シユウになってしまった様だ。   作:浅漬け

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UA15000突破並びにお気に入り600件越え、ありがとうございます。言葉じゃ表せない。

これまでの話をちょっと見やすくしてみました。
やっとこさ文字空け機能を理解したぜ……!

※8月26日、誤字を修正しました。
報告して下さってありがとうございます。


第8話 豪雪エマージェンシー

 やぁどうも、鳥田だよ。

 

 さて、何だかんだで新人コンビVSコンゴウのこの戦いが始まって暫く経つが、今の所はコンゴウが押されている形となっている。流石ヒミカさんやでぇ。

 

 最初の内こそ初めて見る攻撃パターン、つまり腕のブン回しだの竜巻だのに何回か当たってしまっていたが暫く経って慣れたのだろう。彼女は武器であるヴァリアントサイズの特徴たるリーチの長さを生かし、相手の射程外から攻撃。

 コウタもコウタで、時折飛んで来る竜巻を避けつつ、割と的確に射撃している。やっぱコイツもコイツで強いんだよな……でもお前あれだぞ、ヒミカさんを誤射ったら許さんからな。 フライング師匠アタックの刑に処すからな。

 

 まぁ何はともあれ、結論として危なげ無く終わってくれそうではある。やはり極東はレベルが違った。

 まぁいいのだ。俺の目的はひとまずストーリーを辿る事でもあるので、特にピンチになってくれないと面白くないという訳でもない。ないのだが……先程から見ていて何かが引っかかる。違和感と言うべきだろうか?

 

 いや、間違いなく彼女らが優勢であって、勝ちはもう見えているに違いないんだ。

 だがこう、何か引っかかるというか……何だろう、少し戦いを急ぎ過ぎている様な……。

 

「グギィッ!?」

 

「よっしゃあっ、トドメだ!」

 

「分かってる、このままッ……!」

 

 耳に飛び込む悲鳴と歓声。

 見ればコンゴウの胴体と尻尾は二人の攻撃によって結合崩壊を起こし、もう息も絶え絶えといった様子だ。

 ふむ……やはり気のせいなのだろうか。

 

 彼女が得物を構え、咬刃を横薙ぎに振るう。【ラウンドファング】と呼ばれるそれは敵の胴体を捉え、絶命させる……筈だった。

 

「……っ……ぐ……!?」

 

 刃が敵に届かんとしたそのまさにその時、突然彼女は膝を突いた。

 

 ……えっ。

 

「えっ……!?」

 

 ニヤリ、とコンゴウが嗤った気がした。

 ヤツは姿勢を変え、丸まる。コンゴウ神属の代名詞、お馴染みの体当たりだ。

 

 その射線上に位置する彼女は全く動く気配はない。

 顔は青ざめ、肩で息をしながら全身から力が抜けてしまったかの様な状態で(うずくま)ったままだ。

 

 おかしい、これはどういう事だ。

 どうして動かないんだヒミカさん。ヤツは君の方へ転がってきているんだぞ。あんな回転にその無防備な状態で巻き込まれたら、いくらゴッドイーターだからといったってタダでは済まない……まさか。

 

 決着を急ぐ様な攻め、青ざめた顔、荒い息……【スタミナ切れ】だと言うのか。

 違和感の正体はこれか。どうなってんだよチクショウ、これはゲームじゃないだろうがよ……!

 

「ヒミカ!? この、クソッ!!」

 

 コウタも同じ結論に思い至ったのだろう。

 必死の形相でコンゴウにバレットを撃つが、ヤツの接近は止まらない。

 

「……ひっ……」

 

 絞り出した様な小さな彼女の悲鳴が、やけにはっきりと聞こえた。

 

 翼手から熱波を放出する。被っていた雪が吹き飛び、体が前に進む感覚と共に轟音が轟く。

 気が付くと、俺は飛び出していた。

 

 間に合ってくれ、ただ思うのはそれだけだった。

 

 凄まじい加速で彼我の距離を詰めた俺は、まさにコンゴウが彼女の体に触れんとするその直前に一人と一匹の間に体を滑り込ませる事に成功し、こちらに驚きの表情を向ける彼女を風圧で吹き飛ばす。

 咄嗟だから手荒で申し訳ないが、まだマシと思って諦めてくれ……!

