八月八日だし、なんかやらんと、という感じです。
短編というほどのものでなく小ネタくらいの話ではありますが、こうなって欲しかったという話でもあります。九巻からの話です。
なお、別に仮面ライダーは関係ないです(かなりマイナー)。
愛香のツインテールに触りたい。
登校中、そう頭に浮かぶと同時に、自分が手を伸ばして愛香のツインテールを触ろうとしていることに、総二は気づいた。慌てて手を引っこめると、その気配を察知したのか、愛香が顔をむけた。
「どーしたの、そーじ?」
「えっ、いや、別にっ」
慌ててごまかすと、首を傾げた愛香がなにかに気づいたような仕草を見せ、顔をかすかに赤らめた。
意を決した様子で、愛香が言葉を紡ぐ。
「そ、そーじ。その、ツインテールに触りたかったら、いつでもあたしのに触っていいんだからね?」
「あ、ああ。ありがとな」
顔を背けそうになるのを必死に堪え、愛香に答える。そんなことをしたら、彼女を傷つけてしまうかもしれない。
愛香と話すのが嫌なのではない。むしろ、もっと話していたい、彼女のツインテールを触りたいと思ってしまうほどだ。後者は、前からそうだった気がするが、いままで以上にその欲求が強くなっている気がした。
しかし同時に、妙な気恥ずかしさのようなものも感じてしまうのだ。愛香のことを考えるだけで顔が、
こうなったのは、先日、愛香がトリケラトップギルディの能力によって過去に飛ばされ、そして無事に帰って来てからだ。より正確に言うならば、帰って来てトリケラトップギルディを
あの時のあれは、まるで優しい口づけのようだった。
「っ」
「そーじ?」
思い出したことで、再び躰が熱くなった。視線を愛香から逸らすと、彼女は心配そうに呼びかけてくる。
過去から帰って来た愛香のツインテールは、これまで以上の輝きを放っているように感じた。それは、彼女の成長によるものなのだろうと思えた。
だが、疲れが抜けていないのだろう、彼女のツインテールからは、どこか陰りのようなものも感じた。そんな時でも愛香は、総二を気遣ってくれる。いや、思えば、いつだって彼女は総二のことを気にかけてくれていたように思える。
そんな愛香を心配させたくない。そう考え、笑顔をむける。
「だ、大丈夫だって。心配すんな」
「でも」
「あまり情けないと、俺の中のツインテールに笑われっちまうからな!」
「セリフが全然大丈夫に思えないんだけど!?」
愛香の声が、辺りに響き渡った。
*******
どうしたんだろ、そーじ。
そう考えると、愛香はため息を吐いた。
最近、総二の様子がおかしい。過去から帰って来てから、愛香と目を合わせてくれず、ツインテールにも触ってくれなくなった。それどころか、話しているだけでも落ち着かない様子でソワソワとしており、それが、愛香と距離を置きたくてしょうがないように見えた。
「――――」
暗く沈んだ気持ちのまま、再びため息を吐き、自室の扉を開ける。
部屋には、なぜかトゥアールが居た。予想していなかった状況に愛香の思考が止まる。
シュタッ、とでも音が付きそうな調子で、トゥアールが手を上げた。
「お邪魔してます」
「呼び鈴押して玄関から入ってきなさいって言ってんでしょうが!」
その手を絡め取り、背負い投げでトゥアールを床に叩きつける。思いっきりやったつもりだったが、トゥアールはまったく堪えた様子を見せず、平然と起き上がってきた。躰の痛みが気になったせいで全力を出せなかったというのはあるが、トゥアールの体術もかなりのレベルになっているせいだろう。きっちり受け身を取っていた。
再びため息を吐き、トゥアールにむき直った。
「で、要件はなに?」
「いえ、ここのところ元気がなさそうだったので」
「別に、そんなこと」
「あのエターナルチェインの反動、ですか?」
「えっ?」
「えっ?」
そっちの方は頭から抜け落ちていたため、キョトンとしてしまった。トゥアールの反応に我に返り、慌てて返事をする。
