問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!?   作:天崎

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サラ登場

 

地表に出た一同は大樹を見上げていた。

 

『黒ウサギちゃん。この樹、何百mあるんだい?』

 

「“アンダーウッド”の水樹は全長500mあると聞きます。境界壁の巨大さには及びませんが、御神木の中では大きな部類だと思いますよ」

 

「それで僕達が向かう場所はどのくらいなんだ?」

 

「中ほどですね」

 

「「「「『…………』」」」」

 

つまり250m。

それも梯子や備え付けの足場を伝っていかねばならない。

安心院、忍、反坂は少々考え込むと、

 

「飛んで行っていいかい?」

「飛んで行っていいかの?」

「飛んで行っていいか?」

 

口を揃えて言った。

全員面倒そうな口調で。

 

「皆さん、自由過ぎます!!」

 

「ヤホホ!!飛んで行かなくてもエレベーターがありますよ」

 

エレベーター?と首を傾げる一同。

しかしジャックは説明せずにどんどん歩みを進める。

太い幹の麓まで来ると、ジャックは木造のボックスに乗って手招きをした。

 

「このボックスに乗ってください。全員乗ったら扉を閉めて、傍にあるベルを二回鳴らしてください」

 

「わかった」

 

木製のボックスに備えられたベルの縄を二回引いて鳴らす。

すると上空で、水樹の瘤から水が流れ始めた。

一同が乗っているボックスと繋がった空箱に、大量の水が注がれているのだ。

乗用ボックスと連結している滑車がカラカラと回ると、徐々に上がり始めた。

そのまま水式エレベーターはものの数分で本陣まで移動した。

幹の通路を進むと、収穫祭の主催者である“龍角を持つ鷲獅子(ドラコ・グライフ)”の旗印が見えた。

 

「旗が七枚、七つのコミュニティが主催しているのかい?」

 

「NOですね。“龍角を持つ鷲獅子”は六つのコミュニティが一つの連盟を組んでいると聞いております。中心の大きな旗は、連盟旗でございますね」

 

黒ウサギが指さす旗印の数は七枚。

 

“一本角”

“二翼”

“三本の尾”

“四本足”

“五爪”

“六本傷”

 

そして中心に連盟旗・“龍角を持つ鷲獅子”が飾られていた。

 

「これが連盟旗かい。連盟を組むメリットは?」

 

「三つ以上の複数のコミュニティが連盟を持つ場合、その証として連盟旗を作る事が出来ます。用途は色々御座いますが………一番はやはり、魔王に対抗するためですね」

 

「魔王にかい?」

 

「YES!!例えば連盟加入コミュニティが魔王に襲われた場合、他のコミュニティは助太刀の為にギフトゲームへ介入することが可能になるのです」

 

「でも絶対ではないんだろう?」

 

「そうです。ちょっとした気休めというかんじですね」

 

話を終えると、本陣入り口の両脇にある受付で入場届を出す。

そこで聞き覚えのある姓を聞く。

 

『サラ・ドルトレイク?まさか……』

 

「そのまさかだろうね。たぶん“サラマンドラ”の人だろ?」

 

ジンに問い掛ける安心院。

 

「え、ええ。サンドラの姉である、長女のサラ様です。でもまさか南側に来ていたなんて………もしかしたら、北側の技術を流出させたのも……」

 

「流出とは人聞きが悪いな、ジン=ラッセル殿」

 

聞き覚えのない女性の声が背後から響き、ハッと一同が振り返る。

途端、熱風が大樹の木々を揺らした。

激しく吹き荒ぶ熱と風の発生源は、空から現れた女性が放つ二枚の炎翼だった。

 

「サ、サラ様!!」

 

「久しいなジン。会える日を待っていた。後ろの“箱庭の貴族”殿とは、初対面かな?」

 

燃え盛る炎翼を消失させ、樹の幹に舞い降りるサラ=ドルトレイク。

姉妹であるサンドラと同じ赤髪を長くなびかせる彼女は健康的な褐色の肌を大胆に露出している。

サラ一同の顔を一人一人確認すると、受付の少女を遊びに行かせる。

そして残ったサラは一同に目を向けると、口元に僅かな笑みを浮かばせて仰々しく頭を垂れる。

 

「ようこそ、“ノーネーム”と“ウィル・オ・ウィスプ”。下層で噂の両コミュニティを招く事が出来て、私も鼻高々といったところだ」

 

「「『噂?』」」

 

「ああ。しかし立ち話も何だ。皆、中に入れ。茶の一つも淹れよう」

 

手招きしながら本陣に消えるサラ。

両コミュニティのメンバーは怪訝に顔を見合わせるも、招かれるままに大樹の中へと入って行った。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

___“アンダーウッド”収穫祭本陣営。

貴賓室。

そこで一同が色々話していると球磨川は、ふっと黒ウサギと目が合う。

そして何か思い付いたようにサラに聞く。

 

『ねぇ、サラちゃん。南側特有の植物にラビットイーターとかあるかい?』

 

「何故そこでそれを聞くんですか!?そんな愉快に恐ろしい植物が在」

 

「在るぞ」

 

「在るんですか!?」

 

そんなお馬鹿な!?と、ウサ耳を逆立てて叫ぶ黒ウサギ。

そこに暦が乗って問う。

 

「ならブラックラビットイーターはあるのか?」

 

「何故黒ウサギをピンポイントに狙うのですか!?」

 

「在るぞ」

 

「在るんですか!?ど、何処のお馬鹿様が、そんな対兎最恐プラントをッ!?」

 

「何処の馬鹿と言われても……発注書なら此処にあるが、」

 

バシッ!!とサラの机から発注書を奪い取る黒ウサギ。

そこにはお馬鹿っぽい字でこう書かれていた。

 

[対黒ウサギ型プラント:ブラック★ラビットイーター。八十本の触手で対象を淫靡に改造す

 

 

グシャ!!

 

 

「___________フフ。名前を確かめずとも、こんなお馬鹿な犯人は世界で一人シカイナイデスヨ」

 

ガクリと項垂れ、しくしくと哀しみの涙を流す黒ウサギ。

大河に向かって魂の叫びを上げる彼女を他所に、安心院はサラに聞いていた。

 

「サラちゃん。ここらへんでこの水樹以外で神木に近い樹ってあるかい?」

 

「それなら………」

 

答えを聞いている間に黒ウサギは黒髪を光る緋色に変幻させる。

 

「……サラ様。収穫祭に招待していただき、誠にありがとうございます。我々は今から向かわねばならない場所が出来たので、これにて失礼いたします」

 

「そ、そうか。ラビットイーターなら最下層の展示会場にあるはずだ」

 

「ありがとうございます。それでは、また後日です!!」

 

「ちょ、黒ウサギ!?」

 

黒ウサギは“ノーネーム”一同の首を鷲掴みにして、一目散に去っていった。

 

 





今回はここまでです。

次あたりには巨人来襲です。

安心院さんはちゃんと神木について聞いてから行きました。

それでは感想待っています。
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