問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!?   作:天崎

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白夜叉突撃

日が暮れた頃に噴水広場で合流し、話を聞いた黒ウサギは案の定ウサ耳を逆立てて怒っていた。

突然の展開に嵐のような説教と質問が飛び交う。

ちなみにその原因とも言える安心院は黒ウサギが来るとさっさと教室に退避した。

忍も面倒故に影の中にいる。

 

「な、なんであの短時間に“フォレス・ガロ”のリーダーと接触してしかも喧嘩を売る状況になったのですか!?」「しかもゲームの日取りは明日!?」

以下略……安心院なじみは地の文に干渉スキル【神の視点(ゴッドアイ)】を使い説教を早々に終わらせる。

教室に退避しているとはいえそういう時間は節約したいのだ。

 

「『「ムシャクシャしてやった。今は反省しています」』」

 

「黙らっしゃい!!」

 

誰が言い出したのか、まるで口裏を合わせていたかのような言い訳に激怒する黒ウサギ。

その後、どうせ失う物はないゲームとなんやかんやで黒ウサギを納得させる。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

椅子から腰を上げた黒ウサギは、横に置いてあった水樹の苗を大事そうに抱き上げる。

コホンと咳払いをした黒ウサギは気を取り直して全員に切り出す。

 

「そろそろ行きましょうか。本当は皆さんを歓迎をする為に素敵なお店を予約して色々とセッティングしていたのですけれども……不慮の事故続きで、今日はお流れとなってしまいました。また後日、きちんと歓迎を」

 

『いいよ、無理しなくて。僕達のコミュニティって崖っぷちなんだろ?』

 

驚いた黒ウサギはすかさずジンを見る。

彼の申し訳なさそうな顔を見て、自分達の事情を知られたのだと悟る。

ウサ耳まで赤くした黒ウサギは恥ずかしそうに頭を下げた。

 

「も、申し訳ございません。皆さんを騙すのは気が引けたのですが……黒ウサギ達も必死だったのです」

 

『もういいよ。僕は弱い者の味方だからね。暦君はどうかな?』

 

黒ウサギは恐る恐る暦の顔を窺う。

 

「僕も怒ってはないよ。ただ……」

 

「ただ?」

 

「黒ウs

 

「吸血鬼パンチ!!」

 

何かを言う前に影から忍が飛び出して暦の急所に拳をめり込ます。

一瞬の沈黙の後に暦は崩れ落ちた。

 

「全く、お前様は何を言おうとしておるんじゃ」

 

そんなやり取りの内に黒ウサギはジンに水樹の苗を見せている。

 

「それで今日はコミュニティへ帰る?」

 

「あ、ジン坊っちゃんは先にお帰りください。ギフトゲームが明日なら“サウザンドアイズ”に皆さんのギフト鑑定をお願いしないと。この水樹のこともありますし」

 

「“サウザンドアイズ”?コミュニティの名前か?」

 

「YES。“サウザンドアイズ”は特殊な瞳のギフトを持つ者達の郡体コミュニティ。箱庭の東西南北・上層下層の全てに精通する超巨大商業コミュニティです。幸いこの近くに支店がありますし」

 

「ギフトの鑑定そいうのは?」

 

「勿論、ギフトの秘めた力や起源などを鑑定する事デス。自分の力を正しい形で把握した方が、引き出せる力はより大きくなります。皆さんも自分の力の出所は気になるでしょう?」

 

同意を求める黒ウサギに十六夜は複雑な表情で、球磨川と暦は微妙な表情で返す。

出所も何も暦は隣を歩く金髪の吸血鬼から、球磨川の片方のスキルは教室にいる彼女のスキルが元だ。

そして五人は“サウザンドアイズ”に向かう。

道中、十六夜、暦、忍、球磨川は興味深そうに街並みを眺めていた。

商店に向かうペリベッド通りは石造で整備をされ、脇を埋める街路樹は桃色の花を散らして新芽と青葉が生え始めている。

 

「桜の木か?」

 

「まだ冬じゃぞ」

 

「いや、初夏になったばかりのはずだぞ?」

 

『……今はまだ春だったと思うけど?』

 

ん?っと噛み合わない四人は顔を見合わせ首を傾げる。

黒ウサギが笑って説明した。

 

「皆さんはそれぞれ違う世界から召喚されているのデス。元いた時間軸以外にも歴史や文化、生体系など所々違う箇所があるはずですよ」

 

「へぇ?パラレルワールドってやつか?」

 

「近しいですね。正しくは立体交差並行世界論というものですけども……今からコレの説明を始めますと長くなりますので、またの機会ということに」

 

曖昧に濁して黒ウサギは振り返る。

どうやら店に着いたらしい。

商店の旗には、蒼い生地に互いに向かい合う二人の女神像が記されている。

あれが“サウザンドアイズ”の旗なのだろう。

日が暮れて看板を下げる割烹着の女性店員に、黒ウサギは滑り込みでストップを、

 

「まっ」

「待った無しです御客様。うちは時間外営業はやっていません」

 

……ストップをかけることも出来なかった。

黒ウサギは悔しそうに店員を睨み付ける。

流石は超大手の商業コミュニティ。

押し入る客の拒み方にも隙がない。

 

『商売っ気の無い店だね』

 

「ま、全くです!!閉店時間の五分前に客を締め出すなんて!!」

 

「文句があるならどうぞ他所へ。あなた方は今後一切の出入りを禁じます。出禁です」

 

「出禁!?これだけで出禁とか御客様舐めすぎでございますよ!?」

 

キャーキャー喚く黒ウサギに、店員は冷めたような眼と侮蔑を込めた声で対応する。

 

「なるほど、“箱庭の貴族”であるウサギの御客様を無下にするのは失礼ですね。中で入店許可を伺いますので、コミュニティの名前をよろしいでしょうか?」

 

「……う」

 

一転して言葉に詰まる黒ウサギ。

しかし十六夜は何の躊躇いもなく名乗る。

 

「俺達は“ノーネーム”ってコミュニティなんだが」

 

「ほほう。ではどこの“ノーネーム”様でしょう。よかったら旗印を確認させていただいてもよろしいでしょうか?」

 

ぐ、っと黙りこむ。

黒ウサギが言っていた“名”と“旗印”がないコミュニティのリスクとはまさにこういう状況のことだった。

 

(ま、まずいです。“サウザンドアイズ”の商店は“ノーネーム”御断りでした。このままだと本当に出禁にされるかも)

 

力のある商店だからこそ彼らは客を選ぶ。

信用できない客を扱うリスクを彼らは冒さない。

全員の視線が黒ウサギに集中する。

彼女は心の底から悔しそうな顔をして、小声で呟いた。

 

「その………あの……………私達に、旗はありま」

 

「いぃぃぃやほおぉぉぉぉぉぉ!!久しぶりだ黒ウサギイィィィィ!!」

 

黒ウサギは店内から爆走してくる着物風の服を着た真っ白い髪の少女に抱き(もしくはフライングボディーアタック)つかれ、少女と共にクルクルクルクルクルクと空中四回転半ひねりして街道の向こうにある浅い水路まで吹き飛んだ。

 

「きゃあーーーーー・・・・・・・・!!」

 

ボチャン。

そして遠くなる悲鳴。




白夜叉登場です。

次の話は変態大暴走です。
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