 

 ごしゃっ。

 コンゴウの体当たりを正面からモロに受け、そう形容するしか無さそうな洒落にならない音と共に衝撃が俺の体全体に伝わった。

 

「グ……グギォォォォォォ……ッ!!」

 

 今の俺がシユウであるからか、まるで獣の様な呻き声が口から漏れる。

 だが、ただ痛がっている訳にもいかない。

 辛うじて翼手で受け止める事に成功したその赤い体を、俺は真正面から気力を振り絞って睨み付ける。

 

「ギィ……ッ!?」

 

 突然の乱入に目を見開き、狼狽える様な声をだすコンゴウ。このクソエテ公が……何をしてくれようとしたんだテメェは。原型残して死ねると思うなよ。

 

 痛む体を動かし、俺はヤツの顔面に回転蹴りをお見舞いした。ベキャァ、と何か鳴ってはいけなさそうな音がしたが知るか。

 

「ギャアアアアアアアアッッッ!?!?」

 

 顔を押さえ、後退するコンゴウ。

 どうやらよっぽど効いた様だ。クリティカルヒットというヤツだろう。ざまぁないぜ、リザレクションで追加されたこの技はさぞ痛かろうなァ……!

 

 だが、ここで選手交代だ。

 チラリと視線を横に向けると、既に体勢を立て直したヒミカさんが見えた。早い、早いよ。だがそれがいい。

 

 俺はクイ、と悶えるコンゴウを指差す。【襲撃を受けるアナグラ】でのレンじゃないが、「トドメを」ってな。

 意図は伝わった様で戸惑いつつも頷いてくれ、今度こそ彼女の刃はコンゴウを貫き戦いは終わった。

 

 いやー、良かった良かった。死ぬ程痛いけど。

 

「よ、良かった……アンタもありがとうってそうじゃない!! ひ、ヒバリさぁん、何か変なのが出たァ!」

 

 あ、やべ。

 コウタくんが何かアナグラに連絡をしていらっしゃる。そうだった、今の俺はシユウだった。てかキミ今俺に喋りかけてなかったかい。

 

 ま、いいや。

 ちょっと無理をしてしまったし、もう引いて休むとしよう。通信を聞いたあの三人が来てまた囲まれる、なんて前回の二の舞となったらゴメンだ。

 

 取り敢えず、それじゃ、とどうすればいいのか分からなそうにこちらを見ているヒミカさんに手を振る。すると若干ぽかんとしつつも振り返してくれた。やったぜ。

 

 俺は熱波を吹かして後退しつつ、そのまま飛行形態へと移行して飛び上がる。脱出の黄金コンボとなりつつあるなこの動きは。

 

 あー体が痛いこと痛いこと。

 これは暫く休まなきゃなーと思いつつ、俺は廃寺から贖罪の街への帰路に着くのだった。

 

 

 ◆◆◆

 

 

「……ほほう。例のαと思われる個体が出た、と」

 

《はい。先程、廃寺に向かったヒミカさんとコウタさんから妙なシユウが突然現れたと報告がありました。飛行した様なので、間違いないかと》

 

「潜伏していたという訳か。やはり興味深い個体だね。で、αはどんな行動を……?」

 

《ええっと、にわかには信じ難いのですが……コウタさんによればその、「突然動けなくなったヒミカさんを庇い攻撃を受けたと思ったら手を振って何処かに飛んでいった」との事です……》

 

「……えぇ……」

 

《動けなくなったというのは恐らく、クールタイム無しのオラクル活性による反動かと……》

 

「あぁ、俗に言う【スタミナ切れ】か……いや、ありがとう。しかし、こちらの理解を越えているというか何というか……今後もそれらしいシユウが出没したと聞いたら知らせてくれると助かるよ」

 

《はい、では……》

 

「うん、宜しくね」

 

 

 

「……はぁ。人の様な振る舞いに、人間を庇う、か。あのシユウは例の特異点と関係があるのか、それとも……」

 

 




やったね師匠!見せ場が出来たよ!(多分)
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