え、しかもランキングに載ってる……?
皆様、評価して下さりありがとうございます!
……短めだけど許して!
やぁどうも、鳥田だよ。
寒い。まさかこれ程まで「鎮魂の廃寺」が寒いとは思わなかった。
いや、ゲームでも雪は降ってたさ。でもね、何だかんだ皆平気そうだったじゃん。挙げ句の果てには水着でミッションとかこなせるじゃん。だからそんなに大した事は無いんじゃない、とか思ってたらこれだよ。道理で寒冷地適応型の堕天種なんて物がここに現れる筈だ。
前回、何とか三人組を欺き華麗なる脱出に成功した俺はその後も諦めずに廃寺を探し続けた。
あれくらいでへこたれる俺ではない。必ずヒミカさんの物語を追ってやるとあの日の夕焼けに誓ったのだ。
で、懲りずに飛びながら探していた結果、遂に雪が降り積もる寺院、つまり目的地である「鎮魂の廃寺」を見つけたという訳だ。
あ、そうそう。あれだけ飛行時に痛んでいた腕は今や何ともなくなった。多分、俺の体を構成するオラクル細胞が環境に適応したというか進化したのだろう。
有難いのだが、俺はやはりアラガミなのだなぁ、と少し考えてしまったりした。いや、シユウ師匠になれて嬉しいんだけどね!
まぁそれは置いといて。
さて、実は無事目的地に辿り着いたのはいいのだが、着いたら着いたで早急に解決しなければならない問題があると思い至り、今俺は吹雪の中悩んでいるのだ。
それはズバリ、「勢いで来たはいいけどそもそもどうやってコンゴウ戦を観るの」という根本的な事。今更感溢れるがしょうがない。ここ最近の俺はノリで生きてきたんだもの。第二話の誓いなど無かった、イイね?
俺ことシユウは中型アラガミとはいえ、人間に比べれば結構大きい。そうだな、大体大人の二倍くらいの背丈と言えばイメージしやすいだろうか。それにデカい翼手が付いてると思ってくれればいい。格好いいだろう? 伊達に「銀翼の武人」とか呼ばれてないぜ……おっと、話が逸れてしまった。
さてここで問題だ。そんな図体のヤツが身を隠せて尚且つじっくり近くで戦いを見れる場所があるでしょーか。
うん、無いね。完全に無いわ。馬鹿な……。
ここは比較的建物が多いとはいえ、やはり俺が隠れるには少々小さすぎる。
俺がアバドンとかアモルとかそこら辺のサイズだったら余裕で何とかなるんだけどなぁ。くそぅ、今この時だけはこのデカさを呪うぞ師匠……それが格好いいんだけど。いやまぁボルグ・カムランとかグボロ・グボロとかじゃないだけまだやり様があるんだろうけどさ。
その後も色々と考えてみたり試してみたりしたのだが、結局俺は適当な建物の屋根の上に雪を被って寝そべる事にした。つまりはカモフラージュ大作戦だ。シンプルだが、なかなかいけそうではある。というかこれしか出来そうになかった。鳥田ブレインに期待してはいけないのだ。
という訳で、早速試してみる事にする。
俺は記憶を頼りに、ゲームでコンゴウが侵入してきたポイントの近くに陣取った。そしてそこら辺の雪を不自然でない程度に運んで、寝そべった俺に少しずつ自分で被せていく。これがなかなか辛いのなんの。体勢がキツいのもそうだが、凄く冷たい。もう本当に冷たい。だが耐えねばならぬ。これもヒミカさんを影から見守る為なのだ。
そんなこんなで、ヒイヒイ言いながらやっとこさ雪を全身に被り一応はカモフラージュを完了した。端から見れば少し多めに雪が積もっているかな、程度に見えていると信じたい。でないと俺が死ぬ。
いやしかし、本当に冷たい。このままじゃ俺が初のシユウ寒冷地適応墜天種になってしまうんじゃないだろうか。あれかな、アイスマ○オみたく火球の代わりに雪の固まりとか撃てる様になったりするのかな。
そんな下らない事を考えながら、そろそろ一回寒いし出ようとしたその時、トコトコと眼下をオウガテイルが歩いて来るのが見えた。
ホント何処にでもいるなぁコイツは、なんて思った次の瞬間。オウガテイルに横合いから飛んで来た光が当たり、爆ぜた。
え、ワッツ? ワッツハップン?
