Muv-Luv ALTERNATIVE 業   作:ROGOSS

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目覚めと志編
目覚め


「ん……? あ、え……?」

 

 意識がどこかへ行っていたとでもいうのだろうか。

 突然の目覚めに頭の処理が追い付かない。

 どこか懐かしさすら覚える空間。

 様々な電子機器が所狭しと並べられており、操縦桿らしきものを俺の両手は握っている。

 

「ここは……?」

『三番機! ボサッとするな! 撃ちまくれ! これ以上帝都(ここ)BETA(やつら)の好きにさせるな!』

 

 聞こえてきた怒声に俺の体は、反射的に反応する。

 トリガーを引き36mm弾をBETAの体へと叩き込む。

 小刻みの振動がコックピットにも伝わってきていた。

 

『クソックソックソッ! いったいどれだけいるんだよ!』

『文句を言っている暇があったら、さっさと殺せ! 手を動かし続けろ!』

 

 猛スピードで接近し続けるBETAに攻撃はまったく効いていないように見えた。

 硬い甲殻で覆われた正面以外を攻撃しなければ、本当の意味で倒すことはできない。

 隊の誰もがわかっていたが、それをするだけの推進剤も弾薬も彼らの手元には既に無くなっていた。

 何波目かもわからぬ波状攻撃を受け止めてきたが、補給すらない今の状態ではこれ以上の抵抗は無意味としかなり得ない。

 俺は気を失っていたのか?

 名前も生年月日もハッキリと思い出すことができない。それでも、今この隊が戦っている理由、おかれている戦況が明白にわかる。

 

「くっ……どうなってやがる!」

 

 小さく呟き、俺は残弾が0となった87式突撃砲を投棄する。

 こうなっては格闘戦でどうにかするしかない。

 他の戦術機達も順に長刀へと兵装を変えていった。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 死ぬかもしれない。

 いきなり目が覚めて、何が何だかさっぱりわからないまま俺はここで死ぬのか?

 そんなのは嫌だ。俺が何者かであるかは俺自身がよくわかっていなくてはいけないし、俺が決めることのはずだ。

 何も知らないままで死ぬのはごめんだ。

 だから……必ず俺は生き延びる。くそったれな異星起源種共を殺して生き延びてやる!

 息が乱れる。胸の鼓動が早くなる。

 

『全機抜刀! ここを突撃(デストロイヤー)級に抜かれれば、もう奴らを止める部隊はない! 一気に第二防衛ラインまで抜かれるぞ! 近接戦の選択は愚かだとは俺が一番わかっている。それでも……補給が来るはずだ! それを信じて戦い続けろ!』

『「了解!」』

『来るぞ! 粉みじんに切り刻んでやれ!』

 

 全てを焦土と化す力を持つ突撃級の師団が僅か7機しか生存していない中隊へと襲い掛かる。

 それは一瞬の出来事であった。

 先頭に立っていた隊長機が飲み込まれると、あとはそれに続くように次々と戦友たちが散っていくのみだった。

 

『大将軍万歳!』

『し、死にたくない! 母さん、母さん、母さん!!!』

『痛い、痛い、痛いい!!!』

 

 聞こえてくる悲痛の叫びに呼吸が止まる。

 何だよこれは。

 どうして帝国が攻撃を受けなくちゃいけないんだよ。

 海を渡ってここまで来てるんだよ。

 

「……この野郎!!!」

 

 気が付くと最後の一人となっていたが、そんなことは関係ない。

 俺はひたすら剣を振り続けた。

 目の前にBETAの死体の山が築かれたころ、笑みがこぼれ始めた。

 

「はは……ははは……なんだよ……弱いじゃないか……俺は…生き延びたぞっ!」

 

 両手を上げ勝利を喜ぶ。

 俺は生き延びた。

 ほかの突撃級は俺を無視して行きやがった! 俺の勝利だ! 見たか、この野郎!

 その油断が命取りとなることに気が付いたのは、目の前に新手の突撃級が現れた時だった。

 警告音がうるさいほど鳴り響く。

 長刀を構えなおす時間はない。

 この距離では、BETAの方が先にこちらへ来てしまう。

 

「ひっ……!」

 

 機体が二転三転する。

 踏みつぶされるような衝撃が全身に走る。

 

「ぐっ……がっ……!」

 

 俺は頭を強く打つと意識を失った。

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