ハリーside
今日は、ホグワーツ二年生になってからの始めての土曜日だ。今日は、今週の溜まりにたまった疲れをとるために、ゆっくり寝ようと計画していたのだが、それはさっそく崩されてしまった。グリフィンドールのクィディッチチームのキャプテンであるウッドに、朝靄がかかっている時間に叩き起こされたのだ。今週は、散々な一週間だった。スネイプに、ロックハートに、コリンに、マルフォイと今年のホグワーツには頭のいたくなる問題が多いようだ。極めつけは、昨日ハリエットがスネイプの授業で大量得点を獲得した、という信じられない事件が発生した事だろう。その事は、ホグワーツ中のニュースになった。その事件の真相をハリエットや、ハリエットの彼氏であるジニーに聞いても、良く分からないって言われた。スネイプは、僕たちの父さんを嫌っていて、それで去年は散々嫌がらせを受けた。今年も、ロンと一緒にホグワーツに、ウィーズリーおじさんの車に乗って飛んでやって来た時には、スネイプは僕を退学させれる口実が出来たと大喜びしていたのだが。スネイプがもし何かハリエットにするようなことがあれば、僕は全力でハリエットを守ろう。ハリエットは僕にとって、最後のたった一人の家族なのだから。
今僕は更衣室でウッドから、彼が一夏かけて編み出したという、新戦略についての大演説を聞いている。ウッド以外は全員眠そうに…いや訂正、眠りながら座ってウッドの言葉を聞いている(?)。ウッドの大演説が始まってからもうすぐで一時間たとうとしている頃、ようやくウッドが締めに入った。
「諸君、わかったか?質問は?」
「オリバー、質問。いままで言ったこと、どうして昨日のうちに、俺たちが起きているうちに言ってくれなかったんだ?」
急に目が覚めたジョージからの質問にウッド以外の全員が一斉に頷いて、ウッドを見た。
「ジョージ、それはお前達の妹のせいだぞ。」
その場にいる全員がウッドの言葉の意味を察した。
「お前達の妹のハリエットが、あのスネイプから魔法薬学の授業中に150点も取ったせいで、昨日のホグワーツの午後はカオスなことになっていただろ。それに、お前達もそれに便乗してお祭り騒ぎを起こしていただろ。」
「いや、オリバーあれは仕方ないだろ。」
「あぁ、我らの妹が天才なのは知っていたが、スネイプを攻略してしまうとは、流石に俺らも想定してなかったからな。」
「とにかく、そういうわけで昨日伝えられなかったんだ。 それでは、行こうか。新しい戦術を試しに行くんだ!」
ウッドが先頭をきってピッチに出ると、競技場の芝の上にはまだ名残の霧が漂っていた。スタンドの方を見ると、ロンとハーマイオニーが朝食で出ていたのだろうフレンチトーストを食べていた。コリンは相変わらずカメラを構えて僕を撮っていた。だが、そんな三人よりもはるかに強烈で甘い空気を漂わせている一組のカップルがいた。言うまでもなく、ハリエットとジニーだ。二人は互いに引っ付きあって座っていて、互いに朝食のフレンチトーストを食べさせあっていた。
あの二人が付き合っていることをまだ知らなかったアンジェリーナが、フレッドに質問をした。
「ねぇ、フレッド。あの二人ってあなた達の弟と妹よね?」
「あぁ、そうだぜ。」
「あの二人って双子の兄妹だったわよね?」
「そうだけど、どうかしたか?」
「あの二人の関係って兄妹としての関係、というより恋愛関係にあったりするの?」
「その通りだ」
「それっていいの?」
「アンジェリーナ、我らウィーズリー家にはとある家訓がある。相棒よ、それを知らぬ者達にこの際それを教えて差し上げようではないか。」
「あぁ、いいぜ。」
フレッド、ジョージの二人は一瞬互いの顔を見合わすと、『ウィーズリー家の家訓』なるものを暗唱しだした。
「ウィーズリー家の家訓その一」
「ハリエットと、ジニーの二人は稀代の天才である。二人の思考を理解しようとするべからず。それが出来なければ我ら凡人の頭はすぐにパンクするであろう。」
「ウィーズリー家の家訓その二」
「ハリエットの魔法力の規格外に驚くべからず。全てはハリエットだから出来る、で片付けるべきであろう。」
「ウィーズリー家の家訓その三」
「ハリエットの周りで、ネズミのような動作をするべからず。そんなことをすれば、哀れな年老いたスキャバーズのように、悲惨な目にあうであろう。」
ハリエット、スキャバーズに何をしたの!?
