シユウになってしまった様だ。   作:浅漬け

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勢いだけで書いてるからこうなるんだよぉ!
最近GE2のオープニングテーマのCDを買ってみましたが、これは良いものだ……。レイジバースト買わなきゃ。


第4話 夕日に誓え

 やぁ。シユウになってしまった鳥田烈火だよ……って、今そんな事言ってる場合じゃなかった。

 

 主人公(うちのこ)……! まさかこんなタイミングで遭遇するとは……! いやこっちから一方的に見てるだけだけど。端から見たら青っぽい鳥人がこそこそ隠れながら上からジロジロ視線を送っているだけの怪しい光景だけど。

 

 だがこれで、俺はかなり有益な情報をゲットした。あれは恐らく序盤の序盤。リンドウさん初登場からのオウガテイル討伐のミッションだ。実質チュートリアルのあれ。つまりこの世界の時間軸はストーリーの最初らへん。

 

 それが何を意味するか、だって?

 真面目な事を言うなら、第一部隊はまだそんなに強くない(俺が倒されないとは言ってない)という事だったりするが……そんな事はどうでもいい。大事な事だから二回言おう。そんな事はどうでもいい。

 

 俺にとってこの時間軸が何を意味するか、そんな事は決まっている。主人公……「呉 ヒミカ」のゴッドイーターとしての物語を見れるかもしれないどころかあわよくば何かしらで関われるかもしれないという事だ。生で。そう、生でだ。

 

 考えてみてほしい。頑張って考え、共にアラガミとの死闘をくぐり抜け、ミッション後は大体ヒバリさんとドラマ見たりアニメ見たりして仲間との絆を深めてきた主人公。それが……彼女が、今俺の眼下にいるんだぞ? どういう訳か俺はシユウ師匠になっていて、会話どころか姿を見せただけで拳で語り合う感じになりそうではあるが。

 

 やめとけ、と言う人もいるかもしれない。だがそれでも俺は関わりたい。滅茶苦茶関わりたい。具体的に言うとニヤニヤと影から眺めたり時々ちょっかいかけながらうちの子に顔を覚えられたりしたい。

 この沸き上がる情熱(パトス)……! 何だろう、この殺伐とした世界がここ3分でいきなり色付いてきやがったぜ……。第二話で定めた自分ルールは何処に行ったんだ俺。

 

 あ、リンドウさんに肩ポンポンされてる。お疲れってか? お疲れってか? リンドウさんそこ代わってくださいお願いします。いや俺がそれやったら燃えちゃいそうだけど。その前に俺貫通弾で頭ぶち抜かれた上に切り刻まれて死ぬけど。

 

 あぁヒミカさん。俺と君は百時間余りを共に過ごしたのに……いやクッソ一方的だけど。向こうはこっちを認知すらしてねぇけど。いやこの際それを考えるのはやめとこう。何か素敵な回想に入れそうだし。

 えぇーっと。あ、今良い感じ。良い感じだわこれ。ナイスな感じで回想に入れそうだ。

 

 始まりはそう、あの日――

 

 

 

 ◆◆◆

 

「何かしっくりこないんだよなぁ」

 

 ある日の夜。俺は今日買ってきたばかりのソフト、「GOD EATER RESURRECTION」をプレイしながらそんな事をぼやいた。

 せこせこと取り敢えず作った男主人公で今の所ちびちびと序盤のチュートリアルだの何だのを進めているのだが、何かが足りない。何かが足りないと感じてしまうのだ。いや、上手く説明できないが。

 

 ゲームがつまらないという訳ではない。むしろ捕食システムなんて物は面白いと思うし、ゲームスピードも十分だ。個人的にこういうゲームでジャンプできる点はとても良いと思う。地味だけど。

 

 でも何だろう、この感じ。何かが足りないんだ。決定的な何かが。だが、一体俺は何を求めているんだ……?

 

 ゲームを始めて30分位経っただろうか。ふと俺は思い付いた。もしかして原因主人公じゃね? と。

 

 確信は無い。ふと心に浮かんできただけの他愛もない事だ。だがもしかしたら。もしかしたら、主人公を変える事でこのもやもやを解決できるのではないか? 幸い、今はまだまだ序盤だ。いくらでも取り返しはつくだろう。

 

「よし、女の子にしよう」

 

 俺こと鳥田烈火はデータをリセットした。必ず、このもやもやを取り除き澄んだ気持ちでゴッドイーターをプレイしなければならぬと決意した。

 

「あ、名前先に決めるんだったか。そうだなぁ……ヒミカ……呉ヒミカとかにしとこ」

 

 頭にふっと浮かんだ名前にしておいた。ここであまりうんうん悩んでもしょうがないからな。

 

「えぇっと髪型は……ロング一択だな。好きだし。自分の趣味を反映して何が悪いんだ、ってな」

 

 鳥田には可愛い女の子のキャラメイクなど分からぬ。鳥田は、ただのオタクっぽいサラリーマンである。ごく普通の生活を送り、たまに烈火って何だよと自分の名前に疑問を持って暮らしてきた。けれども自分の性癖に関しては、人一倍に正直であった。

