問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!?   作:天崎

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絵に描いた外道

噴水広場のカフェテラスでコミュニティの説明を聞いていた安心院達はカップを片手に話を反復する。

 

「なるほど、大体理解したよ。つまり“魔王”というのはこの世界で特権階級を振り回す神etc.を指し、ジン君のコミュニティは彼らに潰されたということかな?」

 

「そうですレディ。神仏というのは古来、生意気な人間が大好きですから。愛しすぎた挙句に使い物にならなくなることはよくあることなんですよ」

 

ガルド=ガスパーはカフェテラスの椅子の上で大きく手を広げて皮肉そうに笑う。

 

「名も、旗印も、主力陣の全てを失い、残ったのは膨大な居住区画の土地だけ。もしもこの時に新しいコミュニティを結成していたなら、前コミュニティは有終の美を飾っていたでしょうがね。今や名誉も誇りも失墜した名も無きコミュニティの一つでしかありません」

 

「……」

 

「そもそも考えてもみてくださいよ。名乗ることを禁じられたコミュニティに、一体どんな活動ができます?商売ですか?主催者(ホスト)ですか?しかし名も無き組織など信用されません。ではギフトゲームの参加者ですか?ええ、それなら可能でしょう。では優秀なギフトを持つ人材が、名誉や誇りも失墜させたコミュニティに集まるでしょうか?」

 

「そうだね……誰も加入したいとは思わないだろうね」

 

「そう。彼は出来もしない夢を掲げて過去の栄華にすがる恥知らずな亡霊でしかないのですよ」

 

ピチピチのタキシードを破きそうな品の無い、豪快な笑顔でジンとコミュニティを笑う。

ジンは顔を真っ赤にして両手を膝の上で握りしめていた。

 

「もっと言えばですね。彼はコミュニティのリーダーとは名ばかりで殆どリーダーとしての活動はしていません。コミュニティの再建を掲げていますが、その実態は黒ウサギにコミュニティを支えてもらうだけの寄生虫」

 

「……っ」

 

「私は本当にふb

 

ガルドが言い切る前に目の前に数本の螺子が刺さる。

 

『そのへんにしておきなよ。僕の仲間を馬鹿にするのは許さないぜ?』

 

「話を聞いていたか?」

 

『聞いてたよ。でもね、僕はこういう時は一番弱い子の味方をすると決めているんだ』

 

「ですが彼は……」

 

『僕達に嘘をついてたことかい?そんなこと僕は気にしないよ』

 

「で、ではそちらのレディ達は?」

 

「僕は今のところ球磨川君から離れれないしね。それに球磨川君の意見には概ね賛成だよ」

 

「儂は主様次第じゃ」

 

「僕も賛成だ」

 

話を途中で切られ、気にもされなかったことに顔をひきつらせ、それでも取り繕う様に大きく咳払いして問う。

 

「理由を聞いても?」

 

「だから球磨川君が言っただろう?大方、話が続いていたら僕達を自分のコミュニティに誘うつもりだったのだろうけど、極小の一地域を支配してる程度の組織の末端に入るより無名の組織で“魔王”を倒す方が面白いしね」

 

「そうじゃな。儂がその程度のことに魅力を感じるとでも思ったのか?じゃとしたら身の程を知ることじゃな」

 

「お前みたいなエセ虎紳士に誘われるよりウサ耳少女に誘われた方が魅力的だしな」

 

勝手な物言いにガルド=ガスパーは怒りで体を震わせていた。

彼らに言い返す言葉を自称紳士として必死に選んでいるのだろう。

 

「お、お言葉ですがレデ……

 

「黙ってくれるかな」

 

ガチン!!とガルドは不自然な形で、勢いよく口を閉じて黙り込んだ。

安心院のスキルの一つ、人体を操るスキル【不自由な体操(マリオネットエクササイズ)】で強引に黙らせているのだ。

 

「君には少し聞きたいことがあるからね。君は僕の質問に答えるだけでいいよ」

 

ガルドは完全にパニックに陥っていた。

どういう手段かは分からないが、手足の自由が完全に奪われて抵抗することさえできなくなっているのだ。

その様子に驚いた猫耳の店員が急いで彼らに駆け寄る。

 

「ちょうどいいね。君も聞いているといいよ。面白いことが聞けるよ」

 

首を傾げる猫耳の店員を制して、安心院は言葉を続ける。

この時、安心院は既に、答えを知るスキル【模範記憶(マニュアルメモリ)】で答えは知っていた。

 

「まず、ジン君。コミュニティそのものをチップにゲームをすることは、そうそうあることかな?」

 

「や、やむを得ない状況なら稀に。しかし、これはコミュニティの存続を賭けたかなりのレアケースです」

 