「あっ、ハリーお兄ちゃんだ!おはよう!」
フレッド、ジョージが『ウィーズリー家の家訓』を暗唱し終わったとき、ハリエットが僕たちに気付いたようで挨拶をしてきた。
「ハリエット、おはよう!」
「ねぇ、いままでウッドの演説を聞いてたの?」
「あぁ、うん、そうだね。」
「じゃあ今から練習するの?」
「そうみたいだよ。」
「朝ごはんとか食べたの?」
「ううん。ウッドに、朝早く起こされてから今までずっとウッドの演説を聞いてたから。」
「他の皆も?」
ハリエットの問いかけに僕以外の全員が頷いた。ハリエットは、皆が頷くのを認めると、杖を取りだして軽く一振りした。すると、ポンッという音と共に、僕たち皆の目の前にカボチャジュースとフレンチトーストが乗った皿が現れた。
「ハリエット、ありがとう」
「うん!ハリーお兄ちゃんも頑張ってね!」
ハリエットは、そう言うと笑顔で手を振ってきた。
何、この生き物!可愛すぎるんですけど!
「フレッド、ジョージ、あなたたちの言ってた格言ってほんとのようね」
「だから言ったろ、アンジェリーナ。ハリエットは天才だってね。」
「しかも、カボチャジュースはキンキンに冷やしてくれてるっていうオマケ付きだからな。」
「おやおや、グリフィンドールチームは競技場で朝食パーティーをしてるのかな?」
その声が聴こえてきた方を振り向くと、そこにはマーカス・フリントの率いるスリザリンチームが、ユニフォームに着替え、箒を手に持ち歩いてピッチにやって来ていた。全員ケタケタと笑っている。
「フリント!今日、ここは僕が押さえていたはずだ!なぜ、お前達が来ているんだ!」
ウッドがカンカンに怒りだした。
「あぁ、スネイプ教授から特別に許可をもらってね。」
フリントはそう言うと、一枚の紙を見せてきた。
「新しいシーカーの教育のため、私、セブルス・スネイプはスリザリンチームに、クィディッチ競技場の使用を許可します。 新しいシーカーとは誰なんだ?」
ウッドが紙を読み上げ質問をすると、巨大な人影(スリザリンチームはどうも体格重視の選抜を行っているらしい)から、小柄な人物が現れた。
「ルシウス・マルフォイの息子じゃないか!」
フレッドが嫌悪感をむき出しにした。
「ドラコの父親を持ち出すとは、偶然の一致だな。その方がスリザリンチームにくださった、ありがたい贈り物を見せてやろうじゃないか。」
フリントがそう言うと、スリザリンチームは一斉に箒を付き出した。その箒の柄には、美しい金文字で『ニンバス2001』と銘が書かれていた。
「先月出たばかりの、最新型だ。旧型の2000シリーズに対しては相当水をあけるはずだ。旧型のクリーンスイープに対しては圧勝だな。」
フリントの言葉に、グリフィンドールチームは誰も反応出来なかった。マルフォイは得意げに笑っている。
気づくと、ロンとハーマイオニーがスタンドから降りてやって来ていた。ハリエットとジニーも… 二人はまだ自分達の世界にいるようだ。
「どうしたんだい?それに、どうしてあいつがここにいるんだい?」
ロンは、ドラコを見ながらそう言った。
「ウィーズリー、僕はスリザリンチームの新しいシーカーだ。僕の父上からのチーム全員に買ってあげた箒を、皆で称賛していたところなんだよ。」
ロンは、最新型の箒を認めると、口をあんぐりと開けた。スリザリンチームは大爆笑しだした。
「マルフォイいいこと?少なくとも、グリフィンドールチームは、誰一人としてお金で選ばれてないわ。こっちは純粋に才能で選手になったのよ。」
ハーマイオニーがきっぱりと言い切った。するとマルフォイの顔が歪んだ。そして、ハーマイオニーに言い返した。それが、天才の怒りを買うことに気がつかないまま。
「誰もお前の意見なんか求めてない。生まれ損ないの『穢れた血』め!」
