胡桃視点
あの日から2週間は経った。
本来は明後日から2学期が始まり、今日は夏休みの宿題のやり忘れがないか確認するはずだった。
それが、今年は夏休みの宿題以上に残酷になってしまった。
(今思えば、あの日までは本当に幸せな日常だったんだよな…)
それが崩壊してしまった。
何の前触れもなく、突然と。
私たちは能力のおかげで何とか生き残れているが、安全ではない。
いつ「彼ら」になったっておかしくないのだ。
しかも、由紀が私たちのためとはいえ、あんな風になってしまった。
由紀が日に日に孤独になってしまう光景を見るのは辛すぎる。
しかし、どうやって打ち解ければいいんだ?
貴依ですらお手上げの状態だ。
もはや、由紀の孤独を止めることが出来ないのか?
由紀視点
いつものように授業(という名の幻想)が終わった。
教科書を鞄に入れてさぁ部室へ戻ろうとしたとき、けーくんが教室に入ってきた。
「お疲れ様です、由紀先輩」
「お疲れー、けーくん。」
「授業はどうでした?」
「そりゃ、楽しかったよ!今日はね…」
こんな会話をいつもしている。
けーくんは本当に偉い後輩だ。
こんなに風になってしまった私の話を、最後まで笑顔で付き合ってくれるのだから。
「あの…先輩、ちょっといいですか?」
「ん?何?」
「その…変なお願いですけど…、抱いてもいいですか?」
「えっ…ちょ、えっ!?」
正直、今凄い驚いている。
けーくんってレズっぽいところがあるってみーくんから聞いたことはあるけどほんっとぽい。
「まぁ…いいかな?」
「ありがとうございます!」
そう言った直後にけーくんは強く抱きしめてきた。
この抱き具合…明らかに友達程度ではない。
恋人を抱くような感じ…、まさかけーくん私のこと…
「…もう無理に欺かなくていいんですよ。」
…え?今、何て…
「分かってるんですよ、由紀先輩が私たちのために演じていることを。」
「な、何を…」
「私、知っているんですよ。由紀先輩が学校嫌いなこと。それでもめぐねぇに会いたいから退学しなかったこと。全部、貴依先輩から聞きました。」
きーさん…、だったら何でけーくんに…
「言っときますけど、貴依先輩の命令でここに来たわけではありません。自分の意思で由紀先輩のところに来たんです。」
「…けーくん。」
「由紀先輩、もう一人ぼっちにならないでください。これからは皆で一緒に分かち合いましょう。」
「…うう……ヒック……ぁああああああ!!」
私は泣いてしまった。
後輩に抱かれているのにも関わらず。
それでも泣きたかったのだ。
私の辛さを理解してくれる人がいるのだから。
圭視点
正直、賭けだった。
更に悪化させてしまうこともあり得たけど、上手くいってホッとした。
泣き止んだ由紀先輩に改めて尋ねた。
「一緒に…付き合ってもいいですか?由紀先輩が望んだ「学校」に。」
「…うん。いいよ。」
「ですって。そこにいるんでしょ。こそこそしている美紀と先輩2人。」
「「「「えっ!?」」」」
すると、後ろの扉から胡桃先輩と貴依先輩、教室の端っこで能力で姿を消していた美紀が解除して「何で分かった!?」と尋ねた。
そんなの簡単だ。私を除いて、みんな心配性だからだ。
そのうえ、さっきの泣き声で気づかないのは反対側にある我が部に常にいる悠里先輩ぐらいだ。
「そんなの分かるもんですよ。特に美紀は。」
「嘘!?姿は見えなかった筈!?」
「ほんと、美紀は心配性なんだからー。というか、先輩2人はこそこそする必要はないですよね。」
「ま、まぁそうなんだが。」
「由紀の邪魔をしちゃいけないかと思って…」
「そんなんだから、由紀先輩が悪化したじゃないですか。」
「「うっ…」」
「まぁまぁ、けーくん。その辺で許してよ。」
「大丈夫ですよ、由紀先輩。怒ってるわけではなく、あきれていただけですから。」
「「「「「……ふっ。あははははははは!!」」」」」
ここにいる皆全員、笑った。
ようやく、一歩前進したので安心したのだろう。
私だってそう思って笑ったのだから。
これからは大変だが、みんなで乗り越えよう。
この辛くて残酷な現実を。
どうも、リパーです。
一応、頭の中ではかなり前からあったものの
それを文章にすると難しく感じてしまいます。
ちなみに能力の習得は「8月15日」と「2人のうち1人」の部分は取り除いております。