聞いていた猫耳の店員も同意するように頷く。

安心院は不完全な状態だが使えるスキルは正常に機能していることを確かめている。

次にガルドに問う。

 

「それでは何で君は“魔王”でもないのにコミュニティを賭けるような大勝負を続けることができたのかな?答えてくれる?」

 

ガルド=ガスパーは悲鳴を上げそうな顔になるが、口は意に反して言葉を紡ぐ。

そして周りの人間もその異常の原因に気付き始める。

しかし球磨川禊だけは気にしない。

安心院の力を知っているからこそ、そして箱庭学園を知っているからこそこのくらいでは動じない。

 

「方法は様々だ。一番簡単なのは女子供を拐って脅迫すること。これに動じない相手は後回しにして、徐々に他のコミュニティを取り込んだ後、ゲームに乗らざるを得ない状況に圧迫していった」

 

「小物らしい手じゃな」

 

「そうだね。でもそんな方法で吸収した組織が従うかな?」

 

「各コミュニティから、数人ずつ子供を人質に取ってある」

 

暦や球磨川の片眉が動く。

彼らを取り巻く雰囲気は嫌悪感が滲み出ていた。

コミュニティには無関心な忍でさえ不快そうに眼を細める。

 

「子供達はどこに幽閉されているのかな?」

 

「もう殺した」

 

その場の空気が瞬時に凍りつく。

答えを知る安心院以外の全員が一瞬耳を疑って思考を停止させた。

 

「初めてガキ共を連れてきた日、泣き声が頭にきて思わず殺した。それ以降は自重しようと思ったがやっぱりイライラしt

 

「黙れよ」

 

ガルドの口は先程以上に勢いよく閉じられ、歯が砕けかけ、歯茎から血が溢れる。

 

「ここまで絵に描いたような外道はそう出会えないね」

 

『安心院さんが言うならそうなんだろうね。流石は箱庭の世界ってとこかなジン君?』

 

「彼のような悪党は箱庭でもそういません」

 

ジンは慌てて否定する。

 

「今の証言で箱庭の方がこいつを裁くことはできるのか?」

 

「厳しいです。吸収したコミュニティから人質をとったり、身内の仲間を殺すのは勿論違法ですが……裁かれるまでに彼が箱庭の外に出てしまえば、それまでです」

 

それはある意味で裁きといえなくもない。

リーダーであるガルドがコミュニティを去れば、烏合の衆でしかない“フォレス・ガロ”が瓦解するのは目に見えている。

しかし安心院はそれで納得しない。

 

「じゃあ仕方ないね」

 

安心院がスキルによる体の支配を解くと怒り狂ったガルドはカフェテラスのテーブルを勢いよく砕くと、

 

「小娘がァァァァ!!」

 

体を激変させた。

巨体を包むタキシードは後背筋で弾け飛び、体毛は変色して黒と黄色のストライプ模様が浮かび上がる。

 

「あれはワータイガーじゃな」

 

「ワータイガー?」

 

「人狼などに近い怪異じゃ。こちらではギフトと呼ぶかもしれんがの」

 

「テメェ、どういうつもりか知らねぇが……俺の上n

 

「黙りな。君の上に誰がいようと僕には関係無いよ」

 

勢いよく黙る。

今度は歯が折れるような音が聞こえる。

しかし今の怒りはそれだけでは止まらない。

ガルドは安心院に襲いかかろうとするがその前に球磨川に螺子伏せられる。

床に螺子で縫い付けられるがガルドは構わず服を引き千切って立ち上がろうとするが首元に妖刀【心渡】をつきつけられ動きを止める。

 

「女の子相手に何をするつもりだ?」

 

『君は全身を支配出来るはずだよね?』

 

「この方が力を示せるだろ?」

 

「さて、ジン君。君も彼の上に誰が居ようと関係ないだろう?だって君の最終目標は、コミュニティを潰した“打倒魔王”なのだから」

 

その言葉にジンは大きく息を呑む。

内心、恐怖に負けそうになったジンだが、自分達の目標を安心院に問われ我に返る。

 

「……はい。僕達の最終目標は、魔王を倒して僕らの誇りと仲間達を取り戻すこと。今さらそんな脅しには屈しません」

 

「そういうことだから。君には破滅しか待っていないんだよ」

 

「だけどそれでは満足しないだろう球磨川君?」

 

『そうだね。君のコミュニティが瓦解するくらいじゃ殺された子供達が報われない。___だから皆に提案があるんだ』

 

球磨川の言葉を聞いていたジンや店員達は首を傾げる。

 

『僕達と[ギフトゲーム]をしようか。君の“フォレス・ガロ”存続と“ノーネーム”の誇りと魂を賭けて、ね』




安心院さんのスキルについては作中に登場したのを使っています。

あれだけスキルを考える西尾先生はマジで半端ないです。

次は白夜叉登場あたりです。
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