問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!?   作:天崎

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寝起きは注意

ガツンッ!!と強烈に後頭部をぶつけた衝撃で、反坂皐は目を覚ました。

しかしまだ寝惚けているのか欠伸をしながら体を起こす。

 

「痛ってぇな………何だよ一体……」

 

「……随分と呑気なもの言いですね」

 

静謐ながらも呆れた声音が背後からかかる。

欠伸をして、頭をかきながら振り向くと、純白の鎧とドレススカートで身を包む仮面の女性___フェイス・レスが佇んでいた。

その隣には爆撃にでも遭ったような瓦礫の山。

周囲を見渡せば阿鼻叫喚と灼熱の海。

異常事態は一目瞭然………なのだが、

 

「(なんだこりゃ?夢か?)」

 

寝惚けた調子で周りを見回している。

___ヒュン、と風切り音。

反坂の頬を撫でる様に風が吹くと、背後で巨大な生物が倒れる音がした。

反坂はノロノロと振り向くと毒々しい柄の鱗を持った大蛇が、首をはねられて一撃で絶命させられていた。

 

「(うん、これは夢だ)助けてくれてありがとうな。んじゃ、おやすみ」

 

横になり、目を閉じて眠りにつこうとする。

それは一種の現実逃避だった。

そんな反坂に、

 

「ぐばぁ!?」

 

フェイス・レスは無言で蹴りを入れた。

しかも結構強めに。

仮面で表情は見えないが、地味にイラッときたらしい。

 

「……少しは現実を見たらどうですか?」

 

「うん。分かった……分かったから!!ちょっと足をどけてくれないでしょうか!!ちょ、マジでヤバイから!!折れるから!!肋骨折れるから!!」

 

反坂は必死に懇願して、フェイス・レスは足をどける。

多少咳き込みながら立ち上がると、一つ上の岩壁から球磨川の声がした。

 

『皐君。大丈夫かい?』

 

「お~こっちは無事だ」

 

折れた大樹の根を伝って下に降りる球磨川。

その後ろをジンとメイド姿のぺストが続く。

そこに暦と忍とレティシアがいないことに反坂は気付く。

 

「吸血鬼組はどうした?」

 

『彼らは一纏めに呼ばない方がいいと思うよ?レティシアちゃんは同じ宿舎の筈だけど見当たらないね』

 

その間、ぺストはじっと雷雲に覆われた夜空だけを見つめていた。

 

「……ジン。すぐに此処から逃げた方がいいわ」

 

「え?」

 

「契約があるから死なれたら困るし、守ってあげるつもりはあるけど___流石の私も、アレを相手に守り抜く自信はないもの」

 

悠然と構えながらも、ぺストの額には冷や汗が浮かんでいる。

何事かと一同が天を仰ぎ見た刹那___

 

 

「GYEEEEEEEEEEEEEEYAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEYYAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaa!!」

 

 

_____球磨川たちは、神話の光景を見た。

天地を揺るがす巨龍の雄叫びが“アンダーウッド”に響き渡る。

人の言語野では理解できない絶叫はしかし、その絶対的な存在感を誇示している。

 

「おいおい、マジかよ……」

 

『ジン君……今のってまさか、』

 

「龍の純血……!!そんな、最強種が何で下層に……!?」

 

絞り出した言葉に万感の畏怖が籠る。

夜空を覆う分厚い雷雲から姿を見せたのは、全長を捉えられないほどの巨大な龍の姿。

 

『これは安心院さんが休眠している時に相手出来る規模じゃないね……』

 

「おい、ジン。他の奴らを探そうぜ。十六夜は大丈夫として他はマズそうじゃねぇか?」

 

「は、はい」

 

ジンは頷いて返す。

岩肌に辛うじて使えそうな階段を見つけた一同はすぐに走り出すがしかし、その袖をぺストが乱暴に引っ張って引き留めた。

 

「ジン、離れないでっ」

 

「ぺ、ぺスト?」

 

「___来るわッ!!」

 

ぺストの緊迫した声。

相次ぐように稲光を放つ夜空。

雷雲から姿を見せた巨龍は雄叫びを上げ、鱗を散弾のように“アンダーウッド”へ撒き散らした。

巨龍の鱗はやがて魔獣に変幻。

“アンダーウッド”を取り囲むように産み落とされた魔獣を相手に、球磨川は螺子を取り出し、反坂は一反木綿になり、その背に球磨川を乗せ、臨戦態勢に入る。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「南は襲撃され中で北と東にも魔王が出現……中々面白そうな展開になってきたな」

 

“百鬼夜行”の若頭、緋御 悟は離れていたところから“アンダーウッド”を眺めていた。

その後ろには二人の護衛が立っていた。

 

「若頭。見てるだけなら本拠に帰りませんか?危険ですよここ?」

 

「固苦しいから“若頭”と呼ぶなって言ってるだろ?それに下手に介入するより此方の方が状況見れるだろ?」

 

「そうですか」

 

あっさりと引き下がるがそれはこの返しが何時もの事だからである。

本格的に動く前に離れたとこから戦況を見る、それが悟のやり方だった。

実際はどう動けば自分の利益になるか考えている部分もあるが。

今、彼らの視線の先には巨人を相手に無双する十六夜とその後に続いて巨人を燃やす狐川がいた。

 

「球磨川と同じコミュニティのやつみたいだが一体どんなギフトがあればあんな風になるんだろうな?」

 

「それは私達が知ったことではないですよ」

 

「そういや鴉を使った情報収集ありがとうな」

 

「い、いえ別にそれが私の仕事ですから……」

 

顔をそらしながら言う。

そこに鴉が一匹やってくる。

そして悟の方を向く。

 

「どうやら“審判権限”が発動されたようです」

 

「そうか。一時休戦ってとこか」

 

「若頭、俺らはどうします?」

 

「だからその呼び方は……まぁいいや。次に戦闘が開始されたら俺らも参加する。裏で糸を引いてる奴らの好きにさせのは気に入らねぇからな」

 

そう言って羽織を纏い立ち上がると、突風が吹く。

戦場の中心を見ると巨龍が“動いた”ようだ。

 

「ったく動いただけでこれかよ」

 

視線の先では都市も戦場も、敵も味方も全てが天空へと巻き上げられていた。

 

「(親父は本当にこんなの相手にしてたってのか!?老人の話ほど信用にならないものはねぇな!!というかそれよりもだ!!)がしゃ!!濡鴉!!助けに行くぞ!!」

 

「了解、悟様」

「了解、若頭」

 

二人は同時に答え、姿を妖怪に変えて行く。

悟を若頭と呼んでいた男はがしゃどくろに。

鴉を使っていた女は鴉天狗の姿に。

その姿で悟の後に続く。




今回はここまでです。

ゲームは一時休戦。
しかし巨龍が動いただけで惨状。
というかんじです。


それでは質問、感想待っています。
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