問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!? 作:天崎
安心院が弾き飛ばした巨人は立ち上がり再度襲ってくる。
「黒ウサギちゃん、魔王の残党って言ったけど“主催者権限”でも発動しているのかい?」
「違います!!この不埒者は典型的な無法者でございます!!」
「そうかい、ならいいや」
安心院はつまらなさそうに言うと、刀を精製するスキル【見囮剣(ソードルックス)】で刀を作ると、微塵切りのスキル【斬り砲台(チョッピングバイキング)】を発動する。
巨人は一瞬で微塵切りになり血と肉片が飛び散る。
『安心院さん、いきなりグロイことしないでくれるかな?』
「君は平気だろ?」
『そうだけども……』
「安心院さん、あまり派手な攻撃はしないでください」
「どうしてだい?」
「地下都市が崩れてしまいます」
「なるほどね」
ならどうするかな、と考え始める安心院。
しかし実際は別の事を考えていた。
「(さて、魔王の残党とはいえ裏に何かいるだろうし、そちらは面白そうだね)」
そんなことをしていると上から反坂が現れる。
「お前ら、無事か?」
『こっちは全員無事だよ。皐君』
全員無事なのを確認すると反坂は一反木綿から人型に変わる。
「皐さん、暦さん達のことは分かりますか?」
「あいつらなら既に上に行ったぞ」
「それなら僕達も行くとしようぜ」
『じゃあ皐君、乗せてくれるかい?』
「しょうがねぇな」
渋々というかんじに反坂は再び一反木綿の姿になり、背に球磨川と安心院を乗せる。
『地下は任せて大丈夫かい?』
「はい!!元からそのつもりです!!」
それを合図に黒ウサギは地下で暴れる巨人へ、球磨川達は地上へ向かった。
◆◆◆◆◆
一方、地上の暦と忍は乱戦に突入しようとしていた。
忍は既に暦の血を吸い、高校生くらいの姿だ。
「想像以上に酷い事態のようじゃな」
「そうだな。統率も無くて足止めで精一杯ってかんじだ」
サラを手伝おうかと考えていたが、敵の主力と戦っているようで均衡を崩しては元も子もないので、下手に介入しないことにしている。
「さて、儂らもそろそろ参加するかの!!」
そう言って忍は巨人の集団に突入する。
暦はその後に続く。
忍はまず上空から一体の巨人に蹴りを放ち、その巨人の顔面を地面に叩き付ける。
そして隣の巨人が唖然としている間に片足を斬り落とす。
巨人の叫び声が響くが忍は無視して、斬り落とした足を掴み、棍棒のように巨人に叩き付けていく。
「なんじゃ!!なんじゃ!!なんじゃ!!巨人と言ってもこの程度かの!!」
挑発に聞こえる、その言葉に数体の巨人が向かっていく。
忍は跳躍すると一体の巨人の頭を掴み、そのままもう一体の巨人の頭に叩き付ける。
二体重なり倒れようとする巨人を踏み台にもう一度大きく真上に跳躍すると、そのまま急降下して二体の巨人が地面に倒れる前に後頭部に蹴りを入れ、そのまま踏み潰す。
足に付いた肉片と血を振り払い、再度跳躍して巨人の首元に着地する。
そして【心渡】で首を斬り落とした。
シャワーの如く切り口から血が溢れる。
その光景に敵味方共に唖然としていた。
◆◆◆◆◆
遅れてし地上に出た安心院達は忍の暴れようを見て対抗心を高めていた。
「これは僕らも負けてられないね」
『と言うわけで悪いけど皐君。あの巨人の集団に突入してくれるかな?』
「いいぜ~落ちるなよ」
変わらず、だらけた口調だが速度を上げて巨人の集団に突っ込んでいく反坂。
「攻撃はお前ら任せだからな」
『分かっているよ!!』
反坂が巨人の集団に入った瞬間、通った後の巨人達に螺子が大量に刺さる。
更に安心院が全包囲にスキルを放ち、巨人達を吹き飛ばしていく。
反坂が通過した跡は血と肉片が飛び、立っている巨人はいなかった。
「あれ?」
『どうしたんだい安心院さん?』
「いや、そこを何か通ったような気がしてね」
