シユウになってしまった様だ。   作:浅漬け

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第9話 復活の青フード

 やぁどうも、鳥田だよ。

 

 前回エテ公(コンゴウ)の体当たりにやられた俺は、あの後節々が痛む体を休める為久々に例のビルの屋上でゆっくりとしていた。だが流石そこはアラガミボディ。暫く休んだりコンクリートを貪ったりしている内に幾分かマシになったので、それならばと俺は再び記憶している限りのヒミカさんが行くであろう所に出向き始めた。

 ストーカー? 違うよ、主人公(うちのこ)を見守っているだけだよ。

 

 まぁ前みたいにでしゃばる訳ではない。あくまでも俺はシユウ師匠。よっぽど彼女が危ない、という状況で無ければそうそう介入はしない。何処かから見守るだけである。眼福。

 

 そんな訳でなんやかんや影から見ている内に、ある1つの考えが俺の中に根付いた。この世界は……いや、彼女はいくらか俺の影響を受けているのではないかという事だ。具体的に言えばプレイ傾向とでも言うべきだろうか。

 

 まず、見ていて彼女は全然ガードをしない。敵の攻撃はかわすモノとでも思っているのか、全然装甲を使わない。攻撃をかわすのは当たり前じゃないかって言うかもしれないが、絶対に間に合わない距離からでもステップを踏もうとするんだぞ……。

 だが、これには心当たりがある。俺もゴッドイーターをプレイし始めた序盤の頃は全然ガードをしなかったのだ。当たらなければどうという事はないと思っていた節があったからな。リンドウさんの神機チェックで装甲だけ「命を預ける装甲なんだからもっと目を向けろよ……」的な事を言われたのは伊達じゃないのだ。

 

 そういう訳で、俺個人としてはヒミカさんに一刻も早い装甲の重要性の目覚めに至って頂きたいものである。

 まぁ流石に、この前グボロ・グボロの体当たりをモロに食らって海にどぼーんなんて事があったからそろそろ懲りたかな……とは思うけど。この時は急いで助けてしまったが、よりにもよってリンドウさんとサクヤさんとの討伐ミッションの時だったからなぁ……より一層アナグラに目を付けられてしまったに違いない。やべぇよやべぇよ……。

 

 だが、こうやって思い返してみると最近の俺のアラガミ生活は最初と比べてとても忙しい。たまに笑えない状況に陥ったりはしたが、まだエンジョイ出来ている方だろう。そうなんだろうが……時々、夜なんかに少し寂しいとは思う。

 

 考えてみれば、シユウ師匠になってしまってから早一ヶ月程経った。

 その間まともに誰かと話なんてしていないし、というか出来る訳もないし。人助けしてもこっちが殺られそうになるし……いや、廃寺の時は違うか。あれは癒された。シユウ冥利に尽きるよね。

 

 しっかし、あのアラガミの少女、シオもこんな感じだったのだろうか。

 だとしたら可哀想だ。自分以外の同族は喰うことしか考えてないし、独りぼっちであちこちをさ迷っていたんだから。でも彼女最終的に第1部隊に拾われるからな……そこは羨ましいぞ。俺も何かの間違いで拾われたりしないかな。ないか。ハハハ。

 

 はぁーあ、と端からはシユウが唸っている様にしか聞こえないであろうため息を吐きながら、俺はビルの屋上から景色を眺める。シユウ師匠に突然なってしまったあの日からの何となくな習慣である。

 

 相変わらず夕日は綺麗だ。アラガミなんて奴等にこの世界は喰われちゃったけど、こういう所は俺が元いた世界と変わらない。うんうん、いい眺めだ。ビルもいいが、特にあそこにいる白い少女が夕日に映える……えっ。

 

 あわてて目を凝らすと、とことこと贖罪の街を歩くぼろ切れを纏った白い少女が見えた。

 神機使いでもない普通の人間がこんな所を出歩くなんて有り得ない。という事はあの子は普通じゃない。

 

 白くて普通じゃない子……シオじゃん。あれ多分シオじゃん。いや、正確にはまだ名前がないからシオじゃないがシオじゃん。うん、自分で言ってて訳分からなくなってきたぞ。だがそんな事を堂々巡りで考えている場合じゃない。追いかけなければ。

 

 ビルから飛び出し、某○イアンマンの如く翼手の先から熱波を吹かして勢いを殺し着地。そのままシオが消えていった方へと歩いていく。この方角は教会だろうか。それならば話は早い。確か中にはケモノ道が通じていた筈だ。今の俺なら難なくそこから入れる。

 ぽっかりと壁に空いた穴に飛び乗り、教会の中へとショートカット。便利だなこの穴、ゲームじゃアラガミが逃げたり入ったりでうんざりしていたが。

 

 そんな事を考えていると、入り口の方からカツンカツンと足音が聞こえてきた。どうやら先回りは成功した様だ。頭脳派シユウとは俺の事だね、間違いない。

 

 さて、どんな風に話し掛けようか……って俺喋れないや、口はあるのに。今度練習しておくべきだろうか。まぁ取り敢えず親しげに接してみよう。そうだな、手でも振っとこう。

 俺は親しさアピールに翼手と普段腕組みを解かない前の手まで動員し、手を振り始めた。これで要らぬ警戒をされる事もない筈だ。

 

 足音はもうすぐそこまで来ている。

 相手が角を曲がれば、特異点と師匠の歴史的出会いが成されるという訳だ。さぁおいでシオちゃーん。ほら、もう人影が見え……

 

「……あ?」

 

 手を振る俺の前にやって来たのは、ガラの悪い青フード――ソーマ・シックザールだった。

 




ソーマが、あらわれた!
コマンド?


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