 

「ジト目とかあるのか。良いねぇ。髪色は……紫っぽくしてみよ。おぉ……ええやん、バン○ムやりますねぇ」

 

 それなりに、いや結構好みな見た目に出来てきたぞ。何だろうこの感じ……胸のもやもやが晴れていく様な……やはりあれか。俺も結局は美少女に帰結してしまう運命にあったのか。

 

「さてお次は声……声か。ここが一番大事だよな」

 

 取り敢えず一番から順番にサンプルボイスを再生していく。違う、なんか違う、違う……。難しい物だな。

 今の所呉ヒミカ(仮)さんは無表情なお方となっておられる。多分○波系ヒロイン顔とでもいうやつだろう。だがそれがいい。完全に俺好みだからな。だからこそ合うボイスを何としても探さねば。

 

 だが意外にも終着点は早く訪れた。運命とはこういうのを言うのだろうか? ボイス9を再生したその時。俺の心は完全に澄み渡り、深い満足と共に決定ボタンを押した。最高か。貴方が神か……!

 

 こうして呉ヒミカさん(完全体)が誕生し、俺はヴァリアントサイズを振るう彼女と共に死闘をくぐり抜け、ゴッドイーターにのめり込んでいった。まぁ満足の行くキャラが出来たってのもあるが、シユウ師匠という素晴らしいアラガミと出会ったのものめり込んだ一因なんだがな。トリプル師匠ミッションとか何回やったことか。あ、今更言う必要も無いか。ハハハ。

 

 

 ◆◆◆

 

 そんな事を考えながら懐かしさで思わずニヤッとしていると(唐突だがシユウ師匠ほどニヤニヤ顔が似合うアラガミっていないと思うの)、いつの間にか三人はスタスタと歩いて帰り始めていた。

 

 夕陽に照らされる彼らの背中に、俺は決意を新たにした。

 

 俺は絶対にヒミカさんの物語を辿る。そしてちょっかいかけるぞ、と。えぇ、下心満載ですが何か?いやだって自分の好みを詰め込んだ子に興味が湧かない訳がないでしょ。もう存在が認知されようが練習台にされようが関係ない。俺は影から絶対ニヤニヤシユウスマイルしながら見守るんだ。

 

 その為には……先ずストーリー上立ち寄るであろうエリアの把握から始めなければならないな。

 となると、急いで探索しなければ色々と間に合わない訳だが……道中での他のアラガミだのアナグラの連中との戦闘は避けられないだろうな。今までは積極的に動かずこそこそ隠れていただけだったから、何かと遭遇するなんて自発的に動かなければなかっただけだ。しかも今警戒レベル上がってるし。

 

 だがそんな事はこの際問題ではない。アラガミがなんだ。神機使いがなんだ。俺はシユウだぞ。それに加え、ゲームプレイによるそれなり程度のアラガミ知識はある。これらを活かせば、恐らく十分に立ち回る事は可能だろう。多分。恐らく。めいびー。

 

 さてと、これからは忙しくなるぞ。私利私欲の為だが、修行の成果が試される時が来たと思うことにしよう。

 第一目標は「鎮魂の廃寺」への到達だ。ストーリー上での初の中型アラガミ、コンゴウとの戦いの舞台はそこだからな。これは絶対に見なければならない。

 

 じゃ、早速明日から廃寺へと向かうとしますか。

 コンクリート生活なんてくそ食らえ。俺はやるぞ。この師匠ボディーと共にな……! 何処にあるか知らないけど。引きこもってたから当然だけど。

 

 トホホ、先は長くなりそうだ……。

 

 

 

 ◆◆◆

 

「おぅ、どうした? なんか難しそうな顔してるぞ、ヒミカ」

 

「もし気になる事があるなら、遠慮しないで私かリンドウに言っていいのよ? 貴方は今回が初の実戦なのだし、何かしら引っかかる事があっても当然よ。何でも言ってご覧なさい?」

 

「そうだぞー、遠慮しないで言ってみろって」

 

「いえ、実は……さっきから、誰かから見られている様な気がするんです」

 

「見られてる? ……サクヤ、何か感じるか?」

 

「いいえ、私は特に……。同一区画に私達とは他に小隊がいる訳もないし」

 

「だよな。あ、もしかしたらアラガミだったり、なんて」

 

「あ、アラガミ……ですか」

 

「ハハッ、冗談冗談。もし仮にアラガミだったとしたら、今頃ここは素敵なパーティー会場だぞ? アイツら俺達を見付けた瞬間飛び入り参加間違い無しだからな」

 

「もう、リンドウったら……。でもやっぱり、気のせいじゃないかしら」

 

「そう、ですか……ですよね。やっぱり気のせいかもしれません」

 

「ま、気を付けるに越したことはないがな。……じゃ、早くアナグラに帰ろうぜ。ビールが俺を待っている!ってな」

 

「何よ、それ。さ、ヒミカちゃんも行きましょ」

 

「あ、了解です……」

 




次回あたりからシユウ成分を増やしていきたい。
いや、増やさねば(使命感)

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