディーンは何も語らず、強く槍を握りしめる事で意思を示した。
◆◆◆◆◆
全身から太陽の輝きを放つ黒ウサギが背後で控える安心院に叫ぶ。
「今です安心院さん!!」
黒ウサギの声に応じて命を下す。
「行くぜ、ディーン!!」
「DEEEEEEEeeeeEEEEEEN!!」
紅い鋼の巨人が怒号を上げて撃ちだす。
安心院はインドラの槍にスキルを重ねる。
勝利のスキル【多勝の宴(アベタイザーパーティ)】
主人公補正のスキル【善行権(エンゼルスタイル)】
インドラの槍は千の天雷を束ねてぺストを襲う。
黒ウサギに気を取られていたぺストは避ける間もなく被弾し、月面高く打ち上げられて貫かれた。
「こ、この………程度、なんかで………!!」
千の雷に焼かれながらも、ぺストはまだ抗う。
そこへ二つの物が更に刺さる。
「な!?」
一つは【心渡】、一つは【却本作り】。
ぺストに刺さったそれらはぺストの力を大きく削る。
そしてインドラの槍の放つ天雷は直撃した後も勢い衰えず、むしろ輝く様に力を解放していく。
天雷は千から万へ、万から億へ急速に力を増していく。
衰える事を知らないインドラの槍は敵を焼き尽くすまで止め処なく光を放ち続ける。
【却本作り】が対象を【過負荷】にするように。
【心渡】が怪異を殺すように。
死神が黒い風で死を与えるように。
インドラの槍は勝利をもたらす。
「そんな……私は、まだ………!!」
「___さよならだね、“黒死斑の魔王”」
安心院が別れの言葉を告げると、一際激しい光が月面を満たす。
轟と響きを上げた軍神の槍は、圧倒的な熱量を撒き散らして魔王と共に爆ぜた。
ぺスト戦終了です!!
次回からはエピローグです。
それでは感想待っています。