予告通り、サイバードラゴン使いの高森崔との新入生歓迎デュエルイベント、前編です。
追記:デュエルレイアウトを少し変えました。
アークティック校・ブルー学生寮。
ここデュエルアカデミア、アークティック校の生徒はエスカレータ方式で進級していくエリートクラスの「ブラック」と、一般生徒の「ブルー」の二種類に分けられている。
俺、佐潟輝栄も一般生徒側、9割を占めるブルー生徒の1年……な筈なのだが。
今俺はとある理由でデッキをオーバーホール、もとい調整を行っていた。その理由というのが、毎年恒例らしい新入生歓迎の公開処刑イベントだ。
このイベントでは3年生主席の生徒が新入生から一人生徒を指名し、デュエルスタジアム(試験を行ったあの場所だ)にて1VS1のデュエルを行うのだ。
3年生の圧倒的実力を新入生達の記憶に刻み込み、上下関係をハッキリさせる。最初から見世物なのが確定している悪趣味なイベントだ。
で、指名されたからにはいっそ主席様に勝ってやろうと、同居人? と二人で調整に励んでいた。
「バウ。よく分かんないからこのカードを3枚入れるガウ!」
隣で調整を手伝う"人語を喋る二足歩行のライオン"が、そう言って『スーパー・ウォー・ライオン』のカードをデカイ右腕に器用に乗せ、手渡そうとする。
コイツはアークティック七不思議の一つ、真夜中の森のライオン人間。もといデュエル・モンスターズができるライオン決闘者だ。
昨夜ジルと一緒にコイツと遭遇した俺は、デュエルで勝利。以来勝手にシショウ! などと部屋まで着いてくるようになり、今に至る。
「お前……確かに地属性だけど、儀式魔法はどうすんだよ!」
「シショウならきっと何とかできるガウ」
本心から言ってるのだから尚更質が悪い。気持ちは汲み取ろうと1枚だけ受け取り、適当な儀式魔法と生贄要員を組み込む。
「『ミレニアム・スコーピオン』……個人的にはすきだけれど」
あるブルー生徒に因縁をつけられ、デュエルした際に活躍したカードなのだが、その癖の強さと……何より、ソリッドビジョンによる描写が軒並みグロテスクなのが問題のカードだ。
破壊したモンスターを取り込み、キマイラ方式に顔が生えていく様は下手なホラー映画より怖い。
『八ツ手サソリ』『ヴァリュアブル・アーマー』『代打バッター』『棘の妖精』『寄生虫パラノイド』『究極変異態・インセクト女王』『タックルセイダー』、そして『ブルブレーダー』……どれも外せないカードだ。
俺が目指すのは"あのプロ"。その為に色々なコンボ・カードを試したが、一つ気になっていることがあった。
(『岩投げエリア』。俺は、このカードを本当に使いこなせているのか?)
"あのプロ"とのデュエルで俺は、『岩投げエリア』のコンボを決めたにも関わらず、そこから逆転に繋げることが出来なかった。むしろ、相手のコンボの為に誘導され利用されてしまったのだ。
永続効果で戦闘破壊という事象を置き換え、数百種類の岩石族カードの中から任意の1枚を墓地へ送る、チェーンによる妨害を許さない鉄壁のカード。だが、それは使いこなせればの話だ。
確かに『岩投げエリア』と『タックルセイダー』のコンボは強力だ。しかし、それだけで勝てるほどデュエルは甘くない。いずれ対策もされるだろう。
「『岩投げエリア』の可能性……」
「シショウがよく逆転の為に使うカードガウね!」
逆転?
そうだ。そうだ、気付いた。今まで俺がやっていたのは"受け"の岩投げ。相手の行動を受け流し、逆転へと繋ぐ柔道の投げ技のような戦術だ。
だが、それは同時に相手に依存してしまうリスクも抱えている。
相手が攻撃しなかったら? 相手が直接攻撃を戦術とする決闘者だったら? この場合、今までの"受け"の岩投げは機能しないだろう。
こちらから攻める岩投げ。その為のカードはあるじゃないか!!
「岩石族の構成を変える。ライオン、手伝ってくれ」
「!! 喜んで、ガウッ!」
覚悟しろよ、皇帝・崔(さい)……!
―
新入生歓迎・デュエルイベント
スタジアムには試験の時以上に人が狭し狭しとひしめき、今年の公開処刑を見物しに集まっていた。
司会席まで敷設され、放送部らしき生徒がそれぞれ司会と解説席に座っている。
『さぁて始まりました! 本校恒例、新入生歓迎イベント!! このイベントでは本来手の届かない存在である主席生徒と、新入生代表がデュエルを行いまァす! 司会は二年新海萌音(しんかい・もえの)と』
『解説の二年、米田貞太(よねだ・ていた)でお送りします』
スタジアムの角に二つ設置された巨大モニターに佐潟輝栄と高森崔の大まかなデッキ情報とLP・手札・盤面状況(今は空白)が表示される。
「サガラ、頑張るデースッ!」
観戦席の中段辺りから、同じ新入生のジル・アレクティアが応援の声援を送ってくれている。中段でも席をとるのが大変だったろうに。
正面に立つ三年主席、高森崔に視線を向ける。キリッと横に貫き伸びた目と、頬に付いた切り傷、若年ながら歴戦の侍を思わせる風貌は、それだけで相手に強者と認識させるのに十分だ。
通称、アカデミアの皇帝。
「アンタが、皇帝・崔か」
せいぜい挑発するように話しかけるが、動揺や変化などは一切見せない。逆にこちらを居抜き殺すような視線で、こちらを見据えてくる。
崔がディスクから自身のデッキを取り出し、こちらに手渡す。
「貴様の実力、本当かまぐれか試させてもらう」
「へっ、痛い目見ないといいけどな」
舐められるな。この会場の全員に、俺が噛ませや見世物ではなく、
(一人の"決闘者"だと認識させろ!)
