「……ここが、デュエルアカデミア。」
――話は今日の朝まで遡る。俺がこの世界に来てから一週間が経とうとしていた。今朝起きてみると、泊まっていた部屋のドアに手紙が挟まっていた。その手紙には1枚のカードと手紙。手紙には
"ハロー、ナイストゥミートゥー。この手紙を取ったラッキーボーイにこのデュエルアカデミア・アークティック校への招待状『運命の箱舟』のカードをプレゼントしマース。デハ、我が校への来校をお待ちしてマス"
〜絵本の世界の黒ウサギよりラッキーボーイに〜
そして先程の場面に戻る。ここデュエルアカデミア・アークティック校は一言で言えば……アメリカンチックな雰囲気の学校だ(実際外国なわけだが)。校門の両サイドには何処かで見たことがある鳥とウサギのキャラクターの銅像が設置してあり、くぐったらくぐったで敷地内もカートゥーンのキャラクターだらけ。ちょうど目の前にも人くらいの大きさの着ぐるみが……
「ハハハ、ようこそアカデミアアークティック校へ! ボクは案内役のダーク・ラビット。ラッキーボーイ、キミのことはオーナーから聞いているよ。」
「着ぐるみが案内役ねぇ、アンタも大変だよな」
「? 中の人なんていないよ?」
「え、でも着ぐる」
「僕はダーク・ラビット。着ぐるみなんかじゃないし中には夢しか詰まってない」
「……案内を頼む」
敷地内でぽつ、ぽつ、と生徒らしき少年少女とすれ違う。あまり生徒がいないようだが、一体……?
「気になる? そりゃあ当然、今日は年に二回の入試試験の日。殆どの生徒は"観戦"に行ってるわけさ!」
「"観戦"? 何をだ?」
「ハハハハ! 何をって? それはね……デュエルだよ」
――
「トドメだ、逆鱗適用状態の『カイザー・グライダー』で守備表示の『ゴブリン突撃部隊』に攻撃、ゴールデンバーストっ!」
「トラップカード『ディメンション・ウォール』ダメージは全てプレイヤーに跳ね返る」
「へ? う、うわあああぁァァァ」
デュエル専用のスタジアム内。ここでまた一人、受験生がデュエル実技試験の壁に弾き返される。ここアークティック校はグローバル性とエンターテイメント性を重視した校風だが、同時に実技試験の難易度の高さも有名なのだ。今日もまた、嵐の前の雨雲のようにどんよりと落ちた受験生達の姿がそこらかしこに見れる。
「改めて、ようこそアークティック校へ。ラッキーボーイは筆記試験と面接は通ったことになっているから、後はこの実技試験だけ。それじゃあ、頑張ってね!」
隣を見るともうダーク・ラビットは居なかった。消えるように早く移動したのだろうか、着ぐるみの割に素早いやつだな、と思いながら、同時に不安が襲ってきた。さっきあのウサギに渡された紙によると自分の前はあと七人のようだ。さっきの調子だともう殆ど時間はないと思うが……スタジアム試験会場前のベンチで座りながら調整と確認をしていると一人の受験生が近づいてきた。
「やぁ、Youも受験生かナ?」
少し色素が抜け、透明に近い金髪。髪は長く背中に半分ほどかかっている。瞳は青く、ハイライトも相まって水晶のように輝いて見える。
「あ、あぁ……変なウサギに案内してもらってな。アンタもか?」
「Yesッ! 私、ジル。ジル・アレクティア。よろしくお願いしマス!」
「「次、受験番号109番、110番! 」」
「もう俺達の番か」
「アークティックの実技試験は毎年超難関ですカラネ。では……えっと」
そう言えば名前を言ってなかった
「佐潟、佐潟輝栄。」
「佐潟……お互い、悔いの無いよう頑張りまショー!」
試験会場はちょうどサッカーのスタジアムほどあり、コートを4つに分けて実技試験を行っている。俺達がコートに入る間にも一人の受験生が頭を沈ませながら試験会場を後にしていた。俺の相手は……ピエロ?