攻撃の手を休めずに違和感の正体を考える安心院。
「(あそこでたんたんと巨人を殺し続けている仮面の彼女ではないだろうし……認識操作系のギフトを使っているやつがいるということかな?)」
考える事をしている間にも巨人は次々と狩られていく。
◆◆◆◆◆
「これでどうだ!!」
暦はそう叫びながら巨人の脳天に【心渡】を突き刺す。
突き刺された巨人は力尽きて倒れる。
暦は近くで自分が一体倒している間に忍が大量に倒しているのを確認するが実力差は分かっているので気を落としたりはしない。
しかしそちらに気を取られている間に背後から横薙ぎに棍棒が振られ、暦は吹き飛ばされる。
「痛ってえぇぇぇ!!」
全身の骨が折れて叫ぶ暦。
吸血鬼の再生力で骨折は治るが痛みまではどうにもならない。
その間に追撃が来る。
更なる痛みを覚悟して、眼を閉じるがいっこうに棍棒が振り下ろされる気配はない。
恐る恐る眼を開くと、そこには棍棒を鞘から抜いていない刀で受け止める男の姿があった。
「大丈夫かい?」
男は棍棒を受け止めながら暦に話し掛ける。
男の外見は黒の長髪で和服を着て笠を被っている。
だがその姿は陽炎のように揺らいでるようにも見えた。
「あんたは何者だ?」
「俺かい?俺は緋御 悟(ひおん さとる)、通りすがりの遊び人さ」
そう言うと男は棍棒を弾き、刀を抜く。
姿の揺らぎが大きくなったと思ったら、いつの間にか巨人の肩に乗っていた。
そして巨人の頸動脈を斬る。
「じゃあまた機会が合ったらな」
そう言って、緋御 悟と名乗った男は暦の前から姿を消した。
◆◆◆◆◆
「(いや~抜け出して祭に来たはいいがこんなことになるとはついてねぇな。それはそれで面白いけどな)」
そんなことを考えながら姿を揺らがせ、戦場を歩いていた。
認識はしてもその気配を感じる者は誰一人いなかった。
◆◆◆◆◆
“ノーネーム”の暴れように“アンダーウッド”の士気は高まっていた。
これを勝機と見た誰かが、大樹の上で“龍角を持つ鷲獅子”の旗印を広げて照らした。
サラは急加速して三体の巨人を振り払い、炎のように燃え上がる赤髪をなびかせて叫ぶ。
「“主催者”がゲストに守られては末代までの名折れッ!!“龍角を持つ鷲獅子”の旗本に生きる者は己の領分を全うし、戦況を立て治せ!!」
一喝に応じて、おおと鬨の声が上がる。
サラの一喝で己を取り戻した各コミュニティは、旗印の下に集って本来の役割に就く。
一糸乱れぬ動きを見せ始めた“龍角を持つ鷲獅子”の同士相手に、巨人族は徐々に戦線を離れて後退し始める。
刹那、琴線を弾く音がした。
反応する間もなく一帯は濃霧に包まれた。
しかし、
「邪魔だよ」
「邪魔じゃ」
安心院と忍が濃霧を吹き飛ばす。
唖然とする一同だったが行動を再開する。
◆◆◆◆◆
巨人族が退けられ、安全を知らせるための鐘が鳴る中、安心院と球磨川と反坂は一人の女性の前にいた。
その女性の周りには主力と思える個体を含めた巨人族の死体が大量に転がっていた。
純白で美しい白髪を頭上で纏めている黒い髪飾り。
静謐さを放つ白いドレススカートと、精緻な意匠が施された白銀の鎧。
顔の上半分を隠す、白黒の舞踏仮面。
女性のその姿は余す事なく巨人族の血で染まっていた。
「何か用ですか?」
「いや、用はないよ。ここまで巨人族を一人で殺した人物を見ておきたくてね」
「………」
それを聞くと、女性は無言で去っていった。
『用はあったんじゃなかったのかい?』
「いや、彼女は違うと直接見て分かったよ。今はそれで充分だよ」
「ふ~ん。よく分からないけどそれって戦闘中に感じた違和感の事か?」
「そんなところだよ皐君」
そんなことを話しながら黒ウサギ達と合流する為にもの戻っていった。
今回はここまでです。
暦を助けた“緋御 悟”(読みはひおん さとる)の正体は後ほど。
名前が意外にヒントです。
それでは感想待っています。