お互いにデッキをシャッフルしあい、ディスクのオートシャッフルを挟んだ後、離れ、向かい合うようにディスクを構える。
その数秒間のみ、スタジアムが静かになる。
「さて。両名準備が整ったようです。それでは……デュエル開始だあああああぁぁぁぁぁぁ!!」
「「デュエル!」」
LP4000
先攻】崔
後攻】佐潟
「俺のターン、『サイバー・ドラゴン・コア』召喚」
何節にも分かれたビーズ状の機械の蛇が召喚され、こちらを威嚇するようにとぐろを巻き、首を伸ばした。
☆2 攻撃力400
「『サイバー・ドラゴン・コア』の効果発動。デッキから『サイバー・ロード・フュージョン』を手札に加える。カードを1枚伏せ、ターンエンド』
場】サイバー・ドラゴン・コア【攻
伏】1枚
手札】4 LP4000
「俺のターン、ドロー。『代打バッター』を攻撃表示で召喚。そのままコアを攻撃!」
☆4 攻撃力1000
迎え撃とうと構えるコアを強靱な両足で鷲掴みにし、二股に泣き別れに引き千切る。
崔】LP4000
↓
LP3400
「くっ……」
『ああーッとここで佐潟輝栄、先制ダメージを与えたァー!』
「カードを2枚伏せ、ターンエンド! さぁ、アンタのターンだぜ、皇帝」
場】代打バッター【攻
伏】2枚
手札】3 LP4000
「ドロー。中々やるな、だが……! まずは墓地のコアの効果を発動。デッキより『サイバー・ドラゴン』を特殊召喚!」
☆5 攻撃力2100
「そして手札より『サイバー・ロード・フュージョン』発動。フィールド・除外ゾーンのカードをデッキに戻し、融合召喚を行う! 来い、『キメラテック・ランページ・ドラゴン』」
☆5 攻撃力2100
4つの発光部を持ったヒトデ型の鋼殻ユニットが現れ、中央の発光部からサイバー・ドラゴン、下の発光部からコアの頭部パーツが展開されていく。
「キメラテック・ランページは融合召喚に成功した時、展開された頭部パーツの数だけフィールドの魔法・罠を破壊する。マルチプル・ツイスト!!」
「チェーン。トラップ発動『メタバース』!」
「発動タイミングを問わない、フリーチェーンの罠カードか……!」
「デッキからフィールド魔法、『岩投げエリア』発動!」
破壊】メタバース
スパイダー・エッグ
発動】岩投げエリア
「『岩投げエリア』……貴様の十八番か。ならば、その上から叩きつぶさせてもらう! キメラテック・ランページの効果発動。デッキの機械族を2枚まで自身に取り込み、攻撃回数を追加する!」
墓地】サイバー・ドラゴン・コア
ビック・バイパーT301
残っていた両肩の発光部にコアの頭部と、シューティングゲームの戦闘機を思わせるモンスターの先端がそれぞれ展開される。
「さらに手札の『サイバー・ドラゴン・ネクステア』の効果! 手札の『サイバー・ドラゴン』を捨て、自身と今墓地に捨てた『サイバー・ドラゴン』を特殊召喚する。そして『フォトン・ジェネレーター・ユニット』。二体を生贄に、現われろ『サイバー・レーザー・ドラゴン』!」
☆7 攻撃力2400
サイバー・ドラゴンをより長くスマートにしたサイバー・レーザー・ドラゴンと、4体ものモンスターを取り込んだキメラテック・ランページ・ドラゴン。二体のエースモンスターがフィールドに並び、こちらを見下ろす。
『皇帝の二代エース! サイバー・レーザー・ドラゴンとキメラテック・ランページ・ドラゴンがわずか1ターンで! 一堂に会したァ!!』
「永続魔法『機甲部隊の防衛圏』を発動。サイバー・レーザーがいる限り、俺の場のレベル6以下の機械族モンスターはあらゆる対象に選ばれない。バトルだ! 『サイバーレーザードラゴン』で『代打バッター』を攻撃。エヴォリューション・レーザーショット!」
『機甲部隊の防衛圏により、佐潟くんは『タックルセイダー』で追撃を止める戦術を止められています。これは……手札にある昆虫族によっては、このまま勝負が決まってしまいます』
『佐潟くんはこのピンチを、どう乗り切るのかァ!!』
サイバー・レーザ・ドラゴンが尾部を展開。内部に搭載されたフォトン・ジェネレーター・ユニットから高出力の破壊光線を充填し――照射。
「……っ!」
衝撃波と破壊がスタジアム左半分を襲った。
【今回のエースカードッ!!】
キメラテック・ランページ・ドラゴン
デッキのモンスターをユニットとして取り込み、フィールドを一掃する崔のエースモンスターだ。ビック・バイパーT301との連携攻撃は脅威だぞ!
【次回予告】
「ワオ! サガラ、すっごいピンチデース! トンボのおかげで敗北は回避できまシたが、皇帝(エンペラー)には3体のモンスター! 防衛圏の効果で防御も完璧……サガラ、どうするつもりデスか!?」
次回、第七話 飛翔! ドラゴンVSドラゴン
デュエル・スタンバイ。ッデース!