「受験番号110番、ワタクシが試験を担当するポルネカ・スレッザーク。以後、お見知りおきを……と言っても、もう会うことも出来なくなるかもしれませんがね。アッハッハッハ!」
身長は190cmを超える大男ポルネカが顔を右手で抑え、笑いを堪えるふりをしながら、くすくすと笑う。ふと、思い出したかのように
「あ、そうでした! ルールはエキスパートルール、ライフは4000。手札はお互いに五枚から。ワタクシのライフを0に出来れば試験合格と判断します。では、試験開始!」
「「デュエル!!」」
ポルネカLP4000 手札5
佐潟LP4000 手札5
「先攻はワタクシ、ポルネカ・スレッザークから行かせていただきます。手札から永続魔法カード『魔神王の契約書』を発動。このカードが存在する限り、ワタクシは悪魔族融合モンスターを融合魔法無しで融合召喚できるのです。『ドリーム・ピエロ』と『マーダー・サーカス』を融合! その姿で敵を翻弄しなさい、『デビル・ボックス』を攻撃表示で融合召喚!」
ポルネカ教諭の前に箱が出現し、蓋の中から異形のピエロモンスターが飛び出した。
デビル・ボックス
攻撃力2300 守備力2000
「いきなり融合召喚か……(大口叩いてた割に効果も持たない中級モンスターに手札を三枚も、どう考えても割に合わないよな……)」
「ワタクシはカードを2枚セットし、ターンを華麗に終了。次は110番、アナタの番ですよ」
場:デビル・ボックス攻撃表示
伏:2
LP4000 手札0
スタジアム観客席は一般生徒でほぼ埋め尽くされていた。制服の青色がスタジアムを円形に青く染める。その中に受験番号110、佐潟輝栄に視線を向ける男女が一組。
「ポルネカ教諭が使ってるあのモンスター、試験用デッキには入って無かったはず。もしかして……」
物静かな雰囲気、大人びているが、同時に少し幼さも残す茶髪の女生徒が呟く。
「あれはポルネカ教諭の"暗黒の道化"デッキ。教諭、どうやら本気のようだ。」
続いて隣に座っている男生徒が答える。見た目は彼女より一年年上でクールな印象だ。
「そんな、不公平だわ」
「だが、これはラッキーだぞ。ポルネカ教諭があのデッキを使うということは、"伝説のレアカード"が拝めるかもしれん。」
「?」
「俺のターンだ、ドロー。『ブルブレーダー』を攻撃表示で召喚! さらにフィールド魔法『岩投げエリア』を発動!」
ブルブレーダー
攻撃力1600 守備力1200
岩投げエリア
フィールドカード
自分のモンスターが戦闘で破壊される場合、代わりにデッキから岩石を墓地へ送ることができる。
次いで佐潟の場にも、今度は闘牛の牛を思わせる、体格のいい戦士モンスターが召喚された。息を荒く鳴らし、後方に控えた投石部隊と共に、デビル・ボックスを威嚇している。
「ほう、攻撃力1600の弱小モンスターですか。そんなモンスターを出したところで、ワタクシのデビルボックスは倒せませんよ」
「そんなのはやってみなけりゃ分からないぜ! バトルだ、『ブルブレーダー』で『デビルボックス』に攻撃、一閃、ブルスラッシュ! この瞬間ブルブレーダーのモンスター効果が発動する。この戦闘でのダメージを0にし、戦闘終了後、戦闘を行った相手モンスターを破壊する!」
ブルブレーダーが箱に隠れたデビルボックスの本体目掛けて突進。その大剣を真上から叩きつけた。
が、箱には中身がなく、ブルブレーダーも混乱する。
「ワタクシはその攻撃宣言時にリバースカード『重力解除』そして『融合解除』をチェーン発動していたのですよ。融合解除により、デビル・ボックスは『ドリーム・ピエロ』と『マーダー・サーカス』に分裂、さらに重力解除によってフィールドのモンスター全ては重力を失い、表示形式が反対となる。つまりブルブレーダーは守備表示になり攻撃は無効になったのです。さらに……これは種も仕掛けでもございませんよ。」
突然ブルブレーダーが地面から"生えた"幾つもの剣に串刺しにされ、鏡が割れたような音とともに消滅した。
「『ドリーム・ピエロ』は表示形式が守備表示になった時、相手モンスター1体を破壊できるのです。残念でしたねぇ、アナタは手札を2枚も無駄にしてしまった。」
「……カードを2枚セット、ターン終了だ。」
場:なし
伏:2枚
LP4000 手札2
「圧倒的なプレイング、モンスターの差……このまま華麗に叩き潰してあげる! ドロー! 契約書の効果により、ライフを1000生贄にする。」
LP4000→3000
「そして手札より魔法カード『カップ・オブ・エース』。その効果により、当然2枚ドロー! そして『魔神王の契約書』を再び発動、今度は手札の『DDネクロ・スライム』と『DDD覇龍王ペンドラゴン』を融合! 総てを統べる悪魔の王、骸纏いてその本能を開放せよ! 融合召喚! 全てを覆せ、『DDD尅竜王ベオウルフ』!!」
攻撃力3000 守備力2500
「墓地の『ネクロ・スライム』の効果、墓地のネクロスライム自身と『ペンドラゴン』を再び融合するわ。融合召喚! 二体目の『尅竜王ベオウルフ』!! さらに『マーダー・サーカス』のみ攻撃表示に変更。……バトルよ」
攻撃力3000
攻撃力3000
攻撃力1350