「あっ。う、うん、そうよ。じゃなくって、あんたの考え過ぎよ!」
「それでごまかせるとでも!?」
無理だったようだ。藪蛇だったかもしれない。
エターナルチェインによる躰の不調を話し、愛香の元気がなかった原因の方に話が移った。
「最近の愛香さんの動きは精彩を欠いています。そのエターナルチェインによる反動かと思っていましたが、さっきの反応からすると違うようですね、愛香さん?」
「いや、その」
「総二様も、心配してましたよ」
「ほんと?」
「いや、なんですか、その反応。総二様なら心配して当然でしょう?」
「う、ん。そうだよね」
どこか悔しそうに見えたのが気になったが、トゥアールの言葉に頷き、悩みを話すことを決める。いや、ほんとうは誰かに話を聞いて欲しかったのかもしれない、と愛香は思った。
大きくため息を吐き、目の前の友だちに語りかける。
「その、ね。最近、そーじの反応がおかしいっていうか」
「ああ、はい」
感情を出さないように努める。自分でもわかるほど、硬い声だった。
口に出すのは、やはりこわかった。もし肯定されてしまったら。
それでも意を決して言葉を紡ぐ。
「あたし、そーじに嫌われちゃったのかなって」
「――――はい?」
数秒ほど固まり、なにを言われたかわからないといった様子のトゥアールに、再びため息を吐いて言葉を続ける。自分の声とは思えないほど、暗く沈んだ声だった。
「いや、なんか、あたしのツインテール触ってくれなくなったし、あたしと話してる時とか、目も合わせてくれないし、かといってツインテールを見てるわけでもないから、ホントは話したくもないのかなって」
「はい~?」
ジト目になり、なに言ってんだこいつ、と言いたげな反応をトゥアールが返してきた。
「なによ、トゥアール?」
「いえ、なんていうかですね、愛香さんってやっぱり、なんか変なところで鈍いですよね?」
「は?」
「なんでもありません。申し訳ありませんが、このことについてアドバイスする気はありません」
「えっ、なんでよ?」
「なんでもです」
そう言うと、今度はトゥアールがため息を吐いた。
「ただ、ひとつだけ」
「ん、なに?」
「総二様は愛香さんのことを嫌ってなんかいません。これだけははっきり言えます。だから、元気を出してください」
「あ、うん。ありがと」
その言葉に、不思議と心が軽くなった。代わりにトゥアールが、どこか力ない足取りで窓にむかって行く。
なにかを言わなければ。そう思うと、ひとつの言葉が胸に浮かんだ。
改めて、精一杯の感謝を。
「えっと、トゥアール」
「なんでしょうか?」
「ありがとう」
「――――まったく、もう」
トゥアールが、息を吐いた。重く沈んだものではなく、軽く苦笑したようだった。
トゥアールが肩越しにふりむき、微笑んだ。なんとなく、清々しい笑みに見えた。
「どういたしまして。悔しくはありますが、不思議と納得はしています。でも、まだあきらめる気はありません。それだけは言っておきます」
「うん?」
「なんでもありません。それでは」
どういう意味かわからず、訊き返すが、彼女は答えることなく窓から出ていった。その後ろ姿は、どこか悲しげではあったが、同時に不思議な清々しさを感じさせた。
総二のことが、ふと頭に浮かんだ。
嫌われてなんかいない。トゥアールの言葉を思い出し、胸に温かなものが広がっていく。
「よしっ」
がんばろう。愛香は改めてそう思った。
異聞というほど特殊な話ではありませんが、八巻ラストのツインテールキスで総二が愛香を意識したら? という話です。というか、なんで九巻以降の話であれに触れないんだろうか。あとで使うのかなあ。
煮詰め方が足りない気もしますがご了承ください。
愛香も結構鈍いというか思い込みが強いところがあるためこんなことに。というかこの子、身内関連は鈍いし。
続きそうなこと書いてますが、続きは未定です。