シユウになってしまった様だ。   作:浅漬け

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お久しぶりです。
その割にはちょっと短めになってしまい申し訳ない……


第5話 鳥人フライ・ハイ

 やぁどうも。鳥田だよ。

 

 さて、前回言った通りにこれからはまず「鎮魂の廃寺」に向かっていくのだが……その為には解決すべき問題がある。ズバリ、移動方法だ。

 

 ゲームでのシユウ師匠を思い出してみてくれ。残念な事に、師匠は基本的に歩いて移動している。確かここ「贖罪の街」のモデルは横浜市、目的地の廃寺のモデルは鎌倉市だった筈だ。俺もそんな風にしているのではとてもコンゴウ戦を観戦する事は叶わない。絶対に終わっちゃうだろう。それは困る。

 

 さてどうしたものかとふと両腕の翼を見た時、俺はある事を思い付いた。

 

 もう一度ゲームでの師匠を思い出してみよう。師匠がこの翼を使うのは精々滑空体当たりを仕掛けてくる時だけである。これはとても勿体なく、そして悲しい事だ。

 まぁそれは置いておいて、さて師匠はどうやって滑空しているのか? 俺はある1つの結論を出した。あれ多分掌の穴から熱波を出して推進力を得てるんじゃないか、と。

 ソフトを持っている人は是非見てみて欲しい。俺はモーション的にそう思う。

 

 これは恐らく今直面している問題の答えになり得るのではないだろうか。幸い、熱波の出し方については問題は無い。把握している。訓練やってて良かった!

 

 そういう訳で、俺は何時ものビルの屋上から飛び立ってみる事にした。飛んでいる途中でガス欠なんて事にならない様に、念のため久々に格下狩りに精を出した。これでまた睨まれる事になるだろうが、まぁこれは先行投資というヤツだ。ともかく、エネルギー面は問題無いだろう。後は俺次第である。

 

 よーし、心の準備はできたぞ。落ちる事になっても多分大丈夫だ俺。俺はシユウだぞ、アラガミなんだ。滅茶苦茶痛いだろうが死にはしない……いやこんな事考えるんじゃ無かったチクショウ。余計に怖くなってきたぞ、アラガミだけど。

 

 ……えぇい、ままよ!

 

 俺は一思いに跳躍し、目一杯腕を広げて熱波を放出した。ドウッ、という音と共に俺の腕が推進力を得る。

 おぉ! 飛んでる、俺飛んでるよ! 腕の付け根がクソ痛いけど飛んでるよ!

 

 しかし思ったより結構速いな。体の調子は……まだまだいけそうな感じがする。腕痛いけど。

 よし、このまま暫く適当に飛んでみるとするか。シユウ師匠の遊覧飛行と洒落こもう。こんなのやってるの俺だけだろうけど。

 

 俺は取り敢えず、練習がてらこのまま真っ直ぐ飛んで行ってみる事にした。その場のテンションとも言う。フハハ、あいきゃんふらーい!

 

 

 ◆◆◆

 

 

 かれこれ一時間は飛んだだろうか? 見てくれ、景色はすっかり変わって湾岸地帯の様に……ってこの景色見覚えがあるぞ。まさか此処って……ん? 遠くの方にぼんやりと人影が見える様な。2、いや3……? 他にも何かが見えるな。あの灰色は何だ?

 

 何か……何か引っ掛かる。俺はこの光景を知っている。

 落ち着け俺。冷静に、今判明している情報から導きだすんだ。ストーリーの序盤、湾岸地帯、3人、灰色の何か……ウエダ……?

 

 あ、まさか。だとしたら。

 

 俺は掌に力を込める。より勢いの増した熱波に翼を任せ、速度を上げていく。ぐおぉ、セルフ結合崩壊して腕がもげそうだ……!

 だがここで諦める訳にはいかない。俺の見立て通りだとするなら人の命が懸かっているかもしれないし、何よりヒミカさんに関われるチャンスでもある。ごめんよエリック。下心マシマシだが許してくれ……!

 

 ぐんぐんと人影に近付くにつれ、ぼんやりとしていた像がはっきりとしていくのが分かる。そしてそれは青いフードを被った男と紫髪の少女、オウガテイルが上に覆い被さらんとしている赤っぽい男へと変わっていく。

 

「エリック! 上……シユウだと!?」

 

 青フードの男、ソーマ・シックザールがこちらを驚愕に染まった顔で見つめる。すまんなソーマくん。君の見せ場は頂いていくとしよう。

 

 ドガッ、と鈍い音が鳴る。俺の体とオウガテイルがぶつかった音だ。何か情けない悲鳴が下から聞こえた気がするが多分空耳だろう。

 その勢いのまま俺は壁にオウガテイルをぶつけ、たまらず昏倒する相手にすかさず火球を叩き込んだ。オウガテイルは爆発四散!

 

 ふぅ、いい仕事をした。さすがに最後には腕から何か変な音がしてもげるかと思ったが、何とか間に合った。

 いやー、人助けって気持ちい「ボサっとしてる暇はねぇぞ新入り、エリック!」……あん?

 

 何かとてつもなく嫌な予感がする。

 だが振り向かなければもっとヤバい気がする。主に俺の命が。

 

 俺が理性を振り絞って声がした後ろを恐る恐る振り向いてみると……そこには、こちらに神機を構え、ガチガチの戦闘体制を取っている3人の姿があった。

 

「相手は中型アラガミ、シユウだ。しかもコイツはお仲間がやらねぇ様な曲芸飛行までお披露目したときた。新入り、テメェがこれまで戦ってきた奴等とは格が違う。気を抜くなよ、その瞬間お陀仏だ……!」

 

 ちょっと待って。

 

 ちょっと待つんだソーマくぅん!!

 




ねんがんの、ひこうのうりょくを、てにいれたぞ!

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