「圧倒的じゃない……あんなの、勝てるわけ無い。」
「攻撃力3000のモンスターを1ターンで2体も召喚したか。110番の『岩投げエリア』もモンスターがいなければ無意味だ。決まったな」
「『DDD尅竜王ベオウルフ』でダイレクトアタック。悲鳴を切り裂く二牙(ハートレス・ジ・エンドファング)!!」
攻撃力3000。圧倒的な攻撃力が、丸腰の佐潟に襲いかかる。が、目の前に現れた漆黒の"ヒーロー"によってベオウルフの攻撃は阻まれる。
「『ヒーロー見参』……俺の手札二枚をランダムに選択し、それがモンスターならバトルゾーンに出せる。」
「びっくりしたじゃないの、何かと思ったら最後に悪足掻きの博打? 笑わせないで、右を選ぶわ」
「ありがとよ……! 右はモンスターカード『代打バッター』だ!」
代打バッター
バトルゾーンを離れた時、手札の昆虫を呼び出す
守備力1200 攻撃力1000
「ちっ、そんな弱小モンスター、ワタクシの『ベオウルフ』の前では壁にすらならない! ベオウルフは守備モンスターを攻撃した場合も相手に戦闘ダメージを与える。」
「くぁっ……」
LP4000→2200
もう一体のベオウルフが代打バッターにとどめを刺さんと、両手の爪を展開する。その爪を振りかざそうとした瞬間、ベオウルフの両手を少し錆が付いた鋼鉄の鎖が拘束した。
「これは……!?」
「『岩投げエリア』……その効果により、『タックルセイダー』を墓地へ送っていた。二体目のベオウルフは裏側守備表示となる」
「ちぃっ、小癪なぁ〜!! でももう投げる岩もないじゃない。そんな虫っころ、捻り潰してあげるわ! 『マーダー・サーカス』、叩き潰してやりなさいッ!」
ピエロモンスターが狂ったように代打バッターに杖を叩きつける。最期に代打バッターが掠れた声のような、弱々しい鳴き声を発し、消滅した。
「アンタならそうくるって信じてたよ。代打バッターはバトルゾーンを離れた時、手札の昆虫一体を呼び寄せる」
ヴァリュアブル・アーマー
攻撃力2350
「キィー! また虫!? 叩き潰しても叩き潰しても雑草みたいに湧き出る。その癖弱っちい……ワタクシは虫は大ッ嫌いなのよッ! ターンエンド!」
場:DDD尅竜王ベオウルフ攻撃表示
裏側守備表示モンスター(ベオウルフ)
ドリーム・ピエロ守備表示
マーダー・サーカス攻撃表示
伏:なし、魔神王の契約書
LP3000 手札0
「……正直、俺はアンタを三流以下の口だけ決闘者だと思っていた。」
「はぁ? 急に何――」
「確かにアンタは強い。融合もコンボも見事だ。だが、俺の大切な"仲間"を侮辱したこと、それだけは許せない。宣言する、このターンでアンタのモンスター全て含めてアンタのライフ全部叩き潰す……!!『ヴァリュアブル・アーマー』を再度召喚(デュアル)! そして『不屈の闘志』」
攻撃力2350→3550
「こ、攻撃力が……」
「『不屈の闘志』は自分モンスター1体を選択し、このターンの間その攻撃力に相手の最も攻撃力が低いモンスターの攻撃力を加える。さらに再度召喚した『ヴァリュアブル・アーマー』は相手モンスター全てに攻撃できる」
「え、えぇ〜と、それってつまり……」
「バトルだ、『ドリーム・ピエロ』を攻撃」
ドリーム・ピエロ破壊
3550→3700
「続いて『マーダー・サーカス』」
「ひ、ひぃっ!」
LP3000→650
マーダー・サーカス破壊
「裏側守備表示の『ベアウルフ』」
DDD尅竜王ベオウルフが引き裂かれ、残るは最初に召喚した『ベオウルフ』のみになる
攻撃力は……5350。
「あ、ありえない! ワタクシが、こんなドロップアウトボーイに――」
「『ヴァリュアブル・アーマー』で『DDD尅竜王ベオウルフ』を攻撃。神速の辻斬り!!」
「あり、えない……」
LP0ピー
いつの間にか、スタジアム内の殆ど人間が二人の決闘を見守っていた。スタジアムの静寂を破り、ピーという、高い電子音が響き渡る。次の瞬間、スタジアムは――歓声に包まれた。
「……。」
先程の男生徒が立ち上がり、席を後にする。
「あ、先輩待ってください!」
後ろを茶髪の女生徒が追いかける。
この試験――いや、決闘のスクープは瞬く間に校内に広がった。その記事を見ている生徒の中に、憤っている一人の生徒がいた。
「ありえない……ポルネカ教諭が負けるはずがない!」
校内新聞を廊下の地面に叩きつけ、その男はその場を後にした。
続く
【今回のエースカードッ!!】
DDD尅竜王ベオウルフ
レベル8 闇属性 悪魔族融合モンスター
DDDモンスター×DDモンスター
場のDD全てに貫通効果を与えるポルネカ教諭のエースモンスターだ! さらに自分のスタンバイフェイズにフィールドの魔法罠カード全てを破壊する超強力な効果も持っているぞ!!
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第二話でオリジナルキャラクターのジルとポルネカ教諭が登場。さらに二人の謎の男女、そして次回因縁つけてデュエルしそうなキャラが一人……新キャララッシュでした。では次回、【地獄からの決闘者(ししゃ)ー炸裂! ミレニアム・スコーピオン(仮)】お楽しみに。