そういえば、第三話の悲劇なるものがあるそうで。とある駆逐艦が轟沈したり、金髪の女の子が首から上をパクリと行かれたり。まあ、うちではそんなことはありませんがね。少なくとも私たち悪魔は最終的に魂をいただくというだけで、人の死を望んでるわけじゃありませんから。人生とは物語。殺されてしまっては未完のまま打ち切りになってしまうようなものです。ですから、ダンタリアンさんも、避けられない死以外はなんとかしたいそうですよ?
名前を言われたら、自分も名前を言うのが礼儀。なので、達也も杏も、自分の名前を言った。
「俺、いえ、自分は、司波達也です」
「……古木、杏……です」
「司波くんに、古木さんね。ふふっ、あなた達の噂は先生から聞いてるわ。二人とも、ペーパーテストで平均九十六点をとったって。司波くんは魔法理論と魔法工学で満点。古木さんは魔法工学以外は満点!前代未聞の高得点よ」
「……なぜ知っているのかは置いておいて、それはペーパーテストの成績です。情報システムの中だけの話です」
「……同感。……でも、もしかしたら、私も、君も、実力……隠してたり……?」
「……なんの話だ?」
そろそろ時間だ。まだ話し足りなそうな真由美から離れて、二人は講堂へ向かった。
もっとも差別意識が強いのは、差別を受けている者である。そんな言葉を体現するかのように、講堂では、一科生と二科生がはっきりと分かれていた。一科生が前半分に、二科生が後ろ半分に。もし、二科生が前の方に座ったらどうなるか、杏は気にはしたが、余計な波風を起こして機会を失うのはまずい。杏は先に席に座っていた達也の隣に座り、また本を読み始めた。
「会長も言っていたが、紙媒体とは珍しいな」
「……住んでるとこが、電波が届きにくい、から。それに、電子情報じゃわかりにくいことも、ある……の」
「ふむ、確かにな。それに、紙の方が温かみがある気がする」
「……わか、る……」
ちなみに、読んでいるのは『ファウスト』だった。
……い、……おい、聞いているのか?」
声が聞こえたので、顔を上げる。達也の隣には、さらに四人の女子生徒が座っていた。
「……すけ、こまし……?」
「いや、違うからな?それについては全否定させてもらう」
「えーと、個性的なんですね。私、柴田美月っていいます。よろしくお願いします」
メガネをかけた女の子だ。この時代、メガネは珍しい。メフィストは時々、ファッションとしてかけてはいるが、それ以外には『霊視放射光過敏症』という病気の抑制ぐらいにしか、メガネは使われない。ーー度合いによっては、人外だとバレるかもしれない。杏は彼女と関わるのは注意しようと思った。もっとも、隣に座っている男子の方が、杏の秘密に気がつくと思うのだが。
「あたしは千葉エリカ。よろしくね、えーと……」
「……古木、杏。よろしく……」
「よろしく、古木さん」
人懐こいような女の子だ。ちなみに、千葉も数字付きの一家である。一から十を二十八家といい、それ以外の数字付きの家を百家という。本当に百ある訳ではなく、二十八家で決められる十師族と言う組織の次なので、ならば百だろうと決められたそうだが。
答辞は、司波深雪という生徒が担当した。達也の関係者だろうか。少なくとも、一科生と二科生の境を嫌っているようだ。「皆等しく」とか「一丸となって」とか「魔法以外にも」とか「総合的に」とか言ってたし。
式が終了すれば、そのあとはIDカードの交付である。杏が受け取ったカードには、E組と書かれていた。
「司波君、古木さん、何組だった?」
「E組だ」
「おな、じく……」
「やたっ!同じクラスだね!」
「私もです」
彼女は考える。何か、面白いことが起きそうだと。過去・現在・未来を知る悪魔、ウァサゴが予言したのは、このことなのだろうか。しかし、これで引きこもり悪魔だったダンタリアンが、外の世界の広さを知る準備は整った。
ダンタリアンイメージ。
性格:引きこもりで無口。メンタリスト。知識欲の塊。本が好き。芸術も好き。
姿:女の子。作者ではしっくりくる姿が思い浮かばない。
この世界の悪魔は、悪魔としての魔法(CADを使わないオリジナルの魔法)を使えますが、メフィストフェレス曰く、「手作業で同じことができるならそっちの方が早いかもしれない」とのこと。結構魔力を使うらしい。が、万能ではある。