問題児と大嘘憑きと吸血鬼が異世界から来るそうですよ!? 作:天崎
___“ヒッポカンプの騎手”・参加者待機場。
快晴だった。
十六夜たち他“ノーネーム”のメンバーは、コミュニティごとに宛がわれた更衣室テントの前で、ジンから話を聞いていた。
内容は優勝者が、次期“階層支配者”を連盟から指名するというものだった。
十六夜たちは呆れたように溜め息を吐いた。
「………なるほど。サラも面白い面倒事を任せてくれたな」
「しかし球磨川君たちとあんなことがあってもまだなろうとするんだね」
「悪あがきもいいところじゃな」
『これは益々潰す理由が出来たね』
「……お前ら何を企んでる?」
明らかに何かする気満々の言い方に暦が顔をひきつらせる。
「しかしレンタルをした女性出場者は、本当に全員水着なんだな……白夜叉の発案にしては珍しくまともじゃねぇか」
十六夜はしみじみと語り、安心院と忍の水着姿を見る。
忍は既に高校生サイズである。
しかし二人は見られているのを全く気にしていないというかんじだった。
「お……お、お待たせしました」
ヒョコ、と。
テントの出口からウサ耳だけが出てくる。
黒ウサギが着替え終わったのだ。
安心院と忍は、じれったそうにウサ耳を掴み、
「「てい!!」」
「フギャア!?」
思いっきり引っ張った。
黒ウサギは堪らずテントの外まで引き摺り出される。
その引っ張った勢いで、黒ウサギの胸元が揺れた。
「……お?」
十六夜の瞳が、揺れる胸元に釘付けになる。
童顔とは相反する蠱惑的な肢体に、一同は息を呑んだ。
「『ウギャァ!?』」
黒ウサギに近付こうとした球磨川と暦が安心院と忍に蹴り飛ばされる。
近付いて何をするか大体想像出来たからだ。
そんな間に十六夜ド直球な言葉を放ったらしく黒ウサギのウサ耳が更に紅潮していた。
川辺で参加者を集める鐘が鳴り響いたのは、それから間もなくのことである。
◆◆◆◆◆
___“ヒッポカンプの騎手”・地下都市の観戦会場。
収穫祭三日目も、やはり宴は続いていた。
酔い潰れて寝て、二日酔いのまま起きて、酔い潰れるまで飲み続ける。
そんな不健全極まりない行為を続けられるのも、収穫祭の醍醐味だろう。
参加者以外でもこのレースは賭博として楽しまれている。
その賭博を楽しむのには反坂も含まれていた。
彼は酒瓶と焼鳥を持ち、観客席で馬券を握りしめていた。
「さて、本命は球磨川達として、確か悟も出るんだったな。そちらも可能性はあるか……」
反坂がそんなことをしている一方で、狐川と愛らしい水着姿の三人組の少女が飲み物や凍った果実を籠に入れて売り捌いていた。
大人の笑みの狐川と、
満面の笑みで二尾を振るリリ。
億劫そうな顔で売るぺスト。
麦わら帽子を深く被ったレティシアの四人だった。
「“斑梨”、“斑梨”のジュースは如何ですかー?氷菓子もありますよー?作りたてだからシャリシャリしていて、とても美味しいんですよー♪」
「………斑模様でも、黒死病にかかりませんよー」
「お前がそれを言うと洒落にならんから止めろ」
「“天狐”のお墨付きですよ~♪」
「それも詐欺に近いから止めろ」
麦わら帽子を深く被り、正体がばれないかと冷や汗を流しながら咎めるレティシア。
普段以上にやる気の出ないぺストは、ブツブツと文句を言いながら溜め息。
逆にやる気満々の狐川と唯一楽しそうなリリは、また一つ“斑梨”の氷菓子を捌いていた。
そんな中、舞台に司会の黒ウサギが現れ、騒がしくなっていた。
黒ウサギの登場と共に、天地を揺るがす大歓声が起きたようだ。
露になった黒ウサギの美しい肢体に、会場は熱気と雄叫びに包まれた。
「黒ウサギの水着姿万歳!!黒ウサギの水着姿万歳!!」
「白夜叉様万歳!!白夜叉様万歳!!白夜叉様万歳!!」
「此処に来てよかった……我等、生涯に一片の悔いなし!!」
ゴフッ、と吐血しながら倒れて行く有象無象。
どうやら興奮しすぎたらしい。
ぺストと狐川はその光景に生ゴミの山を見る様な冷徹な視線を送り、順番にトドメを刺していく。
レティシアはそっとリリの瞳を覆いながら、その場を離れるのだった。
◆◆◆◆◆
白夜叉の語りも進みゲーム開始も間近だった。
黒ウサギが舞台の真ん中にまで移動し、ルールの最終確認を行う。
「それでは黒ウサギより、“ヒッポカンプの騎手”の最終ルール確認を行います。
一、水中に落下は即失格!!但し、岸辺や陸に上がるのはOK!!
二、進路は大河だけを使用すること!!アラサノ樹海からは分岐路がありますので、各参加者が己の直感で進んでください。
三、折り返し地点の山頂に群生する“海樹”の果実を収穫して帰る事!!以上です!!」
黒ウサギが言い終わると、白夜叉は両手を開き準備を整え。
「それでは参加者たちよ。指定された物を手に入れ、誰よりも速く駆け抜けよ!!此処に“ヒッポカンプの騎手”の開催を宣言する!!」
◆◆◆◆◆
___開始宣言後、それこそフェイス・レスが動くより速く忍は背後の水面を思いっきり蹴った。
ドッパァァァァァン!!と激しい音共に水が吹き飛び、忍も馬ごと前方に跳んだ。
しかしそれだけでは終わらなかった。
なんと忍が水面を蹴った直後、スタート地点付近の水が凍結したのだ!!
レーススタートです!!
最後のあれは次回にて説明です。
それでは質問、感想待っています。