マルフォイの言葉に、グリフィンドールチームは全員怒り狂い、スリザリンチームは全員笑い出した。ロンが杖を抜こうとしていたが、それよりも先に僕たちの後ろから赤い閃光が放たれ、マルフォイは7メートル近くも吹き飛ばされていた。マルフォイが吹き飛ばされると、そこにいた全員がその呪文の発生源を見るために振り返った。皆の視線の先には、先程まで強烈な甘い空気を発していた、ハリエットとジニーが杖を取りだし、走りながらこっちにやって来ていた。二人もとてつもなく、マルフォイ達に対して怒っているようだ。
「ねぇ、ジニー。皆をスタンドの方まで案内してあげて。」
ハリエットとジニーが僕たちがいるところへやって来るなり、ハリエットはスリザリンチームに杖を向けながら、ジニーにそう言った。スリザリンチームも杖をハリエットに向けているが、ハリエットは全くそれを気にしていないようだ。それどころか、ハリエットの全身からものすごい圧力を感じる。正直、前年度に相対したヴォルデモートよりも強い圧をハリエットから感じる。
「ハリーはハーマイオニーを、フレッドはロンを、ジョージは僕を乗せて、すぐにスタンドの方へ飛んで!他の皆も早く!」
ジニーは、ハリエットが何をしようとしているのか、感じ取ったのか少し焦りながら、皆に指示を出した。
僕は、マルフォイの言葉で泣きそうなハーマイオニーを乗せてスタンドに降り立つと、すぐに振り返ってハリエットの方を見た。そこには、杖から白や、赤、それに青の光を発するスニッチ大の球状の何かを、ものすごい早さで次々と加速度的に発生させているハリエットがいた。その光は螺旋を描きながら空へ昇っていき、クィディッチ競技場の空の上を覆っていった。おそらく、すでに数百個の光の玉がハリエットによって作り出されて、空に浮かんでいた。
「おい、ジニー。ハリエットは何をしようとしているんだ?」
「あの呪文は確か、ハリエットが雨の日とかに星空が見れないからって言って、室内で天体観測を出来るようにって作った呪文じゃなかったか?」
フレッド、ジョージがジニーにハリエットが何をしようとしているのか質問をした。それにしても、雨の日に天体観測をしたい、という理由で新しい呪文を作り出すハリエットってスゴすぎる。
「うん、あれ自体は『スターダスト!星くずを作れ!』っていうハリエットが編み出した『天体観測呪文』なんだけど、ハリエットはあの呪文を使ってからその後、広範囲に、そして多数の相手に対して、一斉に攻撃できる呪文も編み出したんだ。」
ハリエットside
私とジニーが、スリザリンチームの乱入に気付き、急いでスタンドからピッチに降りていく途中に、マルフォイがハーマイオニーに向けて『穢れた血』と吐き捨てるように言っていた。ハーマイオニーをずっと苦しめた、あの言葉を使ったマルフォイに対して、まず私は走りながら『武装解除呪文』を使って吹き飛ばした。これからハーマイオニーにや他の「マグル生まれ」の人達に対し、その言葉を使ったらどうなるかを分からせるために、ハーマイオニーを笑っていたスリザリンチームのメンバーを少し派手な方法で痛め付けよう。その方が、純潔主義の他のスリザリンの生徒たちにも広まるだろうから、効果は高いだろう。ジニーに他の皆の避難をお願いして、私はあの呪文を使う準備をした。
「スターダスト!星くずを作れ!」
私が呪文を唱えると、私に杖を向けているスリザリンチームのメンバーは、自分達に呪文が飛んでこないのに対して、不審そうな顔をして私を見てきた。そんな顔が出来るのも今の内だけどね。
「ハリエットさん。スネイプ教授のお気に入りの君には呪いをかけたくないんだ。」
マーカス・フリントが私に杖を向けながら、話かけてきた。
