素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。
降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。
閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。
繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる刻を破却する
告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ
誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者
されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者
汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ
「やった・・・成功した・・・」
間桐臓硯の蟲をその肉体に寄生させ、なんとか英霊を召喚できるようになった間桐雁夜は、バーサーカーを召喚するためにその肉体をさらに酷使したため、地べたに這いつくばりながら召喚されたバーサーカーを見た。
そこには瘦せぎすの男がいた、その男は黒い法衣に身を包み身長は雁夜よりもやや高く、深緑の前髪が目にかかる程度の長さに整えられている。頬はこけており、骨に最低限の肉と皮を張りつけて人型の体裁を取っている、と表現するのが適当に思えるほど、生気が感じられない肉体の持ち主だ。
ただし、その狂気的にぎらぎらと輝く双眸がなければの話ではあるが。
男は身を傾けて、這いつくばるようにして倒れている雁夜をジッと観察している。曲げた腰の上でさらに首を九十度傾け、ぎょろついた目で無遠慮に眺める姿は常軌を逸した奇体さを露わにしており、事実その男の言動は常人と一線を画していた。
「なぁるぅほぉどぉ……こぉれはこれは、興味深いデスね」
ひとしきり、舐めるように雁夜を上から下まで眺めた男は、納得したように頷いた。
男は考え込むように右手で自分の左手を握りしめ――手首に生じている傷口に親指をねじ込み、血が滴るそれを意に介さず、自らの血肉を穿り返す。
「あぁなぁた・・・・・・まさか、ワタシのマスターではありませんデスよね?」
姿勢を曲げたまま振り返り、男は奇妙な体勢のまま雁夜を振り仰ぐ。問いを発したその口に、傷口を抉った血に染まる親指を差し込み、鉄の味をその舌でねぶりながら恍惚に、澱んだ光を放つ瞳を震わせて。
「お前はいったいなんなんだ?」
雁夜がそう問いかけるのを聞いて、男は音を立てて唇から指を抜くと、
「あぁ、そうデスか。これはこれは、失礼をしておりました。ワタシとしたことが、まだご挨拶をしていないではないデスか」
雁夜の問いに応じるように、男は色素の薄い唇をそっと横に裂き、禍々しく嗤うと、ゆっくり丁寧に腰を折り曲げ、
「ワタシは魔女教、大罪司教――」
腰を折った姿勢のまま、器用に首をもたげて真っ直ぐ雁夜を見つめ、
「『怠惰』担当、ペテルギウス・ロマネコンティ……デス!」
誤字脱字は教えてくれると助かります