Muv-Luv ALTERNATIVE 業   作:ROGOSS

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遅くなり申し訳ありません。
これより、明星作戦編ですね。


8月5日

8月5日 国連軍太平洋艦隊並びに大日本帝国太平洋艦隊 太平洋洋上

 

『小沢提督』

「そう固くなることはない。これは終わりではなく、大日本帝国の……いや、人類の逆襲の機会なのだからな」

『そうだぞ安倍君。我々がどっしりと構えていなくては、部下が不安がってしまう』

『井口艦長も、言葉の端々に緊張が見られるようだが?』

『ほぉ……田所艦長も同じではないか?』

 

 戦友達の声が通信機から聞こえてくる。彼らは、共に出撃している艦長達だ。中には、小沢と同じく、BETAが日本を襲撃した際、佐渡島が落ちていく姿を何もできずに歯がゆい思いをしながら見た者もいる。小沢とてその一人だ。

 作戦開始時刻が刻々と迫っている。

 第一フェイズとして、太平洋と日本海に展開している艦隊勢力により、艦砲射撃を行い横浜より西日本側の後続のBETAを断つ。その後、横浜ハイヴに戦術機部隊が強襲をかけ、最深部まで到達後ハイヴの機能を停止させる算段だ。

 滞りなく作戦が進行するなど、誰も思っていないだろう。先に行われたパレオロゴス作戦では、人類は甚大な損害を受け、一時BETAに対して反抗らしい反抗ができなくなってしまった。

 今回の展開規模は、それに次ぐ、それ以上の規模での大反抗作戦だった。BETAに攻められ続けている人類としては、何としても作戦を成功させ、世界中の人々のBETAに勝つことはできるという吉報を届けたいと考えているのだろう。人間は、暗い知らせだけを受けて生き続けられるほど強くはない。明るい知らせを何としても掴みとらなくてはいけない。あの佐渡島の悲劇を繰り返さぬためにも。

 

「そろそろ時間だ。総員、戦闘配備」

「総員戦闘配備! 主砲争点用意! 目標、敵BETA群!」

 

 小沢は懐から懐中時計を取り出すと、静かにそれを見つめた。BETA大戦が始まってからというもの、この懐中時計は相棒として戦ってきた。

 時は流れ続ける。決して戻ることのない、波と同じだ。まったく同じものが繰り返されることはない。だからこそ、人はこの一瞬を後悔することなく生きなくてはいけない。身命を賭け、己の成すべきことを成す。

 

「砲撃開始」

「砲撃開始!」

 

 小沢の言葉を伝達員が復唱する。直後、轟音が艦内に響き渡った。

 

「7.6.5……」

 

 観測員は秒数を数えていた。

 

「今、弾着!!!」

 

 目の前に広がっていた地上に土煙が派手に舞い上がった。

 爆音と爆炎が港町を包み込む。同時に、衝撃によってBETAの肉片が舞い上がり、どこかへと消えていった。突然の攻撃にBETAは怒りを露わにしたが、海上に出る手段がない彼らに反撃することはできない。上空から降り注ぐ、砲弾の雨あられに晒されることが、侵略者達にできる唯一出来ることであった。

 

〇 〇 〇

 

『姫川だ。0100をもって展開中の国連及び帝国艦隊が艦砲射撃を開始。さらに、横浜湾へ待機していた国連第7戦術機師団が突入を開始した』

 

 いよいよ始まったか……。

 思わず操縦桿を強く握る。モニターに映っている第23近衛軍の面々の顔は固い。仕方がないだろう。実戦経験を積んでいる部隊の一つであるが、小規模戦闘が主だ。これだけの大掛かりな作戦に随時しているのは、ほんの一握りしかいない。特に小隊員の西、南雲、間島は緊張と不安の色が顕著に表れている。士官学校で訓練を積んだとはいえ、彼らにとって実戦はまだ数えるほどしかない。

 

「そう固い顔をするな。緊張は判断を鈍らせる。大丈夫だ。背中を信じあい、助け合え。俺たちは一人じゃない」

『小隊長……』

『黒金の言う通りだ。我々の真の任務は、ハイヴ内への突入だ。密閉された空間で生き延びる方法は、信じあうこと、それだけだ。必ず……全員生きて帰る。わかったな?』

『「了解!」』

『本作戦より、近衛第23中隊のコールナンバーをロンギヌスとする』

 

 神殺しの槍、ロンギヌス。なるほど、BETAを神だと敬う宗教もあるようだが、確かに宇宙から飛来した生命体は神秘そのものだろう。思わず神と崇めたくなるのもわからなくもない。

 

「だけど……」

 

 俺たちにとって敵であることも、またどうしようもない事実なのだ。神ですら殺せる槍ならば、どんなものでも穿つことが可能である。穿ち、貫き、肉片すら残さぬほどに圧倒的な力で押しつぶす。人類が今までやられてきたことを、そのまま返すだけだ。慈悲などいらない。生存するための戦いは、いつの時代でも肯定されるのだから。

 

「前園大尉。やりますよ、俺は。俺が何者なのか未だにわからないけど、今は勝たなくちゃいけないってことがハッキリわかる。ここで負けちゃいけないんだ」

 

 作戦は第二フェイズにはいってまだ数十分しか経っていない。黒金達の出番はまだまだ先の話だ。

 深呼吸をして、緊張をほぐす。大丈夫、今までの訓練はこの日のためだ。今までの悲しみは、今日の喜びのためだ。

 

「やってやる、やってやるさ。絶対に。人類は負けちゃいけないんだ。俺はそんなことを絶対に望んでいないからっ!」

 

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