問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!? 作:天崎
悟は自分の個室で目覚めていた。
「最後のあれは何だったんだ?」
呟いてみて酒が抜けているのに気付く。
球磨川あたりが消したのだろう。
枕元を見ると、起きたら本陣営に来るよう伝言が残してあった。
「あ~面倒だな。でも出ねぇとそれはそれで面倒だしな」
“百鬼夜行”の若頭として行かずに変な責任を押し付けられるわけにもいかない。
部屋を出ようと立ち上がると扉が開き槍を投げ付けられた。
槍は頬を掠め、悟の背後の壁に突き刺さる。
「なぁぁぁにをやってんですかこのバカ頭は!!」
部屋に入ってきたのは濡鴉だった。
その後ろではがしゃが冷や汗をかきながら立っていた。
悟が唖然としている間に濡鴉は槍を引き抜く。
「ったく、あんたは毎度毎度消えて……探すこちらの苦労も考えてくださいよ。あんたに何かあって困るのはこちら何ですよ?」
「分かった分かった悪かったから!!だからその槍を降ろしてくれ!!」
悟は慌てて制止の言葉を叫ぶ。
濡鴉は現在、ブチギレていた。
「大体あんたはフラフラフラフラと……総大将を継ぐ気なら少しはちゃんとしてくれませんかね?」
「親父なんてすぐに隠居させてやるさ」
それだけははっきりと言う。
しかし逆鱗に触れたらしく槍を突き付けられる。
「だったらこういう時に問題を起こさないでくれますか?」
「分かったから笑顔で槍を突き付けてくるな。眼が笑ってないんだよ。怖ぇよ」
悟は溜め息を吐きながら濡鴉の頭に手を乗せる。
「言いたいことを分かってるって心配かけて悪かったな」
「分かればいいんですよ。分かれば」
濡鴉は頬を少し赤くしながら顔を背ける。
がしゃは内心、「ちょろいな!?」と驚いていた。
悟は濡鴉の横を通り、部屋を出る。
そろそろ本陣営に行かないとマズイだろう。
「面倒だが仕方ねぇ。行くか」
本陣営へと向かうのだった。
◆◆◆◆◆
___“アンダーウッド”収穫祭本陣営。
騒動の後、十六夜、球磨川、安心院、黒ウサギ、そしてリーダーのジンは、揃って本陣営へと足を運んでいた。
暦と忍は別用があると不参加だ。
“二翼”からはコミュニティの責任者にして頭首であるグリフィスが来ている。
非常に険悪な雰囲気の両者。
テーブルを挟んで睨み合っているが、一触即発の空気は変わりない。
報告書を読み終わったサラは、深い溜息を吐いて交互に視線を向け、
「………話はよく分かった。この一件は両者不問とする。しかし次に問題を起こしたら強制退去だ。___以上」
「ふざけるなッ!!」
怒声と共にテーブルを激しく叩いたのはグリフィスだった。
その場にいた全員の視線が彼に集まる。
しかしそこで扉が開く。
「ふざけるなはこちらの台詞だろ球磨川?」
入ってきたのは悟だった。
悟の言葉により視線は球磨川に移る。
『そうだね。確かにそうだ。君達は非があるだろう?』
「私達に非だと?」
グリフィスが球磨川を睨む。
そこでサラが口を開く。
「確かに彼らに対する侮蔑は、行き過ぎた名誉毀損だ。お前にも非があることは確かだ」
鋭い指摘に、しかしグリフィスは食い下がる。
「しかしこの小僧共は問答無用で同士に危害を加えたのだぞ!!」
『それは違うよ』
青筋を立てて怒り狂うグリフィスに反論をする。
『僕達はただ無力化しただけで危害を加えたつもりは無いよ。螺子伏せただけだしね』
「しかしもう一人の方には危害を加えただろう!!」
「それは球磨川を襲おうとしたのを俺が気絶させただけだから正当防衛になると思うぞ?それにその場合で先に手を出したのはお前だ」
『悟君が酒瓶で殴ったことにより怪我をしたというなら僕が治してあげるしね』
