Muv-Luv ALTERNATIVE 業 作:ROGOSS
その式典自体には大した意味はないのだろう。
建前上、先のBETA強襲上陸の際の功労者を慰労するための会であるらしいが、今もBETAが国内で巣くっているというのに、こんなものを開くなど暢気なものだ、というのが諸外国からの評価だった。
それは黒金にとっても同じことだ。斯衛軍、帝国軍の境を取り、とにかく全員を慰労する。なるほど、士気向上のためにはもってこいだろう。この国は、将軍に会うことができれば普段以上の力を振るえる者がごまんといる。
しかしながら、明日死ぬかもしれない現状に変わりはない。臨時首都としている仙台に今からでも、横浜付近で停滞しているBETAが雪崩れ込んできてもなんら不思議な状況ではないのだ。
慣れない、正装と帝国上層部の危機感のなさに黒金は思わず顔をしかめた。こんなところを泰三に見られれば、無礼だとどやされるであろう。
「黒金。お前も気になるのか」
隣にいる姫川がそっと話しかけてくる。
前園が死んでからはや2か月が過ぎていた。ギスギスした関係が続いてはいるものの、隊のトップが不仲でい続けるわけにもいかない。それは姫川にとっても同じ考えだった。
徐々にだが、お互いをわかりあおうといちおうは歩み寄る体裁を取っていた。隊の古参の者にはそれが奇妙に映っているであろうが構わない。
「あぁ。こんなことをしている場合なのか?」
「そうだな。確かにそうだ。だがな」
「ん……?」
「これがまったくの無意味だとは私は思っていない」
姫川の口からそんな言葉が出るとは思っていなかった。
堅物の彼女ならば、ここから飛び出していこうとうずうずしているとばかり思っていたが、どうやら違うようだ。前の彼女とは違う。彼女なりに、鬱蒼とした思いに区切りをつけ隊長としての自覚を持ち始めているのだろう。それはもちろん、黒金にも同じことが言えるが……
「ただでさえ、帝国にいる戦える人間の数は少ない。限られた数が無限に挑むには一人一人が一騎当千の覚悟を持ち立ち向かうしかないんだからな。これは……各々をそうした武士にするためにはうってつけの良い機会だ」
「まあ……それに対して意見するつもりはない。間違いようのない事実であるし、そうした目的が必ずあるだろうしな」
「だが、そうだとしても……なぜ、貴様と二人の出席なのだ」
「どうして最後はそこに行き着くんだよ……」
思わずため息が出る。
なんだこいつは。ころころと態度を変えて。やっぱり、俺が過剰評価し過ぎているだけなのか?
「第23斯衛中隊隊長、姫川梓大尉。前へ」
「はっ!」
名前を呼ばれ、さすがに仏頂面を直すと姫川は将軍の前へと進んでいった。
その様子を何気なく眺めながら、黒金は黒金家のことを思い出す。数百年将軍家の右腕と使え続けている名家。将軍が生き抜くとして、邸宅にくるほどの仲。いったいぜんたい、俺はとんでもないところの養子になってしまったのではないか。
「同じく、黒金猛中尉。前へ」
「は、はいっ!」
考えに夢中になってしまい、思わず間抜けな返事が出る。幸いなことに、誰もそれに関してはツッコミをいれないようだが、後で姫川に馬鹿にされそうだ。
ゆっくると将軍の前へと近づいていく。
思えば将軍の姿を見るの初めてだ。女性だと知った時も驚いたが、どの距離から見ても美しく聡明そうな容姿はまさに、なるべくしてなった将軍だということを表していた。
膝をつき、将軍へと忠義を示す。
「よくぞ、働いてくれました。そなたの働きに心より感謝を」
「はっ! もったいなきお言葉をありがとうございます。誠心誠意、お国のため将軍のため働かせていただく所存です」
「……うふふ」
笑う……?
おかしなことを言っただろうか?
思わず黒金が顔を上げると、そこには笑顔を浮かべた将軍が愛おしそうに黒金を見つめている姿があった。時が止まる。1秒に満たないであろうが、数十秒近く彼女と目を合わせていたのではないかと錯覚するほどの長い時間。
「黒金家には代々お世話になっております。よろしく頼みますね……黒金猛中尉」
「御意っ!」