シユウになってしまった様だ。   作:浅漬け

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リザレクションを買ってみて嵌まったにわか勢。
シユウ師匠との戦いが楽しすぎて書いてみた。後悔はしていない。多分。

※6月17日に大幅改稿しました。



第1話 目覚めは世紀末ビルの中

 ゴッドイーターというゲームにおいてシユウ、というアラガミがいる。

 

 言い表すなら青い鳥人、だろうか?

 そのスラッとした立ち姿、繰り出す火球や舞う様な体術の格好良さ。そして何よりこちらを捕捉するとまるで「かかってこい」と言わんばかりにするあの手招き。何処を取ってもセンスの溢れている素晴らしいアラガミである。誰が言ったか人呼んで【師匠】。これには首がちぎれるまで頷いて同意したい。師匠ーーッ!

 

 さて、何故こんな事をいきなり話しているのかなのだが……これには深ーい訳があるのだ。うん本当深い。海よりもかもね。

  抉り取られたかの様にボコボコと穴が空いている夕焼けのビル郡の一角で、ガラスに映るその姿。そこには片方の翼手を顔に添え、まるで考え込んでいる様な仕草をしている鳥人がいた。

 そう、俺こと鳥田烈火は気が付くとアラガミ、シユウとなっていたのだ。大切な事なのでもう一度言おう。シユウだ。完璧にシユウである。

 

 あのままガラスに映る姿を見ながらぼけっと立つのもなんなので、取り敢えず手頃なビルの屋上へと避難。過去の記憶を、というか何か切っ掛けがあったかどうかを遡ってみることにした。

  ん、どうやって登ったのかって? そりゃあれだよ、翼を使えば造作も無いことだったよ……と言いたい所だが、どうやらシユウ師匠は滑空位しか出来ない様だ。めっちゃ翼もとい手を振ってみたけど駄目だった。まぁ全然ゲーム中でも飛んでなかったしね。ケモノ道通る時もパタパタ羽振りながら通ってたもんね。普通に頑張ってよじ登りました。アラガミボディってすげー。

 

 で、肝心のシユウ師匠になる前の記憶だが……薄ぼんやりとだけれども思い出した。うん、ゴッドイーターやってた。バーストでもレイジバーストでもなくリザレクションね。それで最後は確か師匠と刃を交えた、とは記憶している。多分難易度3の愚者の空母での一騎討ちだったと思う。ふと懐かしくなってやってみた程度だった筈なのだが。

 

 それで、そろそろ良い時間になったし寝るかとセーブして寝床に入って……気が付いたらシユウになっていた訳だ。うん、全然分からない。どういうことなの。

 この理解できない状況に、俺は無意識にダメージを受け怯んだ時の師匠の如く頭を翼手で押さえていた。四つ腕でも案外動かせるのものだが、やっぱ硬いのね……。あとどことなくひんやりするね。うん、特にどうでもいいね。

  だけど昔の人は言いました。こういう時訳の分からない事が起こった時こそ冷静にならなければならないと。落ち着け、coolになるんだ俺。ゲーム的には火属性だがな!

 

 まずは【どうやって人に戻るか】とか【何で俺こうなった】とか、今の自分の境遇について考えるのは後回しにしなければならないな。何故なら、それよりも先に考えなければならない切実な問題に気が付いたからだ。

  ふと視線をビルの外へと向けるとあら不思議。この屋上から見える景色はどう見ても、「贖罪の街」だ。ゲームで何回見たかも分からないこの町並み。人類の衰退とアラガミの凄まじさを如実に表しているマップである。

 ファンの一人としてはすげぇなー綺麗だなーと素直に思いたい所だが、それはつまりここはフェンリル極東支部周辺という訳で。

 

 つまり……分かるな?

 

 そう、アラガミ絶対ぶっ殺すマン共こと極東の神機使い(バケモノ)達の動向を探らなければならないという事だ。特に第一部隊の面々。

 

 奴等は本当にヤバい。ウロヴォロス単騎撃破できちゃう系男子のリンドウさんを始め、存在自体がバグとも揶揄される主人公、半アラガミとかいうチートのソーマ、極東一の狙撃手サクヤさん、えーと、アリサやコウタは……パッとは思い付かないけど普通に強いよね。接触禁忌種もなんのそのメンバーの一員だもんね。やべぇよやべぇよ……。

 

 今の俺はアラガミ、つまり人類に仇なす敵であり、サーチアンドデストロイされる運命にある。まだ扱い方も分からないこの体でもし彼等と出会いでもしたらどうなるか。勿論瞬殺されてしまうだろう。流石にそれは御免被る。今俺はシユウになったという事実に戸惑ってはいるが、同時にワクワクもしているのだから。

 

 何の因果か分からないが、好きなキャラに自分がなっている。いやキャラなのかなこれ。扱い的にはモブ? まぁいいや、ともかく師匠になれたのだ。

  もしかしたらこれは一夜の夢の様な物なのかもしれない。だが、折角機会が与えられたのだし、楽しまなければ損というものだろう。いや、寧ろ楽しまなければこの先もたないかも、と言うべきなのかもしれない。

 

 俺は立ち上がり、チラとビルの屋上から地上を見下ろした。そこにはオウガテイルが群を成し、コクーンメイデンを襲っているのが見える。

  アラガミの世界も弱肉強食、弱者は強者に文字通り貪り喰われる運命だ。プロローグのヴァジュラ? あー、彼多分オラクル細胞の調子が悪かったんだよきっと。不調は誰にでもあるからね、しょうがないね。

 

 俺もといシユウはそこそこ強い中型種とはいえ、アラガミ動物園とも揶揄されるこの極東では俺より強力な大型種がわんさか湧いてくる。かといって格下が襲いかかってこないという訳でもない。身体が闘争を求める訳じゃない者にとっては地獄だ。何かしら楽しみを無理矢理にでも見付けないと多分精神が擦り切れる。

 

 つまりだ、俺は殺伐としたこのGOD EATERの世界に人間ではなくシユウ師匠として来訪してしまった。アラガミに狙われ、神機使いにも狙われるであろうこれからの俺を考えると、開き直ってアラガミライフを満喫してやる位しかないではないか。うわー鬱だ。自分を客観視するんじゃなかった。真実は時に残酷だネー。

 

 まぁともかく、その為にも一番の不安要素、第一部隊の観察は欠かせない物となるだろう。次に周辺のアラガミの調査だろうか。強いやつとかいないといいんだけど。

  ま、何にせよこの体に慣れる所から始めなければお話にならない。

  明日から早速訓練を始めてみるかと思いつつ、俺はビル街に沈み行く極東の夕日を眺めるのだった。うむ、師匠の腕組みポーズが栄えるなぁ。シッショーーー!

 

  赤く溶ける街の中、一匹の鳥人間が空に向かって吠えた事は……多分俺以外誰も知ることはないだろう。

 




続けていければいいなぁ。

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