「だ、だが私自身に……」
『子供相手に口舌で切りつけていた君が何を言ってるんだい?』
追い詰められていくグリフィス。
球磨川と悟が止めを刺そうとする前に一人の男___喧嘩を止めた張本人が止めにかかる。
「その辺にしておき。グリフィス君もそれ以上醜態を晒したくはないやろ?」
それにはグリフィスも黙るしかなかった。
言われた通りこれ以上醜態を晒すわけにも立場を悪くするわけにもいかなかったのである。
しかし邪魔をされた球磨川と悟は黙っていない。
「誰だお前?」
『君は何者だい?』
敵意をたっぷりに何者か問う二人。
サラが大慌てに間に割って入る。
「この御方は亡きドラコ=グライフの御友人で、連盟の御意見番でもある方なんだ!!決して怪しいものではない!!」
「……御意見番だと?そんな輩がいるとは初耳だが」
グリフィスの反応に更に不信感が募る。
蛟劉は軽薄な笑みのまま困ったように頭を掻き、袖から蒼海の色を持つギフトカードを取り出す。
蒼海のギフトカードには___“覆海大聖(海を覆いし者)”の文字が記されていた。
「ふ………“覆海大聖”蛟魔王だと!?」
「こ、蛟劉さんが、七大妖王の一人だと言うのですか!?」
グリフィスに続き、黒ウサギまでも声を荒げて驚く。
しかし球磨川と悟にとってそんなことはどうでもよかった。
「正直あんたが何者だろうとどうでもいいんだけどな」
『僕達は納得出来てないんだよ。そうだろ十六夜君?』
「そうだな。明らかにそこの馬肉達の方が非が大きいんだ。俺達が引いてやる理由なんて一つもない」
三人の言いように蛟劉は一考する。
「そうやな……君達を納得させる必要はあるな。とはいえ、今は収穫祭の真っただ中。他の参加者も楽しんどるし……どうやろ?此処は一つ、箱庭らしくギフトゲームで落とし前を付けるというのは?」
蛟劉がにこやかに提案する。
落とし所としては悪くはない。
三人もそれなりに納得はして頷き、グリフィスを睨む。
『二日後の“ヒッポカンプの騎手”が、収穫祭で一番大きなゲームだったよね?』
「そうだよ」
安心院が答える。
任しておいても大丈夫だろうと眺めるのに徹している。
『そのゲームで決着をつけよう。君が僕達“ノーネーム”のチームと悟君のチームに勝てたら今回の件は不問で済ます。君達が敗北したら壇上で僕達に土下座して、それ相応のものを渡して貰う。___異論はないよね?』
ほとんど断定で言う。
グリフィスに断る権利などないのだ。
「……ふん。いいだろう」
それだけ言い残してグリフィスは本陣営を後にするのだった。
◆◆◆◆◆
グリフィスが去った後で一同は蛟劉を囲んでいた。
悟は用が済んだと退室していた。
「驚いたぜ。強いとは思っていたが、まさか西遊記の蛟魔王とはな。アンタの記述はほとんど無いに等しいし、一度話を聞いてみたかった」
「僕も本物から聞くチャンスなんてそうないから聞いてみたいな」
『僕も興味はあるね』
「YES!!そういうことなら黒ウサギも聞いてみたいのですよ!!」
“ノーネーム”一同、一斉に瞳を輝かせる。
蛟劉は笑顔を引きつらせて後退った。
「あーいやいや、そんな。年寄りの昔話なんてそんな、」
「美味い肴はあるぞ」
「美味しい前菜もあるよ」
「美味しいお酒も……ありますけど、果汁ジュースで手を打って下さいな!!」
よし、準備完了。
そんな姿勢を見せる問題児たち。
どうやら逃げられそうもないことを悟り、蛟魔王は観念したように笑って席に着くのだった。
今回はグリフィス追い詰めでした。
安心院さんはこれに似たような展開を作るつもりでしたが勝手になったので手を出さずというかんじです。
それでは質問、感想待っています。