「命中、だな」
「うっし、カレルお疲れー」
目の前の光景に唖然としていると、そんな声が聞こえてきた。うわ、何か凄く聞き覚えがあるよこの声は。
「ったくよー、しかし何でこの俺様が新人の露払いをしなきゃなんねぇんだよ」
「同感だ。面倒臭い上に、大して儲かりもしないしな」
「おいおい、そんな事言うなよ二人共。後輩の面倒位、先輩が見てやろうぜ」
間違いない。
彼等はカレルにシュン、タツみん……いやタツミさんだ。ゲームではお世話になりましたってそうじゃない。極東の三バカトリオが何故ここにいるんだ。こんなのゲームではなかったぞ……。
いや待て、それを考えるのは後だ。今は見つからない様に息を殺すんだ。見つかったら殺られる……!
「そうは言ってもタツミさんよぉ、わざわざオウガテイルを三匹きっかりに間引きしとけってのはダルいぜ」
「不測の事態が起こらない様に、だろ? あの二人は今回が初の中型アラガミ戦だし、やっぱり慣れない内は不安要素は無い方が良いしさ」
「ハッ、もう少し割が良かったら喜んでやってやったさ」
「お前らなぁ……おっと、後10分位で新人達の入場だ。任務も果たしたし、俺達はそろそろ待機しに戻るとしようぜ」
「何も起きなきゃ良いんだがな。いざって時に助けに駆り出されるのは御免だ」
「おいカレル、そんな事言ったら絶対に何か起こるぜ……。フラグってヤツがあるだろうが」
そんな事を言いながら、俺の目の前を通り過ぎて三人は何処かへと向かっていった。意外とカモフラージュ凄いな。いや彼らが大して警戒して無かったのもあるかもしれないけど。
しっかし成る程成る程。ミッション前の露払いに、非常事態の為の待機か。考えてみれば納得だ。流石に極東でも最初から新人だけポン、という訳でもないらしい。
だがそんな事はどうでもよい。後10分で新人コンビが来るという有益な情報だけで俺は満足だ。わざわざクソ冷たい雪に埋まった甲斐が有ったというものだ。
そんなワクワク感を胸に抱きつつ待っていると、何やらにわかに周りが騒がしくなってきた。……どうやら、遂にエテ公のお出ましらしい。
予想通り、俗に「ケモノ道」と呼ばれるアラガミの通り道から赤い筋肉質な猿の様な姿をした動物が姿を現した。こいつがコンゴウだ。前に死体は見たことがあったっけか。いやはや、実にゲームそのままの姿だな……。
まぁいい、コイツが出てきたという事はヒミカさん達の到着はもう直ぐの筈だ。ここ数日のあれこれが実を結ぶと思うとオラワクワクすっぞ!
「あ! いたぞ、コンゴウだ!」
噂をすれば何とやら。
俺は雪が崩れない様に、こっそりと視線を声がした方に動かす。映るのはオレンジと紫の二人組。新人コンビのお出ましだ。しっかしコウタくん声でかいね。分かりやすくていいけど。
お、コンゴウもあっちに気付いた様だな。
只でさえコンゴウ神属はアラガミの中では聴力が良いんだ。大して耳が良い訳でもない俺にも聞こえる声で気付かない筈もないよね。
さてそんな間にも、三人……じゃない二人と一匹は互いに距離を詰めていく。
いよいよ、いよいよだ……!
「後方支援は任せてくれよ!」
「……了解、コウタも気を付けて!」
「グギャアアアアアッッ!!!」
今ここに、ヒミカさんとコンゴウの戦いの火蓋が切って落とされたのだ……!
コウタ? あー、死なない程度に頑張ってね!
後半に続く……!