「残念だけど、私は自分の友達をバカにされて黙ってるような事は出来ないの。それに、そう言うことは杖を下ろしてから言うべきことですよ。」
そろそろ十分な量の星を作れただろう。
「今回は少しだけ手加減をしてあげるけど、これから先、ハーマイオニーや他の『マグル生まれ』の人たちにその言葉を発したら、容赦しないから。」
私は、スリザリンチームにそう言うと、自分自身に「追い払い呪文」を使って、一瞬でジニー達がいるスタンドに戻った。
そして…
「メテオライト!隕石となれ!」
私が呪文を唱えて杖を降り下ろすと、先ほど作った私の魔力で出来た星が強く輝きだし、一斉にスリザリンチームがいるクディッチ競技場に降り注いだ。スリザリンチームのメンバー達は一瞬遅れて気付いたようだったが、すでに遅かったようだった。彼らの悲鳴や、星が地面に落ちた時の轟音が辺りに響き渡った。
「ジニー、これがさっき言っていた、ハリエットが編み出した攻撃呪文なの?」
ハリーお兄ちゃんが、ジニーに質問をしていた。おそらく、『天体観測呪文』の説明はもうしているのだろう。あれは、ウィーズリー家の人達は全員知っているしね。
「うん。『天体観測呪文』で作り出した、魔力で出来た星を隕石として相手に落としていく『隕石生成呪文』だよ。一個一個の星の威力は、杖を降り下ろす速度で変わるんだ。」
「今回は?」
「たぶん、ブラッジャーと同じ威力だと思う。」
「マジかよ」
「同情はしないけどな」
「マーリンのひげ」
「これが天災の力」
フレッド、ジョージ、ロン、ハリーお兄ちゃんの四人が四人ともジニーのハリーお兄ちゃんへの返事を聞いて、顔をひきつらせていた。私も、この呪文を浴びせられたくはないけどね。
コリンはというと、クィディッチ競技場に降り注いでいた、星をカメラに収め、目を輝かせていた。
星がすべて降り注ぎおわって、クィディッチ競技場の中を見ると、スリザリンチームは全員痛みに身を抱え、泣きながら転がっており、ピッチにもクレーターが何十個も出来ていた。ちょっとやり過ぎたかも… でも、まぁ、これ位すればしばらくの間は、『穢れた血』など言えないだろう。私は、杖を一振りしてピッチに出来たクレーターを片付けた。
「なぁ、こいつらどうするんだ?」
「どうみても、しばらくの間立ち上がれないぞ。」
フレッド、ジョージからもっともな質問がきた。確かに放置するのもあれだしなぁ。
「スネイプ先生に回収してもらえば?」
私たちが考えているとジニーが提案してきた。スネイプ先生の名前が出たとたん、私を全員で見つめるの止めてよ。はぁ。仕方ないか、私がやったことだし…
「エクスペクト・パトローナム!守護霊よ来たれ!」
私が唱えると、銀色の牝鹿が杖から飛び出し校舎に向かっていった。
「ハリエット、今の守護霊の呪文なの!?」
ハーマイオニーどこまで勤勉なの!?
「うん!スネイプ先生にスリザリンチームを回収に来てくださいって伝言を持たせたよ。」
「あなた、一体どこまで魔法を使えるわけ!?」
ハーマイオニーが困惑しながら訊ねてきた。まぁ、あの言葉から離れられた、と考えればまだ良いのかもね。
「ジョージ、どうやら俺たちはハーマイオニーにも、一度『ウィーズリー家の家訓』を教える必要がありそうだな。」
「全くだ」
天体観測呪文
「スターダスト!星くずを作れ!」
ハリエットさんが雨の日に天体観測をしたいという理由で編み出した呪文。白、赤、青の色をしたスニッチ大の大きさで、術者の魔力で出来た星を作り出す。夜や暗いところで使うと、キレイな星を見ることができる。
隕石生成呪文
「メテオライト!隕石となれ!」
ハリエットさんが編み出した超高火力の攻撃呪文。天体観測呪文によって作り出した星を広範囲に隕石として落とす呪文。死喰い人との人数差をカバーするために編み出された呪文。杖を降り下ろす速度で威力が変わる。